Hauptbahnhof Gleis8『ショー』
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- 今日はどうぞよろしくお願いします。
- 本間
- よろしくお願いします。5年ぶりですね。
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- 5年ぶり2回目ですね。
- 本間
- 懐かしいです。とっても嬉しいです。
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- こちらこそ。本間さんは最近どんな感じでしょうか。
- 本間
- 最近は、Hauptbahnhofの作品の演出をしていて、その稽古をしています。2月は大原さんの舞台の演出助手で、3月には、大阪でワークショップの講師の発表公演がインディペンデント1stであって。その翌日から稽古でした。バタバタしていました。もうほんとに演劇まっ最中ですね。あ、自分じゃない人の台本を演出するのが久々です。
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- 脚本を書くわけじゃないですから、そのあたりの作業って根本的に違う?
- 本間
- 違いますね。今回は、金田一さんが僕に演出をしてほしい、と。田中遊さんと僕の稽古の都合で稽古時間は1か月しかなかったんです。その間はしっかり稽古をしよう、という話だったんですけど、台本が上がるのが・・・つい本日、脚本が上がりました。
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- 強行軍ですね。4月の13日から16日に、アトリエ劇研ですね。意気込みを教えてください。
- 本間
- でも面白いですよ。金田一さんが京都に来て、Scaleをやって和え物地獄変をやって、それでこの作品で一区切りなんですよ。アトリエ劇研もじきに閉鎖。そのタイミングで「バックステージもの」をやりたいとおっしゃって。実はこの作品、本当に金田一さんが書いたのかというぐらい生々しすぎるんです。これでいいのかなと思いながら、今日の稽古を見ていました。「もう書けない!」って電話してきたんですよ。金田一さん。
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- 電話が!
- 本間
- 「病む」って言ってくるんですよ。それくらい苦しかったみたいで。金田一さんはやっぱり野田秀樹さんの演出助手をしていたというのもあるのか、直接じゃなくて何かに例えるようなおとぎ話のようなセリフを書きたいと言ってたんですけど、今まさに自分のことを書いてるかのような直接性の台本が仕上がってきました。面白くないと思うんだ、って添えて台本送ってくるんですけど、僕はそれをとっても面白いと思っていて。どうなるやら。面白くなると思うんですけど、演劇人にとってはすごく苦しい作品になるだろうなという予感がしていますね。
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- 苦しい。
- 本間
- 苦しいと思います。
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- 「苦労がわかってしまう」?
- 本間
- いやそういうことじゃなくて、本当に自分は芝居をしていていいのかな、みたいな。そうですね、どうなるのかな。僕はとにかく生々しいのが好きなんですけど、他の方はそれを見てどう思うのか・・・それはやってみないとわからない。
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- それは残酷な言い方をすると、アトリエ劇研の最後の4月にとてもふさわしいのかもしれませんね。
- 本間
- そうですね。いや、辛いですよ。
ドキドキぼーいず
人々はテレビやスマートフォンのニュース、SNSで無造作に流れていく情報にどれだけ『知った気』でいるだろうか。 我々ドキドキぼーいずは、今を生きる若者の身体・言葉・意識を解離させる演出技法により、作品を創作している。人と社会の関わりを報道する者、それを眺める『第4者』の存在を、演出家・本間広大は最も表現したい事であり、創作において重要視している。代表の本間と同世代である1990年代以降に生まれた若者たちに、「この国に今生きている」という意識が芽生えるきっかけになればと思う。それが「私たちが信じる演劇」であり、エンターテインメント(娯楽)を超える第一歩である。 2013年、代表である本間広大の学生卒業を機に再旗揚げ。京都を拠点に活動する若手演劇チーム。メンバーは8名で構成されており、俳優・演出家の他、音響・照明・映像のスタッフが専属的に在籍しており、俳優と演出家で構成される日本の劇団には珍しい形態をとっている。 2015年よりアトリエ劇研創造サポートカンパニーに選出される。受賞歴として、'14.02 第35回kyoto演劇フェスティバル 実行委員長特別賞受賞(奨励賞) '15.10 第6回せんがわ劇場演劇コンクールグランプリ並びに演出賞(演出:本間広大)(公式サイトより)
Hauptbahnhof Gleis8『ショー』
期間:2017/04/13 (木) ~ 2017/04/16 (日) 劇場: アトリエ劇研 出演:田中遊(正直者の会)、金田一央紀、南條未基、諏訪七海 脚本:金田一央紀 演出:本間広大(ドキドキぼーいず) 料金:2,300円 ~ 3,300円 【発売日】2017/03/01 一般前売2800円/一般当日3300円 学生前売2300円/学生当日2800円 (学生券は要証明書/税込/全席自由) タイムテーブル:4月13日(木)19:00★村上慎太郎(夕暮れ社 弱男ユニット) 4月14日(金)14:00 / 19:00★長谷川寧(冨士山アネット) 4月15日(土)14:00 / 19:00★田辺剛(下鴨車窓) 4月16日(日)13:00 / 17:00 ★のついている回には上記のゲストをお呼びしてアフタートークを行います Hauptbahnhofの活動は京都ではこれが一区切り!演劇を作るとはどういうことか?ひとまずの宣言です。 【あらすじ】 私が稽古場の掃除をしていると、見知らぬ人たちが芝居の稽古をし始めた。 彼らはとある賞を取るために、日夜ここで稽古をしているという。 わがもの顔で稽古をする彼らに付き合うことにした。 私も、芝居がなんなのか、知りたかったから。 ★アフタートークを行います。 13日19時 ゲスト村上慎太郎(夕暮れ社 弱男ユニット) 14日19時 ゲスト長谷川寧(冨士山アネット) 15日19時 ゲスト田辺剛(下鴨車窓) 作・演出:金田一央紀 舞台監督:釈迦谷智 照明:真田貴吉 音響:北島淳 スタイリング:村上街子 宣伝美術:サカイシヤスシ(LaNTA Design) Web製作:太田家世 企画・製作:Hauptbahnhof
ドキドキぼーいず♯07「生きてるものはいないのか」
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- ドキドキぼーいず♯07「生きてるものはいないのか」ですね。とても楽しみです。まず、この本を選んだ理由と、経緯を教えてください。
- 本間
- ありがとうございます。学生時代に戯曲を読む習慣をつけようと思って。岸田國士戯曲賞の作品から読み始めたんですよ。それで、それまでは戯曲って読んでも大抵は面白くないと思ってたんです。どうやって演出をしていくのか考えることに面白さがあると思っていて。でもこの作品は読んだ時点で面白いと思っちゃって。いつかやりたいと思ってたけど、演出の違いがあるかどうかわからない、とも思っていて。でも劇研の最後のタイミングだし、今までにずっとやりたかったものを最後にはやりたかった。それと、あの戯曲って端的には全員が死ぬ話なんですけど。それがとにかく醍醐味で。まず僕は、死ぬところから始めないともうたぶん京都の演劇は立ち直らないじゃないかという危機感があって。
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- というと。
- 本間
- アトリエ劇研がなくなるし、アートコンプレックスも使えなくなってるし、イサンも閉鎖したし。また新しい劇場の話もあるけれども、劇場の問題というよりかは、僕達演劇人がどうやって、この京都という土地で小劇場やって行くのか、本当にもう一度、絶望しながらでも考えていかないといけないと。あればできちゃうと言う演劇は、僕はもう、終わらないといけないと思っていて。まあ絶対続けるんですけど、1回、節目として。
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- 一度、節目を付けたいと。
- 本間
- 自分が書いた本ではなく、人の書いた本を、面白いキャストで、劇研という場所で、ちゃんと挑んでちゃんと作りたい。
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- 面白いものを、「残す」。と言うとこれから去るみたいですね。「生きてるものはいないのか」は死を扱ったコメディ。そして、次々に登場人物が死亡していきます。最後には全員死亡する。
- 本間
- そうですね。上演を見る人にとっては、京都の俳優が全員死んだ、みたいな構図が完成するんですよね。笑えるようにつくりたいんですけど、笑ってちゃいかんわ、と。今は話し合うための場がなさすぎると思うんですよね、アーティスト同士が。社会にどうアウトプットするかじゃなくて、まず演劇という土台をどう立ち上げるのか、どう信じて疑っていくのか、もう1回ゼロにして考えようという、機会が欲しいんですよね。
アトリエ劇研究創造サポートカンパニー シーズンプログラム2017 ドキドキぼーいず♯07 「生きてるものはいないのか」
劇場:アトリエ劇研 出演:浅野芙実、ヰトウホノカ、佐藤和駿、松岡咲子(以上ドキドキぼーいず)、FOペレイラ宏一朗(プロトテアトル)、大石達起(INSITU)、ガトータケヒロ、川上唯、黒木正浩(ヨーロッパ企画)、黒木陽子(劇団衛星/ユニット美人)、勝二繁(日本海/およそ三十世帯)、菅一馬、西川昂汰、西村貴治、葛井よう子、藤原美保(ソノノチ)、望月モチ子(十中連合)、諸江翔大朗(ARCHIVESPAY) 脚本:前田司郎(五反田団) 演出:本間広大 料金:1,800円 ~ 3,000円 【発売日】2017/04/14 ・一般 前売 2,500円、当日 3,000円 ・U-Honma(27歳以下) 前売 2,000円、当日 2,500円 ・学生 前売 1,800円、当日 2,300円 タイムテーブル: 2017年 6月7日[水]19:00~☆ 6月8日[木]19:00~◎ 6月9日[金]15:00~◎/19:00~◎ 6月10日[土]14::00~/18:00~◎ 6月11日[日]11:00~/15:00~★ (全8ステージ) ☆アフターイベント「KANPAI」 ★アフターイベント「IPPON」 ◎アフターイベントあり 説明:「死んではいないんじゃない?」 「もっと真剣に考えてよ」 「知らないけど、みんな死ぬんでしょ」 「僕たち死んじゃうんだろ」 「、、、え、でも、最悪アメリカ人が助けに来てくれるから」 あやしい都市伝説がささやかれる大学病院で、ケータイ片手に次々と、若者たちが逝く―。 とぼけた「死に方」が追究されまくる脱力系不条理劇。第52回岸田國士戯曲賞受賞作品。 ------------------ 最近、死にたくないと、よく祈るようになった。神様に対してでは無く、人間に対して。 ずっと死にたいと思っていたのに、今は生きてみたい。だから祈ることにした。 なのに、手が合わせられない。合わせた瞬間に自分が満足してしまいそうだからだ。 独りよがりにならないために、演劇を、つまりは人間を信じて、祈るように創作しよう。 それは、劇場でしか完成しない「おもい」である。どんな観客と「おもい」を共有出来るのだろうか。 集まろう、生死の物語のもとに。 ーーーーーーーーーーーーー本間広大 スタッフ:照明:鄒樹菁 音響:島崎健史 映像:坂根隆介 (以上、ドキドキぼーいず) 舞台監督:稲荷(十中連合) 演出助手:高嶋Q太 宣伝美術:清水俊洋 制作:渡邉裕史 ■お問合せ ドキドキぼーいず mail :dokidokiboys@gmail.com twitter :@DokiDokiBoys 主催:ドキドキぼーいず 共催:アトリエ劇研 京都芸術センター制作支援事業
死んでしまうんじゃないか
- 本間
- 表現は必ずしも演劇じゃなくていいじゃないかと、もちろん演劇が一番いいと思いますよ、僕は。でもtwitterでつぶやくことと、フェイスブックに投稿することと、あなたが本を書いてあなたが舞台に立つこと、何が違うのか。当の僕らが説明できていないと思うんです。それはすごくわかってるんですけど、それを言葉にできないと続けられない。その結果がアトリエ劇研の閉鎖だと思うんです。言葉にする術をみんなで信じて、演劇を信じようとするのがアウトリーチたと思うんです。
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- ええ。
- 本間
- 何を提唱しても、ちっちゃいロジックになってしまうと思うんですよ。福祉を扱った演劇を作っても、ヤフーニュースのトピックの一つぐらいにしかならないですよ。小劇場は特に、単位が小さいからそうなりがちだし、でも、それは演劇だからすごい、演劇だから信じられる、ということをもっと肥大化しないと、社会問題を取り扱える土台になっていないんですよ。
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- まるで一部門としてしか機能できてないですね
- 本間
- そうですよ。このままだと、本当の演劇の面白さが見出されていない、死んでしまうんじゃないかと思うんですよね。演劇を信じるために、前田さんの本を一度やりたいと思っています。
笑わせたい、そして
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- どんな上演にしたいですか。
- 本間
- この間読み合わせを全員でやったんですが、その時点で既に面白かったんですよ。面白いのが前提で稽古を始めるのは初めてです。
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- 素晴らしい。
- 本間
- それを面白くするって、一体どういうことなのかなと思って。コメディなんですけど人の死を扱ってるんです。それってどういうことなのかなと思って。初演は2007年で、人の死をフラットに見ていたんじゃないか。読み合わせの時、登場人物の一人目と二人目が死んだ時に、「うっ」となったんですよ。それは完全に震災の影響があったんじゃないかと思っていて。死をどう扱うのか、難しいなと思っています。笑える上演にしようと思ってはいるんです。お客さんには最後まで笑い続けてもらって、その後に、笑っていたらあかんかったな、とそう思って貰わないと、自分たちの生活にある生きることと死ぬことに気付けない。だからこそ、まず、笑えるように作りたいと思ってます。
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- 台本が既に面白いですよね。
- 本間
- そうなんですよ。このところ、音を大事にしようと思っていて。この一、二年、演出家として、役者の動線と、体の動きの保証はずっとしてきて。自分の本でも勿論音のことは意識していて。Hauptbahnhofの現場もそうだし。利賀のコンクールを受けた時も。音を大事にしないと言葉は生きないんだなと。見る、ことが出来て、加えて、耳に届く芝居を作らないといけないんじゃないかと。
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- 音というのは、声のトーンとかテンポとかの話ですか?
- 本間
- 言葉ですね。BGMとかのことではなくて、もちろん空間における沈黙もそうですけど。もっと言葉は力を持つはずなんだ、と、いろんなニュースを見ても思うんですよね。演劇が言葉の芸術だということをはっきりさせて行かないといけない。シェイクスピアの時代って、まず音を芸術としていた時代だったじゃないですか。あれをもう1回しないといけない。これだけ言葉が溢れている時代、幼稚な言葉も難し過ぎる言葉も溢れている。その中で劇場は、俳優の言葉が直接耳に届く場所なんです。そうはなっていないという印象が今はあるんです。届いてはいるんですけど、届いたふりをしている音が俳優を支配してると言うか・・・もっと、耳に届く台詞を、発する方法はあるはずなんです。今は模索中です。見える先の、予測し得たものを超えて行きたい、と思っています。見えた上で、聞かせることが必要なんですよね。予測を超えることが、言葉じゃないときっとできない。いやあ、どうしたらいいんでしょうね。
生き死に
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- 逆に、ドキドキぼーいずが「生きてるものはいないのか」をやる理由は?
- 本間
- 僕が面白いと思ったから、ですよね。去年、利賀演劇人コンクールで敗退したこととか、なんやかんや色々あって、すごく落ち込んでしまったんですよ、副代表の松岡もそれと同じぐらい落ち込んでて。ちょうどそのタイミングで、2017年度の劇研のラインナップの話が劇場さんから来ていて、「いやぁ、もうやらんでええんちゃう」みたいな・・・多分、演劇これから続けていくなら、僕ら勉強しないと、勝てないよと。舞台をつくるのが怖くなっちゃったんですね。でも劇研最後だし、とりあえず出るかとはなって、まぁだから、台本を書くのは絶対NG。
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- そこで「生きてるものはいないのか」。
- 本間
- たまたまそのタイミングで、僕が思い出したのか本を手に取ったのか。・・・「生きてるものはいないのか」と、僕たち自身が自分に問いたいんですよ。できれば自分で本を書きたかったんですけど、俺、本当に舞台をつくれるのか?と、問い直さないといけないと。ちょっと驕ってたんじゃないかな、と。もっともっと純粋に演劇を信じないといけない。
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- なるほど。
- 本間
- ドキドキぼーいずは、この公演を機にだいたい2年ぐらい本公演を打たないことになって。その間ぼくが本を書いたり、ショーケースに出したりとかはあると思うんですけど、2年の間、離れようと。演劇を離れる為ではなく、続けるために離れると言うか。劇研がなくなる、でも大丈夫、新しい劇場を作る、じゃあそこに次は行こう、みたいに簡単にしちゃいけないんだと思うんです。ウチらは公演を打ちすぎている。1年に一本ですらやりすぎなのかもしれない、と思うようになったんですよね。
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- なるほどね。
- 本間
- 自分の演劇を面白くするため、本を書かないという選択をしました。書きたいものはありますが、時間がない、2年くれ、みたいな。今回に関しては、とにかく、僕が、本当にわがままを言いました。今までずっと、脚本も含めて劇団員と話し合って決めてきましたけど。
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- 2年の休止。
- 本間
- 僕がそうしないと納得できなかっただけです。
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- これからしばらくの間、ご自身を信じることにしたと。
- 本間
- 社会に対して演劇は何ができるか、ということを、やり続ける形ではなくて、一回、上演という形式から離れることで考えてみようと。本公演ってすごくエネルギーを必要とするんですが、その体力を別なことに使ってみようと。
- __
- なるほど。
- 本間
- 実は4月から大学院生になるんですよ。社会学部に入ることになったんです。感情表現を研究しようと思っています。演劇という表現を使う意義について、演劇を信じてるからこそ、簡単に演劇を使ってはいかん、と。僕らがつながるために演劇をやっちゃいかんと思う。抽象的なヒリヒリとした事しか言えないですけど。
痛さを越えて・・・
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- 少し前のことなんですが、「じゅんすいなカタチ」 。大変面白かったです。俳優の演技の身体性が非常に興味深かったんですよ。薄暗く折り重なったサブテキストに左右された身体が、その感情を隠さずにしゃべっている。露悪的な身体が、作品自体に非常に貢献していたなあと思っています。それを見ている観客としても、リアルな体験だったと思うんですよ。
- 本間
- 「じゅんすいなカタチ」が、演出家としてずっとやりたかったことだったと思うんですよ。そういう作品が書けたし、そういう演出ができた。何ですかね、たかだか1年でも色々な人と触れるようになって、色々考えも変わりました。
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- というと。
- 本間
- ちょうど一年前までは、暴力的な言葉を使っただけですごくリアルに感じたんですよ。この間も美容師の人がスタバの話をしていて。歩きながら甘いものを食べるなんて変じゃないですか、と言ってて。その人は、「コーヒーは私座って飲みたい。甘いものを飲む時は歩きながら飲む」と。「座っている時に抹茶濃っ」ってなりたくないじゃないですか。そのリアリティ何なんだろうと思って。その「抹茶濃っ」は、歩きながらだったらごまかせるということなのかなと。すみません、凄い分かりにくい話しちゃいましたね。きっとみんな、子供みたいな言動を見た瞬間にリアリティを感じるんですよね。退屈そうに指をいじっていたりとか、カップルが大きい声を出して喧嘩している瞬間とか。僕らは日常でも気づかないぐらいのレベルでも思っていて。仮にそれを、言える状況だったらどうなるのかな。その環境を与えてみて、役者はもうとにかくサブテキストしか意識しない状態。いやあもう、言葉はペラッペラなんですよ。だけどそれはとても重たいなあ、と。ナチュラルとリアリティは違うんです。簡単に言うと、ナチュラルなものに潜んでいる本物、つまり感情を設定してしまえばリアリティは作れると思ったんです。すると、観客に痛いと思わせることができる。でも、最近は痛いと思わせるだけじゃいかんと思っています。痛い、はタイミングである、とか、実際に殴らなくても痛いと思わせる。そうするために、直接的な暴力は用いずに言葉の暴力を使っていた。
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- 実際痛かったですからね。
- 本間
- 痛めつけてやろうと思って作ってましたからね。でももう、痛いのはいいや、この一年を経てそう思いました。思った以上に観客の反応が良かったですね。僕はこれまで、ずっと同世代に向けて作ってたんですが、あの作品を受けて上の年代の方が「(若い世代に)そんなことを思わせてしまってごめんね」って終演後のアンケートで書いてはった人がいて。違うんです、と。ひとつにしか見えないようには作りたくなかった、一つを提示することは可能ですが、そんな簡単なものではないし、求められてもいない。「じゃあこうですか」と二手三手配る作品であるべきなのかなと思います。今僕が「じゅんすいなカタチ」を観たら、「面白いけど・・・」と称賛はしきらない評価をすることになるんじゃないかなぁ。
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- お客さんに痛みを与えることで、その先に一体何があるのか、を考えたいということ?
- 本間
- なんだか、パッケージしないといけない、と思ってるんです。それはもしかしたら、以前の方が出来ていたのかもしれないと思ったり。演出家の勉強の集大成にはなったと思いますが、もっと順序を付けて観客に与えていこうと思うようになりましたね。
ごめんねの国
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- これから、どんなことがあるといいですか?抽象的な質問ですが。
- 本間
- うーん。子供たちが笑える世界ができればいい。嘘ではなく本当にそう思います。この間、京都の鉄道博物館に行ったら親子連れのお客さんがたくさんいたんです。そこで親同士の喧嘩を見たんですね、お父さんがショーを見るために陣取っていた席を離れただけでお母さんが怒る、座れなくなっただけなんですけどね、立ち見も沢山いたし。そんで、その喧嘩を見たお子さんが「ごめんね」と言ってたんです。一面的な見方だし、昔にもそんなケースはあったと思うんですけど、辛すぎるなと思った。
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- 想像したらちょっと辛いですね。
- 本間
- 今の時代の家庭の築き方、教育の仕方、本当に難しい、誰も教えてくれないし。これからどうなって行けばいんだろう、と思います。一つには、豊かにならないといけないと思うんですよね。「ごめんね」と「ありがとう」を大事にする心を持つしかないと思うんですよ。
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- ああ、そういうこと?
- 本間
- 優しいということではなくて。
神に
- 本間
- 僕の書く台本には「ごめんね」が異様に多いらしいんですよ。
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- 会話を終わらせる台詞ですね。
- 本間
- もっと傷ついたほうがいいと、よく客演してくれているある女優が言うんです。私とあなたは濃い関係なんだからもっと信用してくれていいよとこちらは思うのに、自分の方は無意識に、しかもすぐに「ごめんね」と繰り返してしまっているじゃないって、この間言われました。で、そんな大人の僕をみて、どこかの子供がその真似をして「ごめんね」と言う。ほんで、子供同士がまた真似して「ごめんね」ってね。それは笑えない世界だなと思う。僕たちの世代だけで終わらせたいですね、というか、もうちょっと減らしたい、代わりにありがとうと言えるようでありたい。なんだか変な感じですけど。
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- 教育が異様に肥大化した世界であり、子供の成長と精神のマネジメントが実現した世界。子供がごめんなさいというのは、理想的だし、終わっている世界かもしれない。世界が最初からそうだったら戦争は起きなかったのかもしれないし、「悲しみという感情を持たない」という選択肢が自然に出現するのかもしれない。逆に失楽園ですね。
- 本間
- なんだか最近、すごく宗教のことを考えています。神がいないんですよ、きっと。偉いとかではなく、絶対になりたい。絶対になれば何かが救われる気がする、救える気がする。信頼できる絶対があれば、子供もそんなこと言わなくなるんだろうし。ただ、まぁ、日本は今、宗教に関しては特殊な状況ですけど。
質問 坂本 彩純さんから 本間 広大さんへ
彼がいなくては
- __
- 今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
- 本間
- いやあ、とにかく勉強ですね。演劇のことも人間のことも知らなくちゃいけないし。そして、京都の人みんなに「本間がいなくてはだめだ」と思われないといかんなと。
- __
- それはもうみんな思ってると思いますが。
- 本間
- いや、僕の中でその目標が相当高い設定みたいで。確かにいろんな仕事をもらったりしますけど、そういうレベルではなくて。多分、それじゃあ何も救われない。「本間は若いから頑張っているんだ」ではなく、「必要な事をしているだけだ」と思われたい。僕もそろそろ中堅なんです。
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- ああ・・・
- 本間
- もうちょっと先の話になりますけど、下の世代にアプローチをしてあげたいと思ってます。僕らが上の世代からはしてもらえなかったことは、下の世代を信じてあげることだったんじゃないかな、って。そんな話を大原さんとしました。今は、自分のために作品を作ることに全く興味がありません。もっといろんな人と話をして、いろんな人の価値観を広げて、自分の価値観を広げて、というのを、絶え間なく、しんどいと思わないようにやり続けないといけないです。死ぬまで演劇を続けようと、思ってしまったので。そのために今は走らないで歩こう、と思っています。
折り畳みイス
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- 今日はですね、お話を窺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。
- 本間
- ありがとうございます。大きいですね!(開ける)折りたたみ椅子!いいサイズですね。ありがたいです。
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- 野外か、もしくは稽古場で使うという想定でした。
- 本間
- 稽古場で使うと思います。ありがたいです。良い位置で見れます。最近は桟敷に座って見るのにハマってるんですよ。今日も稽古でふと「観客席にテーブルなんてないやんけ!」って気付いて、前の方にイスを持っていこうと思ったんですがちょっと抵抗があって。
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- なるほど、これなら稽古場で桟敷席が作れますね。