演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

横山 清正

俳優。制作者

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「」会へ参加!

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今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、横山さんはどんな感じでしょうか。
横山 
よろしくお願いします。ここ最近は、12月頭にある笑の内閣さんの東京公演に向けて、稽古の毎日です。それと、京大のNFで玉木青さん率いる「」会の本番があります。今日これから、ですね。
__ 
今日、これからなんですか。
横山 
はい。今日の14時開演なんですよ。エチュード主体の企画を2時間ほど。
月面クロワッサン

2011年、代表の作道雄を中心に活動を開始。演劇作品と映像作品の両方を発表、京都から作品を発信している。メンバーは、11人、平均年齢23歳。演劇・映像作品ともに、サスペンスやファンタジーなど、ジャンルは多岐に渡っているが、基本は群像劇のスタイルである。演劇では、笑えて、かつノスタルジックな物語性を中心とした会話劇を得意とし、vol.6「オレンジのハイウェイ」で、大阪に初進出。映像方面においては、2012年秋のWEBドラマを経て、2013年7月から連続ドラマ「ノスタルジア」をKBS京都にて3ヶ月にわたって製作、放送。地上波進出を果たした。また、「企画外企画劇場 IN 京都」などのバラエティーイベントの主催、WEBラジオの定期配信など、 様々なスタイルを持った活動で、新しいエンターテイメント創作者集団としての地平を開拓している。(公式サイトより)

KYOTO EXPERIMENT 2014 フリンジ企画 オープンエントリー作品 第19次笑の内閣 福島第一原発舞台化計画−黎明編−『超天晴!福島旅行』

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笑の内閣「福島第一原発舞台化計画−黎明編−『超天晴!福島旅行』」、拝見しました。面白かったです。滋賀県の中学校を舞台に、修学旅行に福島を選ぶ教員達の政治抗争劇。そろそろ東京公演が・・・
横山 
ありがとうございます。そうですね。京都と東京では、原発含め東日本大震災の影響や捉え方が違うだろうし、福島の方が観劇にいらっしゃる可能性もずっと高いので、緊張していますね。
__ 
理想的には、福島の人も東京の人も笑ってくれるのがいいんだと思いますけどね。
横山 
はい。とても難しい事とは思うのですが、頑張りたいです。それが福島に関心を持って頂けるきっかけになってくれるようであれば本当に嬉しいです。僕の役柄は旅行代理店の社員で、本筋に絡むというよりは賑やかしが中心なので、コメディリリーフとしての役目を果たせたらと思っています。
笑の内閣

笑の内閣の特徴としてプロレス芝居というものをしています。プロレス芝居とは、その名の通り、芝居中にプロレスを挟んだ芝居です。「芝居っぽいプロレス」をするプロレス団体はあっても、プロレスをする劇団は無い点に着目し、ぜひ京都演劇界内でのプロレス芝居というジャンルを確立したパイオニアになりたいと、06年8月に西部講堂で行われた第4次笑の内閣「白いマットのジャングルに、今日も嵐が吹き荒れる(仮)」を上演しました。会場に実際にリングを組んで、大阪学院大学プロレス研究会さんに指導をしていただいたプロレスを披露し、観客からレスラーに声援拍手が沸き起こり大反響を呼びました。(公式サイトより)(公式サイトより)

KYOTO EXPERIMENT 2014 フリンジ企画 オープンエントリー作品 第19次笑の内閣 福島第一原発舞台化計画−黎明編−『超天晴!福島旅行』

公演時期:2014/10/16〜21(京都)、2014/12/4〜7(東京)。会場:アトリエ劇研(京都)、こまばアゴラ劇場(東京)。

京都に出会い、京都で出会う

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横山さんがお芝居を始めた経緯を教えてください。
横山 
そうですね。小学生の時に学芸会で褒められたのがきっかけだと思います。それで、中学校、高校と演劇部に入って・・・。なんというか、お芝居をやってる人たちと居るのが楽しかったんですよね。そして、高校2年の頃にヨーロッパ企画さんの「サマータイムマシンブルース2005」を生で観劇して、それが凄く面白かったんですよね。漠然と関西に憧れを持っていたこともあって、大学進学を機に札幌から京都にきて、劇団立命芸術劇場に入団して、月面クロワッサンと出会って。
__ 
月面クロワッサンに出会ったのはどんなキッカケが。
横山 
第一回の学生演劇祭ですね。僕はその時脚本、演出として参加していまして。僕らの次に月面クロワッサンが上演するというプログラムの日があったんですけど、終演後、主催の作道が「すいません。横山さんのお芝居を拝見させて頂いたのですが、ちょっと暗いなと思いまして。僕と一緒に前説をして空気を和らげて貰えませんか」と声を掛けられて、作品と作品の合間に前説をやる事になったんですよね。びっくりしました。その流れのまま月面クロワッサンを初めて観劇して、「どっちみち阪急河原町」という作品だったのですが、明るくて突き抜けた素直なお芝居で、本人とのギャップもあって凄く記憶に残っています。
__ 
2011年に横山さんが「バイバイ、セブンワンダー」で客演されていましたね。入団されたのは2013年でしたね。2年ほど、考えられていたと。
横山 
はい。卒業後、就職せず演劇を続けるかどうか悩んでいたこともあって。ただ、作道の演劇を続けるとは、仕事にするというのはどういう事なのか。作家としてだけでなく、プロデューサーとしての発想やバイタリティーに強く惹かれて、入団しました。
__ 
素晴らしい。ベンチャー企業に入ったという事ですね。
横山 
そういうことなんですかね。けども、新しい取り組み方をしているというワクワク感はあります。もちろん僕たち自身も、自分達のやっている事が正しいのかどうかはわからないですけど。
__ 
正しい事を正しいやり方でやったら何も問題はないと思います。
横山 
それが一番難しい事ですけどね(笑う)

自分しか面白くないものかもしれない、というポイントを狙いたい

__ 
月面クロワッサンで、どんな事を発信していきたいですか?
横山 
今はKBS京都さんで深夜ドラマを作らせて頂いているんですけども、何かこう・・・見ている人が、「確かに面白いけども、これは僕しか、私しか面白いと思わないんじゃないの?」みたいな、個人が持っている面白さのツボに届くような、クスッとしてもらえるようなものが出来たらと思います。
__ 
ああ、幅広く面白い感じじゃないんですね。
横山 
うーん、そうですね。幅広く面白いと思ってもらえたらとも思うんですけどもね。
__ 
気軽に見れるけど、深みがあるみたいな。
横山 
はい。そういう風に出来たらなと思っています。

いまでもどう受け止めていいのか分からないあの出来事

__ 
さて、笑の内閣の「福島〜」について。京都公演がひと月前に終わりました。どんな反響がありましたか。
横山 
アンケートを見ると「福島に実際に行ってみようと思った」とか、純粋に興味を持ってくださった方が多くて。「福島に対して何も考えていないじゃないか」という感情的な否定意見はほとんど無かったように思えます。距離が離れているからこそ、そういう引いたところからの意見が多かったのかもしれませんが。
__ 
ご自身としては、福島に対してどんな意見を持つようになりましたか。
横山 
稽古に入る前に今回の座組の方たちと福島に行ってきて、かなり認識が変わりました。放射能による被爆や津波の怖さが、自分の中で凄くリアルになって。町や駅が流されてしまった光景や立ち入り禁止のゲートや誰もいない住宅街。津波や地震の被害と原子力事故による放射能漏れが与えた被害は当たり前だけども違うんだなとか。被災にあった人もそれぞれ違う意識を持ってるだろうし、ましてや被災にあわれた方と僕らとでは、と考えると。
__ 
そうですね。現地にいた人たちとの意識の違いは大きいですよね。
横山 
震災のあったその時間、僕は京都で演劇公演の総括をするミーティングをやっていまして。後輩が携帯で「これちょっと見て下さいよ、こんな事が起こってるらしいですよ」って見せてくれて。現実感が無かったんですよね。どう受け止めたら良いのか分からなくて。その日家に帰ってTVを付けたら砂嵐で、でもネット上からはどんどん情報が入ってきて。悲惨なことが起こっていて。けども、自分の周りが劇的に変わることはなくて。本当によくわからなかったんですよね。でも3年以上経って、実際に現地に行ってみて、自分の中の震災の衝撃や問題意識が形になったというか。
__ 
この間、作演出の高間さんがNHKのラジオに出演されましたよね。その時のtwitterの感想に、「観光地化計画」という副題がどうしても傷ついてしまうという意見がありました。正直それはそうだろうなと思ってしまいますよね。
横山 
ただ、高間さんもラジオで言っていた通り、強い言葉を使う事で興味を引くという。それは手段としてはあると言っていて。
__ 
果たして、被災地としての福島に興味本位で遊びに行っていいのか?という問い。でも、少なくとも、これを演劇で問うのはやっぱり意義があると思うんですよね。ダークツーリズムが今回のテーマですが、理不尽に傷付いた人間に対して、どのように相対するべきなのか。実際にコンタクトして、どんな作用が生まれて、誰が救われたり、あるいは誰かが傷付いてしまうのか? そこは演劇こそが特権的に考えられる領域なんだと思う。直接のコンタクトを主体にしたメディアだから。
横山 
僕自身も今回初めて笑の内閣さんの芝居に出させてもらって、高間さんの考えに触れて。高間さんが最終的にどういう作品にしたいのか、僕もすべて掴んではいないかもしれませんが、今回、この役で呼ばれた役割を果たしたいですね。自分が出ることで、このお芝居がより見やすいものになればと思っています。

質問 芝原 里佳さんから 横山 清正さんへ

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前回インタビューさせていただいた、匿名劇壇の芝原さんから質問を頂いてきております。「五感の内、どれか一つを犠牲にして代わりに一つを特化出来るとしたらどうしますか?」一応、その特化というのは「感度を無限に高められて、情報を無制限に記憶出来て、任意に抑制出来る」にしておきましょうか。
横山 
うーん。味覚をオフにして聴覚を特化します。本当に聞き間違いが多くて・・・。演技する上でも、自分の声がどう届いてるか、完全に把握出来たらとも思いますし。
__ 
ありがとうございます。聴覚か・・・相手の体内の音まで聞こえたら強いですね。医学と組み合わせればガンの早期発見とか出来るかもしれない。ちなみに私は味覚を犠牲にして嗅覚を高めます。かなり自由に対象を選べるし、空間に残った情報だとか、残っていない情報だとかで探偵みたいになれるかもしれない。
横山 
いいですね。
__ 
味覚も嗅覚でカバー出来るし。
横山 
そう考えると、味覚を伸ばすメリット・・・ないかもですね。

面白がってもらいたいんです

__ 
今後、どんな活動をしたいですか?
横山 
うーん・・・周りに面白がってもらえるような役者になりたいなと思います。人前に何故立つかと言うと、楽しんで貰いたいからだし。何かこいつ、見捨てられないな、何考えてるんやろうみたいな、そういう風に思って貰えるような役者になるのが自分の理想なのかなと思っています。映像も勿論ですけども、舞台にずっと立ち続けれるよう頑張りたいと思います。
__ 
なるほど。「くりかえしへこむ」の時の横山さんの演技で面白かったのが、3人のいじめっこがその父親に復讐されそうになりながら辛くも逃げ出して、でもその内一人がやっぱり殺してもらおうと戻ってくるというシーンの、そのヘラヘラした顔ですね。
横山 
ええっ!めっちゃ嬉しいです。
__ 
ちょっと憑き物が落ちた、みたいなあの表情。
横山 
突拍子もない結論かもしれないけど、彼は本気なんですよね。死んだらそれはそれで解放されるし、復讐する側も楽になるし。思い切って明るく、満足したようにやろうと。
__ 
なるほど。ところで、今後やってみたいジャンルはありますか?
横山 
会話劇ですね。今後というか、これからもですね。ただ、ベタな演技というか、演技らしい演技やキャラと向き合ってみたい気持ちはあります。うまく言えないのですが。大学に入って、前田司郎さんとか、岩井秀人 さんの演技体に凄く憧れていたんですよね。生活感の出し方というか、絶妙なラフさというか。ただ、そこから離れて自分なりの演技のリアリティーを見つけたいと思っています。
月面クロワッサンVol.7「くりかえしへこむ/閻魔旅行」

公演時期:2014/9/26~28。会場:人間座スタジオ。

主軸

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今後、どんな感じで攻めていかれますか?
横山 
月面クロワッサンでの活動を主軸にして頑張って行きたいです。月面クロワッサンの企画で一人芝居をやったんですけど、そういう風に自分で発信する企画を持ちながら、周囲とも頑張っていきたいし、出来たら上の世代の方に声をかけて頂けるよう頑張れたらと。自分の技術不足を感じる事が多いので、技術も磨いて、自分にしか出来ない武器をもてるよう、気付けるよう頑張りたいです。

花札

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
横山 
あ、ありがとうございます。ウワサの。
__ 
つまらないものですが。
横山 
開けても宜しいですか。
__ 
もちろん。
横山 
ありがとうございます。開けさせて頂きます。・・・あ、花札ですか?しっかりした奴だ。
__ 
まあ、お正月にでも遊んで頂けたら。
横山 
シーズンですもんね。
(インタビュー終了)