ゴジゲン第9回公演「美しきラビットパンチ」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。現在、ゴジゲンさんは駅前劇場で「美しきラビットパンチ」を上演期間中ですね。大変おもしろかったです。
- 松居
- ありがとうございます。
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- 男だけの芝居でしたね。
- 松居
- 時々やるんですよ。稽古場も全員男、しかも稽古期間中は全員禁欲するんですよね。2、3週間ぐらいずっと何も出来ないので、フラストレーションが溜まっています。
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- なるほど。
- 松居
- 女性が稽古場に来たときは、盛り上がり方が半端じゃないですね。
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- 何を禁じるんですか?
- 松居
- まずお酒がダメですね。今回は高校生の話なので、酒なしで盛り上がれなければダメだと。あえてストレスを全員で一緒に溜めることで団結力が強くなったと思います。いまぐらいが最高潮で、目が血走っています。舞台上ですべて吐き出そうとしています。
ゴジゲン
2006年、慶應義塾大学公認演劇サークル“創像工房 in front of.”において結成されたコメディユニット。2008年4月に正式に独立。主宰の松居大悟が全ての作・演出を手がける。ヨーロッパ企画主宰の上田誠氏が「意気の上がらない人たちがワチャワチャするコメディ」と称するように、不器用にしか生きられない人間達が紡ぎだす軟弱なシチュエーションコメディを上演。(公式サイトより)
ゴジゲン第9回公演「美しきラビットパンチ」
公演時期:2010/09/18〜26。会場:下北沢駅前劇場。
ひっくり返した先の、
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- 拝見していて、後半でそれまで築きあげた物語を全てひっくり返すというのがおもしろかったですね。
- 松居
- はい。
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- 私はそういうのが大好きなんですよ。でも「美しきラビットパンチ」は、最後にひっくり返して「どうだい!」じゃなくて、最後にもう一度本来の話に帰るというのが美しくて良かったですね。
- 松居
- あの展開は、良識の合る方には怒られたんですよ。
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- そうなんですか。
- 松居
- ひっくり返した先のシーンでミュージカルが始まるんですけど、そこで終わっていればきれいにまとまるのに、って。でも、僕が本当にやりたかったのはむしろその先に、果たして物語が待っていてくれるかという事なんです。キチガイじみてるかもしれませんけど。
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- そうそう、ひっくり返した後に本線の物語に戻っていましたね。それも、途中で戻れないぐらいの舞台転換や事件を起こしたのに。それって、ひっくり返す以上のエネルギーがいることなんじゃないかなと思うんですよ。
- 松居
- ありがとうございます。
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- そうした作品作りに挑んだのは何故でしょうか。
- 松居
- 作品がどうだとか、感情移入できたかとか、そういうのってそれほど重要なのかなって思っていて。それよりは、感じてもらえる事の方がうれしいんです。今回の作品では生命エネルギーを描きたかったんです。常識だとか生死だとか、そんな当たり前のものを楽々飛び越しちゃうようなものに近づきたかったんですよね。目の前に起きているものが、与えられた真実なんだよって。今回の最後のシーンとか、わかんないけど泣けましたって言ってもらえるとやってよかったなと思いますね。
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- 男性のキャスト7人が、最後は後ろ姿で泣くんですよね。
- 松居
- 荒野と夕焼けの中で、泣くんですよね。生きているって素晴らしいじゃないかと、僕らなりの生命賛歌でした。
神聖なスポーツ。だからこそ
- 松居
- アフタートークで聞かれてびっくりしたのが、何でウサギの着ぐるみが出てくるんですか?って。
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- そういえば、タイトルが「美しきラビットパンチ」。そうか、デタラメで出した訳じゃないんですね。
- 松居
- 一応僕の中では理由があって。そもそもなんでボクシングにしたかというと、本当にストイックなスポーツなんです、ボクシング。野球やサッカーみたいにバカにできない、神聖なスポーツ。だからこそバカにしようと思いました。色々調べると、ラビットパンチという言葉があったんです。
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- 相手が後ろを向いた瞬間を狙う、反則ですね。
- 松居
- ラビットって、つまりウサギ。ウサギって一匹だと寂しくて死んじゃう動物ですね。で、あの部室にでてくるボクシング部員も一人だと本当の糞野郎で。でも、寄り添いあったらすごいエネルギーになるんです。
本当の糞野郎
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- 本当の糞野郎。なるほど、前半の方は書き割りに等しいようなボクシング部員たちが、部の中心にいる熱いやつらを裏で茶化すみたいな感じですね。
- 松居
- あ、僕が高校時代にやってた事なんですけど。このテイストの芝居は3年くらい前からやりたいなと思ってたんですよ。今回は時期と、劇場の雰囲気と役者と気持ちがタイミングに合わさったので上演出来ました。
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- 気持ちとは。
- 松居
- 生きている事を伝えたいという、思いというか気持ちですね。死んだように生きているんじゃなくて、人に合わせるんじゃなくて、生きてる事。
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- 部室の中でのランキングを、熱くない奴らが陰で言うシーン。身につまされるというか、人ってやっぱりそういうのが気になると思うんですよ、どうしても小さな関係性に身を置かざるをえないから。それが後半になって引っ繰り返されてというのが昇華でしたよね。学生服を脱ごうとしない、キャプテンの弟の・・・
- 松居
- 優太郎くんですね。
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- そうそう、彼も服を脱がされて踊ったし。
- 松居
- あそこで初めて、全員で変な団結感が生まれるんですよね。高校生なんて生きるだの死ぬだの分かってる訳なくて。キャパシティがホントに狭くて、すぐいっぱいいっぱいになるし。そんな彼らが死に直面した時に、世界を創りだすんです。
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- SFとか宇宙とか言い出しますしね。
- 松居
- バカですからね。結果、舞台がひっくり返されて。
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- そこからのダッシュがすさまじい、熱い作品でした。
女性がいざ近寄ってくると怖い!?
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- ゴジゲンの芝居を通して、お客さんにどういう気持ちになってほしいですか?
- 松居
- 僕らが掲げているのは、9割の人が笑って、1割の人が号泣するという。感じ方は別々でいいんですけど。
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- なるほど。
- 松居
- 例えば、明日自殺しようとしている人が再来週にしようか、という。ちょっと生きてみようって思ってもらいたいです。
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- 感じる作品なんですね。
- 松居
- ホントに最近なんですよね、そういうように思い始めたのは。以前はベタなコメディばっかりしていて。これでいいやと思ってたんですけど、そんな事をしていていいのか。誰かの心に届いて欲しいって思ったんです。
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- そう思われるようになったキッカケって。
- 松居
- 先輩劇団のヨーロッパ企画さんにお世話になっていて。諏訪さんに「ゴジゲン」って名前を付けてもらったり。書き始めたのも、上田さんの芝居を観てというのがあります。でも、コメディやっていてもヨーロッパ企画さんに敵わないと思ったんですよね。
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- では、ゴジゲンではどのような芝居を。
- 松居
- 第六回公演で「チェリーボーイ・ゴッドガール」という芝居を作ったんです。それは、童貞達が童貞を捨てたいと嘆いて、偶然合コンに行けて、童貞を卒業するかしないかでワチャワチャもめて。最後に女の子がやってきて、みんな怖くなるんです。それで全員集団自殺するっていう。
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- あはは(笑う)。
- 松居
- 最悪のオチで、めちゃくちゃ怒られたんですけど、お客さんの一部がスッゲー良かったって言ってきてくれて。それまでどんだけ笑いを取っていても、そんな風に言ってくれる人はいなかったんですよ。すこしづつ、そちらの方にシフトしていっていますね。
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- 恋人が欲しいと思いつつも、異性の方から近寄られると怖がって逃げてしまう。最近は恋愛から遠ざかる人が多いらしいですが、案外そうした恐怖が関係しているのかもしれませんね。
ヨーロッパ企画
98年、同志社大学演劇サークル「同志社小劇場」内において上田、諏訪、永野によりユニット結成。00年、独立。「劇団」の枠にとらわれない活動方針で、京都を拠点に全国でフットワーク軽く活動中。(公式サイトより)
サマータイムマシンブルース
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- 松居さんがお芝居を始めたキッカケとは。
- 松居
- 当時は漫画家を目指してたんですよね。高校卒業直前に、集英社に持ち込みしたんですよ。ギャグマンガだったんですけど、編集者の人に「芸人のやってる事だね」ってパって投げられて。じゃあ芸人になろうと、大学の演劇サークルでコントをやったりしていたんですよ。2年位経って「そろそろ飽きてきた」なと思ってきた所に、駅前劇場で「サマータイムマシンブルース」に合ったんですよね。
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- あ、ここで。
- 松居
- だから、いまここにこれたというのは感慨深いですね。
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- 小劇場スゴロクという奴ですね。ホントにあるんですね。
- 松居
- 審査とかあるんですよ。2年くらい出し続けてました。隣のOFF・OFFシアターに行くのにもちょっと時間掛かるんですよね。ちょっと有名な劇団でも、いきなりは駅前劇場に来れないんですよ。
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- へえー。では今後、どんな感じで攻めていかれますか。
- 松居
- 宮藤勘九郎さんを目指したいですね。ふざけていながらコンテンツは素晴らしいという。頑張りたいと思います。
質問 ハセガワアユムさんから 松居 大悟 さんへ
メッセージ 七味 まゆ味さんから 松居 大悟さんへ
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- あと、柿喰う客の七味まゆ味さんから。「ちょっとしか知らない人なので、今度一緒に飲みに誘って下さい」と。
- 松居
- あ、じゃあちょっと。二人で行きたいですね。しっぽりと。長塚さんのお芝居の読み合わせの時に隣になったんですよ。丁寧で謙虚な方ですよね。誘って下さいとお伝え下さい。
Boulangerie LA SAISON のパン
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- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがございます。
- 松居
- あ、パンだ。
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- みなさんと分けて頂ければと思います。
- 松居
- 今日はあまり時間がないので、有り難いです。