ピンク地底人暴虐の第10回公演「明日を落としても」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近はいかがでしょうか。
- 3号
- 最近ですか。台本が書けないんですよ。
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- 書きたいことがない?
- 3号
- いや、そんな事はなくて。上手く形にならないんですよね。最初のシーンだけ決まったんですけど、それ以降が・・・。最後に形にはなるんですけど。追いつめられています。
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- 3年くらい前の「Ex.人間」は確か一晩で書き上げたんですよね。
- 3号
- そうですね。あの時も苦しかったです。今回は書けるかなと思ってたんですけど、追い詰められています。
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- 魔女の宅急便的に、「書くのを止める!」とかって出来ますかね。
- 3号
- いや出来ますけど、一日書くのを止めてたりしましたけど、変わらないんですよ。
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- なるほど。いつもはどうなんですか?書けないところからどうやって書けるようになるのでしょうか。
- 3号
- ある日、ふと、全てが組み合わさる日が来るんですよ。今回は、もうずっと以前にその状態になったと思ったんですけど・・・なっていなかったんですよ。このインタビューが載る頃までには書けている事を祈っていてください。・・・今回は大変なんですよね、色々掛かってて。
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- 何よりも、今回はピンク地底人の第10回公演ですからね。
- 3号
- そうですね。今までの集大成です。さらに、始めての関東での公演ですので、割と気合い入ってます。
ピンク地底人
京都の地下は墨染に生まれた貧乏な三兄弟。日々の孤独と戦うため、ときおり地上にあらわれては演劇活動をしている。夢は関西一円を征服することと、自分たちを捨てた母への復讐。最近は仲間も増え、京都を中心に大阪にも出没中。(公式サイトより)
ピンク地底人暴虐の第10回公演「明日を落としても」
公演時期:2012/6/30〜7/1(大阪)、2012/8/17〜8/19(東京)。会場:インディペンデントシアター2nd(大阪)、王子小劇場(東京)。
地底人から始めたい、新しい流れ
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- これまで何回か拝見していますが、ピンク地底人の芝居は前衛的手法とエンタ−テイメント性の融合が特色としてよく挙げられますよね。これは、どういうところから生まれるのでしょうか。
- 3号
- 僕が考えて、役者の人にやってもらって、それが役者の体を通して生まれる事が多いですね。
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- 「ある光」 での、集団の行列による一人の人物のモノローグは大変面白かったです。役者が一列になって、順繰りにモノローグを述べていくという。
- 3号
- そういうふうに、毎回新しい手法を編み出すのが好きだと言って下さる人もいます。でも、それも最近はもういいかなと思えてきて。このところ、演劇関係全体で、手法がどうのという言い方が多すぎるんじゃないかなと思うんです。ポスト演劇という流れに、みんなそろそろ飽きているんじゃないか。そう思ってたところに今年の岸田戯曲賞の選評を読んだ。野田秀樹さんが「今後は脱ドラマじゃないものも望む」と。あ。やっぱりと思いました。なら、次のターンが始まるなと。僕はそこに一手を打ちたいなと思います。
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- 地底人が旗手になりたいと。
- 3号
- そうですね。地底人から始めたいです。やっぱり関西だけでやってたら情報が伝わるのも遅いですし・・・そういう面で東京で作品を上演出来るというのはとても嬉しいです。
ピンク地底人空前の第8回公演「ある光」
公演時期:2012/7/8〜10。会場:シアトリカル應典院。
演出と物語の関係性
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- 結果として出来た作品を上演する時間を、言葉は悪いと思うんですが営業時間と呼んでみてもいいんじゃないかと思っていて。その時間内で感動させられるのであれば、文章としての台本の完成度だけは、稽古期間中にこだわる必要はないのかなと思いますね。
- 3号
- 台本が完成していなくても、良いものは出来ますからね。
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- 俳優の出来も関係してくるとは思いますけどね。でも、作品のコンセプトと、営業時間内の俳優・観客のノリが掛け算になったらそれは、とても価値のある時間だと思う。ピンク地底人の場合は、それが顕著なんじゃないかなと。なぜなら、新しいやり方がかみ合わさったらそれは凄く刺激的だから。ピンク地底人を楽しみにしている人は、もしかしたら変わったやり方を楽しみにしているかもしれませんね。
- 3号
- それはそれで正しいと思います。だから脚本として・演出として悩みながら執筆しています。斬新と言われますけど、それも俳優の身体と僕のアイデアが合わさって成り立ってるんですよ。今後は、演出と物語の関係性をもっと考えないといけないと思っています。
質問 大塚 宣幸さんから ピンク地底人3号さんへ
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- 前回インタビューさせて頂いた、大阪バンガー帝国 の大塚さんから質問を頂いてきております。大塚さんはピンク色が好きなんだそうですが、だから勝負下着もピンクだそうで、「もちろんピンク地底人の勝負下着はピンク色なんですよね。そうでなかったら何色ですか?その理由は?」
- 3号
- あー、何かね。いまウチの稽古場で、客演の人達がパンツの色にこだわっているんですよ。派手なパンツを履いてくるんです。心持ちが変わるらしいですよ。赤いパンツを履いたら、精神が高揚するとかで。
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- なるほど。
- 3号
- 竹子がふんどしを履いてくるとか、そういう話が出ています。僕自身は色にはこだわりません。でも、最近はちょっと履いてみようかなと思います。
大阪バンガー帝国
大阪バンガー帝国、それはおもしろいことをやるために集まった社会不適合者で形成された集団。舞台、CM、ラジオなどジャンルに捕らわれないアーティスト集団。現在は、お休み中である。
地底人のやり方
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 3号
- 今後。地底人のやり方としては、前回の番外公演が割と良かったんですよね。番外公演と本公演で回していけたらなと思います。
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- 面白かったらしいですね。番外公演というか、平日にやっていた番外公演「君がいなくても」 。
- 3号
- いやー。お客さん入らなかったですけど、色んな人が面白いといって下さって。今回の東京公演で成功したら、色んなところでやれるかもしれないと思います。
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- どんなお話だったのでしょうか。
- 3号
- 母親がずっと息子を探すという話で、息子の声だけずっと聞こえていて、あたかもいるように母親が答えている。そこに本当に息子がいるのか、母親の妄想なのか分からないという演出だったんですけど、割とオーソドックスにまとめました。
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- 何かの機会で拝見出来たらいいですね。
ピンク地底人番外公演「君がいなくても」
公演時期:2012/4/23〜24。会場:アトリエ劇研。
核
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- これまでのピンク地底人の作品の話。兄と妹の近親相姦関係ですとか妊娠とか出産の神話めいた物語が多いですよね。
- 3号
- 本当ですね。僕、まだ妊婦の話しているんですよね。もう、妊婦っているだけで劇的なんですよ。それから生まれ変わりとかの話が出てくると思うんです。近親相姦というか、あれは兄と妹の恋愛関係なんですけど。そこから妊婦に結局は結びついていくんですよね。
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- 一つに繋がろうとする話。「ある光」もそうでしたね。
- 3号
- 結局、芸術は生か死かというテーマに行き着くところがあって。妊婦はそのどちらも持っていると思うんですよね。
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- 3号さんは、生と死とか、妊婦とか、その方面に興味を持っているのでしょうか。
- 3号
- 理由は、そうですね・・・。二十代の前半とかで、助産婦さんとか妊婦さんとか、妊娠できない女の人達とつながりを持った時期があって。その辺で、僕の中にある得体の知れない表現の核が出てきたのかなと・・・何で生と死を描くのかな。たぶん何の芸術をやっていても結局そこに行き着く気がするんですよ。必然だと思います。みんな、自然にそこへの志向を持っているし、それが無い芝居はあまり魅力的だとは思いませんね。
記憶についての演劇
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- この次の作品以降で、書いて行きたい世界はありますか?
- 3号
- そろそろ、うちのおじいの話を書くべきなんじゃないかと思うんですよね。認知症なんですよ。ピンク地底人は「生と死」だけではなく、忘れる・忘れない事についてもやってきていて。
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- 認知症。
- 3号
- うちのおじいはほとんど何も覚えていなくて。その事をやりたいです。書くべきだと思います。忘れていくものと、残っていくものみたいな。
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- 自分の過去を忘れるというのは相当な体験ですよね。
- 3号
- 記憶に関する事というのは、演劇的だと思うんですよね。多分、自分のどこかに残っていて、同じ事を繰り返したりするんですよね。じゃあ、記憶ってどこにあるんだろうと。それはもちろん、医学的には解明されているんでしょうけど、そういう事じゃなくて。あるんでしょうけど、気付けない。何かに触れてふと何かを思い出すというのは、きっと演劇が担ってきたものだと思うんですよ。
狙う
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- 今後、目標にしていきたい事はありますか?
- 3号
- やっぱり、社会的に認められたいですね。今まで割りと自分の事だけで精一杯だったんですけど。最近、地底人が社会派だと言われてきて。それは何故かというと、僕の方向が自意識から外の世界に向いてきているらしいです。それを見ているお客さんが、僕らの芝居を鏡のようにして自分自身を見てくれる。そういうふうに、せっかく、芝居が外に向いてきているので。
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- ええ。
- 3号
- 何かもっと、社会貢献じゃないですけど・・・なんていうのかな。機能したいですよね。個人でやって、内輪で「いい芝居だったね」じゃなくて。これは僕の好きな押井守監督が言ってたんですけど、やっぱり社会から反響を得たいんですよね。影響を与えるのはきっと難しいですけど。
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- 単純に見てもらいたいというだけじゃなくて?
- 3号
- 社会の地続きで芝居していたいと思うんです。そこだけに自己完結しているんじゃなくて。そういう環境は、まだ京都にはないんじゃないかなと。劇場に来る人は来るけど、知らない人は多分、ずっと触れないままだと思うんですね。
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- お客さんがいないという事はないんですけど、少ないのは悔しいですよね。ユニークな劇団や作品がたくさんあるのに。
- 3号
- それには、割と閉じられた演劇を作っている人が多い、分かる人には分かるみたいなのが多いからかもしれないなと。僕はもちろんそういう芝居は好きなんですけど、間口が広い芝居を作りたいですね。地底人は割りとその辺を狙ってこれまでやってきたんです。何かちょっとおかしな事をやっていながら、ちゃんとお客さんに分かるような。
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- 分かります。
- 3号
- そういう事を成立させてやっているのが、僕の知る限りsunday しかないんじゃないかと思うんです。凄く演劇的な事をやっているのに、間口が広いんですよね。ちなみにウォーリー木下さんには、今回のチラシにメッセージを頂きまして。すごく励みになって。
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- sunday。私も好きです。小劇場がベースにありながら、不特定多数向けというか、とにかく見やすいんですよね。
- 3号
- sundayは凄いですよ。作り手が見ても凄い事をやっているのにも関わらず、ポピュラリティを持っているって。普通ああいう事をしたら、一般のお客さんはよくわからない事になると思うのに。その辺りはピンク地底人は狙って行きたいですね。
sunday
大阪を拠点に活動する劇団。第二期・劇団☆世界一団。作・演出はウォーリー木下氏。
気合
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- ピンク地底人。今回、東京にある王子小劇場 が主催する佐藤佐吉演劇祭 に参加するんですよね。ついに関東進出という事で、意気込みを伺えますか?
- 3号
- 気合が入っています。何でしょうね。
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- 経緯を伺っても良いでしょうか?
- 3号
- 王子小劇場のスタッフの方がたまたまウチを見に来てくれて。それで誘って頂いた感じですね。大変嬉しいです。
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- この度の王子小劇場の佐藤佐吉演劇祭。京都からは悪い芝居 とピンク地底人が参加ですね。
- 3号
- この間、記者会見で悪い芝居の山崎さんと初めて会ったんですがすごい良い人でした。優しくしてもらえて。負けないように頑張ります。
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- やっぱり、京都からこの2団体が出てくれるのが嬉しいですね。
- 3号
- ありがたいことです。頑張ります。
王子小劇場
劇場。東京都北区王子。
佐藤佐吉演劇祭2012(劇視力5.0)
王子小劇場が自信をもってお薦めする、より多くの観客に観ていただきたい作品が集まる演劇の祭典。王子小劇場では注目すべき作品・才能が集う時にのみ、佐藤佐吉演劇祭を開催する。(公式サイトより)
悪い芝居
2004年12月24日、旗揚げ。メンバー11名。京都を拠点に、東京・大阪と活動の幅を広げつつある若手劇団。ぼんやりとした鬱憤から始まる発想を、刺激的に勢いよく噴出し、それでいてポップに仕立て上げる中毒性の高い作品を発表している。誤解されやすい団体名の由来は、『悪いけど、芝居させてください。の略』と、とても謙遜している。(公式サイトより)
ハンカチ
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- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがございます。
- 3号
- ありがとうございます。この間はお箸をもらいましたね。
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- そうですね。お箸でしたね。どうぞ。
- 3号
- ありがとうございます。(開ける)あ、ハンカチですね。ありがとうございます。ピンク色だし。使わせて頂きます。