演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

肥田 知浩

演出家

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ベース

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最近はいかがですか。
肥田
まあ、元気です。
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次の公演まで、もう一ヶ月ぐらいでしたっけ。
肥田
一ヶ月と一週間くらいかな。台本を今書いていて、もうちょっとなんですけどね。明日休みなんで、一気に書いちゃおうかなと。
__
どんなお話なのか、聞いても構いませんか?
肥田
はい。ええとですね、「どんぶらこ」というタイトルなんですけど。山奥の村がダムに沈んでしまうことになって。でまあ村人が皆出てっちゃうんですけど。そこに魔法使いの女の子が住んでいて。その人はいろいろ、村の平和を守んなくちゃいけないとかで、なかなか出て行けない。で、ずるずると村に居残り続ける魔女と、村から出ていく村人をあつかった話にしようと思っていて。
__
ありがとうございます。
肥田
何か、こないだの『炬燵電車』は抽象的とかよく分からないとか言われまして、なので、もう少し具体的に、分かり易いものにしてみようかと思って。
__
あー。
肥田
『炬燵電車』は、今舞台で演じられている場面が電車の中の場面なのか、家の中の場面なのかがあいまいで、分かりにくい話だったんですけど、『どんぶらこ』は場所を限定して、時間も前にしか進まないようにして。
__
そうでしたか。ありがとうございます。実は、過去の公演でですね。申し上げにくいんですが、私、「炬燵電車」で寝てしまいまして。
肥田
ええ。
__
何か、すごく緩やかですよね。当日、私が疲れていたのもあると思うんですが。
肥田
うん、でも特にあれは皆寝てましたね。
__
ああ・・・。
肥田
ちょっとね、あれは。
__
安心して見れたので、こう、例えば出来がやばかったら逆にハラハラして寝れませんもの。
肥田
ああ・・・それは、ありがとうございます。
__
つまんない芝居は眠れませんよね。
肥田
でも面白い芝居も眠りませんよね。
__
今回も、これまでのベースからそんなに離れたものではないのでしょうか。
肥田
そうですね、割と緩やかな、まったりとした感じかな。でも、作る側としては寝て欲しいと思って作っているわけではないので。見て欲しいですね。そのためには、見やすいように作らなきゃなと。反省して。
劇団hako

2003年度ビギナーズユニットメンバーにて結成。肥田氏による、穏やかな世界観をふわりとした表現で描きだす。

劇団hako第四回公演「どんぶらこ」

公演時期:2007年3月17〜18日。会場:人間座。

劇団hako第三回公演「炬燵電車」

公演時期:2006年4月28〜30日。会場:京都市東山青少年活動センター創造活動室。

ようかん

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私、初めてみたhako公演が「ようかん」だったんですけど。あれが第一回でしたっけ。
肥田
はい。ワークショップ公演の次に、初めて自分達でやった公演ですね。
__
えらく面白かったです。
肥田
寝なかったですか。
__
寝なかったです。
肥田
ありがとうございます(笑う)。
__
癒しという言葉を使うと、何か違うような気がしますが、和みましたね。
肥田
そうですね、和むのが作りたいなと思ってましたね。
__
ああ・・・。
肥田
あんまりドロドロしたのは、僕も観客として見たくないし、作る側としてもやりたくないし。
__
お芝居自体がナチュラルですよね。
肥田
「ようかん」を作った時は、松田正隆さんのちょっと前までの会話劇を真似して作ったんです。
__
それはどういう・・・?
肥田
僕は前、東京に住んでて。そこで松田さんのお芝居を見て。それまでお芝居って走ったり叫んだりするという先入観があったんですが、ちゃぶ台で何か食べたり会話したり、それが凄く面白くて。で、初めてhakoで芝居をしたときに、ああ、あれがやりたいと。
__
ああ・・・。
肥田
そういう、演出にしたんですよ。
__
今は、松田さんは全然変わっちゃったんですけど。
肥田
だから、僕はまだ、昔の松田さんから受けた影響みたいなのから抜けきっていない感じなんですね。
__
なるほど。
劇団hako旗揚げ公演「ようかん」

公演時期:2004年5月。会場:京都市東山青少年活動センター創造活動室。

方法

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演出の方法として、何か注意されている事はありますか。
肥田
方法・・・。稽古場で僕がしょっちゅう言っているのが、「素敵にならないように」ってことなんですけど。
__
ああ(笑う)。
肥田
ホントは素敵なものを見せたいんですけど。観客の心を動かすような作品をもちろん見せたいんです。が、例えば悲しいシーンで悲しい演技をすると、それが逆にあざとくなっちゃって。
__
はい。
肥田
僕がお客さんに感じ取ってもらいたいものがあっても、それをあざとく表現してしまうと、お客さんは引いてしまって、それが通じなくなってしまうんじゃないかっていうのがあって。
__
はい。
肥田
だから、それを避けるために僕が言うのが。
__
「素敵にならないように」。
肥田
そうです。
__
とてもよく分かります。嫌らしくならないように、という事ですよね。
肥田
例えば、ちょっと良い感じのセリフを言うシーンで、こう、パンツを直しながら言ってみてくださいとか。脇の下掻きながら言って見て下さい、とか。
__
ああ・・・。
肥田
なるべく笑わせて、その中でちょっと、心を動かしたいなと思っていて。誰かが言っていたんですけど、「真理は微笑の中で語られる」っていう言葉があって。
__
はい。
肥田
真面目くさってセリフをしゃべられても、鼻に付くっていう場面があると思っていて。だからなるべく、笑える作品にしたいなと思っていて。でも、笑えるだけの作品でもつまらないなと思っていて。
__
それは、元からある芝居の定型、つまり走ったり叫んだり、ある感情を現すセリフをその感情で読んだりとか、それを崩すのではなくて、元からそれを念頭に置かないように、自然な形でテーマを口にさせるというイメージでしょうか。
肥田
うーん。そうですね。
__
崩すのではなく。
肥田
うん、崩すと言うよりは、別の角度から見せるという感じかな。だから発声練習とかもしないし。
__
それは素晴らしい。そりゃいいですね。
肥田
何か、ルーティンワークみたいな稽古をしちゃうと、どんどん何か、自分で考えないでやってしまうようになるみたいな。
__
台本と他人の演技に依存してしまうと。
肥田
こういう時はこういう風に演技すればいいんだ、みたいな型にあてはめてやられると、つまんないと思うし。
__
それは誤解の無いように言うと、アドリブで演技しろとか、そういう事とは違いますよね。
肥田
あ、それは違いますね。
__
但し、芝居の稽古をするときは毎回違う事をやれと、そういう・・・。
肥田
ああ、毎回違う演技をしてくれると、演出もどんどんアイデアが出てきていいと思うんですけど。そうはなってないですね。今のところ。
__
ああ。
肥田
大体僕が、指示を出して俳優がやってみて、で思いもよらない事をして来てくれるという事は現在はあまりないですね。どうしたらいいのかなと思うんですけど。
__
サッカー選手の持つ、アイデアみたいのがまだ稽古場にはないと。
肥田
そうですね。

ハンカチ

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今日はありがとうございました。お話を伺わせて頂いたお礼に、プレゼントがあります。
肥田
ああ。
__
(渡す)どうぞ。
肥田
ありがとうございます。BEAMS・・・(開ける)。お、ハンカチですか。
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ええ。
肥田
へえー。あ、ハンカチは便利ですね。こりゃいいや。
__
はい。オシャレな方だと思っておりましたので。
肥田
ハンカチは持たないんですよ普段は。もう、ジーンズで手を拭いたりして。
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ああ。
肥田
これからはこれを持ち歩きます。
__
ありがとうございます。
(インタビュー終了)