ピンク地底人暴虐の第10回公演「明日を落としても」 と、ツチノコ計画「その指で」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、5号さんはどんな感じでしょうか。
- 5号
- ピンク地底人の第十回公演「明日を落としても」の大阪公演が終わって、ひと段落ついたところです。今は、個人的に企画した卒業公演の稽古を行っています。
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- ツチノコ計画の「その指で」ですね。
- 5号
- そうですね。学生劇団としての締めくくりとして。劇的集団忘却曲線に所属していたのですが、今はOBです。仲の良い後輩を巻き込んで最後に挑戦しようとしています。
ピンク地底人
京都の地下は墨染に生まれた貧乏な三兄弟。日々の孤独と戦うため、ときおり地上にあらわれては演劇活動をしている。夢は関西一円を征服することと、自分たちを捨てた母への復讐。最近は仲間も増え、京都を中心に大阪にも出没中。(公式サイトより)
ピンク地底人暴虐の第10回公演「明日を落としても」
公演時期:2012/6/30〜7/1(大阪)、2012/8/17〜8/19(東京)。会場:インディペンデントシアター2nd(大阪)、王子小劇場(東京)。
演劇ユニット ツチノコ計画「その指で」dt>
公演時期:2012/8/3〜5。会場:京都精華大学 明窓館104。
主人公を追い続ける
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- ピンク地底人暴虐の第10回公演「明日を落としても」大阪公演が終わりましたね。面白かったです。ご自身としては、どんな公演でしたでしょうか。
- 5号
- 自分の立ち位置が、自分の中であまりはっきりしなくて。まだまだだなと思う公演ではありました。やっぱり2号さんが主役という事もあって、2号さんの反応を見ながら演技を作っていくというやり方だったんです。雑踏に交じらずに、主人公を追い続ける役だったんですが。
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- 立ち位置。難しい役所だったかもしれませんね。
- 5号
- 台本も、インパクトのあるシーンがどんな感じになるのか、劇場に入るまで分からなかったり。小屋入りしてゲネをして、やっとどんな舞台か実感出来ました。
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- 東京公演が8月17日から始まりますね。意気込みを教えて下さい。
- 5号
- 今は、作品の段取りを丁寧に整理して、精度を高めていってます。その作業についていくのと、制作としては宣伝作業を手伝って、他メンバーの負担を減らしていきたいと思います。
こういう事が出来るのは学生の時だけ
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- さて、ツチノコ計画。5号さんが演出なんですね。
- 5号
- もう、僕がわがままし放題の企画なんですけどね。僕が地底人に入るきっかけになった、「その指で」という作品をやります。
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- わがままし放題ですか。
- 5号
- 最初は初演を踏襲したいと思ってたんですけど、気がついたら舞台が狭くなっていました。五歩分ぐらいのスペースで4人が演技する事になってました。
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- 面白そうですね。
- 5号
- あとは勢いでごまかそうと。僕も含め、役者陣がどれだけ頑張れるかですね。
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- 挑戦的ですね。
- 5号
- 本当にわがままをさせてもらっていて。こういう事が出来るのは学生の時だけだと思っているんです。
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- なるほど。
- 5号
- 今、本当に色々、自分がやりたい事が見えて来ていて。何に挑戦したいのかがはっきりしているんですよね。一度ここで形にして、まとめてみたいと思っています。
音として聞いていても楽しめる作品
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- ピンク地底人に入ったのは、どのような理由があるのでしょうか。
- 5号
- 当時、大失敗してへこんでたんですけど、そのときに「その指で」を見たんです。そこからでした。訳の分からない言葉をしゃべってるしキチガイかと思ってたんですけど、終わった時に演劇に対する意識がごっそり変えられました。衝撃的でした。自分がやれるならやってみたいと思って、次の公演から参加しました。
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- どういう部分が衝撃的でしたか?
- 5号
- まず、共演者全員で作るという意識の強い作品だったんです。会話劇だと自分達でキャラクターを作ってしまえる・逆に言うと他の共演者は必ずしも必要じゃないんです。きっと。
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- そういえば、ここ2、3年のピンク地底人はチームプレイが主ですね。
- 5号
- 全員で一人の役を表現したり、一つのシーンに一人として存在したり。しかも、セリフがまるで音楽のように配置されているんです。目を閉じても、音楽のように。役者としてもいろんな攻め方が出来るんです。でも、それって一人よがりではけして出来ないんですよ。周りを強く意識させられるんですね。全員で作るという意識は強いと思います。竹子さんもインタビューで言っていたように、バラバラにやってきた人たちが、作品の上で一つになる瞬間が面白いですね。僕だけじゃなく、共演者全員が感じているんじゃないかなと。
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- 音楽として聞ける。
- 5号
- そうなんです。最近はハイテンポで台詞をまわす演出はないんですけど、稽古場では「テンポを崩さないで」とか「考える間を作らないで」とか。見るのはもちろん、音として聞いていても楽しめる作品になっていると思います。「その指で」を見た時は訳の分からない言葉をしゃべってるしキチガイかと思ってたんですけど、終わった時に演劇に対する意識がごっそり変えられました。衝撃的でした。自分がやれるならやってみたいと思って、次の公演から参加しました。
彼の世界
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- みんなで作る。それはどのような良さを生むのでしょうか。
- 5号
- もしかしたら勘違いかもしれないですけど、一つのものを共有している感じなのかなあ。人ってそれぞれに見ているものが違うのに、繋がっている感じがします。それが明確に見えるというのが重要なポイントかもしれないです。
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- 共有とは。
- 5号
- 絵とか情景とか。つまりイメージなんです。風景もそうですね。
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- それは、どういう部分が他の劇団と違いますか?
- 5号
- やっぱり、3号を支えるスタイルが違うと思います。代表の3号が、訴えたいものを毎回伝えてくれるんですよね。それを、他の地底人や客演の方々で、3号の世界を作る事に集中するんですね。
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- 3号の世界とは。
- 5号
- 作品をご覧になると分かるように、家族愛が根底にあるんですよ。誰でも身内はあるわけで、そういう身近な愛情を持ってくるんですよね。そこは僕も毎回共感しています。毎回、妊婦が出てきたり。
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- ピンク地底人は集団で家族愛を表現する。
質問 石原 正一さんから ピンク地底人5号さんへ
お客さんに見ていただく環境を整える
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- 今後、どんな感じに攻めていかれますか?
- 5号
- 役者は続けつつ、制作をしっかり続けていきたいなと考えています。いま、ピンク地底人の制作としての僕の役割があまり定まっていなくて。早く自分の領域を固めて、ちゃんと仕事していきたいですね。
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- なるほど。
- 5号
- 僕はどうしても役者だけじゃ食っていけないと思っているし、演劇をやっていくなら、お客さんに見ていただく環境を整える制作という作業に意識を高めないといけないんですよね。
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- というと。
- 5号
- チケットの販売方法から、リラックスして見てもらえる客席環境のことまで、意識が低い劇団では良くないと思っています。そうした環境について、自分の考えを深めたいですね。
締めるところは締めないといけない
- 5号
- 実は以前、ABCホールで東京から来た劇団「表現・さわやか」さんの手伝いに行ったんですよ。僕は入り口でパンフを渡す係だったんですけど、受け取ったお客さんが「ありがとう」って返してくれるんですよね。かなり多い割合で。
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- なるほど。
- 5号
- 京都だとなかなか見かけない光景で、僕はそういう劇団とお客さんの関係を作れればなと思っています。自然にそれぐらいのやりとりが出るような。
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- 大切ですね。
- 5号
- 雑なやり方じゃだめだと思うんですよ。外に出て色々気づかされたんですけど、たとえばお客さんがロビーにいない状況でも制作がくっちゃべったりしていてはいけないんですよ。そういうテーマが僕にはあって、今は具体的に色々したいという段階です。接客のマナーの意識を高めるために当日制作にレジュメを配ったり。締めるところは締めないといけない、と思っています。
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- そうですね。その公演とお客さんにそぐったやり方を考え抜いていけば、何でも正解だと思います。
- 5号
- 僕も今の卒業公演でやりたい放題やってるので、ついつい周りが見えなくなってしまっていて。
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- いえいえ。
- 5号
- でも、それをやっていいのは学生の内だと思っていて。周りが、そういう僕のわがままに付き合ってくれるので。ありがたいですね。
置物
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- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがございます。
- 5号
- ありがとうございます。
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- どうぞ。
- 5号
- (開ける)あ、あー。水時計?
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- ちょっと光るんですけど。ずっと見続けられるような置物です。