基本的に元気です
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- 今日はロロ・範宙遊泳という東京の人気の若手二劇団の制作をされている坂本ももさんにお話を伺います。どうぞよろしくお願いします。最近はどんな感じでしょうか。
- 坂本
- 基本的に元気です。最近はロロと範宙遊泳が参加した東京福袋が終わって、すぐロロの京都公演の稽古が始まりました。他の現場もあるので、行ったりきたりですね。
ロロ
平均年齢23.5歳の、東京で活動するカンパニー。主宰・三浦直之が触れてきた演劇や小説、映画、アニメや漫画などへの純粋なリスペクトから創作欲求を生み出し、同時多発的に交錯する情報過多なストーリーを、さらに猥雑でハイスピードな演出で、まったく新しい爽やかな物語へと昇華させる作品が特徴的。(公式サイトより)
範宙遊泳
Tokyoを拠点に活動する演劇集団。代表・山本卓卓(yamamoto suguru)が脚本・演出を勤める。人間に対する悪意をアイロニカルな笑いにかえ、一方で人間を苦し紛れに全肯定する「えせハッピー」な脚本。ジャンルにとらわれない「超自由」な活動を目指し、毎公演ごとに方法論を一新する演出。現在は「バーチャルリアリティ的リアル」と称し、遊園地のアトラクション、またはテレビゲームのような演出を展開する。(公式サイトより)
ロロ『LOVE02』
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- ロロのLOVE02。来月10月に京都公演ですね。久しぶりにロロの本公演を拝見するのですが、すごく楽しみです。再演の作品だと伺っておりますが。
- 坂本
- 元のLOVEは3年ぐらい前に作った作品で、LOVE02は今年2月にアゴラで上演したものなんです。京都で上演するバージョンは俳優が二人入れ替わりになるので、少し変わるかと思います。
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- ロロの作品はいつもボーイミーツガールを描いているという事ですが、LOVE02も?
- 坂本
- そうですね。LOVEという作品が三浦君の“好き”の絶頂期なんじゃないかなと思います。絶頂期早いですけど(笑う)。恋の話で、台詞がすごくピュアなんです。なかなかストレートに好きと言えないというのが作品に表れたりした時期もあったんですが・・・。
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- 今回、LOVE02を京都で上演する狙いは。
- 坂本
- LOVE02は、絶対また再演したい作品でした。なので、美術は全部とっておいたんです。京都のお話を頂いた時、スケジュール的に新作は難しくて、だったらこれをみてほしいなと。フルスケールの作品は京都ではやったことがないというのもあり、3年目なのでやろうと決めました。
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- なるほど。とても見たくなりました。
- 坂本
- 東京公演は反響が大きくて、多くのお客さんに共感いただけたみたいで。面白いです。見てほしいなって思います。
KYOTO EXPERIMENT 2012 フリンジ "PLAYdom"参加 ロロ『LOVE02』
公演時期:2012/10/5〜9。会場:元・立誠小学校 講堂。
面白いと思える作品だから
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- 坂本さんが制作をされている二つの劇団、ロロと範宙遊泳。まずロロの制作から始めたという事ですが、範宙遊泳にはどのように。
- 坂本
- 蜷川幸雄さんの現場で範宙遊泳の大橋一輝と出会って。そこで、「日芸ならロロって知ってます?そこの望月さんと今度共演するんですよ」って言われたんです。「えー、私ロロです」って(笑う)。花ざかりのオレたちです。という団体の「三五大切」という作品で、プロデュース公演だったんですけど。範宙の山本卓卓が作演で、範宙のメンバーや同世代の俳優がたくさん出ていて。二回観に行きました。私の人生で今のところ唯一、自分でお金を払って二回観た作品です。
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- 素晴らしい。
- 坂本
- ものすごい衝撃を受けて。すごい人たちがいるわと。それで気になって、範宙遊泳の公演を観に行きました。それもすごく面白かったです。
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- なるほど。
- 坂本
- 印象的なのが、その公演から美術のたかくらかずきが参加してチラシも作ってたんですけど、会場の入口で初めて目にするまで、そのチラシを見たことがなかったんです。まあ、私が目にする劇場とかに行ってなかっただけかもしれないんですけど。めちゃくちゃいいチラシなのに、すごくもったいないなと思って。そのころ、範宙遊泳には制作がいなかったんです。自分達でやっていたんですね。公演後にご挨拶して、同年代という事で仲良くなって劇団間で交流もあって。本当に面白いと思った団体だったから、制作やりたいなぁってぼんやりと思っていました。
三浦君とは違うアプローチ
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- ロロと範宙遊泳。勢いの若手であるという認識をしているのですが、坂本さんが作品作りに掛けるモチベーションは何ですか?
- 坂本
- 私が制作をしてるのは、作品が好きで、関わっている人たちが好きだからですね。私は元々、演出をやりたかったんですよ。
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- あ、そうなんですね。
- 坂本
- 元々を言うと、蜷川幸雄さんの作品が好きで、ずっと観ていて。18歳の時にあるきっかけでお手伝いさせて頂いて、それから徐々にお仕事として現場につかせて頂くようになったんです。制作の一番下っ端とか、子役担当で袖付きの演出部みたいなこととか。すごく良くして頂いて、私はなんとなくこのまま就職するのかなぁと思っていたんです。
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- なるほど。
- 坂本
- その頃、日芸に通っていて、2009年に先輩達がロロを既に旗揚げして。2本目の15 minutes maid の作品で演出助手を頼まれて。その時のモチベーションも「こんなに面白いのに、もったいない」だったんです。“旗揚げから毎月芝居します”と銘打って毎月公演をしてた時期で、面白いんだけど、広報ができてなかったり制作面が弱くてもったいない。それで、ロロの作品作りに関わりたいなと思いました。
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- 関わり方としては。
- 坂本
- ロロを見た時に、私にはこれはできないなと思ったんです。私は蜷川さんの芝居を観て、演劇やろうとりあえず演出だって思ったけど、でも脚本を自分で書きたいと思った事はないんですね。そうなると、演出を経験する事も少なくて。性格的に制作を頼まれることも多かったし、三浦君とは違うアプローチで関わるなら、制作だなと。
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- 面白いと思うから、作品作りに関わる。ではその上で、どのようなポリシーがありますか?
- 坂本
- ロロも範宙遊泳も、自分が心から面白いと思えるのと、あと関わるメンバーがすごく素敵なんですよね。だからこそ生まれる作品だと思っています。そこがちゃんと、作品の奥に透けて見えてほしいというのが私の制作としてのポリシーです。例えば、作品が面白くても、作り手の人間性が良くないのは私は絶対嫌なんですね。せっかく素敵な人たちなんだから、この人たちがロロなんだよ、範宙遊泳なんだよって、作品のもっともっと奥もお客さんに透けて見えてほしいですね。
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- ほぼ同じ意見です。
- 坂本
- もちろん、作品が面白ければいいという意見もあるとは思うので、難しいところですけど。
15 Minutes Made
東京の劇団・Mrs.fictionsによるショーケース公演。6団体がそれぞれ15分程度の作品を上演する。
そのまま出てきた言葉
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- いまここで、ロロと範宙遊泳がウケているのはいったいどういう事件なんだろうかと考えています。
- 坂本
- 今、ウケているのかはちょっとよく分からないけど・・・。それぞれの魅力という意味で言うと、三浦くんの書く言葉って本当に当たり前の言葉なんですよ。対家族だったり、対友達だったり。でも誰でも感じる気持ちが台詞になったとき、恥ずかしくなるぐらい胸キュンだったりするので、珍しいのかな。それを狙って計算で書くのではなく、素直に生み出せてしまうのが。
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- 結果的に、それを正直に受け取って感動出来るのが大きな事件なのかなとは思います。
- 坂本
- 高校生を遙か昔に過ぎ去ったお客さんのその頃の気持ちを、呼び水のようにして呼び出す・・・みたいなことがおこるのかな?一時期、恋愛ってこんなにきれいなもんじゃないだろって思ったりもしましたけど・・・でもそれは三浦直之が楽しませたり感動させたりしたくて捏造したものではけっしてなくて、そのまま出てきた言葉だから。
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- ロロ。呼び水になるんですね。それはきっと、彼らが普遍性を持っているからかもしれないですね。ビートルズ的な。そこに立ち会えさせてくれるんですね。範宙遊泳はいかがでしょうか。
- 坂本
- 範宙遊泳を見たのは、山本くんがものすごく渇いていた時期だったんです。
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- というと。
- 坂本
- 私的に蜷川さんのシェイクスピア悲劇とか寺山修司とかを観た時と似た感覚で、客席で大泣きしてたんです。最近、多幸感に溢れた作品が多いと思うんですが、範宙は冷めた目線で、すごくヒリヒリ渇いていて。でも笑えるし、奥の方にハッピーも同居しているような気がしていて。それはちょっと珍しいなと思いますね。範宙らしさというか。
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- なるほど。「ガニメデからの刺客」 を拝見したときに、それは感じました。もう一度、じっくり拝見したいです。
KYOTO EXPERIMENT 2011 フリンジ GroundP★参加 範宙遊泳「郷土物語宣言第三弾「ガニメデからの刺客」」
公演時期:2011/10/11〜13。会場:元・立誠小学校。
同じ人間を描いてる
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- 一般的な話。2002年に流行したものと2012年に流通しているものを比べた時、何だかそれほど違和感がない。10年前ものが今でも面白い。これって、何だか、今のポップの繊細で丁寧な、粗もクセも心地よく調節された表現が普遍性を持ちつつあるような気がします。ロロの芝居も何だか、その流れの上にあるような気がします。いかがでしょうか。
- 坂本
- ある人に言われたんですよ。「ロロのみんなって、友達が死んだりとかしてないでしょう」って。確かにそれはそうかもなって、わかんないけど。みんなそれなりに色々あるけど、何かに飢えた事もなく、生命の危機を感じず、そこそこ幸せにここまで生きてきて、そういう重大な事に直面してないんですよねあんまり。例えば戦争とか、デモとか、饑餓とか。だから三浦君はああいう作品を作れるんじゃないかなぁ。比較する訳じゃないですけど、範宙の山本の方はちょっと違う気がするんですよね。だからより渇いているのかな。どちらが豊かとかそういう事じゃないんですけど。
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- 分かります。でも、二人に共通しているのは、嘘を付かず書いている、そういう気はします。
- 坂本
- そうですね。それはすごくあると思います。例えば三浦君は、稽古場で絶対怒鳴ったりしないんですよ。山本君は結構自分で権力を持っていて。そこも対極なんですけど、ありのままでやっているというのが共通していて、そこが信頼出来るんです。書くものも、アプローチは違えど同じ、人間を描いているんじゃないかなって。そういう印象があります。
質問 小林 みほさんから 坂本 ももさんへ
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- 前回インタビューさせていただきました、小林みほさんからです。「1.制作をずっと続けて行きたいと思いますか?」
- 坂本
- 思っています。でも、ずっと続けていくかどうかは分かりません。子供ほしいし、みたいな。ただ、辞めたいと思った事は一度もありません。
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- ありがとうございます。「2.30代になって、自分の意見がある程度通るようになったら何をしたいですか?」
- 坂本
- 影響力のある立場になったらってことですか?。
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- はい。
- 坂本
- 自分が企画・プロデュースした公演をやってみたいですね。色々構想はあるんですけど、やっぱり私は三浦と山本をぶつけてみたいです。
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- それは見てみたいですね。
- 坂本
- でも、影響力か・・・あんまり想像出来ないなあ。みんなで集まって楽しく呑めたら、それで。
質問 个寺 ギンさんから 坂本 ももさんへ
自分が楽しいからやっている事なので、どっちも120%やるつもりです。
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 坂本
- 劇団としては今までとかわらず、自分達がやりたい事がどうやったら成立するか、なおかつそれがどうやったら面白いかつお金になるかを模索していくと思います。個人としては、今二つ劇団を抱えていて、さらにZuQnzに所属していてままごとにも関わっていて。ちょっと追いつかなくなってきているので、何かしらの制作体制を整えていきたいです。
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- なるほど。
- 坂本
- 逆に質問してもいいですか?
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- もちろんです。
- 坂本
- 二つ劇団をやってるってどう思いますか?
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- 面白い事だと思いますよ。制作者が二つ劇団を持っているというのは、確かに珍しいですね。一般的には「何だか忙しそうですごい」感じがするんじゃないでしょうか。
- 坂本
- なるほど。結構どこに行っても、すごいねとか大変だねって言われちゃうんですよね・・・。でも、自分が楽しいからやっている事なので、どっちも120%やるだけなんですけどね。
五色豆と金平糖
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
- 坂本
- ありがとうございます。綾乃ちゃんが何かもらってましたね。開けていいですか?
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- もちろんです。
- 坂本
- (開ける)かわいいー!へー。すごくキレイな箱。金平糖ですね。
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- そちらの箱は五色豆です。箱自体も飾り箱なので。
- 坂本
- はい。制作アイテムに加えます。これは京都の?
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- そうなんです。三条大橋の有名なお店なんですよ。せっかくなので。