仮面戦争
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。斉藤ひかりさんにお話を伺います。最近、斉藤さんはどんな感じでしょうか。
- 斉藤
- 最近はバイト以外何もしてなくて。コンビニでバイトしてるんですけど・・・普通は「またお越しくださいませ」とか、マニュアルで言うじゃないですか、誰も言わないんですよ。
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- 斉藤さんも言わないんですか。
- 斉藤
- 「ありがとうございました」までは言うんですけど、その続きは私も含め誰も言わなくて。初日から言ったことがなくて。むしろ忙しくなるから、本心としてはあまり来ないでほしいぐらいの。店長と社員は言ってるんですけどバイトは誰一人言ってないのが面白くて。
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- そういうお客さんの流れだから言わなくなるのかもしれませんね。
- 斉藤
- すごい地元密着型のお店とかだったら言ったほうがいいかもしれないですね。梅田のコンビニなんで。
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- 駅が近いですからそりゃそうなるかもしれませんね。
- 斉藤
- ヤンキーが多いとかそういうわけじゃなくて仕事も掃除もちゃんとするんですけど。
斉藤ひかりさん次回出演B級演劇王国ボンク☆ランドvol.7『まるだし純情フォークロア』
作・演出:西マサト 日時:2019年10月25日(金)19:00 10月26日(土)14:00/18:00 10月27日(日)11:00/15:00 開場は開演の30分前 会場:人間座スタジオ 料金:学生一律1500円 一般前売2000円/当日2500円 ペア=前売りのみ3600円
努力クラブ「どこにも行きたくないしここにもいたくない」
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- 最近は努力クラブの作品への出演が多いですね。前回の本公演「どこにも行きたくないしここにもいたくない」がとても面白かったです。ご自身としては、どんな経験でしたか?
- 斉藤
- 合田さんから「演技のリアルさ、生っぽい感じ」を求められてたと思うんですけど、別に合田さんディスとかじゃないんですが、やってる私としては「嘘つけよ」と思ってました。「生っぽい」ってなんやねんと。合田さん大好きなんですけど、その上で別の問題で「生っぽいってなんやねん。生じゃないしめっちゃ練習してるし。あたかもこの場でセリフが発生したみたいになってる」と思ってました。演技してる自分とそう思ってる自分のせめぎ合いでした。超しらこい、めっちゃ白々しい自分やばい、稽古も、本番でも嘘つけよと思いながら。
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- 生っぽいとは一体何なのか。ドラマが必要とする(最低限の)行動や発言を紡ぎ出して欲しいとかそういう感じだったんじゃないでしょうか。
- 斉藤
- 覗き見みたいなことがやりたい、みんなに開いたことはしたくない、閉じてほしいと言われてて。でもそれは結局人に見せているので、やりながら「嘘つけよ」と自分に思ってて。
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- 「閉じる演技」とは。
- 斉藤
- 西さんが一人の時に女の子の名前を呼びながら暴れていたのは明らかにお客さん向けの開いた演技だったと思うんですよ。そこ以外はすべてが閉じてたんですけど。部屋の空気感出てる、みたいな。
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- 二人の間でのみ意味が通じていればそれでいいみたいな、むしろ嘘の方が多いみたいな。
- 斉藤
- ほぼ嘘、全員嘘みたいなそんな感じでした。
努力クラブ第13回公演「どこにも行きたくないしここにもいたくない」
公演時期:2019/6/7~10。会場:人間座スタジオ。
しらこい二人
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- まずですね、合田さんは斉藤さんがそういうふうに思ってるということについて多分分かってるんじゃないかと思います。いや多分ですけど。
- 斉藤
- そうですね。
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- その上で、「斉藤さんのそういう何か」に対してめちゃくちゃ期待しているんじゃないですかね。
- 斉藤
- 分かんないですけど、しらこいとか嘘つけとか思っていても良いとしてくれていると思います合田さんは。面と向かって言われたことはないですけど。普通演劇やる時って、信じないと駄目じゃないですか。けど、信じなくても良い、無理やんと思うようになってきてて。単純に演技をする時に、急にセリフを喋るとか、場面が変わるとか、演技に合わせてモードが変わりますとかに白々しいじゃないですけど嘘つけよってなって。単純に人の言うことを信用しないとかじゃなくて。でも本番が近づくにつれて、セリフを言うときに全然信用しないのはさすがにまずいなあと思って。自分もそう思いながらセリフを喋るのってあんまり乗らないというか「誰にキレてるん」と思って。
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- 役の必然性を高めれば白々しいと思わなくなるか?と言うと違うかも。でも、「またお越しくださいませ」はマニュアルが決まってるのにも関わらず、白々しくて言えないんでしょう?
- 斉藤
- それは普通に、これ以上忙しくなるのが嫌だから言わないです。自分は店員だと思っていたら「またお越しくださいませ」は言えるかもしれないですけど、でもバイト先の人は自分のことを店員だと思っていないんですよ。制服とかを着ちゃうと意識が芽生えて、言っちゃいそうになる、言えてしまうモードに入ってしまうんですけど、私の働いてるところではないです。
質問 木村 悠介さんから 斉藤 ひかりさんへ
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- 前回インタビューさせていただいた方から質問をいただいてきております。木村悠介さんからです。「最近観て、面白かったものは何ですか」。
- 斉藤
- この前誕生日だったんですけど、これぐらいの歳になってくると誕生日がどうとかあんまり何も言われないじゃないですか。おめでとうとか。普通にバイトして家帰ってきて、今日誕生日なのに何もないなあと思う。
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- はい。
- 斉藤
- で10年前私小学生だったんですけど、当時よく友達とパソコンでチャットしてて、久しぶりにそのサイトに行って行ってみたら何かトルコ人の人が来てて。アニメから覚えた日本語とかで片言で喋って。28歳の男だったらしいんですけど、私が日本の大学生の女だって言ったら、「写真送って」て言われて。
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- 難しいですね。それはどこの国でも人間だし男だし行動は一緒なんだろうなあ。これも偏見かな。
- 斉藤
- それまではアイコンの設定なしで普通に喋ってたのに、その途端顔を見たいと言われて。見ない方が楽しいこともあるよって言って、そのまま普通に。顔を見たいんやなあ、と。思ってた顔と違ったらどうしてたんだろう。ちょっと面白かったです。良い誕生日になりました。
京都ロマンポップ最終公演「FAINAL FUNTASY〜僕と犬と厭離穢土」
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- 今年の元旦に解散した京都ロマンポップの最終公演「FAINAL FUNTASY〜僕と犬と厭離穢土」。斉藤さんも出演されていましたね。あれは非常に面白かったです。
- 斉藤
- 面白かったですよね。すごかった。
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- あれは本当に素晴らしい公演でしたね。斉藤さんが大変な熱演をされていて。
- 斉藤
- 「斉藤ロマンポップ」のことですよね。あれは本当にみんなが導いてくれたと言うか。ロマンポップについては言いたいことが多すぎて。
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- ええ。
- 斉藤
- まず、最初に「特攻だ!」って宣言したんですよ。知らずに被るというのは演劇をやってる上で非常に恐ろしいこと、でもあえて被るのは事故じゃない。特攻だって言って。
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- なるほど。
- 斉藤
- 色々な劇のガワ、形式を借りてたんです。私が今まで出演してきた演劇ではガワを信用しないといけなかった。セリフの喋り方、体の動かし方、それを訓練して見せる。でもロマンポップの稽古場ではそれを誰も信用していないんですよね。それでもガワを借用するとき、「信用していない事を全員の間で信用出来ている」。それができる状況が私はとても良かったんです。そういうふざけ方をしてもいいんだ、馬鹿にしてもいいんだな。って。
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- オリジナルに対して敬意を持つかどうかはまた別の問題として、それらへの信用のなさを自覚してもいいんだ、という事なのかな。だってそもそも、彼らは必要性がないのに白塗りをしていますからね。そして、確かに、必要性がなくても白塗りをしてもいい。
- 斉藤
- 本気でふざけるって高田さんが言ってたって向坂さんから聞いたんですけど、型をふざけて真似すると本当にただバカにしているだけじゃないですか。型を信じずに、けれど本気で借用していると、なんか涙が出てきたりするんですよ。
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- おお。
- 斉藤
- というのは役に入り込んでるとかでは全く無く、何て言うんですかね、気が狂うと言うか、本当の状態になる、みたいな。全員白塗りだと、ふざけ合っているという共犯関係になって。超真面目に、「あたかもこういう気持ち」になるという事が許されると言うか。それが許される感じがあるんですよね。
京都ロマンポップ最終公演「FAINAL FUNTASY〜僕と犬と厭離穢土」
公演時期:2019/1/1。会場:UrBANGUILD。
「姿勢」
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- 今後、やってみたい演技とかはありますか?
- 斉藤
- 普段私たちって演技してるじゃないですか。それも舞台の上でまで嘘をつかないといけないのかって思ってしまう感じがあります。最近。
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- 福井裕孝さんの芝居はどんな感じでしたか。
- 斉藤
- あれは嘘とかではなくて、机の上で指だけで演じたんですよね。テーブルが劇場で、指が人です、と。でも机だし指は役者の指だし、後ろは喫茶店だし。それを見せるというやり方でした。
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- その、見せ方と共に定義が揺らぐ感覚は面白いですね。見世物であると同時に、その設定にどっぷりとはまりこめない状況でもあり、観客の姿勢を問うかのような。
- 斉藤
- 去年、けのびの羽鳥さんが主催している演劇エリートスクールに参加と言うか、受講してたんです(これは役者を育てることが目的じゃないものでした)全国から演出家が5人いて、その人の作品を観た上で別の演出家のワークショップを受けると言う。その中に向坂さんのWSがあったんです。熊本で。その内容が、白塗りで街を歩こうというもので。もしそういうのがあったら講師は様子を見守るじゃないですか。全然そんなことなくて、「いってらっしゃい」って。白塗りの女の子二人がコンビニで買い物して少し町を歩いて帰ってくるって言うだけの。まるで白塗りをしていないかのように振る舞ったんです。当たり前の行為をあえてやってしまう。白塗りやのにな、でも普通にサイフからお金を出す。白塗りでお金を出すという事を演じちゃってるんですよ。
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- ああ、自覚的になるんですね。
- 斉藤
- 自分が異常な状態だという自覚の中で、普通の行動を演じているんです。街に誰も白塗りの人はいないんですよね。今白塗りの人が来たら、何かパフォーマンスになるのかな、みたいに思ってしまう。そこでの日常的な行動が全部「自然な演技」になっちゃうんですよね。だからか、白塗りすると「しらこい」とか「嘘つけよ」が無くなる、許されると言うか。
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- 「またお越しくださいませ」は、制服を着ていても言えない?
- 斉藤
- 多分、「店員です」になったら言えると思います。想像上の店員をやってしまっている感が生まれるんですよね。
嘘と仮面戦争
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- これだけはどうしても伺いたかったんですが・・・「どこにも行きたくないしここにもいたくない」で斉藤さんが演じた「かすみ」。中学生にして援助交際やふしだらな行為だけの関係を不特定多数と続けていた彼女に、劇の後半、ついに彼氏ができます。それを機に、彼女は援助交際を一切やめてしまうのですが、彼氏には「辞めた」という事は明かさずそのままにしておきます。個人的にはあれがめちゃくちゃ好きなんですけど、どういうことだったのか分かりますか?
- 斉藤
- 私が思っていたのは、合田さんとは違うかもしれないですけど、本当は誰でもいい高野くんと彼氏の石津くんとは違う存在なんですよね。高野君はずるいじゃないですか。
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- そうですね。
- 斉藤
- でも石津くんには言わない。彼に言うときっと嬉しいじゃないですか。「俺のためにやめてくれたんだ」と思うじゃないですか。そうはさせない、と。付き合う前に、「援助交際を続けても良い」と言ってくれたから付き合う事にしたわけじゃなくて。真摯に考えてくれてるように見えたし、応えてあげてもいい、くらいです。石津くんとこれから付き合うから辞めるんじゃないんですね。見え方的には、かすみが本当に石津くんの事をめちゃめちゃ好きになったから、もしくは好きと言ってくれた人にちゃんと向き合うために辞めたように思われるかもしれないしそういう部分もあるんですけど、人間って一つじゃないじゃないですか。私の中では、そうはさせない、うまいこと行くと思うなよ、と。どうでしたか。
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- 実は、彼氏を嬉しがらせたくないという気持ちは全然分かります。その上で、(自分を)重いと感じさせたくないとかもあったんじゃないかなと思ってて。全員が全員に対して、それどころか自分に対してさえも嘘を付いているし、好きという感情すらも本当は「その人を好きな自分が好き」なだけ、という世界の中で、かすみの沈黙だけは真実の台詞だったように思えるんですよ。その上でデートが成り立つ奇跡が面白いなと思ったんです。そこに何か救いがある気がする。
- 斉藤
- 石津くんのために、演技じゃないですけど、やってあげてるみたいなところはありました。最後の夕焼けでのデートのシーンは「こういうの好きだろ石津」という思いがありました。
ミントの蜂蜜
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 斉藤
- ありがとうございます。重。ジャムですか。
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- ミントの蜂蜜ですね。確かにちょっとミントの味がします。
- 斉藤
- はちみつ好きなんですよ。お店で試食した時に、花によって味が違ったりしますよね。