冨士山アネット「Woyzeck」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。村本さんは最近、どんな感じでしょうか?
- 村本
- 冨士山アネットの「Woyzeck」にダンサーとして参加しています。普段はMOKKという自分の団体で自分の作品製作をしているんですけど。こういう外部出演の機会を頂くのは珍しいですね。
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- ちなみに、どんな経緯で。
- 村本
- シアタートラムでやった「SWAN」という作品から3回目の出演です。長谷川寧さんといると色々刺激を受けます。私を紅一点に選ぶとはまた、渋めのチョイスなのかなと。
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- いえいえ。魅力的でした。それ以外としては。
- 村本
- MOKKの他にも、アルゼンチンタンゴダンサーとしてクラスを持たせて貰っています。教え始めてからキャリアがある訳じゃないんですが、デモンストレーションやショー等もやっていますね。
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- そうなんですね。アルゼンチンタンゴ、実は初めて伺います。
- 村本
- メジャーとは言いがたいので・・・。でも、ヨーロッパでは結構流行していて、コンテンポラリーダンサーがタンゴをやる事も多いんです。これ熱く語りますけど、アルゼンチンタンゴは究極のコンタクトインプロなんですよ。初めて出会った男女が即興で踊り合うダンスなんです。凄いと思って、4・5年前にやり始めました。
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- 初めて出会った男女でも踊れる!それは素晴らしいですね。
- 村本
- コンタクトインプロというと、初めての人はちょっと戸惑うんですが、リードする側とされる側という役割があって、基本的なステップさえ覚えてしまえば、どんな男声・女性とも踊れるんです。
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- 何というか、色気を感じますね。
- 村本
- タンゴを踊り始めていくうちにかな。自分がダンサーとして出る時に、女性的な部分を求められるという事もあるのか・・・と気付いたんですよ。中性的な魅力を持つ方はたくさんいるんですが、いわゆる“女性的”なコンテンポラリーダンサーはあまりいらっしゃらないので。そういう需要として求められるのかなと。
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- 色気って不思議ですよね。私の知り合いに、大変スタイルが良くて歌もダンスも上手いのに、色気が全く無い人がいて。
- 村本
- 一方、可愛くなくて手足が短いのに得体の知れない色気がある人もいますよね。男女問わず、色気のある人がダンスもよかったりするんですよね。
MOKK
村本すみれを中心にメンバーは皆スタッフで構成される。日本大学芸術学部在学中の2002年に前身が発足。2007年『---frieg』より活動を本格化。クリエイターやダンサーとのコラボレーションにより、「劇場機構にとらわれない空間からの発信」を軸とした活動を行う。また、駐車場やビル、コンテナボックスなど、特異な空間で身体表現の可能性を探る実験企画MOKK LABOや映像作品なども 企画製作する。(公式サイトより)
冨士山アネット
2003年活動開始。類稀な空間演出と創造的なヴィジュアル、身体性を強く意識したパフォーマンスにて創造的な空間を描き出す。近年は、戯曲から身体を立ち上げるといった、ダンス的演劇(テアタータンツ)という独自のジャンルから作品を制作。(公式サイトより)
冨士山アネット × 冨士山アネット/Manos.(マノス) [Woyzeck/W]
公演時期:2013/9/13〜23(東京)、2013/9/28〜30(京都)。会場:こまばアゴラ劇場(東京)、アトリエ劇研(京都)。
見た事のない生物と暗い空間に閉じ込められる
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- MOKK「f」 について。一年前にアトリエ劇研で拝見しました。とても面白かったです。私が見たのは松尾恵美さんのバージョンでした。粘液にまみれて這いずりまわってる彼女がとても怪物っぽくて、しかし彼女から突き放されている気持ちもずっとありました。だからか、結構寂しい気持ちがありましたね。
- 村本
- 「f」は、ソロ作品シリーズの2作目として作りました。その前は「Humming」、その前は「LAURA」という24人の群舞作品を作っていました。ダンサーが自分と向き合って根を詰めて作り上げる作品をやりたかったというのがあります。
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- なるほど。
- 村本
- 「Humming」は3人のソロで表現される音(歌やハミングや録音)が重なりあい、一つの旋律が生まれる、全体で一つの作品でした。「f」は完全にダンサー一人ずつの作品です。鉄のテーブルに女性が一人横たわっていて、その後45分ずっと観客と空間と向き合っている状況が続く作品です。それに耐えうる女性ダンサーとして、寺杣彩さんと上村なおかさんと松尾恵美さんにお願いしました。
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- なるほど。
- 村本
- お客さんが今ここで見た事のない生物と対面しているという体感、ダンサーも自分が今ここで囲まれて見られていると強制的に実感せざるを得ない状況が「f」だったんです。再演は可能な作品だと思うんですが、一回一回が全部違う作品でした。
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- 女性性が作品の根幹だったようですが。
- 村本
- 女性そのものに視線を当てた文学作品や演劇はこれまでも多くあったと思うんですが、それはダンスにはあまり無かったんじゃないかなと思います。遺伝子にプログラミングされている行動に、時に女性は動かされている感覚があります。そういう波ってどんなに落ち着いた女性にもあるんですよ。実は、それには理由があるとどこかで読んだ時に納得したんですね。
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- 理由とは。
- 村本
- 生理前にイライラするのは、身体が「これから子供を宿す」という準備の為に人を遠ざけたり内向的にさせたりするんですよね。身体がアクティブにならないように敢えて抑える。それが女性ホルモンによるものだと詳しく本で知って、すごく衝撃を受けたのと、自分が細胞やホルモン、遺伝子によって行動や情緒まで決められているんだな、と。
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- そうした複雑怪奇と同じ空間に同居する45分。
- 村本
- ところが、「f」のダンサーの意見としては、私の考え方が男性性に近いらしいんですけどね。案外、そうなのかもしれないと思っています。
2012 MOKK -solo- "f"
公演時期:2012/9/11〜13(東京)、2012/10/12〜13(京都)。会場:こまばアゴラ劇場(東京)、アトリエ劇研(京都)。
ダンスは楽しいですか?
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- ダンスは楽しいですか?
- 村本
- 今は楽しいですね。冨士山アネットはロングランで、毎日が本番なので、日本でこれだけ長い時期本番の時間があるというのは珍しいので。
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- 昨日お話を伺った木皮さんは、創作している時は辛いと仰っていました。やはり、村本さんもしんどいですか?
- 村本
- 正直なところ、いつもクリエイティブなものが出てくるかというと・・・悩む事が多いです。作るという事が自分にとっては幅広くなっていて、それはMOKKの振付だったり、もちろんダンサーとしても踊りますが。ただ、実は、創作をしんどいと思った事は無いんです。私は自分のソロを作らないので、誰かが必ず稽古場にいるんですよ。何かしらは生まれて、本番に向かって形を結んでいくので。産みの苦しみは当然ですから、それは甘んじて受け容れます。
質問 木皮 成さんから 村本 すみれさんへ
トゥシューズ
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- 村本さんがダンスを始めたのはどのようなキッカケがあるのでしょうか。
- 村本
- これもすっごいつまんない話になるんですけど。母がバレエ教室に連れられて、小学校に上がるまで入っていたんです。小3の時に、バレエ教室にもう一度入ったんです。そこが物凄く厳しくて。トゥシューズにクッションを入れてはいけない、スタジオの中では決して痛いと言ってはいけない、と。私は経験者だったからその分早くトゥシューズを履かせて貰えたんですが、やっぱり最初なので、足の爪と肉がグチャグチャになって、外してお風呂に入ると泣き喚いているんですよ。それを両親が聞いていて、バレエ教室の先生に電話してくれたみたいで。そしたら先生が私に「約束を破ったからトゥシューズ返しなさい」って言われしまって。私はモヤモヤしてたんでしょうね。そこで踊るのが楽しくなくなってしまって。ただ、トゥシューズへの憧れはあったんでしょうね。中学は運動部、高校は何もしていなくて。「何もしていないと太っちゃう!」という焦りから、ダンスを始めたというのがキッカケです。だから、ダイエットがキッカケです(笑う)。
群舞を作る
- 村本
- 来年2月、TPAMのショーケースにて、BankART studio NYKで新作を上演します。大人数で一つの作品を作ります。実は去年9月、「不本意ラウラ」という作品を作ったのですが、それは白神ももこさんが私に出演者を選ばせない、不本意をテーマにした企画だったんです。私が群舞の作品を役者・ダンサーで作りました。そのクリエイションがとても楽しかったんです。
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- なるほど。
- 村本
- その流れの先にある作品になると思います。ただ、役者さんだけでダンスをやるというのに限界を感じていて。いっその事、大々的にやろうと思っているんですが、およそ20人の出演者のうち、男声の役者と女性のダンサーで作品を作ろうと動いています。素敵な役者さん達も集まりました。楽しみにしています。
場所
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- 村本さんは今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 村本
- ちょっと大きな事を言ってしまえば、今後活動していくにあたって一番ネックになるお金の問題。これは皆さん全員が同じ問題を持っていると思うんですけど、いつまでもお金がないという当然の状態を、全員と共有したくないと思っているんですよ。例えば若い子を公演に呼ぶ時も、なるべく、僅かでも・・・本当は「僅かでも」なんて言いたくない・・・ペイメントを用意したいと思っています。
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- 素晴らしい。
- 村本
- 自分が欲しいと思っている以上にね。偉そうに言ってしまうと、助成金任せにする為には自分が売れなくてはいけない。でも中々そういう状況にはならないので。なるべく、自分でお金を生み出すシステムを見出して活路を作っていきたいです。作品自体で回らないのであれば他で補填しなければいけないし。そういう意味で、何かを運営していく事に興味があります。実は、今後運営出来る物件が見つかって。
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- いい場所になるといいですね。
- 村本
- 自分にとって楽しい感じで生きて行ければと思っているんですけど(笑う)。
タイパンツ
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってまいりました。
- 村本
- うわ、ありがとうございます。インタビュアーにプレゼントを貰うのは初めてです。(開ける)あ、タイパンツですか?
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- あ、よく分かりますね。そうです。
- 村本
- えー。ありがとうございます。全然ウケ狙いではなかった。嬉しい。履きやすいですよね、タイパンツ。