演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

石畑 達哉

俳優

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11月7日から始まる

__ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。石畑さんは最近、どんな感じでしょうか。
石畑 
最近はありがたい事に、沢山芝居に出させてもらって。経験としては積み重なってきているのかなと思っています。そうなっていればいいんですけど。
__ 
結果が、誰にでも明らかになる機会が11月の最初に待ち受けていますからね。
石畑 
そこで発揮出来ればいいんですけど、するつもりで臨んでいます。
匿名劇壇

2011年5月、近畿大学の学生らで結成。旗揚げ公演「HYBRID ITEM」を上演。その後、大阪を中心に9名で活動中。メタフィクションを得意とする。作風はコメディでもコントでもなく、ジョーク。いつでも「なんちゃって」と言える低体温演劇を作る劇団である。2013年、space×drama2013にて優秀劇団に選出。(公式サイトより)

カストリ社第三号解散公演「花田一郎の述懐」

__ 
カストリ社第三号解散公演「花田一郎の述懐」、どんな公演になると思われますか。
石畑 
役者がてんやわんやする公演になると思います。出番をとちったり、もちろんしないようにしているんですが・・・
__ 
そんな事が起こったとしたら、やっぱり分かるんでしょうね、きっと。
石畑 
特にフラッシュフィクションは役者が楽屋にハケずに舞台袖にいて、役者達が反応に困ったり、笑ったりしてしまうかもしれません。
__ 
怖いですね。そんな大変な公演ですが、石畑さんの意気込みを教えてください。
石畑 
他の劇団員達も、それぞれ別の劇団さんに客演したりしていて。そこでの経験が見えたら嬉しいですね。僕も劇団Patchさんやドキドキぼーいずさんに出させてもらったので、そこで得た経験をお見せ出来たら。
カストリ社第三号解散公演「花田一郎の述懐」

作/福谷圭祐(匿名劇壇)・坂本アンディ(がっかりアバター)・演出/福谷圭祐(匿名劇壇)・坂本アンディ(がっかりアバター)。公演時期:2014/11/7〜9。会場:SPACE9(スペースナイン) 阿倍野ハルカスウイング館9階。

ドキドキぼーいずの大進撃#04『ハムレットみたいなもの』

__ 
石畑さんの、役者として最近のテーマは何ですか。
石畑 
僕はずっとビシッとした体で立つという事を目指していたんですよ。でも、京都で客演させていただいたドキドキぼーいずさんの「ハムレットみたいなもの」では、ゆるく立つ事を求められたんです。そこに近づけようとしていました。ビシッとした体だけじゃないんだなと。
__ 
緩い体を求められた時は、そうありたいという事?
石畑 
そうですね。柔軟に対応出来ればと思っています。今までそれをやった事はなくて。そういう風に芝居を捉えた事はなかったんです。新鮮な体験でした。
__ 
「ハムレットみたいなもの」。ご自身としては、どんな手応えでしたか。
石畑 
事件が起こってからのお話なんですけど、その被害者であるハムレットと仲が良かったのに、離れていってしまうという役柄で。現代に限ったことでないと思うんですけど、ややこしい事件が起きたらその人から離れていく人たちがほとんどだと思うんですが、それを意識していました。僕自身も、最後の方はハムレットから離れたかったです。
__ 
ハムレットと同じく、まともな人だったですからね。
ドキドキぼーいず

2013年、代表である本間広大の学生卒業を機に再旗揚げ。京都を拠点に活動する若手演劇チーム。虚構性の強い演劇を目指し、『リアル過ぎる嘘っぱち』の創作に挑んでいる。生み出されていく衝撃を、時に優しく、時に激しく、作品として観客に提示することで、人間の本質を描き出す。いつまでも青臭い、カワイイ奴らでいたい。(公式サイトより)

ドキドキぼーいずの大進撃#04『ハムレットみたいなもの』

公演時期:2014/10/3〜6。会場:元・立誠小学校 音楽室。

大学を少し離れて

__ 
石畑さんが演劇を始めた経緯を教えてください。
石畑 
僕のきっかけ薄っぺらいんですよ。高校のクラスメイトが芸能プロダクションに所属していて、彼と親しかったんですけど、文化祭で彼と一緒に舞台に立って、これは面白いなと思って。それから大学でも続けていきたいなと思いました。
__ 
近畿大学での経験はいかがでしたか。
石畑 
うーん、まあでも、トータルで見たら役に立った感じですけどね。匿名劇壇に出会えて参加出来たのは大きかったです。
__ 
なるほど。もしかしたら、微妙な経験だった?
石畑 
もし僕が、高校3年生で演劇を志す人に何かアドバイスするとしたら、近畿大学はあんまりオススメしないですね。
__ 
それは。
石畑 
学生達がですね、あんまり演劇をしようとしないんですよ。演劇学科の学生として入ってきているのに、逃げ腰というか深く関わってこないんです。自分の時間を持つのはいいとは思うんですけど、そこが大きすぎるというか。だから、きっちりやろうとしていたら「何で怒ってんの」とか「雰囲気悪くしてんで」とか言われたり・・・。

ポーズとその意味

__ 
思い出深かったのはどんな事ですか。
石畑 
DRY BONESに参加した事ですね。学園祭の公演に関わっていた時期に、「自分はこれでいいんだろうか」と悩んでいたんです。そんな時期に竹内銃一郎さんの名前とDRYBONESのチラシが目に入って、入団しました。
__ 
DRY BONESでの、最初の公演はいかがでしたか。
石畑 
タイトルは「光とそしていくつかのもの reset」でした。その公演の直前に、元々いた団員達がごそっと抜けていて。それで作品の雰囲気も変わったらしかったんです。楽しかったですね。竹内さんがですね、面白かったんですよ。何でも出来るんですよ。凄かったです。「こうやるんだよ」って、笑う演技を見せてもらったり。厳しい時は厳しかったんですけど、良いものを考えて見せたときには、笑ってくれました。
__ 
印象深い経験は。
石畑 
やっぱり一番最初の公演ですね。その時、漠然とですけど舞台での体の動かし方がどれだけ大切なのかが分かったんですよ。
__ 
舞台上の、俳優の体の動かし方という事ですか?
石畑 
それまでは演出家に頼った意識があったんです。「僕らが面白い動きをすれば、演出家が面白いようにまとめてくれるだろう」みたいな。でも、役者の姿勢や動きがお客さんにはどう見えるのか、例えば役者が二人いれば彼らの向いている方向だけで、どんな関係にあるかが分かるんだ、みたいな事を意識するともの凄く面白い。それを体で学んだんです。
__ 
自分の体がどんな態を示しているかに意識的になったという事ですね。
石畑 
そうですね、そこを竹内銃一郎さんという方に教えてもらったのが僕の基本にあると思います。

匿名劇壇との出会い

__ 
石畑さんが匿名劇壇に入った経緯を教えてください。
石畑 
これはですね、ゴリ押しです。演劇をこれからどう続けていいのか迷っていた時期でした。ある時の学内公演の打ち上げの席に福谷さんと佐々木さんがいらっしゃったんです。佐々木さんとはもともと仲が良くて、福谷さんとも何度かお話させてもらったことがあったので。その時に思い切って、「次の匿名、僕とか、出してくださいよ」って一日言い続けたんです。
__ 
一日?
石畑 
二次会のカラオケでも言い続けて。「ちょっ待って」と言われて、翌日の昼に電話したら「おう、ちょっと次出てもらうわ」と。次の公演の「気持ちいい教育」 から出る事になりました。
__ 
ああ、DVDを拝見しました。出てましたね。
石畑 
そこからまたゴリ押しですよ。「入りたいんですけど」と言い続けたら、福谷さんが怖くなったらしくて。「アイツちょっと怖いから入れるわ」となったらしいです。そんな感じです。
__ 
素晴らしい。もちろん、何ら恥じる事はないです。
第三回本公演「気持ちいい教育」

公演時期:2014年5月。会場:シアトリカル應典院。

「セクシー」との距離

__ 
冒頭の方で、固い身体をテーマとして考えていたとの事ですが、それはまさにそういう事だったんですね。
石畑 
はい。お客さんって、普通の状態の僕らの身体には興味がないんですよ。緩い身体だって、緊張からの緩和を見せないと、そこには意味が生まれないという。
__ 
それは、壇蜜の何がエロくないかというテーマに接触しますよね。
石畑 
壇蜜。
__ 
あの人の何がエロティックではないのかについて最近考えていて。マネキンと壇蜜のどちらがエロいのかというとそれはもうマネキンじゃないかと思っているんです。マネキンは完全に、彼女の世界に面と向かって戦っている。だから僕らはマネキンの子の姿を見れるし、触れ合えるんじゃないか。
石畑 
はい。
__ 
私は、壇蜜は戦っているんじゃなく、世界を吸収しているように見える。だから彼女に謎を感じる事はない。先ほど仰ったような舞台上の役者の身体は、緩く見えても固くても、あらゆる準備をしているじゃないですか。そういう風にして立っている役者の身体には視線をそそられるし、エロスを感じる。
石畑 
壇蜜を最初にみた時は、確かにエロいと感じました。メディアで見る機会が増えるにつれ、確かにエロいなあと感じる事はなくなったかもしれません。
__ 
いまNHK出てますもんね。
石畑 
壇蜜=セクシーという触れ込みに引きずられているのかもしれないですね。
__ 
もし、この5年TVもネットも見ていない人に壇蜜を見せたらどうなるんだろう?
石畑 
もしかしたら「どうしてこの人がTVに出ているんだろう?」と思うのかもしれないですね。

フラッシュフィクション=数十秒の超短編作品ほか小作品を連続上映する形式

__ 
舞台上で役者の演技に格好が付いた瞬間について考えようと思います。さきほど稽古を見学させていただいて、石畑さんの表情がカッコ付いた時、稽古場のみんなが笑ってましたよね。あの笑いの構成要件には確実に、同じ劇壇だからという共有があるんだと思うんです。石畑さんに集中していて、そこで成立する絵に対する鋭敏さがあるからかもしれない。フラッシュフィクションという、とても難しい形式は、観客にその創造性を次々に要求していく。過酷ではあるけど、その環境に可能性を感じます。
石畑 
もう、どんどん絵が変わっていくんですよ。一瞬の輝きが凄く大事なので。それを最大値で引き出さないとあかんので。
__ 
石畑さんがキーマンだと思っています。その、言葉は悪いですが、見た目のインパクトが凄いから。
石畑 
頑張ります。

質問 佐々木 誠さんから 石畑 達哉さんへ

__ 
前回インタビューさせていただきました、佐々木誠さんから質問を頂いてきております。「役作りのアプローチとして、どこから近づいて行きますか?」ちなみに佐々木さんは、体から入っていくそうです。
石畑 
体はすごく大事ですね。僕も体から入っています。それから、お客さんにどう見られるかという事があるじゃないですか。どういうキャラクターであるか、そのためにどんな動きをしないといけないか。どのように発声しなければいけないか。体と言葉を大事にします。その上でいかに遊ぶか。体と言葉という土台を作って、そこを出発点に派生させていくというイメージですね。
__ 
自分との共通部分を探していくんじゃなく、役がどんな体であり言葉を発するかを探る?
石畑 
そこを構築して、ダメを受けて、また考えての繰り返しです。そのダメというのが、自分がどう見られているかの答えなんだと思っています。だからとても大事に聞いています。そこから、如何に自分を動かしていけるか。

俳優の条件

__ 
匿名劇壇メンバーの個性が強いですよね。興味深い集団だなと思っています。石畑さんは、同じ匿名劇壇で面白い役者は誰ですか?
石畑 
僕は杉原だと思いますね。
__ 
杉原さん、人気ですね。杉原さんは松原さんが面白いと言ってました。
石畑 
松原さん、上手ですよね。僕は上手ではないのであこがれます。杉原は感情の頂点を出し切るので。そこが初見から面白いなと思ってました。
__ 
では、石畑さんが考える、魅力的な俳優の条件とは。
石畑 
演出が求める事をクリアした上で、俳優独自の面白さでもって演出の想像を凌駕できる事だと思います。

チャンスは逃さずいきます

__ 
いつか、こんな演技が出来るようになりたいとかはありますか。
石畑 
3ヶ月前に一人芝居のイベントに出たんですが、3時間でも4時間でも、ずっと見ていられるぐらいの役者になりたいと思いました。たった一人でも。
__ 
一人芝居って難しいですよね。退屈じゃない役者って凄いですよね。
石畑 
実力、体力、精神もありますよね。僕はまだ、熱量で押し切るという事しか出来なくて。そうじゃなくて、熱量を扱えるようになりたいです。見た目のインパクトはあるとは思うんです。
__ 
なるほど。では今後、どんな感じで攻めていかれますか。
石畑 
うーん。やっぱり、チャンスは逃さずいきます。僕は本当、ゴリ押しとかをかなりやったりする人間なので。本当に出たい舞台にはアグレッシブに行きたいです。

ネックウォーマー

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがございます。どうぞ。
石畑 
ありがとうございます。(開ける)
__ 
大したものじゃないですけどね。
石畑 
これは・・・
__ 
ネックウォーマーですね。
石畑 
これからの季節に最高じゃないですか。ありがとうございます。
(インタビュー終了)