演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫
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成安造形大学演劇部「劇団テフノロG」

__ 
今日は、宜しくお願いします。
中谷 
宜しくお願いします。
__ 
こちらこそ。演劇スナックあけみは、大学の演劇部のユニットなんですよね。
中谷 
はい、成安の演劇部は「劇団テフノロG」というんですが、このメンバーが中心でした。ですが、今回は劇団外からも人を集めておりまして。成安には13の科があって、色々な事を学んでいる人がいるんですね。例えばファッションですとか、絵を学んでいたりとか。そういった人達の中で、今まで一緒に出来なかったけれども、大学卒業間際の機会を生かして、最後に一緒にやろうと。大きな有志団体という感じですね。演劇をやろうと思っても劇団に入ってまでやるつもりは・・・という人も引っ張ってきて、私達が思うベストメンバーが揃ったと思います。
__ 
中谷さんはご所属の学科名から察するに、メディアを総合するとか、メディア表現の方向性とかを学ばれているような印象なんですが。
中谷 
そうですね、コンピューターグラフィックなんかもやるんですが、どちらかというと映像+アート+工学系の。メディアを複合させて扱うクラスなので、割と何でもやります。演出なので作品作りもやるんですが、WEBもやりますし、チラシも作りますし。

「演劇スナックあけみ」

__ 
今回の会場はアトリエ劇研だったのですが、滋賀県からであればかなり苦労されたのではないかと思うんですが。
中谷 
遠かったです(笑う)。本当に大変だったんですよ。しかも雪が結構降っていたので、路面も滑るし。でも、京都でどうしてもやりたかったというか。テフノロGは、滋賀での公演を中心にやっていこうというのが大きな方針だったんですね。地元密着というか。ずっと続けていて、滋賀にも若い人達の劇団があるという事を周囲に知ってもらったんですけども。もっと外の人にも知ってもらいたいとなった時に、京都かなと。私自身は京都で生まれて、ずっと京都で小劇場を見ていたので、ここでやりたいと思ったんですね。あけみ内にも京都で自分の作品を出展したかったという子もいましたし。
__ 
なるほど。そういう経緯で。
中谷 
はい。北大路にオープンしました(笑う)。
「演劇スナックあけみ」

成安造形大学演劇部「劇団テフノロG」のOBにより結成された演劇ユニット。

カーテンコールの瞬間

__ 
中谷さんは、これまでどういった活動をされてきたのでしょうか。
中谷 
中学高校と、バレーボール部だったんですけど、高校の頃はそれこそ小劇場に良く通ってました。
__ 
初めてご覧になったのは。
中谷 
劇団SHOWDOWNですね。高校の友達が出演しておりましたので。お客さんと近くて、うわツバが飛んでくるとか、こんなに近くで見てていいのとか思ってたんですけど、その後、小劇場ならではの良さに気づく事になるんですが。で、大学に入学してから劇団に入って。途中で「テフノロG」に改名したんですけど。
__ 
あ、改名されたんですか。
中谷 
2年の時にやっと大学に芝居が出来るホールが出来たんですね。それをキッカケに。
__ 
横道にそれますが、どんな理由で「テフノロG」なんでしょう。
中谷 
先輩が、「蝶のイメージを持つ名前にしたい」と言い出して。蝶の「てふてふ」という昔の表記から、テクノロジーと結びついて、その日にはイメージキャラクターまで出来ていたという行動の早さで。
__ 
なるほど。テフノロGで、何かしんどかった事はありましたか。
中谷 
しんどかった事ですか。うーん。あんまりないですね。カーテンコールの瞬間、やり遂げたという実感が湧くんですね。それと同時にその公演で辛かった事は全て忘れてしまうので。
__ 
なるほど。分かります。
中谷 
あえて言うなら、胃腸炎を2回やった事と、大学2年の夏公演で2時間半の芝居中、ほぼ半分が自分のセリフだった事ですね。
__ 
2時間半ですか。
中谷 
しかも最初の20分間は全て自分のセリフで。1週間前にようやくセリフが入ったという。まだ台本を持ってるのかって怒られました(笑う)。
__ 
危なかったですね。
SHOWDOWN

元ニットキャップシアターのナツメクニオを中心し、2001年5月に旗揚げ。既成の劇団という枠にとらわれず、いろいろな物を貪欲に吸収しながら、「頭のいらないエンターティメント」をテーマに大衆娯楽の王道を追及する。(公式サイトより)

一本の樹

__ 
今回の「物書きの書き物」。ストーリーの概略としては、流しの物書きの女の子が物語をスナックで発表し、その内に架空であった筈の物語が自分の過去と重なっていくというものでした。ええと、このお話はどのようにして生まれたのでしょうか。
中谷 
そうですね。まず、これは個人的な認識の問題なのですが・・・自分が感じた事というのが、実は見たもの・聞いた事よりもリアルだと感じていて。そういう、感じた事をフレッシュな形で留めておきたいというのがあって。だから物を書いたり、芝居を作ったりしているんですが。その時自分が一番感じた事を、何故?という疑問を置いておいて「わっ」て捕まえて「ばっ」て紙に流すという感じで書くんです。そういう意味で、今回の「物書きの書き物」の、自分自身の過去の思い出を書いて残しておくというテーマと似てますね。
__ 
主人公の女の子が、ね。
中谷 
ある意味、私がやっている事と同じで。だから、日記や物を書いたり、芝居をしたりとか、私がやっていた跡を残したいという思いがあります。今まで感じた事を忘れてしまったり、あとは大学で過ごしてきた環境を出る寂しさとかが重なって生まれました。時期的にも卒業式がありましたし。というか、昨日卒業式だったんですけども。
__ 
あ、おめでとうございます。ええと、何故そういった思いや考え方などを残したいと思われたのでしょうか。
中谷 
そうですね、残す理由・・・。一番大きいのは、振り返る事だと思うんですよね。実は、常に忘れてしまう事への怖さがあって。考えた事って、それ自体に形がない為に消えてしまうものだと思うんですね。それって脳の電気信号そのもので、一瞬で消えてしまうもので。
__ 
どうしてもそうですね。
中谷 
本能的にそれを外に出したいという欲求があって、それを貯めて置くことで振り返りたいと思うんですね。それは物凄く手間の掛かる事だけれ。感覚って、消えてしまうものなんですよ。例えば一本の樹を見て、「あ、キレイ」と思ってもその感情はその時だけに思われるものかもしれんと・・・大分深い話になるんですけども。
__ 
いえ、どうぞ。
中谷 
大学で、40代・50代の年上の方と話す機会がありまして。お話をする内に物を見る価値観って年と共に変わっていくんやなあと思ったんですね。すると、一本の樹への感想を今のうちに残しておきたいという衝動が。
__ 
なるほど。
中谷 
ある意味で冷静過ぎるのかもしれないですけど、そういう思いは最近特に大きくなってきたように思います。
「物書きの書き物」

公演時期:2008年3月1〜2日。会場:アトリエ劇研。

疾走

__ 
入学から4年間、最後は「物書きの書き物」で終えた訳ですが、総括していかがですか。
中谷 
あー終わってまうという思いもありますが・・・。最後に外部公演も出来ましたし、一つのまとまった成果になったと思います。自分達自身の実力も培われたと思いますし。
__ 
演劇公演を別の土地で上演する訳ですからね。
中谷 
疾走感のある4年間でした。
__ 
なるほど。ちなみに、卒業後の進路はどうされるのでしょう。
中谷 
実は名古屋に就職が決まっていて。
__ 
あ、おめでとうございます。
中谷 
ありがとうございます。
__ 
名古屋も小劇場が盛んみたいですね。
中谷 
あ、そうなんですか。
__ 
どうですか、名古屋でも続けていくとか。
中谷 
そうですね・・・。いきなり劇団を立ち上げるというのは無理だけれども、今までと変わらず、書き物は続けて行きたいと思います。向こうに移住しても、何らかの形で演劇や表現に携わっていきたいと。演劇に関わって、これだけは諦めたくないというものが出来たんですね。芝居を始めるまで私は諦めの早い性格だったんですが、演劇公演を企画作成から最後のカーテンコールまで仕上げるという・・・。
__ 
完遂力というか。
中谷 
はい、無理だと思っても諦めない力が付いたと思います。実は、私の周囲では就職せずにフリーターして、でも自分のやりたいフィールド(演劇や色々な製作活動)で活動を続けていく子も多いんですが。自分のやりたい事を続けていくって単純に凄いと思う。やりたいで終わるとか、あの時出来たであろうにとかで終わるのではなく、本当にやるっていうのは。私もそうありたいです。会社で仕事をしながらでも演劇というフィールドにこだわっていきたいと思います。
__ 
分かりました。
中谷 
といっても、実は昨日の卒業式後の送別会で「あけみは続けていく」宣言はしちゃったんですけどね(笑う)。台本をファックスで送るから、とか。

mina perhonenのピンバッチ

__ 
今日はありがとうございました。お話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。
中谷 
ありがとうございます。いつもプレゼントされてますけど、どういう風に選んでいるんですか?
__ 
適当の時もあれば、意味合いを考える事もありますね。まあ適当なんですけど。今回のは偶然、雑誌でみた「レトロビル特集」ってのに載っていたビルにあった洋品店で購入しました。
中谷 
あ、かわいい。桜のイメージなんですかね。
(インタビュー終了)