演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

押谷 裕子

俳優

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めっちゃ生き生きしてた

__ 
すみません、今日は大事な時間を使わせてしまって。今日はどうぞ、宜しくお願い致します。
押谷 
いえいえ。とんでもありません。こちらこそ、お願いします。
__ 
早速ですが、押谷さんはどういうきっかけから演劇を始めたんでしょうか。
押谷 
始めたのは仕事にも慣れて余裕が出て来た頃です。それまでを振り返った時に、まだやっていない事があるなあと思ったんですよ。
__ 
ええ。
押谷 
その時なら、まだ自由が利くと思ったんですね。仕事を辞めて、AI・HALLファクトリーに参加したのが最初です。
__ 
やりたかった事というのは、そのままお芝居だったんですか?
押谷 
その前から声優とか、演じる事に興味があって。でも環境とか年齢とか当時の進路とか、将来の展望を考えるに、現実的な道を選んで来たんですよね。いつか出来たらいいなと思っていながら、なかなか決断できずにいました。
__ 
なるほど。初舞台はどうでしたか。
押谷 
観るもの聞くもの全てが楽しかったですね。14、5人で、見ず知らずの人が集まって一つのものを作り上げていくのが、過程も結果も楽しくて。仲間と一緒に作りあげたものがすごく愛おしかったんですね。
__ 
なるほど。
押谷 
親を公演に呼んだんですけど、「めっちゃ生き生きしてた」と言ってくれたんですよね。自分も楽しかったんですけど、周りもそう言ってくれた事が、自分の大きなステップになったと思います。
__ 
なるほど。ありがとうございます。
演劇ユニット昼ノ月

昼の月は美しくないか? 月は夜、という世間の先入観をうちやぶる私たちのめざすものがそこにあります。見えにくいひるの月。見えてないのだけれど、実は、あるんだ。そこに。そこを見つめよう。そこに出現させよう。そういう思いで結成したチームです。(公式サイトより)

上品芸術演劇団

伊丹アイホール演劇ファクトリー最後の卒業生である、9期生の上杉晴香、押谷裕子、清良砂霧、脇野裕美子と、チーフディレクターである鈴江俊郎(office白ヒ沼主宰)のユニット。(公式サイトより)

演劇ユニット昼ノ月「顔を見ないと忘れる」

__ 
実は、演劇ユニット昼ノ月の公演は拝見しております。一度だけなんですが、「顔を見ないと忘れる」。凄く面白かったです。
押谷 
うわ、本当ですか。ありがとうございます!
__ 
あの作品は、二口さんとの激しい掛け合いが良かったですね。
押谷 
そうでしたね、監獄に入った旦那さんとの。一つ一つの掛け合い。そこには一見責めるような言葉があるかもしれない、でも二人の関係は、表面上の言葉の応酬だけじゃなくて。
__ 
愛がある駆け引きというか。
押谷 
そうですね。どれだけそういう言葉が並んでも、優しい作品だったんだと思います。
__ 
絆ですよね。
押谷 
はい。夫婦というだけではやっぱり語り尽くせないんですよ。離れ離れになってしまって、さらに強くなった間柄がありました。

AAF リージョナル・シアター2011−京都と愛知− 京都舞台芸術協会プロデュース公演『異邦人』

__ 
今回の山岡さんの「異邦人」。台本はまだ読んでいないのですが、絆というほどロマンチックなものではない、人間関係そのものが抽出される話なんじゃないかなと勝手に想像しています。どう読まれましたか?
押谷 
私もまだ模索中なんですよね。とても日常的なんですよ。身近なんです。人というものが抱える寂しさとその先にある祈りのようなものを浮き彫りにする作品なんじゃないかなと思います。
__ 
寂しさ。それはどのようなものなのでしょうか?
押谷 
人って、誰しも孤独だと思うんですけど、そういうものを抱えながら人と関わり合いたいんですよね。その時の辛さや、確かな感触を通して、「人」を描き出した作品だと思います。
__ 
なるほど。避けようがないですからね、孤独って。
押谷 
難しいんですよね。人と関わる上で、例えば強がったり、ウソをついたり。その人が内側で求めていることが、たくさんのフィルターを通して相手に届く。届いた時には、なんだかおかしな事になってしまっていたみたいな。
__ 
会話劇でですか?
押谷 
そうですね。日常的なんですよ、どこにでもいるよね、という人たちなんです。そこがまた、共感出来るポイントだと思います。
AAF リージョナル・シアター2011−京都と愛知− 京都舞台芸術協会プロデュース公演『異邦人』

山岡徳貴子・作。柳沼昭徳・演出。公演時期:2011/6/9〜12(京都)、2011/6/18〜19(愛知)。会場:京都芸術センター、愛知県芸術劇場小ホール。

質問 田中 浩之さんから 押谷 裕子さんへ

__ 
前回インタビューさせて頂きました、田中さんから質問を頂いてきております。「1.対人関係を円滑にするにはどうすればいいでしょうか?」
押谷 
あはは。自分でも上手く進めていると思っています(笑う)。これは職業柄、対人関係が上手くいかへんと仕事が何も出来ないので。
__ 
え、何をされているんですか?
押谷 
看護師をしています。元々はそんなに明るく無かったんですけど、自分の居場所を保つ為に、相手の警戒を解ために試行錯誤しながら振舞っていたら結果的に今の私になった。それが唯一私が出来た方法で、だから今、苦もなく出来ていると思うんですけど。
__ 
コツとは。
押谷 
まず自分から相手を認めてあげる。そうしたら自分も認められるんじゃないかと。自分の行う処置を受け入れてもらわなければ仕事にならないんですが、相手がどういう状態だったらこれを受け入れてくれるのかなって。
__ 
毎回想像するんですか。
押谷 
はい。毎回というか、ずっとその連続なんです。患者さんとの関係が続く中、ずっとです。すると、自然と相手の求めている事や気持ちを察知する力が高まって来るんですよね。そういうスキルは、仕事を通してどんどん高くなって来たような気がしますね。
__ 
仕事を通して。
押谷 
上から高圧的にすると、人は心に蓋をするじゃないですか。だから柔らかく、和やかに、かつ自分の意見を通せるように。ですが、人との関係を円滑に進めていける反面、その分相手と思うようにぶつかれなくなるんですよ。円滑に人と関係するだけが良い事とは思わない。
__ 
そのスキルが、ご自身に身についたと実感した時、どう思われましたか?
押谷 
・・・壁を感じましたね。私は一人だって感じたんですよね。「私の言う事聞けよー!」って叫び出せない。自分で作り出している事だけど、壁を感じて。一人だって思うときがある。私は誰にも本心を言わないんじゃないかって。
__ 
うーん。仲間って必要ですよね。

力を自分の中に貯めて

__ 
押谷さんは、今後どんな感じで攻めていかれますか?
押谷 
現状としては、同じ上品芸術演劇団の鈴江さんが東京に行っているんですよ。だから、今はそれぞれが別の場所で個々の力を磨いて、ある時に持ち寄って一つの作品を作れたらいいなと思っています。
__ 
なるほど。そういえば、押谷さんは様々な活動をされていますよね。梶川さんと二人芝居したり。
押谷 
はい。色々な魅力的な人と組んで、表現する力を自分の中に貯めて行ければなと思っています。
__ 
さっきインタビューした田中さんも、作演したいと言ってましたね。
押谷 
あ、そうなんだ。負けない(笑う)。
鈴江俊郎氏

劇作家。演出家。office白ヒ沼代表。

脇野裕美子氏

上品芸術演劇団メンバー。

ヨーグルトカップ

__ 
今日はお話を伺えた御礼に、プレゼントがございます。
押谷 
あ、ありがとうございます。いいですか?
__ 
もちろんです。
押谷 
磁器ですか?これ。すごいキレイ。
__ 
ヨーグルト用の器です。澄んだ白ですが、ヨーグルトを入れるとさらに白さが引き立つようです。
押谷 
すごい。ありがとうございます。
(インタビュー終了)