冬の可愛いお召し物
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- 今日はどうぞよろしくお願いします。癖(HEKI)、そしてトイネスト・パーク代表の坂井美紀さんにお話しを伺います。今日は可愛いお召し物ですね。
- 坂井
- ありがとうございます。冬になると、みんな暗い色の物を着るようになるので、自分はできるだけ明るい服を着ようと思ってます。今こそピンクとか着ようと思ってます。
癖(HEKI)「蠅とサカナ」
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- 癖(HEKI)、お疲れ様でした。大変面白かったです。ご自身では、どんな作品になったと思いますか?
- 坂井
- ありがとうございます。私は初演を見ているんですけど、今回の再演は後半の展開とかが変わったんです。最初は「なぜこんなに変えるんだろう」と思って、菅くんにも聞いていたんですけど、最終的には楽しくやれました。結果としてはこういう形でもありだったのかなと。どっちも好きになれたという感じです。
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- 私は初演は拝見していないんですけれども、とても面白かったです。役者の演技が良かった。坂井さんの演技がすごく面白かったです。一つ忘れられない演技があって、片想いしている女の子が彼にアタックする時に、ずっと右ストレートを連打するが全部避けられると言う。アプローチをしてるけれども全部単調な攻撃だから、避けられている、という演技でしたね。一生懸命パンチを続けるんですけど、軽く避けられてる。
- 坂井
- ボクシングに詳しくなくて、ボクサーの人から見たら全然ボクシングではないんですね。自己流なのでどこまでリアルに再現出来ていたか分からないですけど。
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- ほかの役者もまた凄かったですよね。たとえば、楠海緒さん。思い切りのいい演技でした。居酒屋のシーン、大股を広げて座っていたり、土下座して借金のお願いをしたり。
- 坂井
- なんやかんや、合田さんと楠さんにすごくお世話になって。5年ぶりぐらいに役者をやったんですが、当初不安だったんです。でも、お二人に色々アドバイスを頂いて。お二人のお力添えがあったということが自分の中でもとても大きいです。お二人のエネルギーにすごく引っ張っていただいたんです。
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- あの二人はあの年代の中ではトップランナーですからね。
- 坂井
- そうですね、めちゃめちゃ尊敬してます。
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- やりがいのあったところは何ですか?
- 坂井
- 私、人に接触するのが苦手で。結構合田さんにアプローチする演技があったんですけど、いかに殻を破っていくのか課題でした。その時も合田さんが「もっときてくれていいよ」と言ってくれはって。緊張感とかが和らいでいったんですね。私個人はあまり自信がない性格の人間なので、ぐいぐいアプローチしていく役に寄せられるか不安でした。
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- あと、個人的には坂井さんが踊ってるところが、とても良かったです。
- 坂井
- 踊るのはすごく好きなんです。
癖(HEKI)「蠅とサカナ」
◎公演日時◎ 2016年11月16日(水)18:30〜 ◎公演場所◎ 元・立誠小学校 講堂 Cast 楠 海緒 合田 団地(努力クラブ) 坂井 美紀(トイネスト・パーク) 村松 佳紀(劇的集団忘却曲線)
劇団ミルクティの旗揚げ
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- さて、いよいよトイネスト・パークについて伺いたいと思います。トイネスト・パークは、改称前は「劇団ミルクティ」だったそうですが、まず、どのような経緯で旗揚げされたのでしょうか。
- 坂井
- 私は元々、精華大学の演劇部・劇的集団忘却曲線に所属していたんです。じつはあんまり、他のメンバーに比べて演劇に打ち込んでいたわけではなくて。でも最後は卒業制作としてたった一回きりの有志公演のつもりで行ったのが劇団ミルクティでした。それがきっかけで「もうすこし演劇を続けてみたいな」と思うようになったんです。そして、『今後も芝居を続けます』という意思表示を込めて、「トイネスト・パーク」に改名致しました。
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- なるほど。お芝居を始めたのはどんな経緯がありますか?
- 坂井
- 小学生の頃は芸人になりたかったんです。芸人さんが大好きで、そもそも面白いことがすごく大好きだったので。クラスでもチョケたりしていました。反面、自分をアピールするのが苦手で、人前に立って何かをするというのは性格的には向いていないなーと思って。でも何かしら作品を作るということは好きだったんですね、中学と高校は美術部だったりしていました。
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- なるほど。大学では。
- 坂井
- 京都精華大学に入学したとき、色々サークルを見て回っていたんですが。で、高校からの友達と一緒に精華大学に入学したんですが、その子がゲーム好きで。でも大学のゲーム研究会はボードゲームがメインで、「そういうゲームがやりたいんじゃないよね〜」ってなって。その次に興味があった演劇部の部室覗きに行ったらロクヨンがあったんです。「演劇部にはロクヨンがある。じゃあ演劇部に入ろうよ」と。演劇がやりたいんじゃなくてゲームがやりたくて入っちゃったんです。だから周りの子とは違って、最初はあんまり演劇に対して熱が無かったんですよ。
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- なるほど。
- 坂井
- で、4回生の時に劇団ミルクティを行ってみたら・・・最初はすぐ終わるかなと思ってたんですけど、終わってみたらもっと演劇をやりたいなと思うようになっていました。旗揚げ公演の際にアンケートに「嫌なことを忘れるくらい楽しい時間だった」と書いて下さるお客様が多くて、それがとてもジーンときました。お客様に少しでも日常の嫌なことを忘れてもらえたらなあという想いの下、演劇をしています。そして、劇場全体を包む何か楽しいことを、お客様はもちろんなんですけど、役者やスタッフにも楽しんでもらえる場所になればいいなと思っています。
笑った顔が好き
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- お客さんに楽しんでもらえる作品を作りたいということですが、それはなぜそう思われるのですか?
- 坂井
- 人の笑った顔が好きだから、笑ってくれたら自分も嬉しいなと。母親に「相手は自分だと思って接するべし」と教えられて育って。自分が笑うと相手も笑ってくれたり、相手が笑うと自分も嬉しくなったり。笑顔の力を感じます。もちろん人に楽しんでもらえるというのはそんなに簡単なことではないですけど。
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- 難しいですよね。トイネスト・パークでは、どのような笑いを作っていますか?
- 坂井
- 映画のネタやパロディ、テレビでやってるギャグとか、わりと皆さんにとって身近なものを取り入れています。それをファンタジーの登場人物がやることで生まれるギャップからくる笑いなんですけど、爆笑大笑いというよりは「そのギャグ知ってる!」とか「あの映画のワンシーンだ!」みたいな、発見してもらうことによって、ちょっとクスッとしてもらいたい、というのを目標としてます。
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- 2月の公演ですが、どんな目標がありますか?
- 坂井
- 今やってる公演は、ダンスに力を入れたいなあと思っています。ショーの一環としてストーリー仕立てのオープニングダンスをするんです。ダンサーさんを呼んで、教えてもらったりしています。クオリティを上げていきたいですね。主人公を演じてくれる男の子がいるんですけど、今回初めて役者をするんです。今までそもそも演劇もしたことがない学生さんで。その子自体のキャラクターが濃くて面白くて、その子のキャラの濃さに役が潰されないように、演出を考えています。スポンジみたいに吸収していってくれているんですよ。ダンスとかも全然リズムに乗れていなかったんですけど、それが最近どんどん上手くなってきてて。面白い役者に育てたいなと期待しています。
エゴイストのいる風景
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- どんなことがあなたの創作の原動力となっていますか?
- 坂井
- やっぱり、人が笑っている姿。人が好きなんですね。自分は助けられながら支えられながら、日々生きているなあ、と。一番はお客さんに楽しんでもらうことなんですけど、みんなが良い時間を過ごせるように。それが、自分なりの「ありがとう」の返し方だと思っています。
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- これまで私がインタビューしてきた方々はもれなくエゴというものがあり、別にそれはそれでいいんですけど、坂井さんにはそれを感じない。もしくは上手くかくしているのか。
- 坂井
- エゴはあります。なんというか、自分よりも他人に興味があるんですよね。自分が着飾るよりも、誰かを可愛くして、その子が可愛いと言われてたりする方が嬉しいんですよね。それは私のエゴだなと。こういうところ、かなりエゴっぽいと思います。
可愛さについて
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- 可愛いと思ってもらえるものを作りたいだとかプロデュースしたいということだと思うんですけど、可愛いと言うのはあなたにとってはどういうことですか?
- 坂井
- ウチの芝居に一番近い「可愛い」は、きゃりーぱみゅぱみゅだと思いますね。
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- おお。彼女は存在感が凄いですよね。
- 坂井
- twitterとかインスタとかを見ても、極めてるなあと思いますね。ぬかりないなと。私もそのベクトルで作品を極められたらと思います。
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- 可愛いって相手の弱点を、相手のガードをかいくぐりつつ、突く、みたいな。そういう勝負事みたいな次元にあるんじゃないかなと思うんですよ。ぶりっこって、一歩間違えれば奈落ですからね。
- 坂井
- この間、合田さんともそういう話をしていて。合田さんはカワイイ文化があまりお好きじゃないらしくて。可愛いに甘んじているという感じが嫌、とおっしゃっていて。でもきゃりーぱみゅぱみゅはカワイイという世界観を極めてるからいいよね、って仰ってて。私の周りも「可愛い」が受け付けられない人もいるんですよね。でも可愛いを極められたら、そういう人たちにも認めてもらえるんじゃないかと。可愛いという世界をアートにしてしまえば。
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- 私もメイド服を着たりだとか、アイドルだとかそういう可愛さはあんまり受け付けなくて。可愛いを利用してもらいたくないというのがある。
- 坂井
- そうですよね、可愛いんですけどそういうことじゃない、それはもちろん可愛い女の子が可愛い服を着ていたら、視覚的には可愛いですけど・・・「可愛いね」で止まりたくない、というのはあります。
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- そう、問題は「極められるか」、という事ですよね。なんでも、一つの価値観を。先日、トイネスト・パークの動画を見ましたが、ある一つの世界観を極めていらっしゃると思いましたよ。
- 坂井
- 私の無茶ぶりに、みんな何とか答えてくれて、というかその先を行くすごいものを持って来てくれて、毎回「めちゃくちゃ可愛い!!」と驚かされています。周りの発想に負けない可愛いものを自分も提示していけたらなあ。
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- いえ、とても小さい宝塚、という感じでした。
- 坂井
- アンケートとかでもちょっとミュージカルみたいで良かったと言ってもらえるんですけど。私はミュージカルというよりかは、パレードとかショーというイメージでやっているんですけどね。ダンスとか歌については、ディズニーランドの感じ、が目標なんです。エンタメというジャンルに含まれるかもしれないんですけど、私自身はエンタメをしたいわけではないんです。
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- では、ちょっと未来の話です。いつか、どんな演劇が作りたいですか?
- 坂井
- 「可愛い」を極める、ということなんですけど、それを極めたらどんな形になるのか、というのが私の中でハッキリと輪郭が見えていないので、納得いくものが発見できるまでは演劇を続けてみたいですね。人によってかわいいかわいくないという基準も違う。もちろん万人受けの可愛いを作ることが目標なんですけど。
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- それは存在すると思いますか?
- 坂井
- はい。存在させてみたいです。
質問 野村 眞人さんから 坂井 美紀さんへ
可愛いを発見する
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- いまふと思ったんですが、可愛い、というのは主観的で曖昧な、共有の難しい基準ですね。絶対的なものではなくて、自分にしかその価値は発見出来ない、そういう性質を持っているんじゃないかと思う。
- 坂井
- 私が思う、可愛いと思う物の一つに「ティム・バートンの世界」があるんです。気持ち悪いという人もいるけれども、あの不気味さが可愛いんですよね。代表作の「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」、この作品を子供の頃に見てトラウマを植え付けられたんですけど、ものすごく印象深い作品として自分の中に残ったんです。不気味さと可愛さというのはイメージとして方向性が全然違うんですけど、なのになんだか憎めない可愛らしさが混在するあの世界観が大好きですね。
エゴイズムを考える
- 坂井
- 個人的には、周りの人間に楽しんでもらう時間を過ごすことで、ありがとうという気持ちを返したい、というのは、エゴだなと・・・そう感じることはあります。
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- 相手の気持ちを想像していたら、創造なんてできないのかもしれませんね。
- 坂井
- それはエゴだよと言われるようにならない程度にしていきたいなと思ってます。そこの塩梅は難しいですよね。でも人間が本当に好きなので、それが高じて尽くしてしてまったりして。それがちょっとしんどいと言われてしまったことがあります。ああ、これがエゴなんだなあと。損してない?って。
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- 二人で作るものですからね。気持ちを捧げたい相手と作るプロセス。相手の返事を待つ、という姿勢だったりとか。
- 坂井
- そうですね。何か見返りが欲しいと思っているわけではなくて、ただただ楽しんでもらえたら嬉しいという。それは完全な自己満足ですね。
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- そうですね。そうですよ。
これから
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- 今後どんな感じで攻めていかれますか?
- 坂井
- 今は演劇部時代の後輩たちと舞台を作っていますけれども、もっと、外部の劇団の方とご縁ができたらいいなと思っています。アプローチしていきたいですね。私自身も劇団そのものも手探り状態の完全に成長段階です。
クリスマスカード
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 坂井
- ありがとうございます。(開ける)これは可愛い。
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- クリスマスカードです。
- 坂井
- クリスマスカードをすごく好きなんですけど、こういうのを贈る機会とかってデジタル化が進んでから無くなってきていますよね。贈る相手もないし、貰うこともないし。こういうの好きなんで欲しいなあと思いながら。でも嬉しいです。ありがとうございます。