トイネスト・パークはいま
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いいたします。最近、坂井さんはどんな感じでしょうか。
- 坂井
- インテリアショップの会社に転職しました。主に撮影と、サイトの運営です。
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- おめでとうございます。去年の話ですが、前々回公演「MERMAID QUEEN」面白かったです。
- 坂井
- ありがとうございます。去年9月に劇場で撮影して10月に配信しました。
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- 舞台が2度延期し、配信という形になってしまいましたね。「MERMAID QUEEN」の映像編集は非常に工夫されていましたね。
- 坂井
- 延期につぐ延期で配信する事になって、会場探しとかでてんやわんやでした。撮影に移行、そして主演キャストも変更になり。菅一馬くんも10日間しかないのに本当に頑張ってくれました。
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- 菅さんのアリエル、よかったですよ。
- 坂井
- 兪越くんはコロナとは関係のない体調不良で、しばらく稽古を休んでいて。菅くんも偶然が重なって出演が叶いました。兪越くんのアリエルはまさに女王という感じで素敵でしたが、菅くんのアリエルは母親みたいな穏やかさがあって、どちらも良かったです。
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- しかしなぜ我々はこんな目に合わない時なのか。
- 坂井
- 間違いないですね。でも、しょうみ誰も悪くないので…。公演できないということに対しては、キャストやスタッフさんにすみませんとしか言えない。私も悪くないけど、でもそうしか言えないのが悔しかったですね。
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- 特に制限なく芝居をやったり見てたりと、2年前は幸せだったんだなぁと思ってしまいますね。
- 坂井
- それこそ、これから演劇をバリバリやろうと思っていた勢いのある劇団も公演を制限されてしまっている様子なのが切ないです。これから数年はこの状況が続きそうですね。
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- 学生演劇冬の時代だとは言われていますが、人間は演じることからは逃げられないので。配信を始めなんらかの形で表現は続いていくものだと思いますよ。
- 坂井
- こういう状況だからこそ、それを逆手にとって活動している人もたくさんいて、みんな潰されなくて良かったと思ってます。エンタメは不要不急じゃないですよ。映画観るなり、踊るなり歌うなり、お芝居を見るなり、「楽しみ」があるからこそ、浮世の皆さんは仕事を頑張れたりする。精神的に楽になったりもする。何かが楽しみだから、生きられる。だからエンタメは生きることに不可欠だと考えてます。もちろん、むやみやたらと出かけましょうということじゃないですよ。
★トイネスト・パークへようこそ★
トイネスト・パークは、遊園地をモチーフに作品作りをし、小劇場という場所、観劇というイベントそのものがテーマパークでの非日常な体験になる「遊演地」としてゲストに楽しんでもらうことを目指しています。 2013年に坂井美紀を主宰として前身団体である「劇団ミルクティ」を旗揚げ。そして、2015年に現在の「トイネスト・パーク」へと改名しました。 代表であり全作品の脚本演出を務める坂井美紀の作風は、幻想的な異世界の物語を、演劇とダンスなどのパフォーマンスに、少しのコメディ要素をミックスして作り上げられています。また、舞台美術や衣装メイク、音響、照明、映像などスタッフワークにも強いこだわりを持って世界観を表現しています。(公式サイトより)
Theater Parade「Dullahan」
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- 「Dullahan」、どんな作品になりそうでしょうか。
- 坂井
- デュラハンというのは元々首を狩るのを生業とする妖精の一種なんです。中止となった前回公演の「DOMOVOI」が「生きることと死ぬこと」がテーマになっていました。公演がなくなってショックだったんですが、あの時お客さんに伝えたいと思っていたことを、今回改めて伝えようとしています。そこで死に関係するモチーフとして「デュラハン」の存在を思い出したんです。
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- なるほど。
- 坂井
- 杉田一起さんが、生と死で言えば死に近い雰囲気を放っている方で。気怠さを纏ってる印象です。本人はとても穏やかでユーモアのある方ですけどね。安岐裕美さんは反対に、エネルギーに溢れていて、キラキラ宝石みたいな方です。出演してもらえるんだったらぜひ二人にお願いしたいと思っていました。DOMOVOIに出演するハズだったダンサーの栞ちゃんと、学生劇団出身のイサナヤコウさんにも再び出演をお願いしました。蛍ちゃんは舞台初出演です。TiBiMiNAと栞ちゃんが所属しているダンスサークルの後輩で、出演しませんかという話になりました。
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- 楽しみです!
- 坂井
- この状況で、生きる事って何だろうと考えることが多くなって。もともとずっと、「死と生」をテーマに掲げて、舞台を作ってきました。トイネストの登場人物は、生きることに一生懸命です。去年は実際自殺率が上がっているというニュースを見かけて、落ち込んでいる人にエネルギーを届けられるような作品が作れたらいいなと思っています。
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- 自殺、つまり生きる目的を見失っていると。
- 坂井
- 電車乗ってて周りを見渡してみると、顔が死んでる人多くないですか?やりたいことをやるのが生きやすくなる一番の道だと思うんですけど、生きるために、生活していくためには乗りたくない電車にも乗らないといけない。そこにその人は確かに存在しているのに、生きている気がしないように見えて。やりがいとか、生きがいとかあると思うんですけど、それがない人もいて、でも自分は表現をしたいことがあって、それに出会えていることが、なんだか有難いなと。一人じゃ続けられなかったことで、周りの人達がいたからこそ私は表現を続けて来れたから。自分は演劇という表現手段で活動してきたけど何で演劇なんだろうってずっと考えてました。私にはこれしかないと思い込んでいたのかもしれません。思い込みって大事ですよね。前に、他団体で脚本を書いている方とお話したんですが、「僕はこれをやめたら他に何もないただの人間で、何もない自分になることが怖い」と。それはめっちゃわかるなぁと。表現活動を辞めたら自分は何者になるんだろうかと。
Theater Parade「Dullahan」
街を転々とする胡散臭さ抜群の自称「探偵」と、その助手。 二人が訪れた村では、まるで死んだように突然眠って目を覚まさない人々が続出する怪奇事件に住民たちは悩まされていた。 村長の娘は探偵に事件の調査を依頼するが──。 Theater Parade「Dullahan」 脚本・監督 坂井美紀 ・キャスト 杉田一起 安岐裕美 イサナヤコウ 蛍 栞 ■配信日時 2021年7月 9日(金)21:00 10日(土)21:00 11日(日)13:00/21:00 ★3日間のアーカイブ配信付き ■チケット ・2,500円+手数料(電子パンフレット+戯曲「Domovoi」データ付き) ■チケット購入窓口 https://toynestpark.zaiko.io/e/Dullahan
「可愛い」
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- 最初の坂井さんのインタビューでは「可愛い」が一つの大きな価値観であるとおっしゃっていましたが、それは今でも変わりませんか。
- 坂井
- その価値観は変わっていないんですけど、ベクトルは変わってきていて。前は視覚的に可愛いと思うものに重きを置いてましたけど、今はどちらかというと、人そのものに対して可愛いと思うようになっています。だから、脚本の中の台詞でも、嬉しい、楽しい、大好き、みたいなポジティブワードをぶち込んでいます。一生懸命生きていて愛おしい、イコール可愛い。
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- 人間の方に観点が変わるようになったと。
- 坂井
- コロナでいやな事が一杯ありましたけど、期間が空いても出演したいと集まってきてくれる人たちがいて。自分は助けられていると感じたし、人の笑顔を見たときは嬉しいですし、自分も笑顔になります。
質問 為房 大輔 さんから 坂井 美紀さんへ
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- 前回インタビューさせていただいた、劇団ZTONの為房大輔さんから質問をいただいてきております。「例えば、劇団の公演を配信に切り替えることになったとして、「お客さんが観客席にいないのは嫌だ」と出演者から言われた場合はどうしますか?
- 坂井
- 今のテクノロジーなら可能なんじゃないかと思うんですけど、客席にプロジェクションマッピング的な技術を用いてお客さんが座ってる映像を投影して、あたかもそこにお客さんがいるという感覚を味わうとかどうでしょう。これは自分の価値観で言うんですけど、自分のモットーはお客さんを楽しませたいということで、でも感染症で不安になるならその時点で「楽しい」は成立しないんです。対策をしたとしてもリスクはゼロではないですし、互いの不安っていうのは100パーセント払拭することはできない。その劇団が、何を優先するかですよね。
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- 稽古も今は大変ですよね。
- 坂井
- マスクとフェイスガードをしてもらってます。ダンスをやってる時は息苦しくなるので、マスクだけしてもらっておしゃべりは控えてもらっています。あと基本的にアルコール消毒ですよね。人の物にも触らない。みんな仲いいからバイブス上がってくるとスキンシップのノリで抱きつきあったりするんですけど、そういうのもちょっと控えてもらったり。
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- お芝居の時にマスクが邪魔になって表情がわからないなんてこともありますね。
- 坂井
- そうなんですよ。その台詞は笑顔で!とお願いしたら、マスクしてるから見えないけど笑ってました、って言われて、ごめんってなる面倒な状態が勃発しがちです。顔面って大事ですね。
何が面白いか
- 坂井
- 劇団を立ち上げて7、8年目になるんですが、トイネストみたいな演劇って京都では珍しいですよね。
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- 今更気付いたのか。
- 坂井
- いまウケている劇団となぜカラーが違うのか。やっぱりインプットしてきたものが違うんだと思うんですよね。彼らは古典戯曲とかを通過してきてると思うんですけど、私はディズニーとか、童話のようなファンタジー映画とかだし。
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- 何が面白いかどうかって本当に千差万別ですからね。一つ言えるのは、彼らは自分たちの好きな事をやっている。それらが学的なものかどうかは置いておいて。
- 坂井
- はい、そこは変わらないと思うんですよね。だから作品がどう消化されていくかなんですけど、たとえば受け取り手が作品を社会的な面から考察して解釈し広がっていく、という動きがあるんだと思います。
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- トイネスト・パークも批評の対象ですけど、客層が違うのは確かにそうですね。
- 坂井
- 演劇界隈のお客さんって劇団同士の繋がりが大きいのかなと思っていて。お芝居を見に来た別の団体の代表さんがTwitterで評価したら話題になるとか。それに対して、トイネスト・パークの客席に関係者はほとんどいないんです。そのうえで、一般のお客さんにもっとアプローチしたいんですよね。ですが、一般のお客さんは小劇場には訪れない。それがずっと課題でした。
何かをしたいという気持ちが湧いてきて
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- まあ、最近勢いのある京都の若手劇団は人間の生き方に迫っているんじゃないかなと思うんですよね。そこを一緒に考える過程は確かに面白い。
- 坂井
- シンプルに人間を扱っているかどうかですよね。私はあまり人間を扱っていないからなあ。
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- 坂井さん個人の伝説、物語から生まれている訳ですからね。トイネストの作品は、キャラクターをとても素敵だと思わせてくれる。そこに関してはトイネストパークは満点だと思います。笑いは取れないけど拍手は凄いじゃないですか。
- 坂井
- そうなんですよ。SNSにキャラクターのファンアートがアップされるのも、ちょっとウチ以外ではあまり見かけないと思うんです。それを見ると、みんなひっそりと楽しんだりエキサイトしてくれてたんだなって、ホッとします。
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- そうですね、小劇場的な面白さの創成から離れて、トイネストにしか出来ない価値形成を突き詰めていった方が良いと思いますね。もちろん、欲張りであっても良いと思いますけど。
- 坂井
- そうですね。別に、売れたいとか評価されたいという欲求はなくて。ただ、作っている以上はもうちょっと見に来て欲しいんですよ。劇団を立ち上げた当初は、初日のお客さんが3、4人みたいな時は何が足りないのか分からなくて不安になったりして。それから、ようやく席が埋まるというところまで来て、緊急事態宣言が。
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- そして次のトイネスト・パーク「Dullahan」とても楽しみです。
- 坂井
- 製作期間が一か月ぐらいしかなかったんですが、こんな状況だからこそ何かを発信したいという気持ちが湧いてきて。色々間に合ってはいないんですけど、バタバタしながらやっています。
お抹茶
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って帰りました。
- 坂井
- ありがとうございます。抹茶大好きなので嬉しいです。