演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

三浦 直之

演出家

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最近どうですか?

「劇団福耳presents『第六回 赤坂炎上』」

__ 
今回は、東京の劇団ロロの脚本・演出をされている三浦さんにお話を伺います。どうぞ、宜しくお願い致します。
三浦 
宜しくお願い致します。
__ 
先日は、赤坂L@Nのイベント「劇団福耳presents『第六回 赤坂炎上』」でコントを拝見しました。非常に面白かったです。
三浦 
ありがとうございます。
__ 
従来の演劇にカテゴライズされにくいような作品だったように思います。今でも、人にどう説明すれば通じるのかちょっと分からなくて。何というか、これまで小劇場が生み出してきた様々な表現を把握した上で、その影響下にない表現を行っているというか。
三浦 
今の小劇場のお芝居からの影響はかなり受けていると思います。好きなんですよ。たとえばチェルフィッチュだったり五反田団だったり。快快(ファイファイ)っていう劇団があって・・・。
__ 
快快。よく伺います。確か、もともと小指値という・・・。
三浦 
そうです。改称して快快ですね。あのノリでお芝居をやっているという空気が凄く好きで。皆が集まって、こんな動き方面白そうだよね、じゃあやってみようか、という。その感覚、凄く共感が持てるんです。結構チェルフィッチュぽかったりとか、身体がダンサブルだったりするんですけど、それが意識的にされている感じがしないんです。
__ 
あ、ちょっと分かる気がします。
三浦 
ファンなんですけど、さて自分はどうしようかと考えながら作っています。大学に入ってから今の小劇場が好きになったんですけど、確かにそこが出発点ではあるのかな、と思います。
劇団ロロ

2009年結成。主宰・三浦直之氏。脚本・演出をつとめる三浦直之が第一回作品『家族のこと、その他のたくさんのこと』で王子小劇場「筆に覚えあり戯曲募集」“史上初”の受賞を果たし、結成。物語への愛情と敬意を込めつつ、演劇で遊びまくる。(公式サイトより)

劇団福耳presents「第六回 赤坂炎上」

開催時期;2009年9月18日。会場:L@N AKASAKA。ライブ、インプロ、コント、演劇など、いわゆるショーケースとして楽しめるイベント。

亀島君の新鮮な動きかた

__ 
今回の作品でもの凄く面白かったのは、恋人同士が久し振りに喫茶店に行くシーン。普通に椅子に座ればいいのに、男が振り向きざま飛びあがって抱きつく形でイスに腰掛けるという。ああ、これは絶対文章では伝わらないですけど、何か凄く新鮮なおふざけを見られたんですよ。
三浦 
彼はロロのメンバーで亀島君というんですが、彼の動きは本当に面白くて。その、イスにジャンプして座るというのも、細かいタイミングが凄く重要なので何回も練習しています。
__ 
あ、やっぱり適当にやっている訳じゃないんですね。洗練されていると感じたのはやっぱり、精度があったからだし。着実に練習しているなと感じました。あと、演劇の面倒な手続き逆手に取ったセリフも面白かったですね。場面転換を、後ろを振り向きざま「ハイ着いた!」だけで済ませたり。
三浦 
演劇特有の嘘みたいなのが凄い好きなんです。三角巾を額に付けて幽霊を表したり。旗揚げ公演の時に、雨男という設定のキャラクターに、ずっと横について如雨露で水を掛ける係を付けたり。ロロではいつも、演技にルールを付けているんですよ。この前で言うと何度も同じ動きをしたり、あえて変なポーズで止まったり。
__ 
そこが現代的な感覚に思えるんですよね。

照れて、おふざけ

__ 
あれだけフラットにおふざけをされると、凄くチャーミングに映ります。反面、ちょっと乾いた感覚もあって。
三浦 
多分、僕が照れるんですよね。いかにも演劇的に、そのまんまの表現をするのが恥ずかしくて、あえてふざけるんだと思います。だからか、そういう風に感じさせるのかもしれません。
__ 
おふざけと言えば印象的だったのが、別れを切り出された女の子が「別れたくない」って駄々を捏ねるシーンですね。「ここで駄々をこねてやる!」って宣言して、「買って買って〜何で買ってくれないの〜」って。まさに駄々を捏ねてるんですが、そのまんまのセリフを引っ張ってくるのが凄いなと。
三浦 
あれは僕も好きなんですよ。稽古場で、急に「ここは子供がおもちゃを買ってくれなくて駄々をこねる感じで」って。何の意味もないのにやりたくなっちゃって。ふざけて。
__ 
もしかしたら、直接的な別れる別れないの会話ばっかりやると照れくさい、からですか?
三浦 
それはちょっとあるかもしれません。

影響と先入観

__ 
三浦さんの演出が、そういうかたちに至った経緯は。
三浦 
先入観が無かったからだと思います。日大の演劇科に入るまでは、全然演劇に興味がなくて。出身も地方なので、小劇場に触れることもなくて。小説や映画ばっかりでした。もともとは小説を書くか映画を作りたかったんですよ。
__ 
なるほど。
三浦 
でも映画学科に入れなくて、代わりに演劇学科には受かったんです。だから小劇場演劇を見るようになって「あ、面白いじゃん」って。それから自分でも作るようになったんですね。
__ 
大学入学までは演劇を作るとは思わなかった。
三浦 
はい。小説や映画を作る事になっていたら、それまで自分が読んできた、見てきた経験や歴史があって、それに影響されていたと思うんですが、演劇はほとんど見た事がなくて。その分、遊べているんだと思います。

王子小劇場「筆に覚えあり」

__ 
今年の5月に旗揚げをされて、毎月1本上演されているとの事ですが。
三浦 
五月に、王子小劇場の「筆に覚えあり」という脚本コンクールに応募したんですよ。そこで選出されて、上演したのがロロの旗揚げ公演です。
__ 
それから毎月、凄いペースですね。
三浦 
でも、旗揚げ公演から「演出力が足りない」と言われていて。自分でも経験が足りないと思っているんです。ただただ場数を踏もうと思っているので。
__ 
場数を踏む。演出力を付けるためにですね。
三浦 
実は今書けている作品が、自分でもすごく良く出来ていると思っていまして。それをきちんと演出するために。
__ 
三浦さんが思われる、演出の力とは何でしょうか。
三浦 
テキストから離れる力ですね。そもそも、脚本と演出って、役割が全く違うじゃないですか。一人がその二つを兼ねているってあんまり健全じゃないんじゃないかと。テキストを再現する力というのももちろん重要なんですが、それにあまり面白さを感じないんです。テキストはテキスト、演出は演出で全く違う世界を表現出来ればいいなと思っているんです。ロロで書いているのは僕なんですけど、それでも絶対に捨ててやろうと格闘しています。

その恐ろしさ

__ 
そのためにふざけたりしていると。では今後、どのような事を試していきたいですか?
三浦 
動きのサンプリングですね。まだまだアイデアの段階ですが、繰り返すというのに興味があって。同じ会話を6回ぐらい繰り返したり。その恐ろしさというか。
__ 
暴力的ですね。
三浦 
演劇って、絶対に同じ事を繰り返せないじゃないですか。映画や音楽のようにはいかないし。だからどう、というのはまだ分からないんですけど。実は3、4カ月同じ芝居をやり続けるという企画を思いついていて。「再演!再演!再演!」という。同じテキストで、演出を変えて上演します。
__ 
面白そうですね! 頑張ってください。

質問 浅川 千絵さんから 三浦 直之さんへ

__ 
さて、前回インタビューさせて頂きました方から質問を頂いてきております。バナナ学園に出演されていた浅川千絵さんからですね。1.好きな作家さんと、その作品を教えて下さい。
三浦 
ホルヘ・ルイス・ボルヘスの「伝奇集」と、南米のマジックレアリスムの作家、レイナルドアレナスの「めくるめく世界」です。
__ 
2.テレビドラマの中で鳴ったインターホンに反応した事はありますか? 面白い質問ですね。
三浦 
無いです。あ、浅川さんとは知り合いというか、結構仲いいんですよ。
__ 
なるほど。3.最近あった面白い事を教えて下さい。
三浦 
友達が遊びに来たとき、面白いかなを思って全裸で待っていたんですね。で、思った通りウケて。ついでに全裸で見送りに出たら警察に連行されたことです。
__ 
あ、捕まったんですか。
三浦 
ほんとに、ものの十数メートルで。運の悪さというか。30分ぐらい、全裸状態で説教されました。
__ 
4.今後、こんなの書いてみたいというテーマはありますか?
三浦 
さっき出た「再演!再演!再演!」と、実は年末に年またぎで第二回本公演を予定しています。

質問 二階堂 瞳子さんから 三浦 直之さんへ

__ 
さて、次は二階堂さんからですね。1.初めて人に殴られた瞬間はいつですか?
三浦 
中学の頃、頭のおかしい友達がいて。彼が体育館にみんなを集めて鬼ごっこをやろうと言うんですね。その内に、それじゃつまんないから鬼のタッチ=頭を掴むというルールになって。結局彼が鬼でもないのに全員の頭を殴って終わるという。彼は本当に頭がおかしかったです。
__ 
ありがとうございました。

「好き」ってすげえじゃん

__ 
さて、三浦さんは今後、どんな感じで攻めていかれますか。
三浦 
ロロはこれまで、ずっと「好き」というのをテーマにした作品を作ってきました。「好き」ってすげえじゃん、って全肯定して。もちろん、そのままやるのは照れるので、時々ふざけたり、最悪だけどさ、って言いながら。それでもひたすら、愚直に誠実に「好き」描いた作品を作りたいと思います。
__ 
なるほど。今回のコントもそうでしたね。
三浦 
年末の本公演は、この毎月やっている作品の集大成になればと思います。
__ 
なるほど。では、ロロの今後の方針としては。
三浦 
旗揚げしてから本当に恵まれているなと思っていまして。これからいかに売れていくかを考えていきたいですね。カンパニーの個性をいかに磨いて、芝居にアップロードしていくか。
__ 
ロロの個性を磨く。
三浦 
もっともっとふざけて行きたい、ふざけようと思ってふざけているのから離れるぐらい、無意識にふざけていられるくらいになりたいですね。

キャストパズル CAST CHAIN

__ 
今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。どうぞ。
三浦 
ありがとうございます。(開ける)これは・・・。
__ 
知恵の輪ですね。一番難しいものを選んできました。
三浦 
あー、・・・凄いな。どうやって・・・ええ? ありがとうございます。必ずや解いてみせます。
(インタビュー終了)