演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

岡田 太郎

音響

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ライブの翌日

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。岡田さんは、悪い芝居のメンバーで、音楽をなさっているんですよね。入団は1年程前、役者としてステージに上がられている姿も拝見しました。昨日は劇団とは別で結成しているバンドJamokashiが参加するライブだったそうですね。いかがでしたか?
岡田 
めっちゃ良かったです。その後、朝まで飲んでました。これ、昨日のイベントのチラシです。
__ 
あ、Jamokashiの名前がありますね。
岡田 
その界隈ではそうそうたるメンツの人たちとやれました。刺激的な時間でした。
__ 
ざくっとした聞き方ですけど、Jamokashiではどのような音楽を作られるのでしょうか。
岡田 
レゲエをベースにした、DUBの要素も取り入れた歌ですね。こういう曲です。
__ 
ありがとうございます。
__ 
(ヘッドホンを外す)いい曲ですね!ここでこういう音が来てほしいという気持ちがあって、そしてその期待を裏切らずに乗せてくれる感じがします。それも、予想しないような、ユニークな音で。
岡田 
面白い事はしたいという気持ちはありますね。ギターを使っているんですけど、途中でバイオリンの弓で弾いてアクセントを加えたり。
悪い芝居

2004年12月24日、旗揚げ。メンバー11名。京都を拠点に、東京・大阪と活動の幅を広げつつある若手劇団。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を、刺激的に勢いよく噴出し、それでいてポップに仕立て上げる中毒性の高い作品を発表している。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)

悪い芝居vol.13『カナヅチ女、夜泳ぐ』

ドラム&ベースが絡み作り出すビートの上でリズムを刻むギターとキーボード。フルート、シンセが遊ぶメロディーに浮かぶヴォーカル!ルーツを独自に解釈し再構築された新しい音楽はJamokashiでしか鳴らせない、彼らにしか響かす事のできないアンサンブル!岡田太郎(Gt./Vo.)楠野遼(Key./Cho.)ボーイミーツマドカ(Fl./Synth./Cho.)クロ(Ba.)井下祥平(Dr.)の様々な分野で活動している5人からなる歌モノ、インスト関係なく、チルアウトにも、ダンスにも、メッセージを伝える為にも、素敵な音をルーツから広めて行くためにも日夜オシャレにアートにROCKなVibesをDigし続けるバンド。それがJamokashi。2011年5月、バンド結成初ライブをいきなり初の自主企画イベントとし東京からRiddimates、京都のAYA OTO WORLDをゲストに迎え大成功に収める。その後も主催イベント”Riddim Jam”にてワンダフルボーイズ、AYA OTO WORLDと共演するなども精力的に活動を続けている。(公式サイトより)

次は僕が伝える番

__ 
岡田さんは、いつごろから音楽を志されているんですか?
岡田 
中学校の頃でした。僕は野球部に入っていたんですけど、最後の試合に負けて。俺たちの夏は終わったみたいな事になって、夏休みが暇になったんです。それで、ギターを始めようと。
__ 
最初は、カッコ良かったから?
岡田 
そうですね、でもスカとかレゲエとか、ジャマイカの音楽を聞き出してからはちょっと違って来ました。スカパンクを聞き出したら、これ気持ちいいなと。そこから自分の好みを掘り出していったんです。まず、2Toneスカが好きになって。で、スカはどこから来たんだろうと調べると、1960年代のジャマイカのバンドがスカを作ったと言われていて、それが今の時代の僕にでもすごく新しいと思えるんですよね。
__ 
Jamokashiでは岡田さんがボーカルもされているんですね。
岡田 
スカは基本的に踊る為の音楽なんですが、同時にメッセージも伝えられるジャンルだと思っているんです。そこが最高にいいんですね。
__ 
確かに、歌詞も、伝える為にはっきりと歌われていますね。
岡田 
歌詞、僕の思っている事をそのまま歌っているんですよね。
__ 
だから、日本語のイントネーションもそのままですね。いじったりしていない。何故でしょうか。
岡田 
僕がある歌を聞いて、おおっと感じた事。次は僕が伝える番だと思っているからですね。
__ 
気持ちを共有する。
岡田 
そうですね。ホンマに音楽を志したのはそう思ったからです・・・

共有

岡田 
高校の頃、留学プログラムで一年間オーストラリアにいたんです。なので、英語で日常会話くらいは出来るんですよ。でも、だからこそ簡単には気持ち自体が伝わらない事が分かったんです。
__ 
日本語同士でも完全には伝わらないでしょうけどね。
岡田 
向こうにギターを持って行ったので、セッションが出来たんです。そこで気づいたんですけど、もし感想や考えを言葉や身振りで伝えても、ああそうで終わっちゃうんですよね。でも音楽だと、それ以上の感動のところまで通じる。例えば、「僕は今楽しいです」と言ったところで、ああそう、で終わるところを、気持ちを音楽に乗せたら共有出来るんですよ。それは凄いなと。音楽をやる度にそういう事が分かってくるんです。これはもう、趣味に留めているのはもったいないなと。
__ 
共有する。
岡田 
僕は1年程前に悪い芝居に入団したのですが 入団前に一度だけ悪い芝居の本公演を観ていて。実はその作品をを観た時もそういう事を感じたんです。
__ 
というと。
岡田 
それまでに学生劇団の芝居は観る機会があったんですけど、例えば客席に座った時。僕が観たときは 周りで、関係者みたいな人の話が聞こえてくるんですよね。あの役者はああだとか、次見に来て下さいよとか。そこにいて、見る前から置いてけぼり感があったんですね。でも、悪い芝居は全然置いてけぼりにされなかった。むしろ、ちゃんと連れて行ってくれた。そのとき 僕もここで表現が出来るのではと思ったんです。

「想像可能な事は全て実現可能である」

岡田 
結局、芝居も音楽も一緒なんですよね。僕も、悪い芝居で音楽と俳優をやらせてもらって。やっぱり、セリフであろうと音楽であろうと、お客さんをどうにかさせたいだけなんですね。感動させたり、涙を流させたり。その上で、自分が思っている事を伝えるんです。これはまた、共有とは別の話なんですけど。それが出来れば、メッセージを伝える方法は音楽でも俳優でも同じだと思うんです。
__ 
伝えるには、どのような力が必要なのでしょうか。
岡田 
これはですね・・・。最近、山崎さんが演技について言っている事なんですけど、「想像可能な事は全て実現可能である」、例えば椅子から全く動かない朗読劇でも、一つ一つの動きにイメージと責任と持てば、もしかしたら雪山を登るような演技をしなくても観客に吹雪を感じさせる事が出来るかもしれない。
__ 
うーん、それは見てみたいですね。
岡田 
そういう情景がビシビシ伝わってくるんですよ。いや、これ、やっぱり僕の言葉に直しているので語弊があるので、直接聞いてみてもらいたいんですけど。

質問 望月 綾乃さんから 岡田 太郎さんへ

__ 
先程インタビューさせて頂いた、ロロの望月綾乃さんから質問です。「冬と夏、どちらが好きですか?」
岡田 
冬ですね。いろんな服が着れるから・・・。
__ 
暑さ寒さでは。
岡田 
どっちかな〜。季節で言うと、秋と冬が好きなんですよね。

踏み入った表現、求められている音楽

__ 
今後、どんな感じで攻めていかれますか?
岡田 
バンドマンとしては―Jamokashiはオリコンに入ったりするようなメジャーなバンドを目指している訳ではないので。かと言って、知る人ぞ知るバンドでもない、色んな人に影響を与えるようなバンドとしてやっていきたいです。僕が影響を受けた音楽のルーツを、誰かに知ってもらえるような。
__ 
なるほど。
岡田 
もちろんそれだけじゃなくて、劇伴音楽でも何でも、楽曲制作を中心にした仕事をどんどん引き受けられたらなと思います。金色の家屋公演2011「団欒シューハーリー」から劇団の音は僕が作っているのですが、悪い芝居の曲を聞いて、それで依頼が来たら嬉しいですね。今のところ、僕が全部作っているので。
__ 
そうなんですね。どのように作るのですか?
岡田 
台本をもらった最初から、頭の中で鳴ってますね。それをスタジオで実際に音にして作曲していくんですが、そこは一人だからこそやりやすいんです。
__ 
なるほど。
岡田 
実は前回の「駄々の塊です」の時も、全部一人で作っていたからこそ、本番に入ってからの調整もかなり自由に対応出来たんです。ほぼ毎日、音源をいじりまわしていました。だからもう、既存の曲を使えなくなってしまいましたね。
__ 
今回の『カナヅチ女、夜泳ぐ』も、音楽でクレジットされていますね。
岡田 
そうなんです。大事に思っているのは、さっきも言ったんですが、やっぱりお客さんを感動させたり、面白がらせる事なんですよね。もし僕らがまずそれをせずに、僕らのやりたい事だけをやっていたら、お客さんは置いてけぼりになってしまう。
__ 
置いてけぼり感。
岡田 
大きく言うと、全てはお客さんの為なんで。そこはわかっています。お客さんを掴まないオナニー演劇やオナニーライブは嫌いなんです。お客さんが求めているものを、そのタイミングで、僕らの感覚を信じたやり方で作り上げる事が僕らの仕事だと思うんです。話はそれますけど、こう見えて、J-POP大好きなんですよ(笑う)。踏み入った表現をしているけれど、求められている音楽も好きです。その辺りの感覚はずっと持ち続けていきたいですね。
__ 
なるほど。しかし、そうした感覚はどんどん更新されていきますね。
岡田 
そうですね。ずっと未来に、唯一無二の表現が生まれたらそれを大事にするとは思います。もちろん、お客さんも大切にします。後悔しないように。
悪い芝居vol.13『カナヅチ女、夜泳ぐ』

公演時期:2012/06/13〜20(大阪)、2012/07/10〜16(東京)。会場:in→dependent theatre 2nd(大阪)、王子小劇場(東京)。

レザーのブレスレット

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
岡田 
ありがとうございます。いつもすごいなと思っていて。
__ 
いえいえ。どうぞ。
岡田 
(開ける)あ、四つ葉のクローバー・・・?
__ 
腕に付ける飾りですね。
(インタビュー終了)