演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

高間 響

演出家

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西部講堂でプロレス芝居!

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この間の「狂い酒サンダーロード」、大変興味深く拝見しました。
高間
ありがとうございます。
__
次は、西部講堂でプロレス芝居をされるんですね。
高間
はい。そうですね、毎年恒例にしたいなと思います。
__
去年、本当に観たかったんですけどね。チラシ見て、これは凄い事だと思いながら。結局行けなかったんですが。
高間
去年は中々好評で。何でやり始めたかというと、元からプロレスはそこそこ見てたんですけど、高校生の時にプロレスから離れて。で、大学の学生プロレスが、僕が入ってた学生劇団よりお客さんを魅了してたのが悔しかったんですよね。どうしたらこういう事が出来るんだろうっていう。あと、和泉元彌のプロレスを見たのが大きいです。
__
アレは衝撃的でしたね。
高間
やっぱり僕は芝居が一番面白いと思っているんですけど、あれを見た年は他のどの芝居よりも面白かったんですよ。もう、作られたものとしてアレは面白すぎるな、と。悔しかったですね。だからやってやろうと。
__
なるほど。
高間
で、受け入れられるかどうか不安だったんですけど、役者も受身の練習からやって。リングもフカフカのマットだったので、プロレス研究会の人から指導してもらったら思ったよりは難しくはないなと思ったんですよ。受身さえ出来れば。出来ない技は最初から台本には入れないので。でも、一つ間違えばやっぱり危険なので、体を張ってやってくれましたね。ただ、やはり今までにない試みなのでふざけんなって言われないか、反応が不安だったんですけど、お客さんも拍手してくれたり、歓声が上がったり。
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それはもう、プロレスですね。
高間
そうですね(笑う)。悪役が出てきたらブーイングが起きたり。確かに開演前に前説でやってくださいて頼んでたんですけど、あそこまでお客さんが参加してくれた芝居はないなと。役者の方も、それが気持ち良かったみたいだし。入場の時に派手な音効や照明使って花道を歩いて来たりとか。
__
そりゃ見たいな。
高間
何が嬉しいって、プロレスにそれほど興味の無かった役者が、今回は去年出来なかったこんな事をしたい、あんな技がやりたいって言ってくれる事が嬉しいですね。
笑の内閣

2005年、元劇団紫高間響が代表をつとめるプロデュース団体として結成、後に劇団として旗揚げ。プロレスを演劇に組み込んだ作品を作り続ける。派手なプロレス演出の完成度は高く、しかも笑いを取るための努力を惜しまない。

第5次笑の内閣 狂い酒サンダーロード

公演時期:2007年4月6〜9日。会場:カクテルバーナギサクラブ。

ホウキ

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ホウキと闘うとか、凄いですね。
高間
あれは、アントニオ猪木さんが「俺はホウキとでも闘える」と。
__
なるほど(笑う)。
高間
ホウキが相手の闘いでもプロレスに出来るという技術の話なんですが、あれの・・・。まあ、役者が足りなかったんですけどね。ああいうのは、ちっちゃい団体では良くあるんですけどね。ダッチワイフと戦うとか。
__
闘ってないですけどね。
高間
実は僕はあんまり、格闘技には興味がないんですよね。純粋な強さを競うものってのは、見ててもおもしろいと感じないんですよ。それがプロレスだと、ちゃんとお互いが相手の技を受けてお客さんが受ける展開を作ってるじゃないですか。
__
ああ、なるほど。
高間
実際に戦うんだとしたら、普通に考えたら、まず防御しますよね。
__
でも、あんまり避けたりしませんもんね。プロレスでは。
高間
首から落ちるなんて、それこそ本気でやったらみんな死んじゃいますからね。本当にガチで強い鍛えた人達が、技を魅せるのが魅力なんですよ。演出があるからって、プロレスを八百長だとか批判する人がいるけれども、スポーツだろうとなんだろうとチケット売っている見世物である以上勝負どうこうより客を楽しませてナンボ。それを真剣にやってる人たちに八百長ってのは見当違いな批判だと思うんですね。まあ、我々は鍛えている訳じゃないし、試合も技出す順番1から10まで全部本ありですけど、その分すごくおもしろいものになってるとは思うので胸を張って八百長じゃないと言い張れます。

方向

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今後、笑の内閣の方向性としてはどのような。
高間
そうですね。僕はけっこう、行き当たりばったりで生きてるので(笑う)。なにせ、団員とかもいないですからね。人望がないから人が集まらない、定着率も低いですから。今回は出てくれない、なんて人も多いです。色々やっぱり、僕自身にも迷いはありますね。これから、売れるようにやっていきたいと言ってる割には、その為の努力をしているとも言えない。昨今の政治情勢を見ても、そんなことをやっていたら飢え死にしちゃうんじゃないかという。
__
ええ。
高間
不安もありますね。今は金銭的に貧乏でもやってけるので、芝居を続けていけている状況ではあるんですけど。笑の内閣として、僕はやっぱり今後も作・演出としてやっていきたい、というのが一番なんで。それで人が来てくれる限りは続けます。自分の中で本当に売れたいのかと言ったら、今のバイトは楽しいけれどなるべく芝居以外のめんどくさいことしたくないから、芝居で収入をえたいだけなんじゃないかなと。有名になりたいとか、そういう自己顕示欲は強いんですが、何せめんどくさがりなのでその為の何かをしているとかといったら、たいしてしてないですね。団員が集まらないのは、僕が「とりあえず入ってくれ」みたいな態度で集めないっていうのもあると思うんですけどね。作品を作る以外の事はかなりずさんなので。

観劇

__
やっぱり、京都っていうのは続け易い環境ではないかなと思いまして。
高間
そうですね、稽古場タダですし。
__
京都でも、他の劇団の芝居をご覧になったりするんですか?
高間
付き合いのある人の所には行きますね。年、7・80本は見ているんじゃないかな。
__
それぐらい見れたらいいですね。
高間
まあ、内心行くのめんどくさいという芝居もありますが、出演してくれたし、とか観に来てくれたし、とかいうのが遥かに上回りますね。僕自身は、芝居を続けたりするのならば、一緒にやった仲間の公演には行く義務があると思うんですよ。僕らが何だかんだ言って一番嬉しいのは、多くの人が劇場に来てくれる事じゃないですか。友達に観に来てもらえなかったら、悲しい。一緒に芝居をやったり、約束した人が観に来なかったり行かなかったりとかいうのは、一番腹が立つんですよ。殴られるより腹が立つ。のめりこんで、人生賭けてやってることなんで。まず、観劇を一番にしてスケジュールを作ってますね。劇団の主宰をやってる以上、それは当たり前です。

総裁

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高間さんは、どうして総裁と名乗っておられるのですか?
高間
まあ一番は、大川興業の大川総裁が好きなんで。後、総裁っていうと響きがいいからっていうので。僕は政治ネタが好きなので、代表とか主宰とかよりはアホみたいでいいかなと。まあ、僕は権力は茶化す方が好きなので、それで総裁とか名乗ってる、というのもあるんですけどね。
__
政治ネタがお好きなんですね。
高間
選挙当落予想とか日記書いてたりしますね。実際政治ネタは毎回脚本に入れてあるんで。まあ、興味を持ってる人が少ないから突飛に見えるんだけども。演劇を続けている以上、ある程度政治に興味を持たなければならないと思います。格差とかが進んだら、おちおち芝居なんか続けてられないから、ちゃんとニュースは見て、自分の意見をもってやるべき行動はとらなあかんと思うんですね。
__
ええ。
高間
それこそ、京都でタダで稽古場が使えているのも、政治の結果であって、今後いつ取り上げられるか分からない。特にホワイトカラーエグゼンプションて残業代をタダにしようってとんでもない法案があるらしいんですよ。そんなことやられたら、無制限に残業させられて働きながら芝居なんかできなくなる。そういうアンテナは常にはってます。まあ、私はフリーターなんで対象外なんですけど。そういうのはネタとして入れてますね。

笑の内閣

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今後も、プロレス芝居を続けていかれるのでしょうか。
高間
完全にプロレス団体にしている訳ではないので(笑う)。
__
例えば、他にはどういう展開が。
高間
そうですね、まあ、狂い酒みたいなストレートプレイもありますし。もっとバカバカしい、バラエティ番組みたいなのも。
__
基本的には、笑いの。ああ、「笑の内閣」ですもんね。
高間
24時間芝居でHIROFUMI 100キロマラソンとか。極端な事でも、笑えればいいと思ってるんですよ。役者やお客さんに、肉体的及び精神的に重度の傷を負わせなければ何をやってもいいと思ってるんですよ。こういう笑いは邪道だとか、こんなのダメだとか、おもしろければなにやってもいいのかという批判にはおもしろけりゃなにやったんでいいかと返しますね。色んな芸術作品とかありますけど、僕は人に見てもらう以上面白くなければ意味がないと思ってるんですよ。
__
それはそうですね。
HIROFUMI

非常に特異な雰囲気を持つ俳優。

緊急用ホイッスル

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恒例のプレゼントが。
高間
見ましたよホームページ。何が貰えるのかと。
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これは、買った私自身にも中々意外な感じでした。どうぞ(渡す)。
高間
はい(開ける)。ホイッスル。
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その笛の中にですね。自分の身元情報を書いて入れておくんですよ。緊急時に、身につけていた人が死んでいたら、その人が誰なのか分かるという。
高間
役に立たない事を祈りたいですね。
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一応、ホイッスルとしても使えます。現場での作業時に役立つのではないかと。
(インタビュー終了)