五月の暖かい日に
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。黒木さんは最近、どんな感じですか?
- 黒木
- 最近はちょっと落ち着いています。やりたい事を模索している時期があったんですけど、それが段々と落ち着いてきて、今はわりと安定してますね。
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- 気持ちが安定している、か。それは凄いですね。羨ましい限りです。
- 黒木
- 安定していないんですか?
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- まあ。
- 黒木
- まあ、私も今までに比べてですけどね。
ikiwonomu第1回マイム公演「かつての風景」
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- 来月公演予定の、ikiwonomu第1回マイム公演「かつての風景」。生演奏とマイムの作品という事で、とても楽しみです。マイム公演という事は、台詞は無いんですよね。
- 黒木
- そこはいまちょっと迷っていて。言葉を使ったとしてもマイムというジャンルでいけないかな…と思っているんです。演劇から呼んでいる人もいて、その方が台詞を発している時の身体、姿にはやはり生々しさがあって。人が生きているように見えるけれども、その台詞を無くしたマイムにいかにその姿を残すのか、それとも台詞も入れてマイムとして成立させるのか。
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- さじ加減の難しいところですね。
- 黒木
- 喋ると演劇やん、ってなりかねないので。悩みながらも楽しくやっていますね。
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- どんな公演になりそうでしょうか。
- 黒木
- その、自分自身が見たいものを実現出来たらいいなと思ってます。人を見せたいというよりは、人を通してその奥に広がっている風景が見えたらいいなと思っています。その息づかいを見せたいですね。
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- マイム俳優から見えてくる風景。
ikiwonomu第1回マイム公演「かつての風景」
目の前にある写真。私を取り囲む人びと。 目の前にある写真。弾き語りをする男。 目の前にある写真。出された美味しい食事。 目の前にある写真。の中で笑っているひとりの人。 あなたは、だれ。 私は口いっぱいに広がる人参の香りを味わいながら、目を閉じる。 まぶたの裏は、真夜中のように暗い。 波の音が聞こえてくる。 【公演日程】 6月19日(金) 19:00 20日(土) 15:00 / 19:00 21日(日) 11:00 / 15:00 / 19:00 22日(月) ★13:00 / 17:00 ★6月22日(月)13:00の回は、平日マチネ割(500円引き) [一般]前売2500円 当日3000円 [ユース(25歳以下)・学生]前売・当日共に 2000円 [高校生以下]前売・当日共に 1500円 【会場】KAIKA 【出演】岡村渉 / 菅原ゆうき(兵庫県立ピッコロ劇団) / 豊島勇士 / 仲谷萌 / 黒木夏海
お祖母ちゃんの光景
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- ikiwonomuでは、どんな作品作りをされているのでしょうか。
- 黒木
- その人の生い立ちなどを聞くのが凄く好きなんです。それをまず最初にばーっと聞いて書き残して、面白かったエピソードを、ちょっと反映します。でも、「かつての風景」に関しては、大体わたし自身の話です。ちょっとずつ、お客さんが楽しめるように再構成して。
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- 例えば。
- 黒木
- ウチの陽気なお祖母ちゃんの話かな。結構前から認知症で、私たち家族の事も忘れていて、今は施設に入ってるんです。でもお爺ちゃんのお葬式に、出席せざるをえないじゃないですか。私たちにとってはお葬式はしめやかで静かなものなんですけど、お祖母ちゃんにとってはライブ会場のようで、お坊さんの頭が光っているのを笑ったり、数珠のふさふさで遊んだり。家族としては思う所もあるんですけど、同時に、面白いなあと思ったんです。
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- というと。
- 黒木
- お祖母ちゃんからは、その時のお葬式はどんな風に見えていたんやろうか、と。違う風景が見えていたのかもしれない、と。それを、形を変えて今回の作品に生かせたら・・・。
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- 黒木さんが伝えたい風景。それは根本的に、家族から来ている?
- 黒木
- そうですね。何年か前に引っ越したんですけど、その時の母のワクワク感とか、父が少し寂しそうだったり。そういうのが何か、良いなあと。
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- なぜ、家族の事を伝えたいと思うのでしょうか。
- 黒木
- 何ででしょうね。そもそも、何で作品を作ろうと思っているのかな。でも、作らんとと思っていて。今のところ、テーマが家族になってしまう。そこにちょっと共感してくれる人がいた時、嬉しいというか、そういうものを通してのつながりが何だか好きなんです。
透明な壁を巡る旅
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- マイムって、演劇ともダンスとも違うジャンルですよね。だからまだ人類の知らない可能性があると思うんですよ。参入人数もまだそれほど多くはない。というか、歴史がまだ100年経っていない。
- 黒木
- そうですね。いいむろさんもおっしゃってるんですけど、マイムの良いところって、人生の長い時間を3分くらいの、いや、もっと短い時間で表現出来たりするんです。それが凄く魅力的かなと思っていまして。でも、一時間ちょっとの作品を作りたいんですけど、自分自身で作ろうとすると3分程の作品の方が作りやすくて見やすいし、一つ伝えたい事がドンってくるから。
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- 最終的にはより深い印象を刻めるかどうか、ですよね。
- 黒木
- そうですね。
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- 人生を凝縮して見せる事が出来る・・・ちょっと脇道にそれますが、マイマーってすごく俳優の人格が出ると思いませんか?
- 黒木
- 出ますね。
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- これはもう、演劇よりもくっきりと出るんじゃないかと思う。会話ではなく、モノVS人物なので。さらに、触れている人物を見ている観客はどんな状態にあるかと言うと、動きの面白さはもちろん、この人はこれからどうなってしまうんだろうというワクワク感。
- 黒木
- そうですね。何でしょうか。それこそ、それぞれの人格も含め、役者が客席の地続きに存在しているような・・・それは一要素としてはあると思います。名前が付いていない、情報が少ないからというのもあるかもしれません。誰か分からない方が面白いというのはあるかもしれません。
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- しかも誇張された動きで。何故あんなに不自然なのに見せられるんだろう。見えない壁に当たったら絶対、離れますもんね。絶対に触らないと思う。スリル満点ですよね。
- 黒木
- そんな人がいたらビックリしますよね。
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- 意外と、その姿が異様だからこそ、何かを感じているのかもしれない。
- 黒木
- ええ。
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- マイムの表現の原理に、何か、触るというアプローチがあって。あるかどうかも分からない透明を触るその者はその瞬間、個として完全なのかもしれない。何故なら彼はその時誰にも支配されず個としてそれに触れる事を選んでいるから。その時だけは確かに、見えない何かに触っている疑念の身体が明確に存在している。この特定によって、絶対に流れ去ってしまう時間や風景を空間にとどめようとする技術なんじゃないかと。凄くエンターテイメント性を持ちながらも、無常さそのものと相性の良い芸能なのかなと思うんです。そこで家族をテーマにした作品を行うというのは興味深いですね。
マイムとの出会いと、母性について
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- 黒木さんがマイムを始めた経緯を教えてください。
- 黒木
- 昔から結構、親に連れられて劇場に行ってたんですよ。学校にまわってくるような劇団が多かったんですけど、その流れで高校生の時に芝居のショーケースイベントの手伝いをする事になって。そこで、今は師であるいいむろなおきさんも参加されていて。その時に純粋に感動したんですね。
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- おお。
- 黒木
- それまでに色々見ていたから、身構えていたんですけど、いいむろさんの表現は、何もない舞台なのにとても現実味があって。それがマイムとの出会いでした。そこから別に何かを始めようというのは無かったんですけど。高校の頃は、何故かミュージカルにはまりはじめて。で、音大を目指し始めて。でも高3で目指し始めたものだから中々すぐには受かるはずもなくて、浪人をしたんです。二浪しても受からなくて、三年目に、受験勉強以外もしよう、劇場でバイトしたい、と芸術創造館のホームページを検索してみたら、ど真ん中にいいむろさんの写真と「人は3ヶ月でマイムの舞台にたてるのか?」とありまして。それに応募したのが、マイムをし始めたキッカケですね。今も、日曜日にいいむろさんが開かれているラボセカンドに参加しています。マイムを本格的に学び初めて八年目ですね。
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- なるほど。黒木さんは女性マイマーですが、マイムにおける女性男性の違いってありますか?
- 黒木
- 見ている側からの印象の違いはもちろんあると思います。やっぱりわたしはいいむろさんからの影響を大いに受けているので、表現の中に男性的なものはあるかもしれません。でも、作風に関しては女性的だと思います。演劇と同じで、女性作家がいるように。
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- 黒木さんにとっての女性らしさって?
- 黒木
- 最近、面白いなあと思っているのは母性です。何というか、母にしか出せない何か得体のしれないもの。他にない感じがしていて。
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- 黒木
- あと、男性と作品を作る時に、母性を求められる事があって。ウソやんと思った事はあります。
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- 母性を得たいと思いますか?
- 黒木
- 得たいですね。まだ無理な気はしますが。
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- あなたの身体はいま、どんな状況にありますか?
- 黒木
- いま、ですか。今わたし自身は、ちょっと変やけど外から見ています。今、自分自身がどういう視線を送っているかとかどんな体勢にあるのか、とか。外から見ている感覚ですね。子供の頃からそういう見方をしていたんですが、マイムをしてからそういう傾向が強くなりましたね。
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- 凄いですね。客観的、なんですね。自分には難しい。
- 黒木
- だから、友達と喋っていても、話題が自分自身の事なのに取りこぼす事もあって。「自分の事やで」って言われたり。ハッと思って自分に戻る事がありますね。
質問 DanceFanfare事務局の皆さんから 黒木 夏海さんへ
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- 前回インタビューさせて頂いたDanceFanfareの事務局のみなさんから質問を頂いてきております。まず、川那辺さんから。「ネコとイヌ、どちらが好きですか?」
- 黒木
- イヌ!
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- 竹宮さんから「好きな銘柄は何ですか?」タバコという意味ではなくて。
- 黒木
- 服やったら、ScoLar。
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- きたまりさんから。「生きている時の感動は、いつ感じますか?」
- 黒木
- 美味しいものを食べている時、ですね。
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- 御厨さんから。「自分の思う、美味しいゴハンはなに?」
- 黒木
- ハンバーグしか思いつかない・・・
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- 例えば、どこのお店とかはありますか?
- 黒木
- 家のも好きなんですけど、出町柳にあるハンバーグ屋さんが美味しかったです。その時中々ご飯を食べるお店が見つからなくて、ついに辿り着いたお店、って感じで印象に残っています。
マイムというジャンル
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 黒木
- マイムというジャンルにこだわっていきたいと思っています。狭いジャンルとして受け取られがちなのですが、でもきっと色んな事が出来ると思っています。ダンス寄りだったり演劇寄りだったり、それ以外も。どちらかというと演劇寄りの事がしたいんですけど。
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- いつか、どんな人と一緒に仕事したいですか?
- 黒木
- 今は、結構やりたい人とやれているので、もっとこの人達と長くできたらなと思いますね。
トマトのディップ味噌
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
- 黒木
- ありがとうございます。
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- 割れ物ですので、お気をつけて。大したものじゃなくて本当に申し訳ないのですが。
- 黒木
- (開ける)おお・・・凄い。トマトのディップ味噌。どちらも大好きなので。嬉しいです。