第三劇場7月公演「プカプカ河の川底石」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。第三劇場の座長、今村さんにお話を伺います。最近今村さんはいかがでしょうか。
- 今村
- よろしくお願いします。最近は7月公演の「プカプカ河の川底石」の稽古をしています。普通とは少し違う話にしたいんですけど、ちょっと難航しています。いい意味で前進はしているんですが大変です。
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- 二つの民族が争う話なんですね。
- 今村
- 争うと言うか、争いがメインではないですけど、僕は争いの向こう側の、価値観を乗り越えることが大事なんじゃないかと思っていて。対立という形にはなっていますが、分かり合えることがあると思ってます。争う事も大事だし、分かりあるんじゃないかという理想を描いてたらいいんじゃないかなと思ってるんですが、なかなか難しいです。脚本も演出も今回が初めてなので。それなりに色々、躓いたりはしています。
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- 躓きですか。
- 今村
- 表現方法とか感情の動きとか、結構そういうところがわかりにくいみたいで。それと、脚本に僕らしさが出てるみたいで、「さすがお前の書いた台本や」と言われました。
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- 役者はどうですか。
- 今村
- 今回は半分が新人なんですが、フレッシュな彼らの活躍を見て欲しいと思います。フレッシュなので、他のメンバーにとっても刺激があります。いい役者がいっぱい揃ってるので、幅広い感じで、楽しい作品になってくれればなと思います。僕の代の役者たちは、比較的、舞台上に立っている姿だけで語っている役者が多いんですが、一つ下の代は癖がないさっぱりした印象で。でも演技を詰められるメンバーなので、それぞれ公演や客演で主役を張ったりしたメンバーが集まっているので楽しみにしてほしいです。1回生の初々しさもあるんですが、片鱗を見せる子がいます。それぞれみんな、得意なことが違っていて。今回のメンツはみんな個性が違っているので、それを生かしたことができればいいなと思っています。
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- 今回のメンバーの強みは何ですか?
- 今村
- みんな職人的なところがあるんですよね。こうしてほしいああしてほしいというのを頻繁に言ってくれて。「細かいことよりも脱稿すべき」とか、スケジュールのことを考えてくれたりとか。そういう、全体の事を考えてくれていて僕はありがたいです。真面目な人が本当に多いです。僕はあまり真面目じゃないんですけど、段取りをしっかり押さえられる人が多くて、僕はそういうところがおろそかなんですけど、丁寧にやってくれるので、僕も必死にやろうと思っています。心強いです。スタッフ的な部分で不安は感じていません。
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- 素晴らしい。
- 今村
- 演出補佐の太田君がすごくて、彼のセンスをお借りしようと思って。ポジション的に彼のアドバイスを求めたりすることが多いです。美談でもなんでもなくて、助かっています。
第三劇場
第三劇場は1954年に設立された同志社大学を拠点に活動する学生劇団です。オリジナルの脚本の上演を主とし、同志社大学新町キャンパス別館小ホールにて年に5回の公演を行っています。(公式サイトより)
第三劇場7月公演「プカプカ河の川底石」
【延期後の公演情報】 第三劇場7月公演 『プカプカ河の川底石』 脚本・演出:今村駿介 演出補佐:太田伸甫 【日時】 7/14(土)13:00/18:00 7/15(日)14:00 (開場は開演の30分前です) 【料金】 前売100円 当日300円 学生無料(要学生証) 【会場】 同志社大学新町キャンパス別館小ホール 【予約方法】 ・ シバイエンジン ・メール→sangeki303@yahoo.co.jp ・Twitter(@sangeki303)へのDMまたはリプライ 【お問い合わせ】メール→sangeki303@yahoo.co.jp
作品全体を良いものにするための目線
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- 今回の脚本を書こうと思った理由は何ですか?
- 今村
- 変な話が、僕は3回生で、7月の本公演と引退公演だけなので、そこで区切りをつけるつもりでいて。一度自分が主導で公演の演出をやりたいなと思っていました。それと、役者の演技について自分の意見を言えるようになってきて。自分を試したいなと思っています。
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- なるほど。
- 今村
- でも自分の意見は伝わっているんだろうか、わからない瞬間もあって。でもそれは作品作りには重要なことで。あと、僕は第三劇場の座長なんですが、これまで演出をしていた先輩たちから、作品全体を良いものにするための目線を勉強することがあって。僕が一回生の時の3回生にいろいろ教えてもらって。何だか、作品づくりって大変だけど楽しいなと。役者としての目線じゃない視点が面白いなと思います。
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- 演出として大切なのは何だと思いますか?
- 今村
- 難しいですけど、役者の演技を助けるということを重視していたら、意外とまとまらないなあということがわかりました。昨日の通しで、結局何が何なのかということが整理できていないということが分かって。僕は演出が役者に演技を押し付けるのはどうなんだと思っていたんですが、実際はそういうことではなくて、各々が自分の好きな演技をやっていたら形にするのが難しいことが分かったんです。舵を切るではないですけど、演出としているよやっぱり、ちゃんとしていかないと方向性が定まらないなというのが分かりました。今更ですが。
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- 役者が自分で演技を作るのは結構ですが、現実的にはそれを全て採用するわけにはいかない、という事ですね。作品としてまとめるためには、全体が見渡せる場所に登って、一つの大きな流れを作らないといけない。交通整理というレベルではなくて、全ての出力の制御を細かく押さえながらも、それらが有機的な何か大きなものを形象するように手を尽くさないといけないと。
- 今村
- 難しいですよね。それを日に日に感じています。
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- モチベーションを削ることはしたくないけど、方向性を大事にしないと、計画としてはうまくいかなくなってしまいますからね。
やばい奴
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- 役者としての今村さんはいつから演劇を始めたんですか?
- 今村
- 大学の一回生からです。どのサークルに入ろうか色々選択肢はあったんですけど、第三劇場の新歓公演は内容がすっと入ってきて。舞台裏見学をさせて下さいと言って、そこから入りました。先輩からは「最初はやばい奴が来たと思った」「こいつが入るとは思わなかった」と。
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- それが今や座長ですからね。
- 今村
- 感慨深いと言われました。
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- そもそもなぜ演劇を?
- 今村
- 僕は演劇は全然触れていなかったんです。そもそも家が舞台を見に行くような感じじゃなかったんですが。でも高校生の頃に芸術鑑賞で舞台を見に行って。その時に「演劇というものがこの世にあるんだ」と認識して。めっちゃ生き生きしてるなと思って。舞台に立つというのはとても勇気のいることだなあと。そこから結構思い切った決断だったんですけど。それと、日常会話で結構挙動不審だったりしていたのをなおしたいなと思っていて。これでも結構かなりスムーズに話せるようになりました。
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- 気になるレベルではありませんよ。
- 今村
- まだまだ力が入ってるところもあるんですけどね。でも元々は、舞台に立つというのはすごいなというのが最初です。
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- 最初にイマガシュン(芸名)を見たときは衝撃でした。一瞬で心を掴まれました。爆笑をさらって行きましたよね。
- 今村
- あれはセリフが受けたんじゃないかなと思ってます。動きや衣装が偏ってるからお笑いが取れてるのかなと思ってました。自分ではコントロールできていないです。意図的にやっていないこともいっぱいあって。
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- 別にそれでいいのかもしれませんね。
- 今村
- 友達には「お前をいじる奴がいて初めて映えるんだよ、お前単体でいたら単純にやばいぞ」と。
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- いえ、それは逆の意味で申し上げると、一人きりのイマガシュンにはさらなる可能性を感じますよ。ツッコミというのはそんなに必要ではないのかもしれない。イマガシュンは間の悪さが素晴らしいんですよ。自分で意識されることはありますか?
- 今村
- 自分ではなかなかわからないんですよ。日常では僕は間が遅い方なので、レスポンスが遅いというのが定説なんですよ。急に早くなるとみんなびっくりするぐらい。自分でそういう間を埋めようとするから、そういうことになるのかもしれない。
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- 説明しにくいところがあるんですけど、見た瞬間に、イマガシュンが様々なカテゴリーから外れているのが分かるような。そこに純粋なものを感じる。見た目で分かる特異点であり、解釈が追いつかないような気がする。間の悪さについては本当に天性のものがあると思う。ツッコミも観てみたいです。
演技についてと歴史についての話
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- これからやりたい演技とかはありますか?
- 今村
- おじさん役や曲者が多いので、そこから脱皮したいと思っています。幅が広くて、引き出しが多い方が、色々と呼んでもらえるのかなと思って。器用な人、すごいなあと思います。その人の持ち味を生かして演技してる人がすごいなと思います。
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- 個人の興味の対象はどういうところにあると思いますか?
- 今村
- 僕は結構歴史とかが好きで。実際いた人が起こした行動を自由に解釈したりであるとか、そういうことお客さんにやってもらいたいなと思っていて。縦軸に時間があって、そこに人が本筋を作っていって。生活感を省いた話を今回書きましたけど。
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- 教科書に載ってるような歴史の流れが定説としてあって、でも色々な情報を一つの仮説に基づいて並べてみると、新しい解釈が生まれると言うか。そういう知的冒険が面白いですよね。
- 今村
- そんな大したことはないんですけど、何かと何かが戦って勝ったのはこういう理由だったとか、こういう見方を掘り起こすというのが面白いなと思っています。史学科に入った方が良かったんじゃないかと友達に言われました。ファンタジーの下地を作ってみようとしたんですけど難しいですね。
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- いや、お客さんは面白いと思いますけどね。
- 今村
- それと、人物にも興味があります。こういう人が昔いて、こういう功績があるけど実はこうだったとか。
質問 千の千尋を神隠しさんから 今村 駿介さんへ
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- 前回インタビューさせて頂いた方から質問を頂いてきております。千の千尋を神隠しさんからです。「脚本をどうやって覚えていますか?」
- 今村
- 僕は最初はとりあえず口に出して言葉を覚えて、共演者と話していくというのが多いです。感情をどう扱うかを気をつけて考えて言ってます。キャラクターがどうこうという事はあんまり考えていなくて。間とかは、気を付けていないと自分のものになっちゃうので、自分が納得いく形で相手に返せるように。受信と発信がしっくり行った時というのはすごいですね。自分で一番良い演技ができたと思います。自分がああやろうこうやろうと思ってもうまくいかないこともありますけど。
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- 自分がこうやりたい、とか、そういう意欲もコントロール出来たら、違う世界が広がりそうですね。テンションとか、そういう部分。
これから
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- 今後、どんな感じで攻めて行かれますか?
- 今村
- 演劇にもらったものがとても多いので、先輩にも後輩にも魅力的な人がたくさんいて、人に恵まれたなと思う瞬間が多いです。根気よく稽古に付き合ってくれた先輩もいて、座長になってくださった人もいて。演劇的なものに関わっていく事に興味を持っています。3回生なので身の振り方を色々考えています。
五輪書
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- 今日はお話を伺いたお礼に、プレゼントを持って参りました。
- 今村
- ありがとうございます(開ける)これは五輪書。
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- 宮本武蔵ですね。武士道とは何かということが書いてあります。
- 今村
- ちょっと、こういう難しそうな古典には興味があったので。どうしてこれを。
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- 役者イマガシュンは、観客に覚悟を求めるところがあるので。
- 今村
- そんなに挑戦的じゃないですけど、舞台に立つというのはある意味勝負だなあと思ってます。