演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫
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山崎 彬(悪い芝居)
ファックジャパン(劇団衛星)

したため「擬娩」

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今日はどうぞ、よろしくお願いします。dracomの松田早穂さんにお話を伺います。最近、松田さんはどんな感じでしょうか。
松田 
よろしくお願いします。ちょっと緊張しています。最近は、したための公演「擬娩」の稽古をしています。ちょっと変わった稽古方法で、上演台本があって始まっているわけでなく、何もないところから始まっているので、ディスカッションというか割と話をしている時間が長くて。新しく知ったことや他愛ない日常の細かなことまでとにかく沢山話しています。私たちの話の何が本編に組み込まれていく・回収されていくのかはまだ分からないんですが、ここから佳境に入っていくと思います。
__ 
その場でのお話が演出家の和田さんによって一つの大芝居に編纂されていくんですね。
松田 
妊娠・出産がテーマの作品なんですが、生物学的なことや生活のこと、社会問題のことなど網羅していくと、やっぱりとんでもない量の情報がやり取りされるので。頭がはちきれそうでもあります。
__ 
今回の作品は妊娠を擬態する「擬娩」がモチーフとなっていますね。実は世界各地で似たような習わしがあるということですが。
松田 
今回参加するまで何も知りませんでした。タイトルにもなっている擬娩は、民族学(人類学)の用語だそうです。科学のない時代から、夫が、知ることのできない妻の妊娠出産の苦しみを擬態する風習がさまざまな国であったようです。いつから、なぜ、というところははっきり分からないのですが、突発的な病や事故や流産も常につきもので、夫婦間だけでなく大小それぞれのコミュニティの中で出産というものに対処する必要があって引き継ぐ習わしがあった。今の時代でも「実際に自分が妊娠したらどうなるのか」は、経験した人にしかわからないので、最大限に持ち駒を増やして全力で想像するしかない。4人くらいの実際に出産を経験された方に稽古場へ来ていただいて取材をしたりもしています。その方たちの身振り手振りを真似してみたりもして。とてもじっくりと稽古が進んでいますが、私はそういうしたための進み方が好きですね。
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今のところ、どんな作品になりそうでしょうか。
松田 
和田さんとは前回一人芝居でご一緒させていただきました。安部公房の「時の崖」という、あるボクサーが試合に臨んでいくさまを独り言で喋り続ける一人芝居でした。著作権の関係で言葉を一言一句間違えてはいけないのと、そこまでの長台詞をやったこともなく、少しハードな経験だったんですが、台本があって始まっていたので今回とハードさの質が全然違いますね。まだ全体像みたいなものは見えなくて、細部から検証して積み上げていってるという感じです。和田さんも共演者の皆さんやスタッフの皆さんも、妊娠は全員未経験なので、わかることに置き換えたり資料を読んだり無我夢中で想像しています。無我夢中の様子にそれぞれ個性が出てると思います。びっくりして笑ってしまうことも多いです。むちゃくちゃな想像だったりすることもあると思うのですが、稽古場でたくさん試したうちのほんの少しが作品としては見える材料になるのだと思います。案外すっきりしているかもしれないし、混沌として見えるかもしれない。まだわかりません。でも、こんなに堂々と、経験していないことを皆で確認しながら身も心も総動員して想像するなんてあまりないことだと思うので、ぜひ覗きにきてほしいです。熱が出そうです。個人的には、プライベートなところが出ている作品なので、自分の今の状況だとか生活のことだとかを煮詰めて行っているという感じがします。
__ 
プライベートなこと。
松田 
役者って自分個人のこととはあまり重ならないようにしてるものだと思っていました。重ねてるとしても密やかにやっていて、見せすぎないものかと。今回はベン図の重なってるところが限りなく大きくなるような気がしています。不思議と、忘れていた幼い頃のエピソードなども思い出してきて、またそれを皆で共有したりして。お芝居を続けていると、(辞めようと思った時期もあったんですけど)次の予定が色々な形で決まっていく中で子供を持つということに対して考える機を逃していて。稽古でそれを考えるというのはちょっと面白い事だなと思います。これまで私が参加してきた演劇の稽古とは全く違いますね。
__ 
したための作品はどれも全部作風が違いますからね。
松田 
和田さんは「私のやり方は不可逆なので、時間がかかる」と仰っていて、なんだかとても魅力的だなと思いました。
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選択って負荷逆ですよね。そして、演出は選択の連続。
松田 
演出家によっていろんなやり方がありますよね。何かを一度決めても後から出てきた新情報によって方法や決定を塗り替えたり。作品をより生きたものにするためどんどん変えていくこと、これまでその方が私には身近にありました。和田さんはあまり変えないそうです。和田さんの場合は、例えば溶けた氷が元に戻らないように、自然が取るかのような選択肢を取る気がします。氷が溶けるというシーンを見せるために、何がまず氷か、コップはどれで、気温は、いつ冷凍庫から出せば実現できるか・・というように要素を微細なところまでとことんよく見つめて、さて溶かしましょう、というような。あくまで私の見た和田さんです(笑)。作り物ではなくて自然にそうなる、ということを大事にされていると思っています。
__ 
一つ一つの選択を大事に決めている和田さんの作品は、だから緊張感がすごい。
松田 
私自身はどうでもいいことに目がいきがちで、なぜ話してるかも分からなくなるような無駄なことも喋ったりしてしまうんですが、稽古場に入ると作品が少しずつ作られているという感覚があります。未知の感覚なんですが、背骨の真ん中らへんで今回の演劇が作られていってるスピードをジリジリと感じてるような気がします。台詞をしゃべっていて、頭では忘れているんですが。でもその背骨の感覚は消さないようにしています。
dracom

公演芸術集団dracom(ドラカン)。1992年、dracomの前身となる劇団ドラマティック・カンパニーが、大阪芸術大学の学生を中心に旗揚げ。 1997年の第7回公演『空腹者の弁』から作風が一変したのを機に、1998年1月に一部の関係者の間で使用されていた「ドラカン」という略称をそのまま集団名とすることになった。 過去に、大阪の小劇場ウイングフィールドの「再演大博覧会」に2度の参加の他、演劇計画2004と2007に参加(2007はリーダーの筒井が京都芸術センター舞台芸術賞を受賞)。その後にもTPAM2008、精華演劇祭vol.12、フェスティバル/トーキョー2010、Sound Live Tokyo 2014(カナダの劇団Small Wooden Shoeとのコラボレーション公演)、Nippon Performance Night 2017(デュッセルドルフ)等、国内外のあらゆる機会に精力的に参加している。 本公演では、公演芸術が持っている根源的な要素をバランスよく融合させて、濃密な空間を表出する。多くの観客に「実験的」と言われているが、我々としては我々が生きている世界の中にすでに存在し、浮遊する可能性を見落とさずに拾い上げるという作業を続けているだけである。世界中のあらゆる民族がお祭りの中で行う伝統的なパフォーマンスは、日常の衣食住の営みへの感謝や治療としてのお清め、さらには彼らの死生観を表現していることが多い。我々の表現は後に伝統として残すことは考えていないが、現在の我々がおかれている世界観をあらゆる角度からとらえ、それを社会に向けてユーモラスに表現しているという意味で、これを「祭典」と銘打っている。

ベビー・ピー

2002年旗揚げ。拠点は京都。野外テントなど劇場外スペースを活用して、題材も公演自体も「祭り」にこだわった作品を毎回上演している。また、アーティスト・山さきあさ彦が製作するぬいぐるみ(山ぐるみ)を使った人形劇、漫画「ジョジョの奇妙な冒険」を再構築した「ジョジョ劇」など、既存の枠組みにとらわれない活動を全国各地で多数上演。 2015年、『山ぐるみ人形劇 桜の森の満開の下』で、愛知人形劇センター主催のP新人賞を受賞。2016年、いいだ人形劇フェスタ、あいちトリエンナーレ並行企画事業「人類と人形の旅」、瀬戸内国際芸術祭2016に参加。 結婚式・パーティ・イベントなどへの出張人形劇・ジョジョ劇のご要望にもお答えします。

したため#7『擬娩』

わたしは妊娠したことがありません。したことがないので、できるのかもわかりません。わたしは妊娠にあこがれているのかもしれないし、妊娠を恐れているのかもしれない。真剣に考えることをのらくら避けてきた末に焦りにがんじがらめになってしまって、しかしその時ひらめいたのが、妊娠と出産のリハーサルでした。妊娠したことがない人間が妊娠をリハーサルするなら、女だけじゃなくて男も一緒にリハーサルしてみよう。そんなことを考えていたら、「擬娩」という人類学の用語に行き着きました。妊娠を演じるというアイデアは、人類の古くからの知恵だった! 驚くと同時に腑に落ちました。妊娠を演じることは、わたしひとりが考えていたよりもはるかに人間に必要で、そしてそれはまさしく今なのだと。 したため 和田ながら 公演情報 京都公演 [ THEATRE E9 KYOTO オープニングプログラム ] 日程|2019年12月 6日(金)19:30 7日(土)14:00*1 / 19:00*2 8日(日)14:00*3 / 19:00*4 9日(月)14:00*5 *受付開始は開演の30分前 ポスト・パフォーマンス・トーク ゲスト *1 櫻井拓(編集者) *2 林葵衣(美術家/本作舞台美術担当) *3 弓井茉那(BEBERICA theatre company代表・演出/俳優) *4 本作出演者 *5 「感想シェア会」 作品を見て感じたこと・考えたことを、 同じ作品を観た人同士でシェアしてみる試みです。 詳細は⇒ http://kyoto-pa.org/ 主催|NPO法人京都舞台芸術協会 会場| THEATRE E9 KYOTO (〒601-8013 京都市南区東九条南河原町9−1) *JR「京都」八条口から徒歩約14分 *京阪本線・JR「東福寺」から徒歩7分 *京都市営地下鉄「九条」から徒歩11分 沖縄公演 [ アトリエ銘苅ベース提携カンパニー公演 ] 日程|2019年12月 13日(金)20:00 14日(土)19:00 15日(日)14:00 *受付開始は開演の30分前 会場| アトリエ銘苅ベース(〒900-0004 沖縄県那覇市字銘苅203番地) *ゆいレール「古島」から徒歩8分 チケット料金| 一般前売 2,700円 25歳以下前売 2,000円 高校生以下 1,000円 *日時指定・全席自由 *当日券はいずれも+500円 *25歳以下チケット・高校生以下チケットの方は当日の受付にて証明できるものをご提示ください。

準備について

松田 
和田さんが最近「妊娠出産についての知識を得たり十分に実験などもしたので、生むための準備はできたはずです」って。あ、出来たんだー!って。色々な恐ろしい想像とかもしたし。心配することも準備のうちですからね。
__ 
妊娠・出産の場合は誰でも可能性を持っているモチーフですので、その行為には様々な影響が動いてそうですね。男性にしても、赤ちゃん教室とかに参加するし。
松田 
今回は生まれた後のことよりも娩出そのものと出産以前について絞って行こうという話になっているので、赤ちゃん教室の話はまだ出ていませんね。誰でも…そうですね。たとえ妊娠ができなかったとしても、代理出産や里親になる選択肢などもあることを含めると、広く、子を持つということは誰でも可能性のあるモチーフということになりますね。妊娠したいのか、するのか、しないのか、できるのか、できないのか。他にもあるかもしれません。妊娠と、その周縁にある現代的な社会問題についても時間をかけて話をしていました。その上で、出産そのものは個の行為なので、一人一人面白いほどちがうもので、自分の生き物としての性質についても考えたりして。そういえば、それは夏の「ラプラタ川」でも向き合わざるを得なかったところでもありました。

ベビー・ピー「ラプラタ川」

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ベビー・ピーの「ラプラタ川」、お疲れ様でした。私は千秋楽しか拝見できなかったんですが大変面白かったです。
松田 
ありがとうございます。全員、体がある状態で最後まで行けました。京都公演の千秋楽は旅のすべての終わりでもあったので、立ち会っていただけて嬉しいです。
__ 
偉大な経験でしたね。
松田 
偉大だとはとても思わないんですが、病気や怪我も出演者に順々にやってきて、台風が来たり突然のトラブルもあったり。すべての旅が終わったときは、とてもほっとしました。
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最後まで乗り越えられたスタミナがすごいですね。
松田 
ツアーメンバーで凸凹を補いあってかろうじて乗り越えた感があります。公演準備で色々な土地に場所を下見に行ったり書類を出したりもして。各メンバーで担当地があって、完成作品を持っていくだけじゃない、前段階での準備も複雑にあって。私は松本、福岡、高崎、東京、京都の場所の申請や連絡担当をやってました。
__ 
全員がそういう制作をして、もちろん全員が役者で。とんでもない労力でしたね。最初はテントを建てるのに二日かかってたんですよね。
松田 
テント建てと仕込みもほぼ出演者のみの6人だったので時間がかかりましたね。特に旅に出る前は、全員が不慣れなので時間がかかりました。ツアーに出たら徐々に覚えてきて、それでも朝にテントを建て始めて夜中までかかる、の連続で。それが生活と密着している日々でした。体にこんな影響が出てくるのかと。でも前回のツアー「風あこがれ」に参加したメンバーによると、今回の方がゆとりがあるそうです。私は生物的にちょっと保守的な動物だということがわかりました。刺激が強いんですよね。
撮影:中谷利明
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なにしろ外ですからね。
松田 
初めて行く場所でも、初めて会う人でも。出会いや移動の喜びは感じるんですけど。寝る所にしてもテントだから湿度がコントロール出来ないし、ものすごい雨が降ることもあるし。風が吹くと家(テント)が飛びそうになるし。いま天候の話しかしなかったですね。舞台上で蝉も羽化しました。
撮影:松山隆行
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「ラプラタ川」。日本人移民がテーマでしたが、現在すごく新鮮なテーマのように思っています。それを旅公演でやるというのもまた。
松田 
移住と旅公演が、重なるようで重ならないようでもあるとも思っていたんですが、要素を抜き出していくと少し指先に触れるような感じがしていました。このまま、旅先で居ついてしまったらどうなってしまうんだろうということを想像してたんですよ。実現性はおいといても、どんなに山奥に行っても家はあって人が住んでいるから想像が湧いてきました。そういうところにもAmazonプライムは本当に届くんだろうかみたいなことを話し合っていました。注意書きに届かない所はあるって書いてますよね。
__ 
一部離島、ですね。それすごく面白いですね。宅急便の届かない所などはないという思い込みがあることに今気づきました。富士山頂郵便局とかありますしね。住所があれば届くみたいな。
松田 
車で移動したというのも大きくて。地続きでしたから。日本の、地続きにある19の点を線で繋げるような移動でした。流れていく景色をずっと見ながら芝居のことを考えたり次の公演地のことを考えていたり。すごく珍しい本番期間だったと思います。
__ 
その中で思い出深いところはありましたか。
松田 
長崎では、実際に海の見える港の前の公園が会場で、舞台背景に本物の帆船が見えてたんです。海の向こうにタンカーも通ってたりして。あそこは本当に特別でした。でも風がすごくて、テントを畳むべきかどうかの瀬戸際でした。やってる方はものすごくバタバタしていたんですが、お客さんも多くてものすごく喜んでくださって。背景と物語が相まっていて。
撮影:岩木すず
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その場所の人にとっては、やっぱり何かこう、すごい体験だったんだろうなと思っています。外からやってきた人たちが自分たちの住んでいる場所を別の風景にしてしまうみたいな。
松田 
長崎は土地取りが難しいと言われていたのですが、上演できてよかったです。歴史が真横にごろごろとあって、たくさんの文脈がありましたね。潜伏キリシタンの資料館があったりもして。私は休んでいたので行けませんでしたがメンバーは出島に遊びに行ったりしていました。かつても今も、その空気を肌で感じられるような気がしていました。
__ 
凄い体験でしたね。
松田 
旅芝居をする上で、みんなで共同生活をしてるというのもとても大きなことだったと思います。喧嘩したりしても、食卓を囲むと・・・。やっぱり不思議ですね、疑似家族というのが芝居の最後にも出てますが、その感覚がありましたね。物に対するちょっとした考え方の違いが出たりして決着がつかずご飯の時間になったりして、でも、最終的にはまるで家族のように横で箸をすすめてる。そんなに微笑ましい意味ではなくてドライに思ってるんですが、団らんじゃなくていいんだ、って。
撮影:河野直樹
撮影:Hiroki Hamamoto
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同じ船に乗ってるわけですからね。
松田 
食事のこともあるし。みんなで自炊していたので、食材をもらえると嬉しかったです。山盛りのプチトマトをもらったりかたまりの豚肉をもらったり。食材をなぜか各地の皆さんくださるんです。同行していた人形作家の山さきあき彦さんが旅の前半は特にたくさんご飯を作ってくださいました。
ベビー・ピーの旅芝居 2019『ラプラタ川』

あらすじ 20世紀初頭、ブラジルに移住した日本人たちがいる。 港で奴隷商人に騙され息子を攫われた母親は子を追って内陸へ向かうが 川のほとりで彼女が目にした光景は…… 移住者たちが、季節の巡りも植物も風景も違う中で謡い伝える、土地の記憶の物語。 人々が描いた幻想たちが今、海を越えて夢から呼び起こされる。 【作・演出】根本コースケ 【出演】松田早穂、柳原良平、紙本明子(劇団衛星/ユニット美人)、小林欣也、ほん多未佳(和風レトロ)、根本コースケ 上演時期:2019年6月~10月 会場:日本各所

感覚の話

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舞台に立っている時、どんなことを考えていますか?
松田 
準備を終えて立ってしまったら考えるということはあまりしていなくて、感覚を開いている気がしますね。お客さんの顔が目に飛び込んできたりとか、地面のささくれが気になったりとか。スポンジのような状態です。
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お客さんと場所を共有するということについて、「ラプラタ川」ではすごく感覚が鋭敏になっているんじゃないかという仮説を立ててお話ししたいんですが。それぞれ違う土地に移動しているからこそ、お客さんの存在が感じやすくなるんじゃないかと思うんですね。色々な条件があって。その時にお客さんの感覚が入ってくるというのはすごく面白いですね。お客さんももちろん感覚を開いているけど全く別のことを考えてることだってある。でも上演時間90分なら90分の中でだんだんと感覚が開いていくということがやっぱり絶対にある。
松田 
舞台に立っている時について・・・今は、何かもっと自由になりたい、みたいに思ってますね。その反面、お客さんのことも考えてる、と思うんですよね。お客さん一人のことに集中しているかもしれません。それは特定の知り合いとかではなくて。
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そういう軸もある。
松田 
基本的にお客さんとは初対面ですから、日常のコミュニケーションとは全然違う野蛮さがお芝居にはあって。何層かのやりとりを一気にしている。舞台の水面下で手渡しているのは、言葉では名付けられていないもののような気がしています。もちろんセリフも身振りも手渡してるんですけど。それはより多くの人へ届けたいというわけではなく、かといって特定の誰かというわけでもなく。何も知らない街行く人に見に来てもらうにはどうすれば、とかも考えてもいるのですが。何というか、お客さんの焦点が何かということに興味があります。
__ 
その焦点に向かって行き、より純粋になっていくということが自由になりたい?
松田 
普段気が散りやすいタイプなので、よりそう思うのかもしれません。稽古するっていいよなあとも思いました。他人と協働して話したり色々な面から考えて試して失敗して。自分で選んでごちゃごちゃさせることもすっきりさせることも出来る。下手くそでもなんでも、稽古や本番でも、はじまってから終わるまで、とにかく全うしたいな、と思っています。なにもないところに、きちんと何かを組み上げて、終わらせるように。

質問 本城 祐哉さんから 松田 早穂さんへ

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前回インタビューさせていただいた本城祐哉さんから質問をいただいております。「舞台に上がる前にルーティーンを行ったりしますか?それはどんな目的で行われますか?」というのは、ルーティンをしたことで集中力を高めすぎて失敗したことがあるそうで。
松田 
ルーティーンというほどではないですが、お腹がいっぱいすぎると動きにくいので、食事を抑えめにすることです。おにぎりみたいなものを一つ食べるぐらいです。

dracom『釈迦ヶ池 - Der Buddha-Teich』

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dracomのお話が出来なかったですね。
松田 
dracomとしたためがほぼ同じ日程で上演することになって私は見に行けないんですが、こないだ創作過程を少し聞いたところすごく興味深くて。ドイツのデュッセルドルフでリーダーの筒井さんと俳優の鎌田さんが現地の女優さんとこの夏滞在制作された力作と思います。
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楽しみです。
dracom『釈迦ヶ池 - Der Buddha-Teich』

1880年の事件をきっかけに問う、「謝罪」とは? 【Co-program 2019 カテゴリーA「共同制作」採択企画】 2 つの国の「謝罪」を巡る態度とは――。 明治13(1880)年に大阪で起きた「釈迦ヶ池遊猟事件」から着想を得た、公演芸術集団dracom、京都芸術センター、ドイツ・デュッセルドルフの劇場FFT(Forum Freies Theater)による共同制作。 作・演出: 筒井潤 出演: 鎌田菜都実、 ナジャ・デュスターベルク ドラマトゥルク: オレック・ジューコフ ※上演言語:日本語・ドイツ語(日独字幕あり) ※上演時間約90分 日時 2019年12月6日 (金) - 2019年12月8日 (日) 12月6日(金)19:00- 12月7日(土)14:00- ★アフタートークあり 12月8日(日)14:00- 会場 京都芸術センター 講堂

紅茶

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今日はお話を伺えてお礼にプレゼントを持って参りました。
松田 
ありがとうございます(開ける)あ、紅茶。私最近すっかり紅茶派で。
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象の描いてある缶です。なんかちょっとおめでたそうな感じなので買ってみました。
松田 
象がいい顔してますね。頭から紅茶が。嬉しいです。こんな象に、タイで乗ったことがあります。
(インタビュー終了)