ルドルフ「授業」
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- 今回はルドルフ「授業」(作=ウージェーヌ・イヨネスコ)に出演される、ヨーロッパ企画の永野宗典さんにお話を伺います。よろしくお願いします。もう、そろそろですね。
- 永野
- そうですね。どうなるやら。
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- 頑張って下さい。とても楽しみにしております。今日の稽古はどんな感じでしたか?
- 永野
- 先週通し稽古があって、それが終わって一発目の稽古でしたね。通し稽古を受けて、色々と修正していっています。ちなみに、ラストシーン中心の稽古でした。芝居がどんどん練りこまれて、出来上がってきています。丹念に作られてますよ。
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- 楽しそうな時期ですね。
- 永野
- そうですね。でも自分の役どころでまだ迷うところもあって。役の全体像もまだおぼろげなんですよ。その中で、どのくらいのスタンスで役を作っていけばいいのか。役者として、まだ芝居全体に追いついていない状態ですね。
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- 言ってみれば、みんなで森の中をさまよっているような。
- 永野
- さまよっています。たまに美味しい果物を見つけて、みたいな感じで。水沼さんを先頭としてついていってますね。
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- はぐれてしまわないように?
- 永野
- こっちの道も面白いかもですよって、たまに提案したり。フラットな稽古場なので、言いやすいですね。
はぐれてしまわないように
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- 金替さんから又聞きしたんですが、この「授業」東京でご覧になられたそうですね。
- 永野
- たまたま新宿のゴールデン街を歩いていたら、東京乾電池さんがやってたんですよ。教授役が非常にインパクトがありましたね。台本を読んだときには気づきませんでしたが、ちょっとエロティックなシーンもあったり。
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- 今回金替さんが演じられるのは教授役だそうですが、芝居が後半に近づくにつれどんどん興奮していくと聞いています。最後にはとんでもない事をするという役回りだそうですが、女中役の永野さんはその間どうしているんですか?
- 永野
- それは見に来てもらわないと(笑う)大きく言えば、原作では女中は計約3回登場し、教授をたしなめたりするという役回りで。
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- そうですね。
- 永野
- でも、今回の水沼さんの演出によって非常に不可解な役回りになっています。稽古中、「これどこに向かうんだろう」って。どうしはるんだろうって僕も楽しみなんです。
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- もう、東京乾電池バージョンとも全然違う。
- 永野
- 原作が解体されて、再構築されてる感じです。グロテスクだったりエロティックな雰囲気が、ユーモラスな印象になるんじゃないかなと。不条理劇なんだけど、可笑しみのある作品になると思います。
やさしい不条理劇
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- 私実は不条理劇を見るのはあまり経験がないのですが・・・
- 永野
- ですよね、上演される機会はあまり多くないですね。実は去年、ヨーロッパ企画の「冬のユリゲラー」が映画化された時に、三条御幸町に宣伝の一環でイベントカフェを開いた事があって。
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- 「カフェ・ド・念力」ですね。
- 永野
- そこで、不条理劇の芝居を演出・出演したんですよ。
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- あ、ブログにありましたね。いかがでしたか?
- 永野
- まあ、お客さんの反応はぽかーんと(笑)。
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- ああ・・・。
- 永野
- でも、もの凄い勉強になりました。単純にやって見世物になるほど甘くないんですよね。で、作り込むほど真剣になれる感触もあって、そうして作ったシーンほどお客さんが見入ってくれる。
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- 意味が伝わりにくい分、受け手にも送り手にも集中力が必要とされる。
- 永野
- はい。あ、今回の「授業」も不条理劇ですが、全然分からない脚本でもないし、見やすい雰囲気の作品になっていると思うので、全然大丈夫です(笑う)。
質問 水沼 健さんから 永野 宗典さんへ
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- 前回インタビューさせて頂いた、水沼さんからご質問を頂いてきております。「好きな漫画は何ですか?」
- 永野
- 福満しげゆきさんの作品が好きですね。感覚が、これは僕じゃないか、って思わせてくれるんですよね。細かい感情の機微が描かれていて、面白いんですよね。
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- 私も好きです。ハラハラしますよね。
- 永野
- 赤裸々で、刺激的なんですよね。
自分を満たす方法
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- 永野さんが俳優を続ける理由とは。
- 永野
- やっぱり、日常の生活で吐き出せないところが多いじゃないですか。それをセリフで吐き出してるみたいな。それを苦にしない人もいれば、文字にする人もいる。スポーツで発散する人もいるし。
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- 永野さんはどんなタイプ。
- 永野
- 自分をもっと知ってもらいたいという思いが強いんでしょうね。だから俳優をやっているんじゃないかと。単純に、お客さんの前に立って笑わせたり感動させたりするのが好きっていうのもあると思うし。自己顕示欲が強いんじゃないですかね。
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- ご自身でそう仰るって、カッコいいですね。
- 永野
- 今の言葉?(笑う)自分が人なみなのかどうかわからないけど、やっぱり固執していると思う。でも、これ以外には自分を満たす方法を見つけられていないですね。
ヨーロッパ企画第29回公演「サーフィンUSB」
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- あ、ヨーロッパ企画といえば次回公演が再来月に。タイトルがいいですね。「サーフィンUSB」。
- 永野
- サーフィンものってどう舞台で表現するのか。現在、研究開発中です。
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- 一昨年の年末のBRAVA!でやってたカウントダウンのコントで、サーフィンものがありましたね。
- 永野
- もともと作・演出の上田の中で、「波」というテーマを扱いたいとという思いはあったみたいで、その延長線上にBRAVA!でのコントもあったんでしょうね。本公演はもっと、非日常寄りになると思いますが。
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- 実は今日、悪い芝居のアフタートークで上田さんが出てきて。舞台上に扱いづらい要素を載せるという事について話されてたんですよね。振り返ってみると、ヨーロッパ企画の公演では、完全にコントロールの利かないものがよく出ますよね。
- 永野
- 地形演劇ってよう言ってますけど(笑う)。その上で、役者の体がライブで動いている面白さがあるんでしょうね。
ヨーロッパ企画第29回公演「サーフィンUSB」
作・演出・上田誠。公演データは>>公式サイトへ。
何を人に気を使って・・・。
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 永野
- 自分の作った世界を人に見せることに意欲が沸いています。作品を発表していきたいなと思います。一方で、俳優業も、自分の面白いと思う表現をきっちりパッケージして人前にたてるように突き詰めていきたいなと。もっともっと真剣にやっていきたいなと思います。完全に自己顕示欲のあらわれですけどね(笑)。そこをいかに満足させるかということで。自分のやりたいことしかやらないという覚悟で、2010年は動いていきます。
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- いいと思います。
- 永野
- あはは。でも、演劇っていう好きなことやれるメディアでやってて、何を人に気を使っていく必要があるのかと。色んなアーティストがそうしてきたと思いますし。ビビってても仕方ないと。後悔しないように生きようと思います。
ジタバタ
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- 永野さんは、一時期より随分落ち着かれましたよね。
- 永野
- あ、それは自分でも思います。一時はもっと焦ってて、早く売れなきゃとかもっと力を付けて劇団引っ張らなきゃと思ってたんだけど。
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- ええ。
- 永野
- それは今でも思ってはいるけど、何だか凄く浅はかなところであがいてたんですよ。それで結局媚びたり、人の目を気にしてやってそうやって自分が舞台に出たり色々なメディアで出演させて貰ったりして、それで自分に芯があったかというとそうでもなかった。どうやったら面白がって貰えるか?って。もちろん、その計算はしてもいいと思うんですけど、何か足りなかったんじゃないかなと。ちょっと、人の顔色を伺うのはやめようかと。
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- ジタバタしてもしょうがない。きっとそういう心境になるには、ジタバタしなければならなかったんだろうなと。今の永野さんはなんというか、ご自身の立ち位置を定められたんだろうなと思います。素晴らしいなと思います。
- 永野
- 少し前に、自分の芝居、しょうもないなと落ち込んだ時期があって。そこから開き直って落ち着いているという感じですね。まあ、ここからブレないようにしたいなと思います。これで逆に、つまらんくなったらいやだけど(笑う)。
ドレッシング
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
- 永野
- マジで? そんな。いいの?
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- どうぞ。
- 永野
- 3つありますけど・・・(開ける)あ、ドレッシング。ありがとうございます。