遊劇体「山吹」
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- 今日は、宜しくお願い致します。
- 大熊
- 宜しくお願い致します。
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- 最近はいかがですか?
- 大熊
- 公演が終わってほっとした所で。でも、もう夏に関わる企画ものに向けての準備が始まっています。
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- 直近の公演は、遊劇体の「山吹」ですね。非常に面白く拝見させて頂きました。
- 大熊
- ありがとうございます。
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- 出演されて、いかがでしたか?
- 大熊
- 今までと全く違う作り方で、動かずにセリフのみに徹する、義太夫の太夫さんみたいな、そういう立ち位置を見つけるのに結構苦労はありましたね。でも、こういうアプローチの仕方もあるんやなあと。
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- 特定の役という訳ではなく、言ってみれば語り手でしたね。コロスというのとはまたちょっと違うのかもしれませんが。
- 大熊
- そうですね。登場人物の女自身であるべきなのか、語り手というスタンスを崩さないでいるべきなのかを最後まで悩んでいましたが。私なりにやったらこうなりました! みたいな(笑う)。
遊劇体
1983年12月、京都大学演劇部を母体として団体結成。1984年7月キタモトマサヤの作・演出で野外劇を上演、旗揚げ。1990年までは京大西部講堂でのみ公演活動。91年より現主宰キタモトマサヤが実質上の主宰となり、野外劇場での公演のほか小劇場にも進出し公演活動を行う。(公式サイトより)
遊劇体♯46 泉鏡花「山吹」
公演時期:2008/6/26〜30。会場:精華小劇場。
ずっと
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- 大熊さんって、いつ頃からお芝居を始められたんですか?
- 大熊
- 小劇場を始めたのは、丁度10年前からですね。それまで、中学・高校と演劇部だったんですけれど、だんだん部活動では済まなくなってきて。親に「京都のとある劇団が大好きだから、そこを輩出した大学に行く」と言って、なんとかその大学に無事入れたんですね。で、その学生劇団に入ろうとしたんですけど、機会を失ってしまったんですね。お芝居がしたいのにどこに入ったらいいんだろうとさまよっていた時に火曜講座のチラシを見かけて、そこにキタモトの講座があったんです。それが遊劇体との出会いのキッカケになりました。
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- 部活動では済まなくなってきて、という仰りようが熱いですね。
- 大熊
- 元々お芝居は好きだったんです。宝塚とか、ミュージカルをよく見ていました。中学でも、気がついたら演劇部に入部届けを出していて。一緒にバスケ部に入る約束をしていた友達に「ごめん、私何か知らないけど演劇部に出してしもうた」と(笑う)。春休みや夏休みを潰して稽古に通い続けても、全く嫌気がささなかったんですね。
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- それは素晴らしい。
- 大熊
- むしろ、こんな楽しい事がずっと続けられるものならと。
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- なるほど。では、遊劇体に入られたキッカケは。
- 大熊
- さっきお話しした、キタモトの火曜講座で配られた出演者募集のチラシを見て参加したのが、市役所前の広場で一日限りの野外劇をするというもので。市役所前でずっと稽古していたんですね。とにかく走ったりとか、ただ走るだけじゃなくて全身を使って色んな走り方をして、みたいな。そんな事を延々と続けている内に、ランナーズハイじゃないですけど「あ、楽しい」と。言葉だけじゃなくて、体を使って表現する事にやりがいを見つけたんです。それが決め手だったと思います。
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- 分かりました。ところで、私が初めて遊劇体を拝見したのは、去年の天守物語だったんです。落ち着いた表現でありながら、俳優の体から迫力が伝わってきたのは、そういった全身で表現するというベースがあったからなんでしょうね。
- 大熊
- 最近の公演は室内で公演する事が多くなったので、よりムダな動きを省いて作るのが基本にはなりましたね。でも、「体から作っていく」「体を頼りに考えていく」という傾向はあまり変わらずに残っています。
火曜講座
当時、京都で活躍する演出家のワークショップを青少年活動センターで行う催しがあった。
「闇光る」
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- 今まで、大熊さんが参加されたお芝居で、大きな転機となった公演はありますか?
- 大熊
- 大きなものから小さなものまでありますが・・・。一番大きなものは、一昨年再演した「闇光る」というオリジナル作品がありまして。
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- どんな作品だったのでしょうか。
- 大熊
- 舞台は1970年代の大阪府南部の山間の町でした。離婚して何年ぶりかに帰ってきた女が、過去の思い出の名残が残る洞窟の中で、昔好きだった男や自分に片思いをしていた男などと再会するんですね。一幕ものの会話劇で、隠された過去などが見え隠れするという芝居でした。
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- ありがとうございます。大熊さんは、どのような役柄だったのでしょうか。
- 大熊
- 私は、24歳バツイチ子持ちで地元に帰ってきた女の役でした。離婚した女に対する理解が浅いというか、今ほど女の地位が高くなくて、離婚なんかして帰ってきて恥ずかしい、みたいな村意識がある時代で。
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- なるほど。では、大熊さんにとって、その作品はどんな転機だったのでしょうか。
- 大熊
- まず、それまでのスタイルとは全く違うお芝居の作り方だったんです。小空間の中で、登場人物4人のリアルな感情で紡いでいくという。緊迫感の中で、お互いの吐息やニュアンスが芝居の流れにそのまま直結する作品だったんですね。
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- 細かい芝居だったんですね。
- 大熊
- そういう演技に初めて挑戦したんですね。自分には物凄くハードルが高くって思い悩みました。そういう意味で転機になりましたね。自分の芝居が、リアルに自分にフィードバックしてくるんです。そういうのを初めて体感したのがこのお芝居でした。のちのち、この戯曲が仙台で賞を頂いたというのもあって、劇団としても新たな始まりになりましたね。
本当に心が
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- 大熊さんが芝居をやっていて、一番手ごたえを感じる時というのはありますか?
- 大熊
- 同じ作品の本番(または稽古)でも、他の回とは違う特別な瞬間が稀にあるんですよ。「こういう出方をされたらこう行ってしまうなあ」って、自分でも思いもしなかった方向に気持ちが動く時があるんです。稽古をずっとやってきて、自分でもある程度感情の流れの地図を作っていくんですけど、その瞬間は今まで無かったような心の揺さぶりがきて、「え、あたし今からどうなるんだろう、これで最後までお芝居が出来るんだろうか」と思うんですね。
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- 心の揺さぶり。それは凄いですね。
- 大熊
- その時向かい合っているお芝居と相手役とお客さんとの間で、新しいものが出来るんですね。それが凄く衝撃的で楽しいです。
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- 新しいものが見える。
- 大熊
- 私にとって新しい事が見えるという事で、見ている人にとっては微妙な事だと思うんですけど、それで芝居の印象が多少変わったりするのかも知れません。新しい人間関係が構築されるみたいな。
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- その一瞬が成立するんですね。
- 大熊
- その場にしか起こらない瞬間というか。極端に言うと、すごい笑えたり、涙が出てきたり。今までそこで笑いや涙が出てきた事ないのに、何でここで? という。その私を、共演者も含めた周りが受け容れてくれた時に、今まで見えて来なかった芝居の別の側面というか本質にぐっと近づけたと思うんですね。それは芝居をやっている私自身の手ごたえで、お客さんがどう見えているかは分からないんですけど、幸せな瞬間です。予定調和ではないんですね。お芝居だけど、芝居じゃない一瞬というか。本当に心が動いているんですね、その時。
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- 私個人の想像に過ぎないですが、それは客席からでも分かるのではと思います。もちろん、その揺さぶりを得る為にいつもとはちょっと違う事をしてみる、という事ではないですよね。
- 大熊
- そういう事ではないですね。稽古の積み重ねも重要で、むしろそれがあるからこそその瞬間にも行けるんだと思います。
メイクと印象
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- かなり失礼な話題になるかもしれないのですが、私は大熊さんのメイク技術が本当に凄いなと思っておりまして。
- 大熊
- (笑う)
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- はい。田辺剛さんの下鴨車窓の公演「旅行者」での印象と、遊劇体での印象がまるっきり違っていて、全然別人じゃないかと。毎回驚いております。
- 大熊
- ありがとうございます(笑う)。そうですね。メイクは大事ですね。時間があったら2時間くらい掛けます。
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- あ、そんなに。
- 大熊
- 不安なんですよね、ちょっといじり始めてしまうと、本番直前までやってしまうんですよ。周りにもうやめてと止められるくらい。
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- なるほど。
- 大熊
- だから最近は、なるべく早めにメイクを始めないようにしています。
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- そうですか。コンパクトに済ませると。
逃げたくない
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- この間のユニット美人は、いかがでしたか。
- 大熊
- 何か、久々に新鮮な空気を吸ったような気がして。伸び伸びとやらせていただきました。
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- そこで伺いたいのですが、大熊さんは沢山の客演経験をお持ちですが、今後どんなお芝居をやっていきたいとか、そういうものはありますか?
- 大熊
- うーん。人の気持ちとか、体とか。その営みを通して見えてくるものからは離れたくないなと思っています。
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- はい。
- 大熊
- コミュニケーションそのものから逃げたくないんですね。自分と自分との、または他人を介してのコミュニケーションで、素直な心と体の流れであるとか、そこに自分と相手が立っている事をちゃんと考えたいっていうか。あー、漠然としている。
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- いえ、結構明確だと思います。
- 大熊
- 本当に? 何か、そこからは離れたくないなあと。
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- 考える姿勢を持ち続ける、という事でしょうか。
- 大熊
- そうですね・・・。きっと、一生離れられないと思うんですね、人と接っするという事とは。その自分自身の経験を、表現として舞台に持っていけたらなと思います。良い部分も、嫌な部分も、きっちり考える事から逃げたくない。自分も受け止められるし、表現も出来るようになりたいなと思います。辛い事に直面しても、それが表現に繋がったりすると、前向きになれますね。
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- わかりました。それでは今後、どんな感じで攻めていかれますか。
- 大熊
- まあ、地道に、切実に、鍛錬を怠らず、真摯にがんばります。
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- 割と地道系ですね。
- 大熊
- もう地道しかないので(笑う)。精進します。
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- 頑張って下さい。
- 大熊
- ありがとうございます。
ユニット美人
劇団衛星所属俳優の黒木陽子と紙本明子で2003年11月に結成。あまりに人気がない自分達が嫌になり「絶対モテモテになってやる!」とやけくそになって制作に福原加奈氏を迎え正式に結成。「女性が考える女性の強さ・美しさ・笑い」をテーマに日々精進中。(公式サイトより)
ムゴナの朝摘みばら水
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- 今日は、お話を伺えたお礼に、プレゼントがございます。
- 大熊
- ありがとうございます。
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- どうぞ。
- 大熊
- (開ける)これは・・・?
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- それはですね、バラの化粧水ですね。60本分のエキスが入っているそうです。
- 大熊
- へえ〜。60本も。これで、メイクを頑張ります(笑う)。