ルドルフ「授業」
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- 今日はよろしくお願いします。ルドルフ「授業」終わりましたね。本当に面白かったです。
- 筒井
- ありがとう、本当に嬉しい。
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- 不条理劇でありながら、ドライな手触り。まとう雰囲気は可愛らしい作品だったように思います。筒井さんにとってはどんな作品でしたか?
- 筒井
- 最終的には自分が当初イメージしたものとは違うものになったけど、おもしろい方達と、納得のいくものが作れてよかったですね。
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- 当初のイメージとは。
- 筒井
- とくにこんな風になるはず!とか思ってたわけじゃないです。作品は最初台本を読んで思い描くものとは大概違うものになるので・・・・・・あまり深い意味はありません。ただ、作品がもつ軽さと不気味さが混在したような雰囲気とか、人間が抱えてる普遍的な問題のようなものはしっかり描きたいと思っていたので、そこらへんはわりとうまくいったのではないかなあと思っています。
もしかしたら廃墟かもしれない
- 筒井
- 芝居って基本的には全部ウソですけど、舞台で演じている人を見て、この人たちものすごく本気になってしまってるっていうのがすごく伝わってきて心を動かされる瞬間が私は凄く好きで。ウソのなかにチラッとみえる本物の瞬間が作れたらいいなあって思います。
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- 会話劇でも何でも、そんな瞬間ってありますよね。そういう舞台に立ち会った時、本当に嬉しいですよね。
- 筒井
- 今回の作品でも、金替さんもすごくいい目をされるので、見てるだけで私も引き込まれることが何回もあってやってて楽しかった。お客さんも作品に乗ってきてくれてるなあと思える瞬間がありましたし、嬉しかったです。
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- そうそう、上演中のお客さんの乗り方も良かったですね。後でお聞きしますが、例の空気砲のとことか、「おお〜」ってなってましたよ。明らかに反応のあった舞台でした。
- 筒井
- お客さんの感想で一つ心に残るものがありました。セットの手前にボロボロになったトイレがあったんですけど、今現在使われている様子はないので、ここがもしかしたら廃墟かもしれないとか、ここにいる人物は確かにここにいるけども、もしかしたら生きてるわけじゃないのかもしれない。それから劇中に出てくる鉛筆とかノート等の小道具を本物ではなくて全部A4の紙を丸めたりして使ってたんですが、その紙をナイフにして人を刺すと本当に死んでしまったりする。そういう、「ある」と「ない」の混在が面白いと言ってくれたんです。嬉しかったですね。演出の水沼さんのアイデアが良かったと思います。
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- そうそう、舞台上の設定が、シーンによって全然正確じゃなかったりしましたよね。疑問に思うのが楽しみな時間でした。今思い返してみても、まだ森をさまよっているような気がします。全然正確な芝居じゃないんだけど、ファンシーな感覚は確かにあるみたいな。
永野くん上手に飛ばさはるわ
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- 印象に残っているのが、女中(永野さん)の頭を教授(金替さん)が紙のナイフで刺すシーン。刺された後の永野さんの何食わぬ顔が面白かったですね。筒井さんは刺されて死んだのに、演劇のウソのウソそのものでした。
- 筒井
- あれ、みんなどういう風に思ったんだろう。
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- まず、よく出来たメタ的ネタだなと思いました。あの瞬間、教授のうさん臭さが本当にウソになったんだけど、それは演劇というシステムが最初からウソなので、実は何もおかしくないみたいな。で、最後にはもう一度筒井さんがインターホンで喋ってて、一番最初のシーンにもどるし。
- 筒井
- 円環構造になってましたね。あのナイフのシーンは、教授と女中と生徒三人の関係をよくあらわしている象徴的なシーンだと思うので私は気に入ってます。紙を使った演出を最大限に活かせたと思います。
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- あとは、空気砲の演出が美しかったですね。
- 筒井
- 美しかったっていうのは初めて聞いた(笑う)。あれ、上手いこと飛んでたもんね。永野くん上手に飛ばさはるわと思ってた。
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- 四角く区切られた空間で丸い三次元の気体が捩れの関係で飛んでいったから美しかったんじゃないかなと。視覚的に衝撃的で美しかったし、壁の設定をその際に無視するという思い切りの良さも感じました。
- 筒井
- そっか、あの方向がね。
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- で、飛んでいった対象が筒井さんだったから、女中の生徒に対するある種の感情が表現されていた。コンタクトに科学的な力を使うという、訳の分からなさがよかったんですね。そこで筒井さんを襲う寒気が一気に視覚化されたんじゃないかなと。
- 筒井
- 最初はドライアイスを使ってたんだけど、ドライアイスが空気より重いせいで上手く飛ばなかったんですよ。それでスモークマシンの煙を箱に入れて飛ばしました。タイミングと方向を定めるのが難しかったみたいですが、最終的にうまくいって良かったです。
ぽろっとこぼれたもののなかに
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- 奥村泰彦さんによる舞台セットもとても雰囲気が良かったですね。あ、そう言えばあのトイレ、誰も使ってませんでしたね。
- 筒井
- あれは、演出の水沼さんと奥村さんが話し合う中で、最初は見栄えの問題から出て来たものなんです。手前に仕切りがあったほうがいいし、仕切りがあるとすればその前になんか置きたいよねということになって、それじゃあトイレを置こうという流れになったそうです。あの汚れて壊れた感じは奥村さんが考えてくださいました。
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- あの、ひびの入ったトイレを。
- 筒井
- 制作室に直にセットを組んで稽古をしていたんですが、特に稽古中大きく使うこともなくて、ずっとただただ置かれてただけだったんですけど、誰も「これいらないんじゃない?」とかは言い出さなくて、ずっとなんとなく残されてきたんです。私も、なんかわからんけど合うなあってどっかで思ってたから特に違和感も感じませんでしたし。それに、舞台が終わってから、多くのお客さんが帰り際にトイレをチラチラ見てたというのをある方から聞きまして。
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- そうそう。
- 筒井
- 気になったんでしょうね。使ってないから余計かもしれません。あのトイレみたいな、作り手がはっきりと意識した上ではない表現って大事だなと思うんですよ。こうこうこういうふうにしてって作り手はいっぱい考えるけど、そういう意識的にやったところからぽろっとこぼれたもののなかに作品の本質が現れるっていうのは、今回に限らずいろんな作品を見るうえで一番おもしろいところかもしれません。もちろんそういうものは、偶然ではなく、意識的に作ってこそ生まれるものだとは思いますが。
奥村泰彦さん
MONO所属俳優。
質問 永野 宗典さんから 筒井 加寿子さんへ
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- 前回インタビューさせていただいた、永野宗典さんから質問を頂いてきております。1.男性のどんな部分に魅力を感じますか?
- 筒井
- 芝居の事関係ないんや(笑う)。男性・・・。昔は笑かしてくれるという意味で面白い人が好きだったんだけど、だんだんオモロイにもいろいろあるなあ思うようになりまして、今は特に笑いにかぎらずなんかしら面白い人が好きです。この人面白いなと思ったら皆魅力的。あと、何の役にも立たないようなくだらないことを一生懸命やる人が好きです
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- 2.自分の好きな部分はどこですか?
- 筒井
- 好きなところか。時には嫌いなトコにもなるんだけど、すぐ夢中になる事かな。人から見たら迷惑な事かもしれんけど。
深く掘り下げて理解していく
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- 今後、どんなふうに攻めていかれますか?
- 筒井
- ルドルフとしては、次はまた演出をすると思います。基本的に自分で脚本を書くつもりはなくて、既成の脚本を上演するという形自体に変わりはないんですが、それを舞台作品にしていくプロセス自体を見直したいと思っています。これまでは本読みして2ヶ月間バーッと稽古して本番やって、っていう流れだったんですけど、それだけだと不十分な気がしてます。作品のなかでどういうところをどういう風に表現するのかということについて、私だけでなく俳優・スタッフと共同で深く掘り下げて理解していくにはどんな手順を踏めばいいかなあって今考えてるところです。
日常的にサラッと。
- 筒井
- あとこれは俳優としても演出としてもなんですけど、こんなん普通の事かもしれないけど、人物の無意識的な部分を考えるのが好きで。台本に書かれてあるセリフはその人物がある程度意識して発してるものだと思うんですけど、その奥に隠れてるけど確実にある無意識的な部分を考えて創り上げていくのが、演劇のおもしろいところのひとつなんじゃないかなと。
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- というと。
- 筒井
- 日常生活の時のちょっとしたセリフの言い方を作るのでも、けっこう難しくて面白いんですよ。たとえば、「わかりました」というセリフがあるとして、それを(口ではこう言ってるけどなんかいまいち信用出来ないなあ)って受け取られるような表現にするとしたらそんなに簡単じゃないと思うんです。口で「わかりました」と言いながら、「信用できない感じ」を身体のどこかで表現したりとか、返事するタイミングを考えたりとかになるかもしれませんけど。今年の1月に上演した『熊』でも男女が痴話喧嘩をするシーンがあったんですけど、痴話喧嘩というからには喧嘩しながら「ホントはお互い好きなんちゃうん」ってお客さんに思ってほしいけど、そんなんどうやったら作れるのかなあってすごく悩みました。人間ってそういう複雑なことを日常的にサラッとやっててすごいと思います。
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- 無意識の表現が表現される意識だけではなく、無意識も組み上げるんですね。「授業」ではそもそも原作からしてそういう要素が強かったですね。
- 筒井
- うん。演出の水沼さんが最初に思い描いたのが、生徒の私がはしごを降りて登場するっていう演出だったそうなんですけど、これは無意識のなかに降りていったととることもできますね、という感想を聞いて、おーと思いました。
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- あー、考えて見れば不思議ですね。どうしてこう、行間よりもさらに隠れた無意識というのが舞台を見る上で際立つのか。
- 筒井
- なんででしょうね。わかりませんけどおもしろいと思うので考えていきたいところです。
ルドルフ×このしたやみ企画 チェーホフ「熊」
アトリエ劇研提携公演・京都芸術センター制作支援事業。公演時期:2010年1月22〜25日。会場:アトリエ劇研。
かまわぬのてぬぐい4種
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- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持ってまいりました。
- 筒井
- 本当、ありがとね。私の好きなAngeだ(開ける)はっ。これめっちゃ嬉しい。手ぬぐい?
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- そうですね。