演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫
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あかりのなかへ

___ 
今日はどうぞ、よろしくお願いします。最近はツォウさんはどんな感じでしょうか。
ツォウ 
最近は、照明会社の契約社員として働きつつ、劇団の照明として活動していますね。
___ 
あ、そうなんですね。
ツォウ 
実は会社では演劇の照明はあまりやらないんですけどね。でも、会社で得た経験を劇団にフィードバックする事が出来たら、またその逆も出来たらと思います。
___ 
仕事で照明をやるって、きっと相当好きなんだろうなと思うんですよ。どういう経緯があるのでしょうか。
ツォウ 
高校で和太鼓の部活に入ってたんですよ。その最後のステージで、僕がアドリブで動いちゃった時にですね、照明の方が光を当ててくれたんです。それが嬉しくて、照明って凄いなと。学びたくなって造形大に入って。ドキドキぼーいずに入ったのがキッカケですね。新潟でデビュー公演をしたいと。照明もやってくれないかとも言われて。それが5年前ですね。
ドキドキぼーいず

2013年、代表である本間広大の学生卒業を機に再旗揚げ。京都を拠点に活動する若手演劇チーム。虚構性の強い演劇を目指し、『リアル過ぎる嘘っぱち』の創作に挑んでいる。生み出されていく衝撃を、時に優しく、時に激しく、作品として観客に提示することで、人間の本質を描き出す。いつまでも青臭い、カワイイ奴らでいたい。(公式サイトより)

空間があって、灯体があって

___ 
さて、今回のドキドキぼーいずの「だらしない獣」 。面白かったです。ツォウさんとしてはどんな感触でしたか。
ツォウ 
現代人が語る昔話として、本間がうんうん考えながら。京都演劇フェスティバルに参加して、奨励賞をもらったんですよ。「空間の使い方が巧かったね」と色んな人に言ってもらいました。照明としては、やっぱり他の団体さんとの兼ね合いがあるので、その点ではなるべく無難な照明プランだけど、スタイリッシュになるようにしました。
___ 
というと。
ツォウ 
舞台上にはセットとして脚立があるんですが、照明も舞台上に置いたんです。前に上演された団体さんの撤収を待ってセットするためあまり時間は無かったんですが、それでも考えてきた絵が出来るように。シュートする時間がないので、もう勘と経験で。
ドキドキぼーいずの恋煩い#03「だらしない獣」

公演時期:2014/2/15。会場:京都府立文化芸術会館。

月の光ってこんなに明るかったんだ

___ 
ツォウさんがものを美しいと思うのは、例えばどんな時ですか?
ツォウ 
景色を見た時とかですね。沸点が低いのか、ちょっと高いところに上って景色を眺めると「美しい」と感じますね。それと、夕日が好きなんです。照明の勉強がてら、この光はどうすれば作れるのか考えたり。それと月光が好きですね。
___ 
月の明かりはいいですよね。あれはとても明るいと感じるんですよね。
ツォウ 
そうですね、街灯の下にいると分かんないんですけど、田舎の方にいくともの凄く濃い影が出るんですよね。明るすぎて。月明かりを照明で作るというのが夢です。なかなか難しいところなんですけど。
___ 
あれは月という衛星に太陽光が当たってるだけなのになぜあんなにも明るいのか。
ツォウ 
太陽光、凄いですよね。

___ 
景色を見ると美しいと感じる?
ツォウ 
スペインのサグラダ・ファミリアの、今出来ている天辺に上った時は、本当に凄いなと。
___ 
景色を美しいと感じさせる、共通の美意識にちょっと興味があって。たぶん、私もサグラダ・ファミリアに行ったら同じような美を感じるんじゃないかと思うんです。ある程度までは。でも、その人にしか感じ得ない部分が出てくるんだろうと。演劇において照明家って、一枚一枚の絵に対しての美意識を最も求められるポジションなんじゃないかと思うんですよ。
ツォウ 
そうなんですよね。オリジナリティに関してはもっと見出していきたいと思っています。プランする時にも、必要性から始めているところがありますし。
___ 
必要な明かり。
ツォウ 
これは先輩から伺ったんですけど、「役者の顔を見せるのにはシーリングを使えばいいけど、本当にそこで役者の顔を見せるべきなのか?そこまで考えてからシーリングを作ればいいじゃないか」。
___ 
なるほど。
ツォウ 
前回の「浮いちゃった☆」という公演、ちゃんとした地明かりを作らなかったんですよ。夜の町という指定を受けていたので。まあ、舞台写真と映像の方には暗いと言われてしまったんですけど。でも、人間の目って凄いですよね。暗くても見えて、記憶には残る。そんな仕事にはなったと思います。次の作品のタイトルが「闇」で、果たして僕の仕事がどれだけあるかというところなんですけど、闇だからこそ照明の仕事になるんじゃないかと思ってるんですよ。暗い、見えていない部分を意識したいですね。明るい部分だけじゃないんですね、照明って。そこは最近、プランをする中で考えている事ですね。

オペレーターの失敗

___ 
あるシーンでの照明が、本当にそのプランが最も妥当なのか?というのは観客からはわからないんじゃないかな、と。別に地明かりでも影響ないんじゃないか。そういう事を考えたとき、その光が代替可能ではない、つまり貴重な、それだけで傑作に値する、そんな照明を作るにはどうすれば良いのでしょうか。
ツォウ 
一つ言えるのは、照明プランナーの考え方としては、お客さんに気付かれないのがいい明かりと言えるんですよね。「いい明かりだな」と思われると、その瞬間、舞台の役者さんや作品から、お客さんを持っていってしまうんじゃないかというのがあって。「役者さんがきれい・かっこ良い」と思われてほしいですね。その辺はオペレーターの腕にも掛かっていると思いますね。
___ 
なるほど。
ツォウ 
矛盾しているんですよね。プランナーとしてはやっぱり「キレイだな」と思ってもらいたいし、オペレーターとしては光をキレイだと思われてしまったらある意味失敗だし。

丁寧だよね

___ 
照明のオペレーターをやる時の勘どころがあるんですよね。役者さんとお客さんの意識を感じながら変えていくとか。
ツォウ 
オペレーターは、やっぱり本番でかなり神経を削る役なんですよね。役者さんとなるべく呼吸を合わせるようにしています。大学一回生の時、岩村原太さんの現場を手伝わせて貰ったんです。二つの作品を上演する公演があって、その内片方を任されたんです。マジかよと思って、しかもその芝居が外人さんがずっと出ている、前編ほとんど英語の作品で、もう呼吸を見るしかないんですね。初めての他の人のプランで、経験も多くないし、もう緊張してましたね。でも上手に出来た時は、腑に落ちて。それからは他の現場でオペをさせていただいた時も、「丁寧だよね」と言ってもらえるようになりました。
___ 
照明オペの実作業。
ツォウ 
フェイダーを下げると暗くなる、「これをしたからこうなる」、そしてシーンが動いた。別のシーンになったから、ここは見せなくても良い。
___ 
作品と息を通わせた操作が大事なんですね。
ツォウ 
そうですね、なるべく意識はしますね。やっぱりキッカケのシートをずっと見ている人も多いんですけど、いや僕も見てしまうんですけど、向こう(舞台)で起きている事に集中しないといけないんです。

質問 佐藤 和駿さんから 鄒 樹菁さんへ

___ 
前回インタビューさせていただいた佐藤さんから質問を頂いてきております。「プロとは何でしょうか」。
ツォウ 
それは僕も考えています。ただお金が貰えるからプロと呼べる訳ではないんですよ。お金を貰う事は自覚した上で、それに見合った以上のものを出せる人かなあ、と。偶然出たものではいけないんです。自分で考えて出したものであるべきなんですね。
___ 
偶然に良いものが出来る事はままある。しかし、美意識だとか研鑽は全くない。そんな空っぽの結果じゃない、実力を積んだ人が考えの末に作ったもの。
ツォウ 
そうですね。期待以上のものをどんどん作っていける人、なのかなと。

広げる

___ 
今後、演劇とどう関わっていきますか?
ツォウ 
芝居はウチの劇団でやっていきます。会社ではなかなか、演劇はやらないので。でも、自分のプランはどんどんやっていきたいので、引き受けられる限りはやらせてもらいたいです。
___ 
いつか、どんな演劇に関わりたいですか?
ツォウ 
いつかやってみたいという意味では、やっぱり新感線とかかっこいいじゃないですか。突き進んだエンタメ、作ってみたいです。
___ 
劇団としては。
ツォウ 
いまのところ、ドキドキぼーいずが個人的には理想的な環境で。自分の趣味と合っているんですよ。
___ 
すばらしい。もっとドキドキぼーいずの世界が広がっていけばいいですね。
ツォウ 
頑張ります。

GooglePlayのカード

___ 
今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。
ツォウ 
ありがとうございます。
___ 
これ、使えるか分からないんですが・・・
ツォウ 
あ、iPhoneなので使えないですね・・・でも、劇団で使う奴がいるので。ありがとうございます。
(インタビュー終了)