カストリ社第三号解散公演「花田一郎の述懐」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願い申し上げます。最近杉原さんは、どんな感じでしょうか。
- 杉原
- 朝起きてバイト行って、終わったら稽古して。そのリズムが出てきました。稽古が無いとバイトだけなんで、生活が乱れてくるんですよ。ありがたいです。
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- 稽古とは、カストリ社第三号解散公演「花田一郎の述懐」の稽古ですね。どんな作品になりそうでしょうか。
- 杉原
- がっかりアバターさんとの合同公演で、昨日、向こうの稽古場に行って何本か作品を見たんですけど。良かったんですよ。匿名劇壇では作れない、がっかりアバターだけが作れる事をやっていて。合体して、一つの良いものが出来ると思います。
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- なるほど。ちなみに、上演順としてはどうなるんでしょうね。キレイにアバターズと匿名さんで前編後編分かれるのか、作品ごとアトランダムな上演順で分かれるのか。
- 杉原
- まだ決まってないらしいですね。いや、決まった上で伝えてないのかも分かりません。でもごちゃまぜ感はあると思います。
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- 意気込みを教えて下さい。
- 杉原
- 今回は特別に頑張ろうという訳じゃなく、いつも通り集中して出来たらと思います。毎ステージ新しい発見が出来たら理想的です。
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- 今も、稽古場で発見している?
- 杉原
- 稽古場は発見だらけですね。例えば同じ事を同じ間で練習して突き詰めて良質化することは出来ると思うんですけど、面白かった事が分かったらそれは捨てて、新しい可能性を見つけたりして、変わっていけたらいいなと僕は思います。同じ一つのモノを研ぎ澄ますより、色んなパターンを試していけたら。
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- 固持するんじゃなくてね。
- 杉原
- 今回はそういうふうにしたいと思っています。
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- そんな考え方は、実はフラッシュフィクションという形式と合っているのかもしれませんね。気付いたら次の作品が始まっている、だから次々と発見がある。とても楽しみです。
匿名劇壇
2011年5月、近畿大学の学生らで結成。旗揚げ公演「HYBRID ITEM」を上演。その後、大阪を中心に9名で活動中。メタフィクションを得意とする。作風はコメディでもコントでもなく、ジョーク。いつでも「なんちゃって」と言える低体温演劇を作る劇団である。2013年、space×drama2013にて優秀劇団に選出。(公式サイトより)
カストリ社第三号解散公演「花田一郎の述懐」
作/福谷圭祐(匿名劇壇)・坂本アンディ(がっかりアバター)・演出/福谷圭祐(匿名劇壇)・坂本アンディ(がっかりアバター)。公演時期:2014/11/7〜9。会場:SPACE9(スペースナイン) 阿倍野ハルカスウイング館9階。
がっかりアバター
結成2011年6月。主催の何とも言えない初期衝動からほぼ冗談のように結束。2011年6月vol.1『岡本太郎によろしく』2012年11月vol.2『啓蒙の果て、船降りる』(ウイングカップ2012受賞)2013年6月vol.3『俺ライドオン天使』(公式サイトより)
入りたい、そんな気持ちが最初にあって
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- 杉原さんがお芝居を始めた経緯を教えて下さい。
- 杉原
- 高校3年の時に演劇部に入部しました。メディアに憧れていて、出演するにはどうすればいいのかと考えたら、演技をしないといけない。なら演劇部に入ろうと。
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- 3年生で演劇部に入部ですか。
- 杉原
- しかもその演劇部がですね、部員16人が全員女子だったんです。さらに、僕は3年生なのに他の女子全員2年だったんです。入ったその時から「先輩」と呼ばれる違和感はありつつ、滋賀県大会で音響して、小さい劇場公演をやって、演劇とは何かを初めて知りました。面白いし続けたかったので、演劇を学ぶ大学はどこかというと近畿大学か日本大学か。で、近畿大学に入学して。4年間学んで、匿名劇壇に入りました。
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- 匿名のメンバーに出会ったのはどんな経緯が。
- 杉原
- 僕が大学二年生の時に授業公演に出たんです。その時、メンバーの佐々木誠に声を掛けてもらって。「もし良かったら匿名劇壇でやらへんか」と誘ってもらったんです。その時はすぐ答えられなかったんですけど・・・
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- なるほど。
- 杉原
- その後、「気持ちいい教育」に客演として出演させてもらって、それからまた時間がちょっと経って。決めて入りました。佐々木誠から大分プッシュされたんですね、それが無かったら入ってなかったと思います。嬉しかったですね。
第三回本公演「気持ちいい教育」
公演時期:2014年5月。会場:シアトリカル應典院。
それから感覚が備わってきて・・・
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- これまでに、自分を変えたのはどんな舞台でしたか・
- 杉原
- 2回生にやった、北村想さんの「屋上のひと」という作品で、シンちゃんというチンピラの役を演じました。自分でも上手く出来た気がしましたし、先生からもお客さんからも良かったって声を頂いて。それがすごく楽しかったんです。この感覚で芝居をしたら上手と言われるんや。この感覚でずっと行こう、と。今でもその感覚を続けています。
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- 上手く出来たというのは、格好良く出来たという事ですか?
- 杉原
- 違いますね。凄く集中しているんです。その瞬間しっかりと会話が成立したというか。役も自分もしっかり実感を伴っていて、上手に出来ている感覚がある瞬間があるんです。周りの役者やお客さんの反応や表情も見えているし、次にせなあかん事も見えているし、そのすごい集中が出来る時がたまにあるんです。その時が凄く楽しいです。
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- 分かります。いや、分かるなんて言ったら語弊があって、観客としてその役者の感覚は伝わるという事なんですけど。役者が本番の日にまで作ってきた理解って、お客さんに全部伝わるんですよ。見せる為に作った理解を流れで見せられるんだから、実は観客にはほとんど全てが伝わっているんじゃないか。役者の感覚も伝わっていると思います。まあ、受け止めてもらう為に作られたものなので当たり前なんですけど。
- 杉原
- お客さんには何でも伝わりますからね。
面白いのは松原さん
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- 同じ劇団員で、面白いと思うのは誰ですか?
- 杉原
- 松原由希子ですね。頭いいし芝居上手いし一緒に芝居してて面白いって感じます。「2時間に及ぶ交渉の末」で彼女が進化してるってみんな感じています。
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- なるほど。前回公演「二時間に及ぶ交渉の末」 から変わった。
- 杉原
- 何が変わったのか分からないんですけど・・・最初からやることが上手なんですよ。「嘘やん」みたいにならないんです。初めてやのに。きっとなにかしらイメージを作ってから挑んでるんです。初めからそういう演技を演出に提案出来る彼女はとてもいい役者だと思います。
匿名劇壇第五回本公演「二時間に及ぶ交渉の末」
公演時期:2014/5/29〜6/2。会場:シアトリカル應典院。
質問 東 千紗都さんから 杉原 公輔さんへ
杉原の椅子
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- 今後、やってみたいことはありますか。
- 杉原
- 何でもいいのでメディアに一回、出てみたいと思います。再現でも何でも。一度もやったことがないので。
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- それは何故でしょうか。
- 杉原
- 最初の、メディアに出たいという憧れをまだ引きずっている状態だと思うんですけど。将来を考えるとですね、舞台役者で食べて行くのは非常に厳しいと。メディアに出たら、芽が出るんじゃないかという期待を持ちつつ。
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- いつか、どんな演技が出来るようになりたいですか?
- 杉原
- 自分にしか出来ない人間性が出来たらいいなと思います。誰かの真似じゃなくて、その人だけの個性があったら、個性的な役者になりたいですね。例えば温水洋一って、身体が発している情報が凄いじゃないですか。そんな人間味。おっさんになったらもっといいのかもしれませんね。最終的には、勝新太郎みたいな空気が出たら凄いですよね。格好良いおっさんになりたいです。
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- 杉原さんである事を辞めなければ、いつかはそうなると思います。けれども、世の中にはたくさんの杉原タイプがいる。杉原オリジナルという椅子に座らなければならない。
- 杉原
- そうなんですよ。それが出来ればいいんですよね。
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- そういうように認知されれば、例えば身体の欠片がスクリーンに映るだけでも杉原さんだと分かるんですよね。
- 杉原
- そうですよね。
売れたい
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか。
- 杉原
- 客演をやっぱり、頂きたいなと思います。今回のカストリで誰かに見て頂いて、新しい繋がりが出来たらなと思います。
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- なるほど。
- 杉原
- そこからゆくゆくは、メディアに出ていきたいなと思っています。ずっと大阪の小劇場に出ていても、あまり魅力的な人生とは言えないと思うので。芝居を続けるならやっぱり、東京なのかなと。
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- なるほど。
- 杉原
- 売れたいなと思っています。
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- 素晴らしいと思います。そういう気持ちを持つ事は恥ずかしい事ではないです。むしろ、それを言えるご自身を誇ってください。応援しています。
クリスマス用の置物
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。大したものではないんですが・・・
- 杉原
- いえいえ、そんなお気遣いを。
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- いえいえ。どうぞ。
- 杉原
- (開ける)あっ・・・僕は実は、四季の中で冬が一番好きでですね。携帯の待ち受けも「Merry Chirstmas」にしていて。
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- あっ、本当だ。
- 杉原
- 冬好きなんですよ。これは今晩から僕のベッドの脇に置いておきます。
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- ピッタリだった。良かったです。