子供が歩いていく
- 大内
- 実は子供が2013年1月の終わりに生まれまして、ありていに言うと、子育てに追われています。おもに大変なのは奥さんなんですが。
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- お子さんは可愛いですか?
- 大内
- 可愛いですね。それに、見ていて面白いです。人って最初はこんな感じなのか、って。生まれてからしばらくは、人間らしさって一切ないんですよ。感情とかもないですし。自分の子供だけど未知の生き物のように思えて、というところからちょっとずつ、表情もついてきて、欲求に従って要求するようになったりとか、徐々に笑うようになったり。人間らしさを獲得してきているんですね。
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- なるほど。つまり、人間らしさを学習している・・・?
- 大内
- それは最初から備わっているんじゃなくて、獲得していくものなんですよね、きっと。
劇団飛び道具
京都を拠点に活動する劇団。
劇団飛び道具「四人のショショ」
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- 劇団飛び道具の前回公演「四人のショショ」、大変面白かったです。
- 大内
- ありがとうございます。
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- 前々回の「七刑人」 とは大分かけ離れた作品でしたね。出産に関する物語でした。以前の「ヤスとヤスたちの時代」 、「ロキシにささぐ」 と共通した、父権に関する意識があったように思います。いかがでしょうか。
- 大内
- 何というか、実は父子というところにこだわりがある訳じゃないんですよ。生きている実感を得るという事が僕のテーマというかこだわりになっていて。正直、家族の物語でなくてもいいんです。
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- そうなんですね。
- 大内
- 一番最初、芝居を始めた頃は面白くて脚本を書いていました。でもずっと続けて重ねてくると「何で芝居やっているんやろうな」と自問するようになるんです。・・・実感を得たいと思うんですよ。僕も日常で家族との生活を生きていますが、その、生きている実感が僕にはないんだと思ってるんです。そういうのを確かめたくて芝居してるのかな、と。お客さんはもちろん、俳優からもらう反応を通して。
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- 大内さんにとって、生きている実感を得るというのは大事な事ですか?
- 大内
- 他の人の事は分からないので比べられないんですが、それがないという事は大事なものを欠落しているのかもしれない。薄情者と言われるかもしれないんですが。
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- 実は私もそうなんですよ、と言っても大内さんと比べたら多いか少ないか分からないですけど。その実感は得られましたか?
- 大内
- 分からないです。昔と比べたらあるのかもしれないし、今は子供が可愛いといいうのもあるし。でも、他人よりは少ない気がします。大概の会話をしていて醒めている気がします。
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- 醒めている自分は疚しいですか?私は疚しいです。
- 大内
- 疚しいかどうかは分からないんですが(笑う)あった方がいいんじゃないかって思いますね。
劇団飛び道具・四人のショショ
公演時期:2013/3/21〜24。会場:スペース・イサン。
劇団飛び道具・七刑人
公演時期:2012/5/24〜27。会場:アトリエ劇研。
劇団飛び道具・ヤスとヤスたちの時代
公演時期:2008/7/11〜13。会場:アトリエ劇研。
劇団飛び道具・ロキシにささぐ
公演時期:2011/7/28〜31。会場:アトリエ劇研。
「この作品のテーマは何ですか?」
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- 「四人のショショ」で凄いなと思ったのが、藤原さん演じる老人が、自分がしてきた仕事を義理の息子に語るシーン。その告白はまるでモノローグ自身が語られたがっているように思えるぐらい、どこか切迫していました。人生や仕事観をひっくるめた人一人そのものをみた瞬間でした。この作品は、ご自身にとってはどのような存在ですか?
- 大内
- がっかりさせるかもしれないんですが、実は設定ありき、です。今回の場合は自分の人生を終えようとしているおじいさんと、これから生を得ようとする赤ちゃんがいて、赤ちゃんを出産する娘がいて。最初からこのテーマを持とう、というのは少ないですね。でも、ピンとくる設定というのが自分の持つテーマなんだろうと思っているんです。だから、「この作品のテーマは何ですか?」と言われても、ちょっと語られないですね。
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- そうなんですね。そうした設定が浮かぶキッカケはどのような。
- 大内
- 正直に言うと、3月の終わりに公演があると決まっていたので既に本は用意していたんですよ。でも1月の終わりに子供の出産があって、病院で一人で待つ時間があった時にばばっと思いついたんです。こっちの方が良いと。稽古が始まった時に、全然違う作品を持っていったんです。
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- 凄いですね。
- 大内
- 迷惑な話だと思います(笑う)。タイトルは同じ「四人のショショ」でした。
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- もう一つの「四人のショショ」があるんですね!
- 大内
- 3分の2くらい書いてほったらかしになってますね。最初に飛び道具メンバーに読んでもらったけど「なんやら・・・あんまり面白くない」と言われました。これ、どうしたら面白くなるんだろうと言われたくらいです(笑う)。
変えてみても同じ
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- 大内さんがお芝居を始めた経緯を教えて頂けますでしょうか。
- 大内
- 大学の演劇サークルに入ったのがキッカケです。特に、芝居をやろうなんて思ってなかったんですけど、4月くらいにクラスの友達と一緒に説明会に行って。そこからですね。
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- 脚本を書き始めたのは。
- 大内
- 4回生くらいです。それまで役者で出たり、舞台セットを作ったりしてるなかで、ふと本を書いてみたいと思ったんです。それからずっと書いてますね。一念発起したとかは全然ないです。
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- ご自身の脚本の書き方が変わったといえるポイントはありますか?
- 大内
- 意図的に変えようとした事は何度かあります。傍から見たらウェルメイドと呼ばれる作品を作っているんですね。でも、そうじゃないものに憧れた事はありますよ。でもやってみたら、いつもと同じなんですよ。
「凄い奴」じゃなくて「近い人物」
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- ところで私、飛び道具の芝居を見ている時、凄く落ち着けるんです。「アイス暇もない」 からかな。飛び道具の演劇はすごく「調和」しているように思うんです。色んなレベルで調和している。役者も空間も組合わさっていて余剰がなく、心地良い説得力があって抵抗なく舞台の表現を受け入れているというか。
- 大内
- その感覚は、とても嬉しいです。
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- ありがとうございます。
- 大内
- そういう風に感じられるのは、もしかしたら俳優さんの力による所が大きいかもしれませんけど。それと、僕の書き方なんですが、「近い人物」を描こうと思っています。「凄い奴」じゃなくて。
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- 「近い人物」を描きたい。
- 大内
- これは俳優さんには物足りないかもしれないですけど。普通の人が紡ぎだすドラマを描こうと、最近はよく思います。
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- 我々の世代の若者たちがアジアのどこかでボランティアに行ったり、我々に近い感覚を持つ人々が飛行機の残骸に住んでいたり。
- 大内
- そうですね。
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- だから、彼らが持つ素直な感覚を強く感じる、のかもしれないですね。何故そうした人物達を書こうと思われるのでしょうか。
- 大内
- 自分のイメージを伝える為には、そうした人物像を通したいと思うからです。他のものが書けないと思った事もありますしね。台本の上では「こんなこと普通は言わないな」みたいなセリフも書くんですけど、その彼もやっぱりどこか我々に近しい。良くも悪くも脚本を書いてそのままお任せしているので、「もうちょっと考えを聞かせてくれ」と言われる事もあるんですが。
劇団飛び道具・アイス暇もない
公演時期:2004/3/3〜7。会場:アトリエ劇研。
質問 土肥 嬌也さんから 大内 卓さんへ
質問 渡辺ひろこさんから 大内 卓さんへ
劇団飛び道具「七刑人」
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- 飛び道具にとって大きな存在と言える作品はありますか。
- 大内
- 「七刑人」は大変な経験でした。僕は何も出来なかったんですけど、劇団にとっては大きな財産になったんじゃないかと思います。
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- 私も「七刑人」、凄く面白く拝見しました。大変な作品でしたね。罪人達が恐怖に肉体を蝕まれて、その後処刑地に移動するために牢から出される時の一瞬の開放感が表現され、そして処刑台に向かう時にもう一度それぞれが生のよすがを求め、一緒に歩く人を求めて・・・とても芸術的でした。それと、牢から出る時に誰かが伸びをしたんですけど、その伸びに一瞬、日常を感じたんですよ。
- 大内
- 誰やろう。
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- 山口さんだったかもしれません。とても絵画的で、美しい場面が散らばっていて、重厚でした。どのシーンでも私は納得して観ていました。
- 大内
- あの作品、ほぼ原作通りでした。実は最初、僕は結構軽い気持ちで始めてしまったんですよ。結果、ものすごい苦労を掛けてしまったんです。
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- というと。
- 大内
- 原作の深さですね。そこに自分なりのアレンジを加えて作品を作ろうとしたんですけど、そんなに甘い作品ではなかったんです。これはまずいと気付いたのに、そのまま大分時間を費やしてしまって。二週間ぐらいまえにミーティングしたんです。「ちょっともう、出来上がらんでもいいから価値のあることをしようや」という話になりました。僕が言った訳じゃないですけど(笑う)。
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- 出来なくてもいいから、価値のあること。
- 大内
- 原作に立ち帰って、エピソードをチョイスしなおして再構成しました。牢屋のシーンをどう表現すべきか、知恵を出しあって。本当に僕はなにも出来なかったんですけど。初日が終わって「何とか、形になって良かった」と言い合った記憶があります。
未定だけど予定
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- 今後、どんな本が書きたいなどはありますでしょうか。
- 大内
- 次に書こうと思っている本があります。書きたい設定は沢山あります。その時々でピンとくる設定があったり、生まれるアイデアも死んでしまうアイデアもあるんです。公演が決まったら出せるアイデアを提供しています。
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 大内
- ええと、未定です。最古参の旗揚げメンバーでずっとやってきて、伊沢さんはアメリカ、山口さんはロシアに留学と、メンバーが減っていっているので。他のメンバーにもそれぞれの行く道があるので、まずは腹の探りあいですね(笑う)。僕は続けたいと思っています。飛び道具が続けられないのであれば何か考えないといけないですね。でも、解散するという事はないです。山口さんは1年半で帰ってくるそうだし。
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- その時があるんですね。とても楽しみにしております。
よだれかけ
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- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがございます。
- 大内
- ありがとうございます。
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- どうぞ。
- 大内
- (開ける)おおー。丁度良かったです。生まれてすぐよだれが出る訳じゃないんですよ。そろそろ多くなる頃らしいので。