エンロン
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- 今日はどうぞ、よろしくお願い致します。最近は長谷川さんはどんな感じでしょうか。
- 長谷川
- 今参加しているエンロンという舞台の稽古やリハでいっぱいでした。GW中は冨士山アネットのツアーのリハで埋まっていたので、予定がごちゃごちゃしていましたね。
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- 稽古続きだったんですね。
- 長谷川
- 振付も出演もしていたので、ちょっと忙しかったです。
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- そのエンロン。先程拝見しましたが、非常に面白く拝見しました。エンターテイメント的な感じで経済をやるのかなと思っていたんですが、それだけじゃなくて、会社を大きくしようとズルした普通の人がどのようにして悪人扱いされていくのかという流れが興味深かったです。お金を巻き上げるつもりが、お金によってもてあそばれる感じがね。
- 長谷川
- 台本が本当によく出来ていましたね。あれはほとんど実話なんですよ。実際にあった事件を当時二十代の女性作家が調査の末書きあげた作品。実話なんですけど、ウソみたいな話ですよね。当時の社会の、お金をめぐって起きた事件が現在でも起こっているしね。ムーヴメントシーンが多かったでしょう? 今回色々な流れが合って僕がやらせてもらえる事になって。
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- そうそう。見せ場がありましたね。
- 長谷川
- ライトセーバーとかね。演出家がストレートプレイを主にやっている人らしくて、シンプルになるように心がけていました。
冨士山アネット-テアタータンツ
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- 長谷川さんが冨士山アネットでされているテアタータンツという技法。台本がある作品を、台詞を一切使用せずにあえて動きやダンスで表すんですよね。かといって無言劇でも無くパントマイムでもない。
- 長谷川
- ドイツに滞在していた時、古典の舞台を見たんですよ。大まかな流れがわかっていたら、言語が違おうと使われていなくても筋が分かったりするんですよね。意味が分からなくても面白い。人物同士の関係性が面白いんですよね。何故かというと、舞台に上がっている人間同士の関係性がきちんと作れているからなんです。それを見た時から、関係性を作る事が面白いなと思うんですね。
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- それを舞台上で表現するという事ですね。
- 長谷川
- 例えば、付き合って数年のカップルが居て、そのカップルの関係がセリフで分かる時もあれば、ただの目線だけで分かったりもする。もしくは、片足を相手の足の間に入れたり。関係性で、立ち位置や姿勢が決まるのが面白いんですよ。そういう所に豊かさを感じる。
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- 演劇とダンスの間にありながら、具体的に関係性を描き出していく表現。
- 長谷川
- 実は最初は、ダンスをどうやって作っていくのか分からなかったんですね。演劇しかやっていなかったから、ダンスの設計図の引き方が分からなかった。なら、演劇の方法論を下敷きにした考え方が手がかりになるのかなと。それまでやってきた事を捨てる必要はないと思ったんです。
拡大解釈(1)
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- 関係性を表すダンスについて。例えば片足を相手の足下に置くような姿勢。見ている人の想像力を一気に喚起するんですよね。そして反面、言葉がないのであれば誤読が生じやすいのではないかと思うのですが。
- 長谷川
- 観客がふっと一瞬一瞬を切り取って、自分の想像力を頼りにシーンとして頭の中で作っていくのが面白いんじゃないかなと思うんです。読者が選択をしていくゲームブックのように。
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- なるほど。
- 長谷川
- この二人は良い関係じゃないのかな、みたいに、勝手に拡大解釈していく。そういうヒントや描写をちりばめていくんです。
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- つまり、注意深く見るとどんどん想像力がかき立てられるんですね。
- 長谷川
- そうですね。探りながら見て貰う面白さはあると思います。次回の「八」(エイト)は挟み舞台なので、距離が近いぶん、そういう体験が出来るんじゃないかな。
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- では、テアタータンツに出演される方に求める事はありますか?
- 長谷川
- それもやっぱり関係性ですね。俳優さんもダンサーさんの使うんですけど、それぞれの良さがあるんですよ。でも、意外にも俳優の生理というものがあって、「動くための理由」がなければ動きにくいみたいなんですね。確かに、そこをクリアにしていく事で作品の強度が上がるというのは確かにあるんですね。但し俳優でもダンサーでも理由がつかない面白さというのも存在するので、それだけやる訳にはいかないんですけど、積み重ねの作業は面白いです。
冨士山アネットpresents[八](エイト) JAPANTOUR2012
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- 次回の[八](エイト)。心理療法師と作家の物語なんですね。
- 長谷川
- 書けなくなった作家が心理療法師を訪れて、作家がだんだんと書けるようになっていく。その物語が、心理療法師の行動を先回りして書かれていく。患者にプライバシーを暴かれていき、自分と本の境目がなくなっていくという話です。これは元々10年前に書いた本なんですよ。その時は精神科医だったんですけど、今回は療法士で。療法士って処方を出来ないんですよ。つまり、ある種ではその存在は曖昧に映る事も有る。そのあたりのあやふやさが、今回は効果的になるのかなと。
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- そうしたモチーフに興味がある
- 長谷川
- 僕の作っている作品と、夢というモチーフは凄く相性が良いんですね。夢も僕の作品も、言葉として出ないから脈絡がない事が平気で起こる。今回は東京・京都・福岡でワークショップと発表公演をしてきて、参加者の方に悪夢を聞いたりしています。
冨士山アネットpresents[八](エイト) JAPANTOUR2012
公演時期:2012/6/1(福岡)、2012/7/14〜15(兵庫)。会場:イムズホール(福岡)、AI・HALL(兵庫)。
質問 蓮行さんから 長谷川 寧さんへ
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- 前回インタビューさせて頂いた、劇団衛星の蓮行さんから質問です。「劇団のプロ化について。東京から地方に移っている劇団がありますが、そうした方法についてはどのように思いますか?」
- 長谷川
- 真面目に来ましたね。まず、何を持ってプロ化と言うべきかなんですよね。
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- 長谷川さんが考えるプロ化とは?
- 長谷川
- もちろんそれは金銭的な事も関わってきますけど、意識なんじゃないかなと僕は思います。じゃあアマチュアって何だという話ではありますけど・・・。例えばワークショップに来てくれた方に「10年後、何をやっていますか?」と聞く事があって、それは色々な答えが返ってくるんですよ。売れていなくても演劇やダンスを続けますという人も、何歳までに芽が出なければ辞めますという人もいる。僕はどっちが良いとも悪いとも思わないんですが、そのどちらとも言えない人が危険なんじゃないかと思うんです。
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- というと。
- 長谷川
- 自分のカンパニーの公演や、客演が続く人が、辞めるとも辞めないともせずにただ続けている状態。決断する時期を逸してしまうのが良くないんじゃないかなと。好きだから生活の傍ら続けます、か、やっていても然して結果を残せないから辞めよう、とか。東京にいようがどこにいようが、どちらかを割り切った意識を持っていたら、プロ化にこだわらなくてもいいんじゃないかなと思います。
粘土
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- 長谷川さんは、いつ演劇をやっていこうと思われたのでしょうか。
- 長谷川
- 大学に入った時、文化祭などの時期にしか公演しないサークルに入るのが違うと思っていて。それよりは、学外で作った自分のカンパニーでやっていきたいと思ったんですね。
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- なるほど。
- 長谷川
- すると、だんだんとメンバーが固定化していったんです。それ自体は今思えば悪い事じゃないんですけど、当時は限界を感じて、人の役割を固定しないユニットになりました。
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- 学外に出たのは、独立したかったという事ですか?
- 長谷川
- いえ、そもそも演劇を演ること自体が最初から独立だと思うんです。専門的な演劇の教育を受けたという訳じゃないですしね。でも、自由に施設が使えたりとか、そういう環境にコンプレックスがあったんだと思う。
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- 今の若手に一言頂けますか?
- 長谷川
- 自分もまだまだ全然若手だと思っているので何も言えた事はないと思うのですが(笑う)好きなだけ、ガツガツしていればいいんじゃないかなと。僕にしたって、自分で何だか分からないまま演出も振り付けも出演もさせて貰っているので。でも、そういったものを志向しないとここまでは来れなかったんだと思います。
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- ええ。
- 長谷川
- やっぱり製作って楽しいんですね。ずっと粘土をこねているようで楽しいです。何か言える事としたら、「こねたら?」と。どうこねたらいいか分からないかもしれないけど、諦めずに作り続ける事だと思います。
拡大解釈(2)
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- 長谷川さんは、お客さんをどこに連れて行きたいのですか?
- 長谷川
- 一昨日、さいたまスーパーアリーナに、レディ・ガガのコンサートに行ったんですよ。
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- あっ。いいな。
- 長谷川
- や、たまにはそういうものも観てみるものだと思って。色々面白かったですよ。舞台には城が建ってました。途中ではI Love TOKYO!!って何度も叫んでて。埼玉なのに。バイクと一体化してステージを練り歩いたり、ピアノとバイクがドッキングした上に股がって弾き語りしたりして、途中で感極まって泣いたりしながら。揺るがないよね。
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- そうですね。
- 長谷川
- そこでも考えたのだけど、時間の感覚って常にあるんですよね。ダンスって、演劇より時間を歪ませる力を持ってるんじゃないかなと思うんです。時間を気にさせないというか。あの感覚が、良いなと思うんですよね。つまんない、つまるとかじゃなくて。その概念からもう少し解放したいなと思うんです。
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- ダンスだと、一瞬一瞬に見入るんですよね。物語が提供されていないからか。
- 長谷川
- その、時間が止まって見入る感覚。それを演劇に持ち込めないかなと思うんですよね。一時期、映画のSFXで時間をぐぅわ〜って遅くしたり、対象を中心に視点が円周にそって動いたりという技法が流行ったでしょう。そういうことが出来ないかなと。上手くいったら、一秒のシーンを30分ぶんの感覚に見せたり出来るんです。きっと。身体を使っている強みだろうなと思う。それを演劇のフォーマットに持ち込めるのが、僕らの武器だと思います。
可能性について
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 長谷川
- 今年は国内ツアーのあとに韓国に行きます。共同製作で振付をしにいく予定で。それがメインかな。あと、東京で次回作の試演会をやれないかなと。来年京都にも何回か来る予定なので。
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- すばらしい。
- 長谷川
- 今年の始めに冨士山アネット/Manos.(マノス)という演劇企画を立上げて、クロムモリブデンの板倉チヒロ君を主演に一人芝居を作ったんですよ。楽しかったです。現代でも古典でも、その戯曲を皮切りに解釈をどんどん加えていける。それも含めて、今後も演劇とダンスの差異は何処にあるのかという事を探りたいですね。
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- 今後も、ご自身の手法にこだわらず、色々開拓していかれる感じなのでしょうか。
- 長谷川
- そもそも狭くて生き辛いジャンルなので、何か決まった物だけに固執していてもしょうがないんですね。かといって捨てる事もありません。捨てるという事は、可能性を狭める事でもあるから。
SFIDA HEAD SPA Handpro
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼に、プレゼントがございます。
- 長谷川
- いいんですか?ありがとうございます。
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- もちろんです。
- 長谷川
- (開ける)おお。ヘッドスパ。
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- 疲れている男性には頭皮ケアが良いかと思いました。
- 長谷川
- いえいえそんな、ストレスなんて抱えたこともありませんので。