演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

山崎 彬

演出家

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京都

__
宜しくお願いします。
山崎
宜しくお願いします。どんな話するんですか?サイト見させて貰ったんですけど、インタビューと言うよりは、友だち感覚でフツーに喋ってるみたいな感じですよね。
__
たまに芝居の話をする、みたいな。最初はそういう感じでしたが、不毛だなと思い始めてまして。
山崎
最近は、どういう人達とお話されたんですか?
__
ええと、照明の人とか、役者さんとか。京都で芝居をやってる人全般ですね。最近は雑談からスタイルを変えて、真面目な話もしていきたいなーと思ってますね。
山崎
何でも答えますよ。
__
ありがとうございます。

「注目!」

__
こないだの「注目!」。手ごたえは。
山崎
そうですね。そりゃ、まだまだ目指す所は高いです。でも、目を付けてもらってるってのが確認出来て良かったですね。
__
ああ・・・。
山崎
「演劇ぶっく」に載せてもらって。営業に行って、実際見にきて貰えたってのがでかかったですね。この場にしてもそうだし。どうして見に来てくれはったんですか?
__
いや、知り合いと話してて。その人が、「注目!」と別の公演のどちらを見に行くかで迷ってて。でまあ、何か気になって。
山崎
ああ・・・嬉しい。
悪い芝居vol.3『注目』

日時:2006年3月17〜19日。会場:アトリエ劇研。

簡単

山崎
やっぱ劇団ってのは、代表の人が出来なかったらやめるしかないわけで。僕は作演をやっていて、そういった責任が怖くて。だってもう、書けへんってなったら皆が一気にぱあって散りますからね。
__
そうですね。
山崎
だから劇団を作るのは嫌やって。ある意味簡単に出来ちゃうじゃないですか。公演って。言ったら、お金出してホールさえ借りれば、面白くないものでも出来てしまうから。それでやってしまってもいいのかなって疑問があって。
__
うん。確かに。
山崎
でも、特に入りたい劇団もない。芸能人になりたいってわけでも・・・。じゃあやってみようかって。今回の公演で、初めて劇団らしくなったなあと思います。知り合いだけじゃなく、色んな人に見に来て貰えましたし。メディアにも。これまで「エルマガジン」さんとかに掲載してもらうときは「良かったら見に来てください」という言い方だったんですよ。でも、「是非見に来てください」って言って。それで反応があったのは嬉しかったですね。
__
うん。
山崎
でも。その次が怖いんですけどね。
エルマガジン

小劇場に関する記事が多く掲載されていた。もちろん、京都の小劇場に関する情報も多く、楽しめた。2009年現在は休刊中。

__
方々で評判良かったですよ。知り合いと話した時にも感想を言い合ったんですが、公演自体の造りがしっかりしてて。しかも独特で。そういうところがいいなと思います。
山崎
ありがとうございます。でも、本当、まだまだ若いっていうのがあって。演出の要求に対しての役者の反応が遅くって。すぐに自分の引き出しから返せるか、のような。
__
はい。
山崎
だから、その辺のイライラとかは演出をやっていてあるし。もしそういう頭が上の世代の人に追いついても、レパ(台本)の読み込みのセンスとかが追いつくかどうか。
__
役者として、どういう絵を作れるか、とかその辺ですか?
山崎
そうですね。そういうところとか、僕らは時間を掛けてやるしかなかったんですね。この公演の稽古は12月頃からやっていて。本当はもっと、その期間をどんどん短くしていったら数も打てるし、いいものをコンスタントに産み出せますし。
__
そうですね。
山崎
一回だけ良くて、期間空いちゃうと忘れられそうじゃないですか。「ああ、そんなんおったな」みたいな。・・・やりますよ。
__
うん、真面目にやっていけば、報われますからね。多分。
山崎
頑張りますよ。

繰り返し

山崎
今回の公演が良くても、鈍ってきたら嫌やなと思うんですよ。お客さんが入るようになって、例えば何かお笑いするときに、お客さんも好きやから笑うやないですか。それの繰り返しで鈍くなって、つまらなくなってきたら嫌やなと思いますね。
__
はい。
山崎
なんやこの劇団、どれ見てやろうって人を相手に芝居をやってる、という楽しさを忘れたくはないですね。
__
挑戦的ですね。良い意味で。僕も確かに、どんなのかなって態度で見てたんですけど、前半の終わりから純粋に楽しむモードに入って。というのは、これは失礼かもしれないけど、技術的に発展途上的な芝居の面白さがあって。
山崎
それは、嬉しいですね。
__
上手くなっていくなんて失礼ですが。
山崎
活力になります。

就職

__
芝居をやるってのは、人生削っているってよく言われますけどね。
山崎
(笑う)でも僕はそういう感覚はなくって。ホントやったら、立命出てるんだし、ちゃんと就職したら会社に入れるんですよ。月20万は保障されて。でも、月に10万払って刺激を貰ってるって感じなんで。だから全然。
__
はい。人生削ってるってのは、サラリーマンでも同じ事で。でもここで一つ思うのは、サラリーマンでも芝居を続けていて、かつ凄くいい作品を作る人もいるし。
山崎
多分スタンスですよね。何が成功とかは一概には言えないし。売れたら成功でしょうけど。
__
ヨーロッパ企画みたいにね。
山崎
ああ・・・。ヨーロッパさんとか、上田さんの台本をやりたくて集まってるみたいな。そういう男子校的なノリって凄く羨ましいですね。うん。だから、その辺の劇団なり演劇をやる人なりのスタンスだと思います。外から色んな雑音が聞こえて来ますけどね。例えば就職しても芝居は続けられるとか。
ヨーロッパ企画

京都の劇団。現代的なセンスの会話劇。

40年後

山崎
何か役者って、自分の外面的な部分しか表現出来ないんじゃないかと感じてて。一方作・演出だと批判が返ってくるじゃないですか。それが、凄く次につながっていく感じがして。役者とかだと、「今回はこういう役どころだから」みたいな逃げ場が出来てしまう。褒められたら「やろう!」ってなるくせに、批判されたら逃げてしまうみたいなのが凄く嫌で。だから、役者もやりたいんですが、作・演出もやっていきたいなっていう欲望が出ましたね。
__
なるほど。・・・四十年後、芝居をやっていますか。
山崎
やっているんじゃないかなあ。
__
はい。
山崎
イチローが言ってるんですけど、彼が野球を辞めないのは、「まだ上手くなれると思うから」って言っていて。それを聞いた時にああそうだなって思って。30歳になったら30歳の役をやりたくなるだろうし、40になっても同じで。何かね、それを人に言ったら楽観的やろうとか言われるんですけど。
__
うーん。
山崎
ただ、結婚しますかって聞かれたら悩む思うんですよ。僕はこの子を幸せにしたいと思ったらたぶん芝居をやめると思うし。今は、芝居するのを許してくれる人がいいなと。
__
なるほど。なんていうか。40年後も、僕らみたいに芝居をやってる人が大勢いればいいなと思ってるわけですが。
山崎
分かりますね。多分見に行きますもん。
__
そうだ、山崎さんはどんな芝居をよく見るんですか?
山崎
学生劇団の新人公演とか見ます。凄く学ぶことがありますもん。はっきり言ってあまり面白くはないんですが、このシーンの作りは考えたんやなーとか。
__
ええ。
山崎
そういうのを見て、尊敬する気持ちを持ち続けたいし。面白いんですよ。思い入れのあるであろうセリフとか。我武者羅かげんとか。
__
逆に、プロとかの手馴れた芝居については。
山崎
それはそれで、凄いなっていうか。プロのワザっていったら変ですけど、例えば喫茶店のシーンで、前の役者二人が喋ってる時に後ろの人達をどう見せるかってのがプロと学生の違いかなって思っていて。
__
ああ・・・。
山崎
どう違うんだろうなあって思ってて。今回もそういうシーンを作ったんですけど。前の人が喋っていて、しかし後ろの人達は目立たせない。邪魔をさせない、っていうやり方を今までやってたんですね。今回はどんどん動かして、前の人たちはそれ以上に派手にして目立たせる。そうしたら見え方が全然違って。
__
なるほど。
山崎
芝居になるとどうして後ろの、背景の人達は声が小さくなるんだろうと思っていて。大発見でしたね。でもまだまだ、そういうのはいっぱいあると思うんですけど。
__
ええ。
山崎
あと例えば、舞台のどこに机を置くかという時に学生だったら見え易さのために真ん中に置く。プロは下手(客席から向かって舞台の左側)に置く。とか。真ん中におく落とし穴というか、そういうのをどんどん知っていけたらいいですね。
__
色んな芝居を見て、勉強するとか。
山崎
「真似ぶ」と勝新太郎が言ってますけど、本当に必要ですよね。一回、野田秀樹に嵌ってた事があって。その時やった芝居のアンケートにパクリだって書かれて。でも、芝居を作っていく上で影響を受けた作品の方法をなぞり、そんで劇が芝居に変わる瞬間とかを味わうと、これは勉強になりますね。

カップ

__
今日はありがとうございました。そういう気持ちと、これからのご活躍を込めて、プレゼントがあります。
山崎
ありがとうございます。
__
どうぞ。
山崎
開けてもいいですか?
__
あ、どうぞどうぞ。
山崎
いや、これは嬉しいな。こういう。(開ける)何ですかこれ。おお・・・。ティーセット。これは何か意味が。
__
別に・・・。迷った末に。
山崎
(笑う)でもこれありがたいですよ。マグカップしかないんで。家には。使いますよ。
__
嬉しいです。
山崎
芝居やってて良かった。
(インタビュー終了)