悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』進野大輔の稽古場潜入漫画
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、進野さんはどんな感じでしょうか。
- 進野
- よろしくお願いします。最近は事務所で漫画を描いています。いまはまだネーム段階なんでお見せ出来るものはないんですけど・・・
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- 私は進野さんの稽古場レポート漫画、好きですよ。他の作品もぜひ読みたいです。
- 進野
- ありがとうございます。
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- 漫画家にインタビューするのはさすがにこれが初めてですね。
- 進野
- 画家の方はいらっしゃいますよね。でも僕、自分を漫画家と名乗って良いのかどうか。場違いじゃないですかね?
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- そんなことはないですよ。あのレポート漫画は素晴らしい。色々な稽古場BLOGはありますが、あれは別格。一つのコンテンツとして価値を持っていると思います。売れるレベルだと思っています。なぜなら進野さんの描く似顔絵は愛に溢れている。愛があるから、人の顔のデフォルメをここまで思い切って出来るんじゃないかなあと。それも、表舞台ではない、稽古場での顔。
- 進野
- やっぱり公演を見に来てもらいたいという気持ちがあって・・・なんだろうな、これを読んだ人が、知らない出演者の人となりやキャラクターを好きになってくれれば嬉しいです。ゴシップとかネタバレとかじゃなくて。今後、また描けたらなと思っています。次の「メロメロたち」で。
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- ものすごく楽しみです。
悪い芝居
2004年12月24日、路上パフォーマンスで旗揚げ。京都を拠点にしながら、東京・大阪などでも活動する劇団。メンバーは12名。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を刺激的に勢いよく噴出し、劇世界と現実世界の距離を自在に操作する作風が特徴。「現在でしか、自分たちでしか、この場所でしか表現できないこと」を芯にすえ、中毒性の高い作品を発表し続けている。2009年より、パワープッシュカンパニーとして京都の劇場ARTCOMPLEX1928から2011年まで3年間の支援を受ける。そのパワープッシュカンパニーとしての最初の作品「嘘ツキ、号泣」が第17回OMS戯曲賞佳作を受賞。各メンバーの外部活動や、2011年は、劇団事務所である築80年の京町屋で1ヶ月半26ステージの家屋公演「団欒シューハーリー」を敢行するなど、劇場以外でのパフォーマンスも精力的に行っている。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)
悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』
公演時期:2014/9/11〜16(東京公演)、2014/10/21〜26(東京公演)。会場:HEP HALL(東京公演)、赤坂 RED THEATER(東京公演)。
悪い芝居vol.16『スーパーふぃクション』進野大輔の稽古場潜入漫画
悪い芝居メンバーの進野大輔が『スーパーふぃクション』稽古場を勝手に漫画化!(サイトより)
デフォルメに必要なもの
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- 改めて稽古場レポート漫画を見ていて思うんですが、そうそう、この畑中さんがまず似てるんですよね。
- 進野
- ちょっと練習して、こんな感じかなと思って描いたら案外似てきましたね。
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- 本当にですね、凄いと思う。山崎さんも似てる。そうそう、我々が理想としている山埼さんではないけれども。このニヤーっと笑った顔。
- 進野
- この顔は「ひどいなあ」と言われました。そうですね、身内的な愛というか悪意というか。ギッシー(北岸)も、別にそこまで黒くはないけど真っ黒くしたり。
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- そして、Sun!!さん。
- 進野
- 客演さんは難しいですね。会ってからそんなに時間が無いので、どこまで特徴を捉えられるか。
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- 大塚さんと、田中良子さんも似ていますね。デフォルメされながら。
- 進野
- 顔立ちの整っている人ほど難しいですね。一個特徴を持っていたら、そこをデフォルメすると似てくるんですよね。中西柚貴もちょっと下ぶくれにしたり。
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- この、山崎さんの丸っこい目の時とか、信じられないぐらい本人を想起させてくれる。
- 進野
- たまにこういうギョロッとした目をするんですけど、目力ですよね。女の子は可愛く特徴を捉えて。
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- この田中良子さんが可愛いんですよね。
- 進野
- 原画、見ますか?
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- えっ、いいんですか。
インクが重い
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- これが生原稿ですか!こんなの描かれたら、役者は嬉しくてしょうがないと思いますよ。
- 進野
- ありがとうございます。
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- 漫画の生原稿自体、見るのは初めてです。貴重な体験です。へえ、ベタの部分って、実際の原稿だとこんな迫力あるんですねー。描き込みも凄い。飲み会のコマとか、料理なんて、具材一つ一つまで分かるレベルで細かく描くなんて。こんな力作、一つのプロモーションとしてめちゃくちゃ価値が高いと思いますよ。公演会場とかに飾ったらガチの人だかりが出来る。そして、もちろんプロモーションとしても大きい価値がありますよね。今の時代、スマートフォンと漫画は相性がいいからなおさらですよ。
- 進野
- やってて楽しかったです。
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- これ、手で触ってていいんですか。
- 進野
- 全然大丈夫です。
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- これは価値がある。
- 進野
- 以前劇団のイベントでオークション的なことやったんですけどそれに出そうかと思っていました。
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- 6000円くらい行きますよ。
- 進野
- あはは。
その場にいると和む人
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- 進野さんは悪い芝居の何なのか今ひとつ掴めないですよね。
- 進野
- 何で残ってるか分からないですからね。漫画描きたいんならやめればいいのに劇団にいる。もちろん何もしてない訳じゃなくて、美術を手伝ったりだとか、小道具作ったり稽古場を取ったりとかは僕がやってるんですけど。
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- 裏方ではあるんですね。
- 進野
- というか、演出助手というか・・・山崎さん曰く友達。
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- 「友達」。
- 進野
- 最初は劇団員だったんですけどね。役者だったし。
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- 友達か・・・。その、進野さんのポジションにいる人は好きですよ。
- 進野
- 稽古場とかも、「来る?」みたいな。もちろんチラシのクレジットにも載っているし仕事はちゃんとやるんですけど、本番は転換要員として、裏に付いてます。
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- サッカーで言うリベロ、みたいな?そもそもこの事務所の主だし、劇団猫のしゃもりとも仲良いしね。遊撃隊として扱うとパフォーマンスを発揮するタイプなのかもしれませんね。
- 進野
- だから、共演者の方と仲良くなれるのかもしれませんね。気を使わなくてもいい人、みたいな。
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- 好かれるスタッフ、というポジションはいいですね。
- 進野
- 山崎さんは、「僕がいると和む」と言ってくれるんですけど、それはどういう意味なのかなあ、と。いてもいなくても成立はするんだけど、おってくれた方が助かる、みたいな感じだったらいいなと思うんですけどね。
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- 和ませる、に関しては高度なスキルなんで、一人でもそういう人がいたら全く違うと思いますよ。だってその人にしか出来ないんですよ。
- 進野
- 稽古場ってね、張り詰めた雰囲気になりがちだから。稽古場のしゃもりかな。
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- 稽古場の猫。
- 進野
- 適当に言いましたけど。
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- 観客席にはそこは伝わらないんだけど、稽古場を保つために重要だと思います。緊張で張り詰めた稽古場の劇団は、長く続かないでしょう。
悪い芝居vol.18「メロメロたち」
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- 次回公演「メロメロたち」。どんな作品になりそうでしょうか。動かないロードムービーだそうですが。
- 進野
- 実は僕らも、まだ詳しくはまだ分かってない状態なので、ゆっくりと待ってもらったらと思います。NMB48の石塚朱莉さんも出演するんです。どんな公演になるのか僕らも楽しみで。全然違うところから客演さんが来ているんですよ、D-BOYSの大久保祥太郎さん、ワンダフルボーイズのギタリスト、アツムさんも。今度ビジュアル撮影があるんですけど、その時に色々分かるかなと思います。
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- ありがとうございます。さて、ロードムービーというと、どんなお話かな。旅行記とはちょっと違いますよね。
- 進野
- 調べたら、旅の行く先々での出会いを描く、みたいなジャンルだそうですね。
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- そこで出会う人たち、か。ちなみに進野さんは、ロードムービー的な体験をした事はありますか?
- 進野
- 大学生の頃に群馬県に行きました。
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- おお。
- 進野
- その頃は台本を書いてたんですよ。ある事故を題材にした脚本を書くために、その現場にまで一人で行ったんです。誰も降りないようなバス停に止まって、運転手さんに心配されながら、雪の中民宿を目指して歩いてました。熊が出てもおかしくないような場所で。
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- 自殺じゃないですか。
- 進野
- その事故の慰霊碑が近くにあるんで。民宿の人たちはみんな親切にしてくれました。雪がすごくて一人で見に行けない現場の近くまで車で送って下さったりして。旅先で出会った人達のあったかさを感じました。それが僕のロードムービーです。
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- グラフィティですね。私の考える寂しさとは無縁で。
悪い芝居vol.18「メロメロたち」
【作・演出】山崎彬 【音楽】岡田太郎 【出演】 植田順平 渡邊りょう 中西柚貴 呉城久美 北岸淳生 畑中華香 長南洸生 岡田太郎 山崎彬 (以上、悪い芝居) 石塚朱莉(NMB48) 大久保祥太郎(D-BOYS) アツム(ワンダフルボーイズ) 【会場・日程】 ●大阪公演 HEP HALL 2016年7月15日(金)〜20日(水) 15日(金) 19:00 16日(土) 13:00/18:00 17日(日) 13:00/18:00 18日(月・祝) 13:00 19日(火) 14:00/19:00 20日(水) 14:00 ●東京公演 赤坂RED/THEATER 2016年7月26日(火)〜31日(日) 26日(火) 19:00 27日(水) 19:00 28日(木) 14:00/19:00 29日(金) 19:00 30日(土) 13:00/18:00 31日(日) 13:00 【チケット】 2016年4月23日、チケット先行発売開始! ●前売 一般 3900円 U25 2900円 高校生以下 2000円 当日券 各500円増 ●悪友割(3人以上1組割引) 一般 3500円/人 U25 2500円/人 高校生以下 1000円/人
漫画を描く
- 進野
- 「メロメロたち」の稽古場漫画を描きたいです。それと、漫画賞を獲ろうと思います。昔はこんな、目標を口に出して言うのは恥ずかしいと思ってたんですけど。
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- 目標を言うだけならタダですからね。
- 進野
- ええ。
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- 漫画を描くなんて、誰にでも出来る事じゃないですからね。技術と情熱を感じるし、なんだろう、進野さんはこの絵を描く事が許されている人なんだと思う。Sun!!さんの顔をこんな風に描けるのは進野さんだけだと思うんです。いや、もう、似顔絵的にデフォルメされていながらちょうど良く可愛く描けていて、でも進野さんが見たその人の人となりを感じるんですよ。
- 進野
- その人に似ないと、と思って描いたわけで。そうですね。僕が描いたらこうなりました、という個性は大事にしています。僕なりに、愛を持って描いたつもりでした。描くのに愛は必要だと思ってます。
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- 本当に、そうですよね。
- 進野
- 前回は舞台美術と、小道具を作っていたので出来なかったんです。結構忙しくてレポート漫画は描けなかったんですよね。
質問 司辻 有香さんから 進野 大輔さんへ
愛嬌、どこからきたか
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- 進野さんが面白いと思う漫画のポイントは?
- 進野
- やっぱり、漫画を読む理由って、そのキャラクターにどれだけ魅力を感じる事が出来るかだと思っていて。魅力あるキャラクターを描ければ一番いいと思うんですけど・・・
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- デフォルメをして、それでも一つの像としてまとめあげる事。例えばワンピースだと、どのキャラクターにも愛嬌がある。でも、愛嬌ってなんでしょうね。
- 進野
- その人の積み重ねみたいな部分はあるんちゃいます?やってきた事とか、全部。その積み重ねのどこかに、許される部分があったとして、そこが愛嬌なのかもしれない。
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- 演劇人には全員愛嬌がある。誰も守ってくれない、お金のないこの業界で続けているんだから、それはやっぱり、愛嬌が宿ると思う。
もっと早く・・・
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- 悪い芝居の中で、何を作りたいですか?
- 進野
- 一つは、みんなで上に行くために努力をする事。それはまずやっていかないといけないなと思っています。その為には僕自身も、劇団に影響を与えられるようになりたい。漫画を描いて、それで観に来るお客さんが出てきたら。そういう風に力を付けられれば、劇団の恩返しになると思っています。漫画家ってポジションの劇団員が一人おるって、面白いと思うんですよ。大人計画ってそういう傾向があると思うんですけど、それぞれがそれぞれの何かを持っていたら、と思います。僕だったら、それは漫画。
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- 素晴らしい。ていうかそれはもうそうなっていると思いますけどね。こんな稽古場漫画とか描かれたら、それはもう、座組はテンション上がると思いますよ。だって、これに掛けられ時間を想像するだけで元気になる。
- 進野
- 一枚仕上げるのに何時間掛かっとんねん、という時もありましたからね。描き上げる時はバーっと出来るんですけど。次は、もう少し時間を掛けずに上げられるようにする、とか。
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- ああ・・・。
- 進野
- やっぱりNowなものをお届けしたいと思いますから、例えば4コマにするとか、描き込みの量を減らすとか。この時はどこまでやっていいのか分からなくて、気が済むまで描き込んでました。そもそも細かく描き込むのが好きだし。
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- 飲み会の料理の皿まで描き込んでるからね。でも、この努力の量を私は愛しています。
- 進野
- 美術科のある高校だったから、それが役に立っていると思います。楽しかったらいいかなあと思って。
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- 私が言える事じゃないですけど、この手間が、質量ともに伝わってくる稽古場レポートなんて、唯一無二だと思います。これだけで、観に来る動機になってしまうと思うんですよ。
橋渡しになるかなあ
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- お客さんに何を期待しますか?
- 進野
- 観に来てもらって、良かったよと思ってもらいたいです。周りにも言ってもらったら、それでお客さん増えてもっと大きな劇場で見れますよ、と。応援してもらえたらなと思います。
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- 良いお客さんに出会えるといいですね。縁があっての事ですから。音楽劇という事なら、例えば最後に盛り上がって終わるとしたら、そこで意識が混ざり合うみたいな事が自然に起こる訳ですからね。最高に盛り上がった回は、特に。
- 進野
- 僕は常に舞台の裏にいるので、お客さんの顔を見た事はないんです。どんな顔で見ているのか、分からなくて。お客さんとのつながりはあんまり無いから・・・
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- 稽古場レポート漫画で充分橋渡しをしていると思いますよ。
- 進野
- そうだと嬉しいです。そこから繋げられたらいいなあと思っています。
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- この生原稿自体に力があるから、それを展示したら観に行く理由が出来てしまうと思うんですよ。漫画って、最初の1ページが上手く出来ていたらそれ以降読むじゃないですか。
- 進野
- ありがとうございます。もちろん、気軽に読んでもらいたいです。普通の漫画みたいに自由に割ると硬いかな、と思って、単純な6コマ割にしました。雑誌の広告にあるような漫画みたいに気軽に読んでもらいですね。
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- 気軽に、ですね。
- 進野
- 毎回やっぱり、ネームを作ってOKを取ってから描き上げるので。僕だけのものじゃないから、どうしてもそこは。客演の方もいますし、
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- ああ、そうですよね!特に今回は。
- 進野
- でも、その分多くの人の目に触れられると思うんです。頑張ります。
外の世界へ
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 進野
- 僕自身の漫画を確立して描けるようになるのが大事やなと思っています。こういう絵が好きなんです。自分が何を描きたいのか、というのが段々分かってきて。いま、同じ漫画のネームを3回ぐらい描き直していて。
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- それはどんな漫画?
- 進野
- どストレートな作品にしようと思っていて。自分の為ではなく、誰かのために頑張れる人。人が変わる瞬間、やっぱり目の色が変わるんですよ。心臓の鼓動が聞こえるというか、そんな成長の瞬間。それを描きたいと思います。出来れば早く描き上げたいです。
llenoの無地のノート
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- 今日はお話が伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
- 進野
- ありがとうございます。見ていいですか。
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- もちろんです。
- 進野
- (開ける)あ、ノート。僕、無地のノート大好きなんです。罫線のあるノートよりも、無地のものばっかり買っています。表紙がこんなに綺麗だと、使うのに躊躇しますね。
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- ガンガン使って下さい。
- 進野
- ありがとうございます。