新しい生活
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。今、KYOTO EXPERIMENTのフリンジ企画、PLAYDOMで京都に来ているロロに出演している北川麗さんにお話を伺います。北川さんは、最近はいかがでしょうか?
- 北川
- 実は最近、実家を出て一人暮らしを始めたんです。
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- そうなんですか。
- 北川
- 新しい生活が始まったという感じです。ありがたいことに、充実していると自分では思っています。忙しいですけど、それはそれで楽しい生活だと思います。
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- いいですよね、一人暮らしを始めた頃って。楽しいと思います。
- 北川
- 始める前まではすごく不安だったんですけど、始めてからは節約する事すら楽しいんですよね。
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- 分かります。あのワクワク感は凄いですよね。
- 北川
- スーパーで買い物したり、お金を自分で管理したり、そういうのも全部楽しい。この年齢まで実家暮らしだったので、新鮮ですね。
中野成樹+フランケンズ
2003年結成。(前身:フランケンシュタイナー〈1998-2001〉) 翻訳劇の上演を専門とする演劇カンパニー。メンバーはその名の通り、中野成樹(演出)と、 フランケンズ(村上聡一、福田毅、野島真理、石橋志保/以上役者)の5名。「ハイセンス」と多くの観客から評される作品群。 あちこちに散りばめられた「おもちゃのような」美術・音楽。 嘘と本当が「絶妙にブレンド」された演技。 かた苦しくなりがちな翻訳劇を「わかりやすく味わい深く」上演。 名付けて“誤意訳”。 それはまったくの古典でありつつ、まったくの現代劇。「戯曲のドラマ」「僕らのドラマ」「演劇というドラマ」の三位一体を目指し、 演劇の最先端をひたひた歩く。(公式サイトより)
ロロ
平均年齢23.5歳の、東京で活動するカンパニー。主宰・三浦直之が触れてきた演劇や小説、映画、アニメや漫画などへの純粋なリスペクトから創作欲求を生み出し、同時多発的に交錯する情報過多なストーリーを、さらに猥雑でハイスピードな演出で、まったく新しい爽やかな物語へと昇華させる作品が特徴的。(公式サイトより)
KYOTO EXPERIMENT 2012 フリンジ "PLAYdom"参加 ロロ『LOVE02』
公演時期:2012/10/5〜9。会場:元・立誠小学校 講堂。
感情移入
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- さて、ロロの「LOVE02」。昨日拝見しましたが、大変面白かったです。お疲れさまでした。
- 北川
- ありがとうございました。
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- 北川さんは、コード伸びていてたまに光る女の子の役でしたね。いいキレ芸でした。
- 北川
- そうでしたね。そのキレ芸、初演の「LOVE」には無かったんです。結構難しくて、思い切りが良くないといけないんです。意識が吹っ飛びそうになりながらやっています。
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- キレるのは難しい?
- 北川
- いえ、それ自体は難しい事じゃないんですけど、アイコという役はアイドルみたいな事をやっていたり、いちゃいちゃし始めたり、そこからキレるにはエネルギーが必要で。最大級にキラキラしていたのが最大級にキレるというのがやりたいんですけど、意識吹っ飛ぶくらい怒鳴り散らしたいです。
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- つまり、そこまでにハードルがあると。一歩間違えたら、お笑いの構造になってしまう場合もあるし。
- 北川
- そうですね。昨日の回はギアを2個くらい強めに入れていったら上手くいきました。演出の三浦さんに言われたのは、「アイコ最強説だっていう気持ちでやってほしい」って。そのために頑張るしかないですね・・・。そうじゃないと、ラストのシーンにつながっていかないんです。
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- あの印象深いラストですね。
- 北川
- それには、なるべくアイコに感情移入してもらわないといけないから。私はこのアイコ役が好きで、でも設定が突拍子もないから、自分がこうなったらどうしよう・・・と置き換えてみたりしています。突然自分の形が壊れて、それで嫌われてしまう不安を想像していったら本当に切ないなって。好きが故に別れなくてはならない気持ち。極端なんですけど、一本通った筋の物語なんです。見てもらいたいですね。
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- 恋愛がテーマの「LOVE02」。最後はある言葉と共に幕を下ろしますが、それがすごく、人間らしさを感じます。あれ、アイコの魂の姿がはっきりと現れているという事だと思うんですけど、それが言葉の形を取っているんですよね。
- 北川
- 実はあの光の演出も、初演にはありませんでした。照明さんが変わって生まれた演出なんです。
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- あ、そうなんですね!
- 北川
- アイコの光が、板橋さんが演じる彼氏を包み込むシーン。その照明は、ある仕掛けで光ってるんですけど、その時々で照明の機材の接触が悪いと点灯しなかったりするんですよ。役者全員で「点けー!」って念じてました。その念の籠もり方がリアルで。点かなかった回はわたしぼろぼろ泣いちゃって・・・。
内容だけ
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- 北川さんがお芝居を始めたのは、どのような経緯があるのでしょうか。
- 北川
- 高校が、埼玉県立芸術創造高校という、映像科、美術科、舞台科、音楽科しかない学校で、ちゃんと演劇を始めたのはそこからです。でも実はそれ以前に、小さい頃から子供向けのワークショップを受けていて。小学校一年から10年ほど朗読を習っていました。中学校まで。
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- え、朗読を習っていたんですか。そういう方にお会いするのは初めてですね。
- 北川
- そうですよね、珍しいと言われます。子供の時から、大人のクラスに入れられて。漢字にふりがなを振るところから始めました。
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- めちゃくちゃ難しいイメージがあります。私が想像するに、朗読ってきっと、お客さんをとりあえず聞いてもらうようにするのがすごく難しいんじゃないかと思うんですよ。それはきっと、本を読んでいるだけでは難しい。
- 北川
- そうですね。朗読の捉え方というのが色々あって。で、私が考える朗読は「表現するというよりは内容を伝える為に表現をする」ものだと思っています。例えば、手法や表現が主体となる演劇作品。「こういう手法にチャレンジしました」というものがあると思うんですけど。そうした考え方でもし朗読をした場合、俳優さんが「私はこういう表現が出来ますよ」みたいな。
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- 芝居をする事もありますしね。
- 北川
- 朗読においては、表現はあくまで手段で、内容だけが伝わればいい。表現過多になってはいけない、という考え方を師匠に教わりました。
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- 私のこのサイトも、内容が最重要なので、何となく分かります。
- 北川
- でも、小学校一年からそういう考え方で来ているので、自分の個性を生かした芝居とか、キャラクター性とかが・・・。特にロロの作品だと、分かりやすいキャラクター達の中で器用貧乏になっているんじゃないかって、あんまり。自分のが何か欲しいなとは思ってるんですけど。
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- そのままの北川さんでいてほしいと思いますけどね。
- 北川
- えへへ・・・。
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- うーん、表現についての考え方が素直な気がして。それは、実は舞台に立ったらかなり分かると思うんですよ。
ホントに嬉しい
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- 劇団、本谷有希子の「クレイジーハニー」に出演されていましたね。あの時、出演者に北川さんの名前を見つけて、すげえと思いました。
- 北川
- ありがとうございます。ワークショップオーディションという形で一週間、日々与えられる課題が面白くって楽しくてしょうがなかったです。気がついたら受かってたという。
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- どんな役でしたか?
- 北川
- 元作家のファンという設定で、その中で、メインキャストの吉本菜穂子さんの役と仲が良い、幸の薄い女の子という役でした。長澤まさみさんが演じる作家に励まされて自殺を辞めるという。
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- 稽古・本番と通して、どのような体験でしたでしょうか。
- 北川
- 厳しい現場だと伺っていたんですけど、楽しくって。演出としては「あまり演技をせずに、生き生きとその場にいてくれ」とずっと言われていて。いかに舞台上で自分でいられるかという事を意識していました。かと言って、小劇場でよくある、ぶつぶつ喋るというのではなく。
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- 見てもらう、という事ですね。
- 北川
- そうですね。一ヶ月パルコ劇場で上演して、全国ツアーもあって。凄くいい経験をさせて頂きました。
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- その時の共演された方に、何かメッセージがあれば。
- 北川
- アンサンブルのみんなそれぞれ、終わっても精力的に活動している人たちが多いんです。私も負けじと頑張んなきゃなと。いつかまた、本谷さんの元で出来たらホントに、ホントに嬉しいです。
質問 伊集院 聖羅さんから 北川 麗さんへ
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- 前回インタビューさせて頂いた、伊集院聖羅さんから質問です。この伊集院さんは京都の佛教大学の劇団紫という学生劇団で、今大阪で上演している笑の内閣の公演が終了したら演劇を辞めて就職活動に専念するらしいのですが、そんな方から。「演劇を続けている理由は何ですか?」
- 北川
- それは、大学を卒業してから本当にずっと考え続けているんです。何故自分は就職しないのか。答えが見つからないんですけど・・・何でだろうな。色々思うところはあるんです。
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- ええ。
- 北川
- 単純に、「演劇が好きだから」という理由だけとは言えなくて。キラキラと演劇を続けている人が羨ましいという感じ。かと言って演劇が嫌いではないです。好きなんです。舞台に立つことももちろん好きで、稽古も大好きで。そう、稽古が無くてアルバイトをしている時の頭の動かし方とは全然違うんです。
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- 分かります。
- 北川
- 演劇の事を考えている時の方が何て充実した脳みその動かし方なんだろう、って思います。「人前に立って演技するのが好き」という理由よりは、演劇の事を考えるのが好きなんです。それが理由としては挙げられるのかもしれません。だから、情勢的に厳しくても、脳みそが豊かな状態で生きていきたいなと思います。
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- 個人的には、ご自身のそうした条件をシビアに考えて、自分に合った活動をしていれば何でも正解だと思います。
- 北川
- そうですね。でも、将来の事を考えると、演劇を続けるというのがあまりにも不安ではあります。就職してお給料を頂いて生活するのがすごく安定しているし、どちらを取るというのが良いのかをずっと考えています。
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- ・・・。
- 北川
- 例えば芝居を辞めて、客席から芝居を見る事で演劇に関わる生活になった時、私は芝居について深く考える事が出来るだろうか。ライターでも評論家でもない自分が、演劇を作る現場にいないの。作る現場を持てて初めて、脳みそを動かせるんじゃないかなと考えています。
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- 社会人劇団というのがあります。それで実際に、充分な評価を受けていますが、そういう道は。
- 北川
- そこで思うのが、親が私に掛けてくれた期待なんです。これまで応援してくれて、高校から大学まで舞台を学ばせてもらって。何とかして、俳優として身を立てないと顔向け出来ないなと思っています。自分だけが好きな表現をする、というのに偏らずに、大きな舞台のオーディションを受けたりして・・・実は「クレイジーハニー」、初めて受けたオーディションだったんです。
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- それで受かったんですか!
- 北川
- ちょっと喜ばせる事が出来たかなと。山形で上演した朗読公演もうまく行ったし。中々上手く移行出来ないけど、何とか頑張りたいと思います。
これから
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 北川
- 大学を出てから、オーディションを受けたのは一回だけで。それ以外はずっとオファーが来たものを引き受けていたんです。おかげ様で、年間3〜4本、多い時で7本くらい舞台に出ていました。
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- 素晴らしい。
- 北川
- でもこれからは、自分がやりたい事や、こういう形になりたいという流れを意識してお話を引き受けて行こうと思っています。そうして道筋を見つけていきたいです。受け身にならず、自分から行動していこうと思います。
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- なるほど。オーディションを受けまくるでもいいですよね。北川さんという人間の存在がみんなに知られればいいですね。
てぬぐいとクリップ
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。どうぞ。
- 北川
- ありがとうございます。そんなのがあるんですね・・・。
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- はい、毎回。
- 北川
- (開ける)かわいい。手ぬぐいですか?
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- はい。何かを包む時にでも。端を止める為のクリップも入れてみました。若干、ひょうきんなな柄ですけど。
- 北川
- いや可愛いです。
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- 青色が似合っているのかなと思って。
- 北川
- いや、分かってらっしゃる。ピンク系より全然嬉しいです。
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- どうぞ使い倒して下さい。最後には雑巾にして。
- 北川
- そういうのがいいですよね。