「オパンポン☆ナイトvol.3 曖昧模糊」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。オパンポン創造社の野村さんにお話を伺います。3月に東京公演「曖昧模糊」がありますね。実は去年の大阪公演 、私は途中まで拝見していました。めちゃくちゃ面白かったんですが、個人的な事情により途中退場してしまったのです。大変申し訳ございません。非常に興味を引かれるタイミングで劇場を後にする事になりました。本当に申し訳ございませんでした。
- 野村
- いえいえもう全然。見ていただいただけで。
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- いやしかし、あのタイミングで退場してしまったのは本当に申し訳なく。今はただ、続きが気になっています。
- 野村
- ではもう、王子小劇場でお待ちしていますので。
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- おお・・・見たいです。東京にはそろそろ行きたいと思っていたんですよ、本当に。
オパンポン創造社
2004年8月、野村侑志よる独り芝居「青春」にて旗揚げ。関西を中心に活動し、旗揚げより全ての作品の脚本・演出を野村侑志が務め、ペーソスと笑いを融合させた作品が支持されている。旗揚げより作品を発表し続け、その数は番外公演を併せ約5年足らずで二十作品以上。昨年は、劇団としての活動を完全に休止し、作品、そして役者のスキルアップを目的とし外部出演を勢力的にこなす。主宰の野村は、昨年2011年、一年間で海外公演含め十四本の作品に参加。(こりっちより)
オパンポン創造社 創設十周年記念『オパンポン★ナイトVOL.3 曖昧模糊』
公演時期:2014/3/6~3/8。会場:王子小劇場。
オパンポン創造社・十周年記念&第2回 Short Act Battle優勝ご褒美公演
公演時期:2014/5/16~18。会場:Live Space B.SQUARE。
希望
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- 「曖昧模糊」、ご自身としてはどんな作品なのでしょうか?
- 野村
- お芝居していると本当に色々な方とお仕事をするんですけど、中でもアイデンティティを突き詰める作品を作られている方もいる中で、僕の作品というのは自分自身のちっぽけな世界の中で生きていく、転んでも生きていこうという。「曖昧模糊」は短編集なんですけど。
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- はい。
- 野村
- ちょっと話変わるんですけど、昨日劇団Mayの金哲義さんのドキュメンタリーを見に行って。面白くて、そしてもの凄く衝撃的で。自分は本当に作品を作っていっていい人間なのか迷って、落ち込んでしまったんですよね。
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- なるほど。
- 野村
- そう思ってても、自分にしか作れないものはあると思うんです。自分の作品で、誰かにちょっとでも勇気を与えられたらなと思っています。最終的に、ご覧になったお客さんがほっこりして帰っていって下さったら。
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- 私が見た「曖昧模糊」は正にそんな空気感の作品でしたね。空気がね、いいんですよ。
- 野村
- 何かその・・・どういう状況にあったとしても最後には希望があるんだよ、という事を言いたいんですね。本当にちっちゃい事なんですけど。諦めなければ幸せになれるんじゃないか、みたいな。現実でそれを言うと単なる綺麗事で終わっちゃうんですけど、お芝居ならそれを体現出来るんじゃないかと思うんです。
脚本家としての変化
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- 今回の東京公演、企画のきっかけは。
- 野村
- オパンポン創造社が10年になりまして。一度、5年を迎えた日に東京に行ったんです。その時は公演する事自体が目標だったんです。
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- 10年!
- 野村
- というか、元々の始まりは16歳の頃から芸能事務所に入ってて。25ぐらいの時に辞めて、何も仕事がなくて。でも芝居がしたいと思った時にどうするべきかと思って、まずは一人芝居から初めたんです。10年経ってがむしゃらに走ってきたんですが、それが東京ではどう評価されるんだろうか、試したいんです。記念という意味もありますが。
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- では、去年の「曖昧模糊」はどんな手応えがありましたか。
- 野村
- 何よりも、自分が面白いと思って書いているところでちゃんと反応が返ってきたんですよね。昔は自分のやりたい事しかやってこなくて、それがズレているという事もあったんですけど。(良いか悪いかはともかく)お客さんとの感覚が一致してきている感触があります。これは別に妥協している訳じゃないですけど。
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- はい。
- 野村
- しょうがなしに始めた脚本が、やっと楽しくなってきた気がします。
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- 身について来た?
- 野村
- いや、身に付いたと言ったら勘違いした人みたいな感じですけど(笑う)なんだか、自分なりに形というか方程式が出来上がってきた気がします。
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- なるほど・・・去年、BLACK★TIGHTSの桜×心中 ですごいカッコ良く主演されてたじゃないですか。
- 野村
- あ、ありがとうございます。
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- 何かその時も感じて、今も改めて感じたんですけど、野村さんの作るものって気合を入れて“パッケージング”された手作り品って感じで好きです。
- 野村
- いやでも、まだまだ全然分かってない事は多くて勉強中なんです。今までは見ていただく時は不安だけだったんです。でも、今は見ていただきたいという欲が出てきましたね。楽しくはなってきたんですかね。
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- 素晴らしい。
〜BLACK★TIGHTSpecialnights vol.6〜「桜×心中」
公演時期:2014/2/20~24。会場:世界館。
2015年のオパンポン創造社
- 野村
- やっと色々なところから声を頂いてきているんですが、作品作りを続けたいという気持ちは強く持つようになってきました。脚本のお話も頂くようになってきて。
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- というと。
- 野村
- 4月にテノヒラサイズさんに作演と出演をさせていただく事が決まっていまして。本当に、最初に始めた頃には外で作演するなんて考えた事もないので。後悔しないようなものにしないといけないので。4月のそれが終わらない事には僕の2015年は始まらないです。
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- 2015年は、まずはそこですね。
- 野村
- まずは3月の東京公演を忘れずに。
役者、野村
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- 演劇を始めた経緯を教えて下さい。
- 野村
- 中学までは野球部だったんですけど、高校からは帰宅部でした。何もやることがない僕を心配して親が芸能事務所を勧めてくれたのがキッカケです。TVに出れたらいいなぐらいのミーハーな感じでした。
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- 役者をやってこられて、身につける事に出来た最大のものはなんですか?
- 野村
- これは作演をやっているからかもしれないんですけど、例えば嫌な事があって、「これは面白いから覚えておこう」と俯瞰で見れるようになった事です。悩むよりは、もしかしたらこれが芝居に役立つかもしれないとネガティブな方向に行かないマインドを手に入れたんですね。このシチュエーション、逆に面白いって感じれるようになったのかも。人生をちょっと楽しめるようになった気はします。
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- 凄いなあ。状況の中にあって、それを一度とらえ直すみたいな。
- 野村
- 現実逃避するのに近いかもしれないですけど、逆に鮮明に覚えていて、振り返るんですね。まあその時はその時で真剣に悩んでいるんですけど。
質問 伊藤 えりこさんから 野村 侑志さんへ
誰かの中に続いていく作品を創りたい
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- 作演として、どんな作品を作れるようになりたいですか?
- 野村
- 希望としては、一人でもいいので、見て下さる方が何十年先に思い出してくれる作品ですね。一本でもいいから作れれば表現者としては最高だなと。ざっくりとした答えになっちゃいますけど。
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- 見た人の人生に関わるような?
- 野村
- 書き続ける事で、見に来て頂いた方に伝えられる方法論を探したいですね。
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- 去年のオパンポンの居心地の良さが印象に残っています。といってガツガツしていない訳じゃなかった。ちゃんと演劇の空気が底にあったんです。あの、包まれている感覚が今後、どんなものになっていくのかが楽しみです。
全部やっておきたいんです。オパンポン創造社
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- 役者として、いつかこんな演技が出来るようになりたいとかはありますか?
- 野村
- いやもう、何でもしたいんで何でもしているんですけど、この年になってもメディアの最前線で活躍してはる有名な俳優の方とたくさん仕事をしたいという気持ちは強いです。関西小劇場の年上の方ともお仕事したいんですけど、やっぱりそういう気持ちはウソでも持っておかないと、とは思いますね。
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- なるほど。
- 野村
- 桜×心中とか、ふだんやらないジャンルのお芝居とかにも挑戦していければと思っています。全部やっておきたいです。
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- 今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
- 野村
- 10年オパンポンをやってきて。ようやく色んなところから呼んでもらえるようになって。最初の目的は達成できたはずなので。これから自分はどこまで走れるかですね。著名な方とも仕事が出来るようになりたい・・・普通の人みたいな言い方ですけど。それから、これまで自分は横の繋がりはあんまり持ってなかったんですけど、もっとお客さんに見てもらえる・関西小劇場が盛り上がる方法を模索出来ればと思っています。横の繋がりがあんまりないので独自という形にはなると思うんですけど。
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- 最後に。改めて、オパンポン創造社東京公演の意気込みを教えてください。
- 野村
- 今回も見切り発車で始めてしまって、動員が壊滅的な状況になっているんですけど・・・それはそれでしょうがないんですけど、諦めずに、一人でも多くのお客さんに見て貰えるように頑張っています。作品は面白いので。大阪公演は評判良かったんですけど、それをなぞるんじゃなく、良い公演にしたいです。
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- オパンポン野村さんは何かこう、私の中では今の関西小劇場の中でのユニークさを引き受けている感じがします。個人的にははまりますよね。ところで、オパンポン創造社ってどういうところから付けた名前なんですか?
- 野村
- 中島らもさんが好きやったんですよ。始めて劇場に日程を押さえに行ったとき、劇団名を聞かれて。何も知らずに行ったんで、用意してなくて。その時偶然持っていたらもさんの短編に「おぱんぽん」って書いてあっって。生み出していくという意味で、色んなものを生み出していこうと。
ファンタジーの不可解さって
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- 作家としても幅を広げている野村さん。どんな作品を書きたいのですか?
- 野村
- 何かあるんですかね。この前もテノヒラサイズさんで短編集のうちの一本を書かせて頂いたんです。ドキュメンタリーシリーズという事で、普段自分が思っている事を書いたんですよ。というか、どんな作家さんでも同じだと思うんですけど、自分が思っている事しか書けないものなんですよね。僕は普段、インドア派なんですけど、もうちょっと余所に出ていって、事件に巻き込まれなきゃならんなと。書ける範囲が限られてるな、とは、ね、思っています。
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- 領域を広げる、という事ですね。
- 野村
- でも、ファンタジーの書き方にも興味があるんですよ。ファンタジーの中に生身の人間を置くやり方、とか・・・
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- ありえないファンタジーの世界や人物に、さらに訳の分からない事をしてもらう事で、自分の影の部分を投影しようとする、とかかもしれませんね。そこには現実の不合理さも流れ込んでいるのかもしれない。それで解消するような部分はあるかもしれない。だから、ファンタジーの住人には全然理解出来ない行動をとってもらいたいですね。
- 野村
- ああ、なるほど。
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- 魔王とかにはもっと不可解であってほしいかな。
- 野村
- 面白い事を聞きました。なるほど!書いてると気持ち悪くなるんですよね・・・矛盾を矛盾と思わなくなっていくのが大人やと思うんですけど、矛盾過ぎると気持ち悪くなって、途中で筋を通したくなってしまうんですよね。これで芝居をやっていけるんだろうか。
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- いやあ、これからどんどん、表現は色々な面から切り詰められていっていくような気がするので。遊びと余裕のある表現を大切にしてもらいたいです。ワガママかもしれないですけど。
シリコンの水筒
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 野村
- ありがとうございます。(袋を見て)東急ハンズはね、オパンポンパンツを買っているんですよ。
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- あ、あれは買ってるんですね。
- 野村
- でももう製造中止になって。製造元の会社さんによると買う人がいないらしくて。(開ける)これは。
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- 柔らかい素材の水筒です。コンパクトに折り畳めます。
- 野村
- あ、嬉しいです。欲しかったんですよ、水筒。