勉強の年、2015
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近、伊藤さんはどんな感じでしょうか。今年の事についても伺えていけたらと思います。
- 伊藤
- そうですね、最近はゆっくりと落ち着いています。今年は、演劇以外にも色々他の事にも目を向けてみようかなと思っています。実は、どこかで踊る機会が持てたらなと思っています。Aripeというユニットを永津真奈と一緒にやってるんですけど、10年以上ジャズダンスを続けていて、それで。
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- あ、踊られるんですね。
- 伊藤
- 二人ともミュージカル好きで始めたので。永津も踊れるんですよ。あの長い手足で。
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- 踊れるイメージが・・・失礼ですが、意外です。
- 伊藤
- 永津はゆっくりしてそうなイメージがあるんですけど、私はちょこちょこ動く感じで。昔のAripeも、歌とかダンスを取り入れてたんです。占いによると今年の私は勉強の年になるらしくて。何か勉強しようと思います。何か・・・ってアレですけど(笑う)。
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- なるほど。ネイルされてるんですね。ネイルを習ったらいいんじゃないですか?
- 伊藤
- あー、なるほど。絵を描くの好きだし、いいかも。
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- 描かはるんですね。
- 伊藤
- Aripeのチラシも、最初の方は私が描いてたんですよ。
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- あ、そうなんですか!「人の気も知らないで」 の絵もですか?
- 伊藤
- あれはプロの方が。でも、題字は私が描いたんです。ああいう、昔の感じが好きなんですよ、私も永津も。
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- レトロな、60年代のにっかつロマンポルノみたいな?めっちゃオシャレですよね。
- 伊藤
- そうなんですよ、表がフルカラーで、裏がカラー一色みたいな。昔の映画のチラシみたいな感じでできたらなと。
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- 味がありますね。
- 伊藤
- 味だらけで(笑う)そういうのを考えるのが私たち好きなんですよね。その流れでカラーコーディネート資格とかもいいのかな。英会話もしたいなあ。英語を喋りたいなとずっと思っていたんですよ。英語を生かした配達の仕事とかもあるらしいじゃないですか。
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- そんなのがあるんですね。
- 伊藤
- 何か、現地に商品を持っていく仕事らしくて。英語が必須なんですけど現地に飛行機で行って商品を渡してくるみたいな・・・それで時間があまったら観光も出来るだろうし一石二鳥やん、て。
Aripe
女性だけの演劇ユニットAripe。当時としては珍しい、食事もできるカフェ公演を積極的に行う。
iaku 2014全国ツアー「人の気も知らないで」
公演時期:2014年6月~7月。会場:7都市各所(豊岡、福岡、熊本、仙台、札幌、京都、三重)。
声のお仕事、細かい作業
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- 伊藤さんは、去年はナレーションのお仕事も数多くされましたね。
- 伊藤
- もっと頑張っていけたらいいなと思ってます。私は今事務所には入ってなくて、それでも声を掛けていただいて。ありがたいです。でも、ナレーションってきちんとした声のプロの方の仕事で、私みたいな役者がやってもいいんだろうか、でも役者としての仕事をしているんだからいいんだ、と割り切ってやっているんですけどね。それでももうちょっと勉強せなあかんな、と。
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- なるほど。
- 伊藤
- 舞台とは真逆で、凄く細かい事を言われるんですよ。細かい感情の表現の仕方を監督さんが読み切って言われるんですよね。だからと言って同じ事が再現出来る訳じゃないんですけどね。
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- 声の凄く細かいところ。伊藤さんがキャスティングされたのはどういうところなのかなと想像しているんですけど、もしかしたら、細かい部分まで決めているわけではないから、なのかな。ちょっとこれは失礼な表現かもしれないですけど。
- 伊藤
- いえ、そうだと思います。MCを本業にされている方とか、聞いていて「ふわぁっ」て感心するんです。私とか、ふらついているから。きっちり出来るプロにはその仕事が振られて。私が出来るのは声を出す時の「感情」に集中する力なのかなと思います。それがまた舞台とやり方が全然違うんですよね。
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- 面白いですね。
- 伊藤
- 舞台だと私、体が小さいので、その分大きく動こうとしているんですけど、ラジオCMとかTVのナレーションで求められる仕事は意外と素の自分を求められるんです。新しい私を発見しているのかもしれませんね。
IN HER THIRTIESの思い出 伊藤えりこさん編
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- IN HER THIRTIESについて。去年の公演ですが、今後も追跡取材をしようと思っています。まず、ご自身にとってはどんな公演でしたか。
- 伊藤
- まず、オーディションを受けるかどうかを迷っていて。私オーディションに受かる確率が本当に低くて。仕事を貰うのは大体、声を掛けていただいていたんです。でもプロデューサーの笠原さんから「受けてみたら」って勧めて頂いたので。ワークショップオーディションみたいな形でした。ワイワイやりながらだったのでやりやすかったです。
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- 伊藤さんは麗らかチームの34歳のコーナーでしたね。
- 伊藤
- そうですね。全員個性がバラバラの人たちで、結婚もマチマチでした。頂いた台本のボリュームが最初は少なかったんです。これ大丈夫かな?と。でも話し合っていくうちに「女性の30代はまだまだあるで」みたいな感じになって、稽古中はオーディションの延長みたいにたくさん話し合いながらやっていきました。楽しかったですね。稽古期間は1ヶ月弱だったんですけど結束感を感じながら本番を迎えました。公演後も凄い仲良くなったんですよ。一つの舞台を作る時に生まれる自然な結束力ってすごく大事なんですけど、あんなに、30代の人間として結婚とか出産とか演劇を続ける事について話すのは貴重で、もう全部分かる!でした。20代ならあんなに打ち解けられないし、40代だともっと引いて見てしまうかもしれない。30代だからあんなにワイワイやれてたんですよね。
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- なるほど。
- 伊藤
- 作品としても変わった試みでしたね。一人の女性を複数人でやるというのは初めてでした。終演後、トークゲストで観てくださったiakuの横山さんが「一人の女性をやっているというより、100人の女性を観ているようだった」って。誰にも通じる事をやっていたんですね。それは上野さんが狙っていた事かもしれない。バラバラなキャスティングだから成立したのかも。それぞれの人が思っているように見えたのかな。
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- 37大西さん・38片桐さんのコーナーが面白かったですね。
- 伊藤
- 大西さんは元の事務所の先輩なんですけど、ずっと変わらないんですよ。
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- 若く見えますよね。配置についた瞬間びっくりしました。あの人は15歳若く見えますね。
TOKYO PLAYERS COLLECTION「IN HER THIRTIES」
公演時期:2014/3/27~31。会場:in→dependent theatre 2nd。
何をしたいか考えたら演技だった
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- 演劇を始めた経緯を教えて頂いてもよろしいでしょうか。
- 伊藤
- めっちゃ最初から話していいですか。
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- もちろんです。
- 伊藤
- 子供の頃からミュージカルが好きだったんです。おやこ劇場に月一回連れていって貰ったりして。母親も好きだったんでしょうね。(ちなみに、絵の教室にも行ってました。)学校の演劇鑑賞会で劇団四季を観てミュージカルが好きになって、でも高校は演劇部は敬遠してて。宝塚とかは好きで、ずっと見に行ってたりしてたんです。
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- なるほど。
- 伊藤
- 高校は進学校だったので大学に進むのが当然だったんですけど、私のいた国際教養科は熱い人が多くて、将来は何になりたいとかを語り合ってたんです。その中で一人の子が「私、みんなに黙ってたんだけど、今まで新聞記者になりたいとか言ってたんだけど、本当は歌手になりたいねん」って。そんなきらびやかな芸能生活を送りたいとか言う人なんて入学時からいてなかったし、でも当時ASAYANが流行ってたのもあるし、私も「ああ、自分のやりたい事をやってもいいんや」ってなって。高校3年ぐらいの時から劇団ひまわりの養成所に入りました。
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- なるほど。
- 伊藤
- じゃあ大学行かなくてもいいや、となって。就職しながら週3のレッスンに通って歌とかダンスとかを習う生活を2年続けていました。
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- 二十歳ぐらいですね。
- 伊藤
- その時に永津とも出会いました。でも子供の頃からバレエをやっている子を目の当たりにすると能力の差が歴然で。歌もダンスもいっぺんにしようと思ったら私空回りしてる、ってなってしまって。私は一番、何をしたいか考えたら演技だったんですよ。2年続けていた会社を辞めて演技専攻クラスに入りました。その編入も永津が一緒でした。
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- なるほど。
- 伊藤
- その課程を1年間、修了公演みたいなのもあって。ひまわりの劇団員になって、しばらくしてAripeを結成したんです。
Aripe野生時代
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- Aripeの結成は、どんな感じでしたか。
- 伊藤
- ミュージカル好きが集まったので自然と歌とダンスを入れてやろうとしたんですけど、もっと気軽に見てもらおうと思って、当時としては多分あまりみんながやっていなかったカフェ公演を始めました。それが12年前ですね。
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- そうなんですよね。当時としては全然聞いたことなかったですよね。
- 伊藤
- 私たちも初めての試みだったんですけど、養成所の1階のカフェで、夜だけの貸し切りで公演してたんです。平台一つ置いたセットで、なおかつやっている事も超アングラな感じでね。
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- おお。
- 伊藤
- 台本を誰が書くってなった時に、じゃあ私がって永津が書いて、たまには私が書いて。どちらかが書く事になるんですけど、まあ今思えば私が作演出したものは出来上がりはめちゃくちゃだったんです。いまビデオで見ても、果たしてこれでお客さんがどう思ってくれるんだろうと言うところまで全然考えられていないっていうか・・・変なんですよ。
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- 変なんですね。
- 伊藤
- 精神的な面に光を当てたりして、やりたい事は出来てたんですけど、変わってたなあと。それでやっぱりちゃんと作家さんに頼もうとなって、GO!GO!マグネグFLOWERモモンガの村田さんやiakuの横山さんに書いてもらう事になって、ああさすがやっぱり上手くまとまっているなあって思いました。
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- つまり野生時代だったんですね。
- 伊藤
- そう。野生時代(笑う)。当時は珍しいカフェ公演という事で本番中もご飯を出してお客様に食べてもらいたいと思ってたんですけど、やっぱり難しいんですよね。見ている間中食器を鳴らしたり出来ないし。めっちゃくちゃな事をやって。それはそれで面白かったですけど。
コミュニケーションが仕事の結果に与える、いくつかの影響
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- 最近疑問に思っている事があって。稽古が面白い作品は本番も面白い、みたいな意見を目にしたんです。面白い作品の条件に、稽古での何かはあるのかなと。役者同士のコミュニケーションが上手く行ってたりだとか、役者が演技を提案してこないと始まらないだとか、稽古のし過ぎは良くないだとか。
- 伊藤
- ああー、全部ありますね。確かに、お芝居の先輩を見ていても思うんですが、コミュニケーションがホンマに大事なんですよ。リリパットアーミーII(セカンド)さんのお芝居に出させてもらった時、大体毎日飲み会があるんですけど、最初は強制的に相手役の役者さんの隣に座らされるんですよ。最近になって、そうするべきなんやという事に気づきました。
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- というと。
- 伊藤
- 相手役の方とお話せえへんでも芝居は出来るんですよ多分。成立するのはすると思うんです。でも、もっと良いものを作ろうとしたり、アイデアを出そうと思ったら相手の役者さんと仲良くならないといけないな、と。コミュニケーションをとらなあかん。飲み会という場所は普段とは違うし、私も最初は飲み会なんて何でいかなあかんのと思ってたんですけど、普段は聞けない話も聞けるし、芝居でやりたい事が直接話し合えるんで、そこで面白いプランが出てきて決まったりするんです。そういうのも大事なんですよね。
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- コミュニケーション、めっちゃ難しいですよね。でも、一つ考えている事があります。抽象的な腹のさぐり合いじゃなくて、具体的なものを例に取って話すのが円滑なコミュニケーションになるのかもなあ、って。
- 伊藤
- そうですね。もしくは全然関係ない世間話をしているときも重要なのかなと思います。彼氏どうなんとか。人柄も見えてくるんだと思うんですよ。私達は大抵初対面の方ばっかりの仕事場なので、本当にどうって事のない話から入っていくといいんですよね。
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- IN HER THIRTIESの時は共通項があって、話がしやすいんでしょうねきっと。しかもテーマがそのもの女性の30代だし。
- 伊藤
- ホンマそうでしたね。稽古場の時に延々と、自分達の生き方を持ち寄って話してました。演劇に対しての思いもそれぞれ違ってたのが凄く印象的で、でも心を開いていない人はいなかったと思います。年上の方にもちゃん付けで呼んでも怒られなかったし喋りやすかったです。本当に、みんながコミュニケーションを取ろうという気持ちがあったんだと思います。みんな、心の扉が開いてる!ってのがわかりました。
質問 勝二 繁さんから 伊藤 えり子さんへ
質問 宿南 麻衣さんから 伊藤 えり子さんへ
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- 次は「人の気も知らないで」で共演された宿南麻衣さんからのご質問です。
- 伊藤
- あはは。はい。
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- 「稽古場で、演出家からいきなりネタをやってくれと言われて、それを受けて立ったりいなしたりしていて。そういう態勢をどうやって鍛えたんですか?」
- 伊藤
- (笑う)20代前半にお芝居を始めた頃に、「絶対に断ってはいけない」という精神を教えられて染み着いているんですよ。インプロなんかでもそうなんですけど、断っちゃいけない、いいえで返しちゃいけない。あと、早く返さないといけないんです。それがずっと頭の中にあって。ちょっとマイペースな永津に「早く早く!」ってなってしまって(笑う)。私「慌て」なんです。性格がホントに逆なんですよ。あとは先輩が本当にどんどん振ってくる方がまわりにいてて、転球劇場の橋田さんとか本当に憧れてて、生き様とかに憧れているんですけど、飲んでフラフラの状態でもエチュードを始めたりとか。そこに絶対に面白くして返さなくてはあかん。いや、多分訳わからなくてもいいんですよ。でも断ったらあかん。と思ってます(笑)
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- そして早く返す。
- 伊藤
- そうですね、なるべく早く返そうとしてしまいます。最近よくそう言われます。
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- 凄いなあ。それ、トレーニング出来る能力なんでしょうか。
- 伊藤
- 出来るんちゃいます?新喜劇の役者さんが段々と面白くなっていくとか、返しの早さとかも。笑ってるのが好きなので、横山さんにはコメディエンヌやなと言われますね(笑う)。
パリ生まれのアンティークのブローチ
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- 今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
- 伊藤
- そうですね。自分のしたいことをしていこうと思えるようになってきました。したい事をしていくのが大事なんやなと。今まで演劇にだけ力を割いてきたんですけど、もっと色々な事を見てもいいんちゃうかなと思えています。
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- 今日はお話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
- 伊藤
- 可愛いー!ピンバッジ?
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- パリのアンティーク雑貨だそうです。
- 伊藤
- かわいい。お洒落な。去年横山さんにブローチを頂いたんですけど、それも可愛かったんです。