暑い夜に
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。劇団ZTONの門石藤矢さんにお話を伺います。最近、門石さんはどんな感じでしょうか。
- 門石
- よろしくお願いします。最近!最近暑いですね。暑いなぁ・・・なんて。あ、全然関係ないんですけど、ZTONの事務所にハムスターがいるんですけど、そいつのお世話をしています。最近ちょっと元気がなくて、暑いのかなと思ってエアコンを強くしてみたり、餌を増やしたりしてみたら元気になりました。
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- 危ないところでしたね。
劇団ZTON
2006年11月立命館大学在学中の河瀬仁誌を中心に結成。和を主軸としたエンターテイメント性の高い作品を展開し、殺陣・ダンスなどのエネルギッシュな身体表現、歴史と現代を折衷させる斬新な発想と構成により独自の世界観を劇場に作りあげ、新たなスタイルの「活劇」を提供している。(以下略)(公式サイトより)
劇団ZTON 京都→東京遠征公演02 「覇道ナクシテ、泰平ヲミル【護王司馬懿編】」
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- 覇道泰平、東京公演ですね。今年の一月に上演した、完結編である護王司馬懿編を、東京で上演するという事で。まず、いまの感触としてはいかがでしょうか。
- 門石
- 今日が稽古初日だったんですが、ああ、だいぶ変わってるなあと思いました。現在の段階では配役はまだ言えないんですけど。
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- 初演から変わってると。
- 門石
- ああ、これ以上は僕の口からは言えないです。そうなんでございます。
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- よろしければ、意気込みを教えてください。
- 門石
- 今回の東京公演の会場は花まる王子小劇場さんなんですね。いつもよりは劇場のサイズが違って、お客さんとの距離がめちゃくちゃ近いんです。(京都でも、人間座さんというさらに狭い劇場で毎年新人公演はさせていただいているんですが)劇場への慣れの問題と、あと、去年の東京公演で感じたんですが、なんとなくお客さんの反応は関西と比べてどこか違うなあ、と。勝手な想像に過ぎないのかもしれませんけど・・・・
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- ああ、それはありますね。
- 門石
- どうくるのかな、みたいに観られているような。こっちの人は、おもろいもん見たろ、みたいな空気感覚があるんですが、東京の人は、お芝居を観慣れてる方が多いのかな。普段嗜んでいるもの、なのかな。お笑いを見に来た人と、テレビを見ている感覚なのかな、って。いやすみません、若造が何言ってんだって感じで。
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- 東京のお客さんはその分、作品を丁寧に扱ってくれる印象はありますね。前半のテンションは低くて、ギャグでもあんまり笑わなくて、でも中〜後半はすごく集中して作品にのめりこんでいる感じです。・・・もうすぐ、公演ですね。
- 門石
- はい、意外ともうすぐです。
劇団ZTON 京都→東京遠征公演02 「覇道ナクシテ、泰平ヲミル【護王司馬懿編】」
「覇道泰平」シリーズ完結編、 早くも東京にて再演決定!! 【日程】 2017年9月14日(木)~18日(月祝) 9月14日(木)19時開演☆ 9月15日(金)15時開演☆ 9月15日(金)19時開演 9月16日(土)15時開演◆ 9月16日(土)19時開演 9月17日(日)15時開演 9月17日(日)19時開演 9月18日(月)12時開演 9月18日(月)16時開演 ※開場は30分前です。 ※上演時間は2時間を予定しております。 ☆:アフタートーク開催あり。 9月14日(木)19時開演の部 <GUEST>三枝奈都紀(SOS Entertainments) 9月15日(金)15時開演の部 <GUEST>中山貴裕(ゲキバカ) ◆: 託児サービスあり。(要予約) イベント託児・マザーズ[0120-788-222] (0才・1才2,000円 2才以上1,000円) 本公演以前のシリーズ、 【偽蝕劉曹編】・【真王孫権編】の上映会も併せて開催!! 9月16日(土)11時開演【偽蝕劉曹編】上映会 9月17日(日)11時開演【真王孫権編】上映会 ※開場は15分前です。 【会場】 花まる学習会王子小劇場 (〒114-0002 東京都北区王子1-14-4 地下1F) 【チケット料金】(税込・全席自由) 前売料金 一般 3,500円/U-23 3,000円 当日料金 一般 4,000円/U-23 3,500円 学生(高校生以下) 500円(各ステージ 3 枚まで) 上映会 一律 1,000円 ※未就学児のご入場はお断りいたします。 ※チケットはお一人様1枚必要です。 ※U-23 は 23 歳以下の方が対象(公演期間時)です。 当日受付にて年齢確認できる身分証のご提示をお願いします。 ※開演時間までにご来場いただけない場合、 お席がご用意できない場合がございます。 あらかじめご了承ください。開演までにご来場いただくことを推奨いたします。 【キャスト】 <劇団ZTON> 為房大輔 高瀬川すてら レストランまさひろ 出田英人 図書菅 門石藤矢 前田郁恵 久保内啓朗 <GUEST> 三枝奈都紀(SOS Entertainments) 大町浩之(拳士プロジェクト) 加東岳史(劇団GAIA_crew) 榊菜津美(アマヤドリ) 杉浦勇一 浜崎 聡 山本常文(思誠館道場) 吉久直志(カプセル兵団) 中山貴裕(ゲキバカ) <アンサンブル> 飯尾佳名子 道川内蒼 横山豪( ?マック・ミック) 吉澤悠吾(?オフィス斬/TEAM俳) 【スタッフ】 脚本・演出:河瀬仁誌 舞台監督:新井和幸 照明:吉田一弥(GEKKEN Staffroom) 音響:Motoki Shinomy(SAWCRNT & commondays) 殺陣オペレーター:福島健太(本若) 衣装:鈴木貴子 ヘアメイク:滝沢侑子 小道具:劇団ZTON 殺陣・振付:為房大輔 宣伝美術:中森あやか 当日運営:間宮知子(風ノ環〜かぜのわ〜) 企画・製作:劇団ZTON 【チケット・公演に関するお問い合わせ】 合同会社 office ZTON MAIL:info@office-zton.com
役者として
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- 前回公演「天狼ノ星」 の話を伺いたいと思います。私は初演を拝見して、DVDも何回も再生して、やっぱりお話が深いんですよね。門石さんは初演でもアンサンブルとして出演されていましたが、今回の再演では二つの章を貫く主役でしたね。いかがでしたか?
- 門石
- 僕は役者として非常に自信が欠けている人間なので、僕でいいんだろうかという思いがずっとありましたね。土肥さんが初演では主役で、それを僕が受け継ぐんだ、と思うと熱い思いがこみ上げてきて。色々なものをいただきましたし、皆さんから支えていただいて。すごく勉強になりました。もっと頑張ろうと思いました。
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- 最初はどんな気持ちで望まれましたか?
- 門石
- そうですね。稽古の段階で、自分の全力でやってみようと思っていたところ、河瀬さんに「お前は初演の土肥君を負っている」と言われたことがあって。それをきっかけに、自分のハクトをやってみようと思うようになりました。自分だったらどうだろうか、ということに焦点を当てて考えるようになったんです。
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- というと?
- 門石
- 登場人物は僕とは経験が違うし、想像して考えて、その人の意識や行動を考えるんですけど、「より自分に寄せてみる」という作業は僕はあんまりしてこなかったんですよ。もう、ただ「狼の中で白いという個性を持つ僕」として自分に重ねて演じていました。
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- つまり最初は、役柄を自分に引き寄せていたんですね。そこから、「自分だったらどうだろうか」と考えるようにした。
- 門石
- そうですね。やっぱり、そこを乗り越えないとニサを超えることができない、ということは河瀬さんにも言われていたので。
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- ちょっと分かる気がします。そう、門石さんのハクトは、何だか明るかった。狼の中でも白いから目立っていたけれども、明るい人物の印象になれていましたよ。ハンディキャップだと自認しながらも、そういう振舞い方が出来るようになれる?
- 門石
- 「あいつはああだから」と後ろ指を差される、という心情は僕にも通じていて、きっとそこをセタという親友が連れ出してくれたんだろうなあ、セタがいたからこそ明るく振る舞えていたんじゃないかな、そうした色々なものを経てのハクトで、さらに戦いを経て、時空を超えた。
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- 色々なものを超えたからこそ強くなれたということですね。
- 門石
- そうですね、僕は、「強さ」ではないんじゃないかなと思うんです。
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- 強さではない?
- 門石
- いえ、受け取り方次第なので!でもやっぱり、大事なことを決める時って、「これまで僕はいろいろやって強くなったし、よしやってみよう」となる方が少ないと思うし、強さと言うより、最終的に自分がやりたいと思った答えで、それは強さとかの大それたことじゃないんじゃないかなと思います。言葉にするのは難しいんですけど。
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- 幅というか、選択肢というか、そういう事?
- 門石
- 全部を歩いてきて、結局、ハクトはハクトだ、という事だと思ったんです。
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- なるほど。そうですね。最終的に彼は「大狼の王」から「天の章のハクト」に戻ったんですもんね。初演ではハクトは、レタルと一緒に大地を導いていく存在を選びましたが、2017年版では自分のいた時空に戻り、セタと和解する。
- 門石
- 自分がやってもらったことをやらないといけない、と思ったんです、その時は。もう一方で、僕はどう考えても土肥さんにはなれないなと思いました。そうですね、自分個人と向き合うお話だったと思います。
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- 様々な意思があり、それぞれに結末がある。観客の解釈も様々。幅のある作品ということですよね。謎めいた終わり方も含んで。
- 門石
- はい。どうなったんだろう、という見せ方で終わりました。
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- 私個人はこの戯曲に対しては全く違う読み解き方をしていますけどね。
- 門石
- はい。それでいいんだと思います。
劇団ZTON 10th Anniversary 2nd「天狼ノ星」/dt>
公演時期:2017/7/29~31。会場:ABCホール。
完成について
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- ハクト役の、ここを見て欲しかったポイント、とかはありますか?
- 門石
- いや、観てほしいポイントとかはないんです。僕はあくまで作品の登場人物なので、どこ見るとかはそれこそ見てくださっている方が決めれば良いと思っています。「ここを見て欲しい」と言うのはおこがましい気がしていて。本当に苦手なのが、ダブルコールを頂いて皆さんの前でコメントをさせていただくときや、お見送りの時にご挨拶をさせて頂く時。それまでは作品の登場人物だったのが、ただの門石藤矢になってしまうので。いたたまれないと言うか・・・「すみません、こんなんで」となってしまうので。上手く喋れなくなってしまったんです。
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- 謙虚ですね。
- 門石
- とんでもないです。台本があってはじめて言葉を発することが許されて、照明があって舞台があってそこにいることを許されている気がするので。それ以外はどうなんだろう、と思ってしまって。
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- 逆に、難しかったのは?
- 門石
- 毎公演いっぱいあるんですけど、今回は特にたくさん大変なことがありました。ぱっと思いつくのは為房さんとの立ち回りですね。やっぱりハクトとオルカは因縁があって、作中何度も戦うんですけど、為房さんの殺陣は凄く速くて!なんか、まだまだ自分は勉強が足りないなあ、と、精進しないといけないと思いました。
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- ええ?門石さんの殺陣はめちゃくちゃ早い方だと思いますけどね。
- 門石
- いえ。それと、ラストシーンの、すてらさん演じるレタルとの会話。河瀬さんが「この天狼、着地点がどこかはあんまり決めてないんだよね」とぽろっと・・・そこから大変な日々が始まったんですけど、すごく難しかったですね。レタルもレタルで、そのラストシーン前に本当に長いセリフをずっと喋って、積み上げてきたものがあるので。ハクトも色んな人から受け継いできたものがあるので。お芝居は常に難しいですけど。
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- 最終的に突破できたから良かったじゃないですか?
- 門石
- 突破できたんですかね。僕は、そうではないと自分に言い聞かせています。
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- それは何故?
- 門石
- なんと言うのかな・・・クラスで勉強できる子がいたとしても、「勉強できるんだね」という感想以上のものが出てこなくて。自分自身も、例えば完成させたレゴとかでも、1時間ぐらい後には全部壊してしまうんです。あの、完成が好みではないんです。完成されたものはすごく綺麗なんですけど、例えばドラマの最終話とかもすごく気になるんですけど、観たら終わってしまうから。だから観なくていいや、と。
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- ほお・・・
- 門石
- そんな時もあります。本当に好きなものは最後まで見ますけどね。
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- 完成を避ける?
- 門石
- いや、目指すんですけど、形のある完成が、流動的ではなく停滞している完成は好きではないです。
- __
- 停滞している完成は好きではない。
- 門石
- いや、何を言ってるんだという感じですけど。
質問 葛川 友理さんから 門石 藤矢さんへ
ZTONのカメレオン役者たち
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- 話は変わりますが、ZTONの役者たちは異常に役所が安定しませんね。ポジションが全く違うというか。「ティル・ナ・ノーグ」 の時門石さんはほぼ笑いを取りに行ってたじゃないですか。
- 門石
- それは河瀬さんの方針ですね。やっぱり、同じような役をいつも担当して、お客さんが「あ、あの人はいつもそのポジションだよね」と。喜ぶ人もいるだろうとは思うんですけど、違う役所を振ることで新しい一面をお客さんに楽しんでもらえたら、それはめちゃくちゃ嬉しいことなんですよ。僕も、新しい方向に進んでいきたいと思っています。覇道泰平でも、僕は最多幅の役をやっていると思います。
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- 凄いですよね。裏切られる主役もやれば、人の情を持たない龍もやったし。でもそういう流れの中で、何となくのポジションが決まっている人もいますよね。久保内さんの中二病性とか。
- 門石
- あそこまでやったら武器になるんですよね。
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- すてらさんも客演ではコメディエンヌだしね。ZTONの役者は魅力的ですよね。個人的には出田英人さんの狂った演技はとても好きです。
- 門石
- エオヒドですね!大人気ですよね。
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- 個人的には門石さんの悪役は凄く良い感じなんじゃないと思います。
- 門石
- どうなんですかね。でもいろんな役がやってみたいですね。楽しみです。
劇団ZTON vol.12「ティル・ナ・ノーグ ~太陽の系譜~」
公演時期:2017/7/29~31。会場:ABCホール。
ZTONとの出会い
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- 演劇を始めたのはいつからですか?
- 門石
- 18歳の頃に、河瀬さんとひょんな事で出会って。「お前、出るか?」とZTONの新人公演にぶちこまれて。そこから、演劇ってこういう世界なんだなあ、と。英人さんや菅さん、森さんがいました。アンサンブルで何度か声をかけていただいて。「月に叢雲、花に風」にも。その後天狼ノ星のアンサンブルに出て、その後に入団しました。
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- 門石さんの今のテーマを教えてください。
- 門石
- 今は勉強あるのみ、でしょうか。お芝居に対してですけど、自分とはまるでかけ離れたような人(経験だったり、性格だったり)のお芝居を間近で見たいですね。一挙手一投足を見たいです。為房さんが殺陣師として作品の立ち回りをつくるんですが、全然関係ない僕が真似をしてみたり。
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- 真似か・・・いきなりぶっ込みますけど、これは単に何となく聞いてるだけなんですけど、いろんな見方から演技を分解する事って出来ると思います?こうやって至近距離での会話劇をしている時に、瞬きのタイミングであるとかため息の角度やら温度であるとか、生体としての全ての震えをまるでダンス作品のように構成してるじゃないですか、我々って。テキストとして会話劇を成り立たせるために。
- 門石
- はい・・・
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- という考え方もあれば、その人間の経験こそが全てで、つまり二人が背負ってきた全てのものが合流するこの会話劇はそれら全ての決着を付けるために存在しているから、予め運命が全ての演技を決めている、故に無理して表情をコントロールするよりも、役柄のサブテキストを汲み取り続けるべきである、みたいな考え方もある。
- 門石
- ああ・・・もちろん、そういう事を考えながらやっている時もあります。覇道泰平で龍を演じた時なんかは細かい表情に気をつけながら作っていたんですが、そうしてしまうと、どうしても、自分が考えたプランを自然に見せるためには、限りなく自然に魅せる技術が必要じゃないですか。私結局それは「限りなく自然に魅せられた演技」に過ぎないと僕は思っていて。僕は最近、何も考えずにやっています。もちろんその人に起こった出来事は前提として状況を把握していますが、舞台上に立って共演者と相対する時は何も考えないようにしています。
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- ああ、なるほど。
- 門石
- それだけ、口をついてセリフが出るように、練習はするんですけど。
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- ライヴでの感情のやり取りを大事にしているということですね。
- 門石
- そうですね。ミザンスでやってもいいんですけど。何と言うか、なんというか・・・パラパラマンガのページ数をどれだけ増やせるかという話になってくるんじゃないかと思います。でもそれは、人がいなくてもできる作業なんじゃないかなと思って。そっちの方がいい場合はそうしますけれども。
電車の窓の外の風景のような
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- いつか、どんな演技ができるようになりたいですか?
- 門石
- ・・・。ごめんなさい。どんな演技か、と言うのは難しいですが、その作品ごとに自分ができる演技を駆使して、洗練されているのに自然で、だけどお芝居をしていないわけではなく、見世物だけれども、普段の電車に乗っている時に窓の外に流れているような風景と同じぐらい近くて自然な演技。お客さんに、門石藤矢という存在として、少しでも認めてもらえたら。でもまだまだです。頑張ります。すみません、すみません。
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- 今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
- 門石
- 分かりません。はい(笑う)。
スナフキンの描かれている青いカップ
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 門石
- ええっ。すいません、ええっ。ありがとうございます。ありがとうございます。
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- もしよろしければ開けていただければ。
- 門石
- よいしょっ。うわ可愛い。
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- ムーミンのスナフキンのカップですね。
- 門石
- 何でスナフキンなんですか?
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- 男性はもれなく全員、スナフキンが大好きですからね。
- 門石
- かっこいいですよね。
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- 折よくムーミンフェアがやっていたので。
- 門石
- 震えるほど嬉しいです。日本酒入れて飲みます。