ステージタイガー#005「MATCH」 、最強の一人芝居フェスティバル“INDEPENDENT:14” 、忍ジャガー
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。ステージタイガーの役者、白井さんにお話を伺えます。白井さんは最近、どんな感じでしょうか。
- 白井
- そうですね、色々と演劇のお仕事で呼ばれる事が多いです。有り難い事に。ステージタイガーと、independentの一人芝居、それから滋賀県で撮影している「忍ジャガー」の特撮ドラマに出させてもらっています。
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- お忙しいですね。
- 白井
- そうですね、嬉しいです。忙しくさせてもらっています。
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- さて、まずはステージタイガーの次回公演「MATCH」。チラシに書いてある粗筋を拝見するに、今年のABC春の文化祭でステージタイガーが上演された作品と似ているような気がするのですが、いかがでしょうか。
- 白井
- そうですね、設定としては似ていますが、全く新しい作品として楽しんで頂けると思います。文化祭の時の作品と同じく、主人公は飛脚ではあるんですが、配役は全然違うんですね。江戸時代、ある飛脚が想いを寄せる人が大阪にいると。その彼女がいる大阪でもまた別のストーリーがあるんですね。江戸と大阪は別々で、大阪チームと江戸チームはあまり絡まないんですけど、最後の最後で少しだけ接点があるんですね。
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- その瞬間が楽しみですね。どんなトーンのお話になりそうでしょうか。
- 白井
- 時代が幕末、戦乱という程でもないんですけど、その頃の話です。言ってみればそれほど壮大な話ではないですね(ステージタイガーは、人間、ヒューマンドラマを扱う事が多いんです)。ご期待に添いたいと思います。
ステージタイガー
俳優達の鍛え上げられた圧倒的な筋肉。それに最大限の負荷をかける事により、人間の奥深くに眠る野生のエネルギーを創出する。そんな超体育会系演劇を目指すステージタイガーは、関西を代表する強く、切なく、そして狂おしい劇団です。15名を越える劇団員で、自主公演だけに収まらず、ライブハウスから廃校まで、年10本以上のイベントにも出演中。今日もあなたの元へステージタイガー。もう、君にムキキュン。 (公式サイトより)
ステージタイガー#005「MATCH」
公演時期:2014/10/23〜26。会場:シアトリカル應典院。
最強の一人芝居フェスティバル“INDEPENDENT:14”
公演時期:2014/11/27〜30。会場:in→dependent theatre 2nd。
真っ直ぐな事をするのって実は難しい
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- ステージタイガーの作品で、白井さんは結構、まっすぐな人という役所が多いと思うんですが・・・
- 白井
- そうですね。実は、劇団の作品自体がまっすぐなんですよね。
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- そうですよね。虎本さんの書かれる脚本がそうだし、ストレートプレイでの表現も非常に素直に要点を押さえている印象があって。
- 白井
- 良くも悪くもですけど、すごく分かりやすいんだと思います。ただ、真っ直ぐな事をするのって実は難しいんですよね。こねくり回すよりも難しいかもしれない。演出もそんなに難しい指示はなく、「そこはもっと強く」だとかプロレスみたいな演出なんですけど、とにかく出し惜しみをするなという事はよく言われています。
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- なるほど。
- 白井
- 稽古場で若い子達が良く言われてるんですけど、「お前らが力を抜いている芝居なんて見たい奴はおらへんぞ」と。
あの時のいい顔に見つけたもの
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- 白井さんがお芝居を始めたのはどんな経緯があったんでしょうか。
- 白井
- 小学生の時に、深夜TVで芝居を見たんですよ。光GENJIの内お二人がでている真田十勇士のお芝居で、最後のカーテンコールで、脇役のおっさんがめちゃくちゃいい顔で挨拶してたんです。汗だくで。芝居はもちろん面白かったんですが、その顔が、めちゃくちゃいいなと思って。そっち側に行きたいなと思ったんです。
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- その俳優の表情が、印象的だった。
- 白井
- あの嬉しさは何だろう。すごく汗だくできらきらしていたんです。でもそこからすぐに演劇を始めるという訳ではなかったんです。中学校の頃にお笑いブームだったので、文化祭でそういうのをやって、笑ってくれるのって嬉しいなと思って。高校の頃に、ゆとり学習の枠で、金曜日に一限だけ演劇の枠があって文化祭で上演しました。大学に入ってから、演劇ぶっくとかで公演の近い劇団に入団しました。
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- 恐れ入りますが、劇団名を伺えますでしょうか?
- 白井
- 「暇だけどステキ」です。その8回目ぐらいの公演の時、僕が身体障害者の役を頂いたんですね。その時にスタッフで来ていた現在のステージタイガーの代表のhigeさんが見て下さった上に、団員の方にもオススメして下さったそうで。その、僕の役が本物に見えたと仰って頂いて。凄く嬉しかったですね。それから、お誘い頂いて出演させて頂くようになりました。
バトンタッチ
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- 次回公演「MATCH」。意気込みを教えてください。
- 白井
- 僕が貰っている役というのが前半メインで、後半では段々と出番は減っていくんですが、通して見ると、後半に向けてどんどん盛り上がっていく感じ。急加速してラストに向かっていくんですね。でも、僕に関して言うなら、出ていないシーンでも存在感が出せればいいなと思います。
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- その場にいないときにでも?
- 白井
- 僕の役が思い返されるように、バトンタッチが出来たら。そう思った時に、次の人への影響が良かれ悪かれ印象付けられたらいいかなと。
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- 印象を刻む、という事ですね。
- 白井
- この人がいたから、この人のいるシーンが生まれて、この人の台詞に繋がっているみたいな。
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- そこをしっかり押さえるんですね。最近ちょっと思うんですが、役者の自分の演技に対する理解って、観客の共感とどう関係しているんだろうという疑問があるんです。もちろんお客さんはそれぞれ別の価値観を持っているので共感は別々にするでしょう。でも、役個人が語る批評について、役者個人が理解していなければ、観客の価値観に訴える事出来ないはずで、それが役作りであり役作りにおける「理解」なんだろうなと思うんです。
- 白井
- 今のお話を聞いていて、確かにその通りだなと思う部分はあるんですが、でも「伝わってるな」と感じながらやっている訳ではないんですね。僕も、「お芝居をしてしまう」というところで良く怒られてしまうんです。
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- 「お芝居をしているわね」と言われてしまうんですね。
- 白井
- 嘘をついてはいけないんです。役のその気持ちは、ホンマにそう思ってやっているのか?「そのつもり」でやったらそれは嘘になる。それがすごく難しくて。だから僕らのお芝居は本当に走って本当に疲れるんですね。そのリアルさには嘘がないので。
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- その通りですね。
- 白井
- 僕はテクニカルな役者ではないので、でも嘘は付かない、大きな声を出す、目をまっすぐ見る、そういう事には気を付けるようにしています。まだまだですけど。
楽屋へ這って帰る
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- 逆に、役者が自分の演技を理解しようと思ったら手抜きは出来ないはずで、だからその時の積み重ねとか検証が、一つの演技を支えているに違いないんですよ。で、観客は実は役者の演技を見る時、そのスープが何で出来ているかを味覚とか直感でかなり正確に理解出来てしまうんですよね。評判の良い舞台でもそこが出来ていなければ、やっぱり面白くないと感じてしまうんですよね。
- 白井
- それはありますよね。ストーリーが凝っていても、何か。
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- まあ、もちろん役者から入っていかないお客さんもいるんですけどね。
- 白井
- 僕らで言うたら、役者の一人間としてのエネルギーこそが売りだと思っているんです。だから、手抜きなんて出来ないですね。終演後に役者が立てないぐらい疲労して、バタバタと倒れて、ぐったりしている。それぐらいのエネルギーを出さないと。
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- そんな、エネルギーに由来した演劇。
- 白井
- ジャブは撃つんですけど、最後は必ず大振りのストレートなんです。そういうイメージかなあ。殴る方もクタクタになる。
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- そういう舞台で、お客さんに何を持って帰ってもらいたいですか?
- 白井
- 「何か」はお客さんが作ってもらいたいです。その何かの元になるものを与える事が出来たらいいなと。駅までの距離をちょっと早歩きで帰れるぐらいのエネルギーでもいいですし、家で腹筋するとか、楽器の練習するでもいいいですし。何かのワンプッシュというか、起爆剤になれたら嬉しいです。
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- わかりました。起爆剤!いい言葉ですね。
僕を変えた舞台
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- 白井さんにとって、これまでで一番自分を変えたと思われる舞台は何ですか?
- 白井
- 今お話した中では、ステージタイガーに入ったきっかけになった、「お元気ですか 岡本先生」という作品ですね。その時の知的障害者の役が、本物を舞台に上げているんじゃないかと思うぐらいの出来だったと言われましたね。
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- すばらしい。
- 白井
- 特攻舞台Baku-団の時の「半端Rock'n27roll」という作品もそうでしたね。27歳という、煮えきらない年齢のフリーター達がバンドを組む話ですね。そこでも知的障害者の役で、最終的には谷屋さんにバットでボコボコにされるという、体を張った作品でしたね。僕の関わる芝居、そういう役が多い気がしますね。
質問 たみおさんから 白井 宏幸さんへ
旅に行く
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- 今一番、興味のある事は何ですか?
- 白井
- もし出来るのであれば、旅行がしたいですね。国内・国外問わず、いろんなところに行きたいです。自転車に乗るのが好きなので、たとえばツール・ド・フランス(のコース巡り)に挑戦してみたいです。他にもやりたい事はありますね。ボルダリングとか、泳ぐのもいいですし。体を動かすのが好きなんですよ。
ご期待ください、一人芝居
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- さて、independentの一人芝居フェスですね。脚本が、k.r.arryさん。どんなお話になるのでしょうか。
- 白井
- これがひどい話でして。35歳で童貞の白井宏幸という男がおりまして、その人がストーカーをしていると。とにかくその女の子に声を掛けられず、ある日、その子をドラキュラが狙っている事が判明するんですね。その子が処女だから。それは何とかして守らないといけないので、その子を処女じゃなくする為に色々説得するという話です。
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- 最低ですね。
- 白井
- ですよね(笑う)。でも、勇気を振り絞って説得するんです。
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- そこが葛藤なんですね。しかしひどいな・・・女性の事を何も考えてない。すばらしく最低の脚本ですが、それを書かれたのが、劇団エリザベスのk.r.arryさんですね。
- 白井
- 劇団エリザベスは本当にファンタジックで可愛くてステキなお話をするんです。僕の一人芝居を、劇団エリザベスの会議で話したら「エリザベスでは絶対にしないでくださいね」といういわれたそうです。
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- 見てくれたお客さんに何を手渡したいですか?と質問しようと思いましたが、聞くだけ無駄かもしれませんね。
- 白井
- いえ、そこは谷屋さんの演出の力がありまして。言っている事はまず間違えているんですけど、なぜか感動する人間力を出してくれ、と。バカだけど真っ直ぐに、彼女を助けたいんです。その子を。僕は本当にドラキュラを見たし、ストーキングはしてましたけど、思いは強いんです。
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- トライアルを経て、手応えはいかがですか。
- 白井
- そうなんですよ、ありがたい事に、予選を一位で通りました。でも本当に、こんなのが通っていいんだろうか・・・ありがたいんですが、最低なのは自覚しているんです。だからこそ、11月末の公演では全力で望みたいと思います。
会話劇に興味あり
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- いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
- 白井
- そうですね、今こうしているような会話を見せる芝居がしてみたいです。このテーブルを囲んでいるだけの関係性だけで見せられるような。
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- 素晴らしい。会話劇。
- 白井
- 会話劇といっても、面白くない会話劇というのはやっぱりあるんですよね。「これが面白い会話劇だろう」と思って作られた芝居が、本質を掴んでなくて面白くなかった、という事はあるので。それはエンタメでも同じなんですけど。
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- そういう、集中した空間ですね。
「何でもやります」の姿勢
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか。
- 白井
- もう一回、「何でもやります」という気持ちに立ち返りたいですね。二十歳くらいの頃は本当にそういう気持ちでやってるんですけど。もちろん選ばなきゃいけないし、色んな事情はあるんですけど。でも「何でもやります」の姿勢で、少しでも魅力を感じたお話には、迷ってお断りするのではなく引き受けたいな、と。自分からもっと、オーディションとかも受けたりしたいなと思います。身体が動くうちは。
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- そうですね、体が動くうちは。
- 白井
- 自分には飽きないようにしたいと思います。僕はこんなもんだから、みたいに捨てたりはやめようと思います。歌は苦手だからとか踊れませんとかじゃなくて。それはやってきていないだけなので。可能性が眠っているだけなので、最初から否定はしないようにしようと思います。
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- 自分を限らないようにしたいと。
- 白井
- そうですね。言うてもまだまだ勉強不足なので、もっと吸収していきたいなと思います。
レジャー椅子
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
- 白井
- ありがとうございます。いま見てみてもいいですか?
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- もちろんです。
- 白井
- イスですね。
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- はい。稽古場とかで使っていただければ。
- 白井
- これ、いいですね。色使いが可愛いですね。