最近どうですか?
TorinGi「捨てる。」
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- 今日は、宜しくお願い致します。
- 池田
- 宜しくお願い致します。
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- 私が拝見したのは、「エビス駅前バー」でのTorinGiのバー公演「捨てる。」でした。とても面白かったです。お疲れ様でした。
- 池田
- ありがとうございます。まさか、いつも読んでいるサイトの人に来て頂けたとは。
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- いえいえ。東京にもご存じの方がいると伺って私もびっくりしました。
- 池田
- あの、逆に聞いちゃいますけど、ウチを観に来られたのはどういう理由だったんですか?
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- 東京でのバー公演というのに興味があったんですね。あとは、七味まゆ味さんにオススメ公演を聞いたら宣伝メールが転送されてきたので。バー公演って、東京では多いんですか?
- 池田
- あ、多いんじゃないですか? 荻窪の、名曲喫茶ヴィオロンっていうお店とかは演劇公演多いですよ。そこのマスターが、気に入った人にしか貸さないみたいな。実は僕も、自分ではこれまであまり劇場で芝居した事がないんです。ギャラリーとか、喫茶店とか。
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- あ、そうなんですか。
- 池田
- 話に聞いただけですが、カラオケボックスでやった公演もあったらしいですよ。
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- それは面白そうですね。
劇団ギリギリエリンギ
主宰・池田智哉による一人劇団。2004年結成。
TorinGi「捨てる。」
公演時期:2009年9月19日〜22日。会場:エビス駅前バー。脚本・米内山陽子。演出・池田智哉。
エビス駅前バー
恵比寿駅徒歩3分。通常は音楽ライブなどを行っている。2009年より「feblabo×エビス駅前バープロデュース」という形で演劇公演を行う。
人×場所の組合せ
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- さて、TorinGiの「捨てる。」色々な意味で程よい会話劇というか、非常に見やすい芝居でした。池田さんは、演出をされていたんですよね。
- 池田
- はい。そもそも演出をやろうと思ったのが、いまは活動休止してるんですけどギリギリエリンギという劇団を主宰してて、そこで最初は役者をやっていたんですが、一つ今までと違った事をしてみようと思ってたんです。一つ、やりたい事をやらせてくれと。
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- ええ。
- 池田
- その時は6人の脚本家に同じ場所設定で6本の脚本を書いてもらって、7人の役者に演じて貰うという、トライアスロンみたいな企画をしていたんです。僕が演出で。それを結局、2007年と8年に4回やりました。
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- そこから演出を始めたと。
- 池田
- はい。自分が出会ってきた人や場所を組み合わせる作品作りが凄く面白かったんです。今回の企画も、相性の合う脚本家さんに、いままで知り合った面白い・魅力的な役者さんをお呼びしました。でも、実は稽古期間が10日間しかなくて(笑う)。
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- なるほど。
- 池田
- 初日に読み合わせをして3日目に通しをするという突貫工事で。役者さんには楽しんでもらったみたいで良かったですが。
トライアスロンみたいな企画
劇団ギリギリエリンギAnotherWorksシリーズとして、2007年・2008年で延べ26本の短編を上演。
やっていて一番楽しい、キャスティング
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- 先ほど、「程よい会話劇」と申し上げましたが、行き過ぎない現代口語会話劇、という印象を受けまして。エンターテイメント性を適当に配したというか、バーの雰囲気と凄く調和が取れていたように思います。いとこ達、兄弟、生き別れの親子が、同じバーで入れ替わりに会話するという内容でしたね。舞台が本物のバーというのがまず特色として面白いなと。
- 池田
- 普通の舞台ではない分、会話のやりとりに集中出来る環境だったと思います。小道具も舞台も全部本物なんで。だから、役者はお芝居の周りの「嘘」が少ない分、自分の気持ちの動きだけでお客さんの心を動かす事が出来たと思います。気持ちの持って行き方とか、お互いの距離の詰め方とか。
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- なるほど。伺いたいのですが、演出をする際に何か気を配られた事はありますか?
- 池田
- 台本の言葉と役者の言語感覚の相性ですね。体に乗っかった時にムリがない形になるよう注意していて、どうしてもそれを言っているように見えない役者がイヤなんです。そこは気を使っていました。
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- つまり、言えてないセリフ。
- 池田
- 言わされちゃってるセリフを見ると、そうじゃないだろう、と思っちゃうんですよね。脚本と自分のイメージにそぐわない役者は呼ばないんです。逆に言うと、そうして選んだ役者さんは稽古場ですんなりと自分のものにしてくれるように思います。プロデュースをやっていて面白いなと思う瞬間ですね。
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- 配役の妙ですね。
- 池田
- 誰かが書いた脚本と、自分が選んだ役者が、化学反応を起こしてくれると嬉しいです。今回に関してはトリコ劇場の米内山さんとプロットの段階から詰められたんで、かなり良いイメージでできました。キャスティングは、やっていて一番楽しい作業ですね。
トリコ劇場
2003年結成。主宰・米内山陽子氏。
深夜番組のような・・・
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- 今回の「捨てる。」。3組の家族・親戚の人間模様をあまり飾らない会話で描いたお話だったと思います。おかしさをベースに、少し切ない色もあったりで。池田さんは、お客さんにどう思って貰いたかったのですか?
- 池田
- 実は、今回の本の2本目の芝居で「弟を実家に帰らせて家業を手伝わせ、自分は東京に住みたい姉」がケンカしてたんですけど。僕、あれと全く同じ会話をしているんですよ(笑う)。実家で。今やってる仕事は実家じゃ出来ないのか、と。
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- なるほど。
- 池田
- そういうシーンを見て貰って、「ああ、知ってるなこの会話」って思って貰いたかったんですよね。実体験と重ねて共感してもらえればと。面白かったのは、若い方よりも比較的年配のお客さんからの反応が良かったんですね。
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- 年配の方は、「帰ってこい」というセリフを言った事があり、かつて言われた事もあると。
- 池田
- そういう体験が重なったんでしょうか。僕はお店のバーテンダーの役で。カウンターの中から、舞台と客席をニヤニヤしながら見比べてました(笑う)。
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- さらに言うと全体的に、こじんまりとしたというか、ひっそりと面白い企画でしたね。
- 池田
- そうですね。沢山のお客さんに見て貰いたいというのと同時に、深夜番組のようにやりたいとも思っているんです。箱庭みたいな形で芝居が出来るのが幸せだと思っていて。今回のバーみたいな、ミニマムな中での近い距離感でされる会話が面白いと思っているんです。
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- 深夜番組。
- 池田
- TV局の若手のディレクターが、予算の無い中で作る、深夜番組。余計な演出とかがなくて、見せたいものだけ見せる、あの雰囲気が好きで。僕、基本一人なんで(笑う)、あんまり予算はないかもしれないけど、自分が自信とリアリティを持って面白いと言えるものを作ろうと思います。
こりっち舞台芸術!
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- 東京の小劇場の現況について教えて頂けないでしょうか。
- 池田
- 僕でいいですか(笑う)。劇場の数が多いですし、ジャンル分けもけっこうちゃんとあって、お客さんの選択の幅はかなり広いと思います。ネットで調べれば色々出てきますし。
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- 劇場が多い。
- 池田
- 選択の幅が広いのはいいんですが、それで逆に密度が下がるというのもありますね。もちろん、濃い部分もあって、例えばこりっち舞台芸術!の上位にいる劇団はどれもちゃんと実力や人気があると思いますね。
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- そこでフィルタリングがされていると。
- 池田
- まあ、そういうのがある気はします。
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- なるほど。このシルバーウィークで私は8本程度芝居を見たんですが、確かにどれもこりっち上位でした。と言う事は、そうでない舞台も見ておくべきだったのかな。
- 池田
- いや、それでいいんじゃないですか? 一つのパラメーターになっていると思いますよ。こりっちで評価されて勢いを得る団体もいますし。お客さんのネット上のクチコミで、初日の倍のお客さんが来る事もありますし。健全な形だと思いますけどね。
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- 初動が遅いのに、後半は全然違うと。
- 池田
- ある程度の評価を見てから動いているお客さんが増えている気がします。こりっちの場合は数値化されているので、明確なんですよね。
これからの小劇場についてまじめに考える会
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- 今回、やって良かった事はなんでしょうか。
- 池田
- 演出家としては、短い稽古期間でもポジティブに動いてくれる役者に巡り合えた事ですね。やってて面白かったですし。短い時間を上手くコントロールする事が出来ました。
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- これがまずかったというのは。
- 池田
- シルバーウィークに負けたという部分ですかね(笑う)。動員面でしんどかったというのはあります。これは小劇場全体の問題だと思うんですが、お客さんが観劇に使うお金を別の事に使い始めてるんですよ。月に4本見ていた人が2本しか見なくなってる気がするんですよ。
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- まあ、真っ先に切り捨てられる部分ですからね。
- 池田
- 全体的にお客さんが離れつつあると思います。
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- そういった問題に対して、具体的にどうしたらいいのでしょうか。
- 池田
- 単純に、クオリティを高める事以外ないと思います。面白いものを作る。それが公演の形態や、作品の内容や、色々あると思うんですけど。チケットを買う動機をもっともっと刺激していかなくてはならないと思うんですけど。
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- 動機付けですか。
- 池田
- これを見たいと思ってもらうにはどこまで持っていかなくてはならないか、と。こうすればお客さんが入る、みたいな方法はないので。
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- 全体がもっと戦略的にならなくては、小劇場に来やすい環境は作れない、んでしょうね。
- 池田
- 実は今年の6月の頭に、「これからの小劇場についてまじめに考える会」というイベントを企画したんですよ。僕が企画・構成して、当日の司会進行もさせてもらったんです。延べ3日間やったんですが、演出家や制作者、劇場主や役者さんも来て。プロジェクタで映像を出して、これから自分達がどうしていかなくてはならないかという事を話し合ったんです。
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- どうなったんですか?
- 池田
- まとまった答えは出なかったです。一日ごとにばらばらな意見で一致して・・・いや、一致しなかったんですけど(笑う)。結局、僕らにお金がない状態でどのようにお客さんを舞台に集めるにはどうすればいいのか、そもそも興味のない人に舞台に来て貰う必要があるのか、もっと考えよう!という(笑う)。
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- 面白そうですね。どのくらい集まったんですか?
- 池田
- 3日間で延べ40人くらいです。演出家が集まった時は、自分がどのような世界を作りたいのか、から始まって「演劇に観客は果たして必要なのか」という話に戻って、半分ケンカになっちゃってました。凄いなと。面白かったです。
質問 三浦 直之さんから 池田 智哉さんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、劇団ロロの三浦さんから質問を頂いてきています。
- 池田
- あ、ロロ。
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- ご存じですか。
- 池田
- 一度、15minutes madeという、ショーケースで見た事があります。舞台上でペンキを掛けあってました。素舞台から役者がどんどんドロドロになっていくという・・・。面白かったです。
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- ああ、ちょっと面白さが分からないですね・・・。
- 池田
- いや、言葉ではなかなか説明出来ないです。あれは劇場で見ないと。
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- なるほど。「どんなお芝居が好きですか?」
- 池田
- そこにいる人間が見える芝居が好きですね。キャラクターだったり、人間関係だったり、感情だったり。
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- 今回の「捨てる。」も。
- 池田
- そうですね。好きな事をやらせてもらったので。楽しかったです。
劇団ロロ
2009年結成。主宰・三浦直之氏。脚本・演出をつとめる三浦直之が第一回作品『家族のこと、その他のたくさんのこと』で王子小劇場「筆に覚えあり戯曲募集」“史上初”の受賞を果たし、結成。物語への愛情と敬意を込めつつ、演劇で遊びまくる。(公式サイトより)
15minutes made
Mrs.fictions主催。毎回6〜7団体が15分の作品を持って参加する。
出会いの神様
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- さて、今後池田さんはどのように攻めていかれますか。
- 池田
- 常に面白い事をやろうかなというだけですね。そういう事をやらせてくれる空間と、ノッて来てくれる人達が沢山いてくれるみたいなので。そういう人たちを組み合わせてリミックスして、面白い事を生み出して行きたいと思います。
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- リミックスですか。
- 池田
- 何よりも、そういう新しい面白さを自分が楽しみにしているのもあります。一つ信じてるのが、自分には出会いの神様がついてると思っていて。変な宗教じゃないですけど(笑う)。本当にいい縁がずっと続いていて。作家さんだったり役者さんだったり、スタッフさんだったり。それをどう生かしていこうかと思います。
ノートブック
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- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。
- 池田
- あ、本当に頂けるんですね。
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- どうぞ。
- 池田
- 開けてもいいんですか?
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- もちろん。
- 池田
- あ、メモ帳ですか?
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- はい。
- 池田
- すげえ。こういうデザインモノ好きなんですよ。自慢します。