東京へ
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。
- 山西
- よろしくお願いします。
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- 最近、山西さんはどんな感じでしょうか。
- 山西
- 元気にやってます。いろいろ終わってひとつの区切りを迎えて。
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- 東京への引っ越しもありますしね。その直前ですね。
- 山西
- はい。向こうでの生活が始まる実感はまだあんまりないんですけど。
子供鉅人
2005年、代表の益山貴司、寛司兄弟を中心に結成。「子供鉅人」とは、「子供のようで鉅人、鉅人のようで子供」の略。音楽劇や会話劇など、いくつかの方法論を駆使し、世界に埋没している「物語」を発掘するフリースタイル演劇集団。路地奥のふる長屋を根城にし、演劇のダイナミズムに添いながら夢や恐怖をモチーフに、奔放に広がる幻視的イメージを舞台空間へ自由自在に紡ぎ上げる。また、いわゆる演劇畑に根を生やしている劇団とは異なり、劇場のみならずカフェ、ギャラリー、ライブハウスなどで上演、共演したりとボーダーレスな活動を通して、無節操に演劇の可能性を喰い散らかしている。(公式サイトより)
クルージング・アドベンチャー3 オオサカリバーフォーエバー編
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- さて、子供鉅人の「クルージング・アドベンチャー3」。大変な公演でしたね。子供鉅人のツアー型演劇、今回で2回目。出演されて、いかがでしたか。
- 山西
- 僕は4月から子供鉅人に参加して、初めてがアドベンチャー演劇だったので。すごく刺激が強くて。
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- 役者にとっても観客にとってもものすごい冒険でしたよね。私は昼の回も夜の回も拝見したんですが、どちらにも違う魅力がありましたね。
- 山西
- どちらの回が良かったですか?
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- 私は昼の方が好きですね。
- 山西
- そうなんですか!どういう部分が。
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- もちろんどちらにもそれぞれの良さがあるんですけど、昼はその、お祭り感が凄かったです。川を下っている時、岸に面したBARのお客さんがこっちを見ていて、手を振ったりリアクションを取ってくれたりするその現場感が凄い。夜は夜で、演劇的な良さがあるんですよね。大阪城は出るし、風景が動いている感じがね。
クルージング・アドベンチャー3 オオサカリバーフォーエバー編
公演時期:2014/6/13〜30。会場:大阪府大川(旧淀川)周辺。
妄想にくるまれた大川
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- 3週間にわたる公演期間の中で、ご自身にとって最大のハプニングを教えてください。
- 山西
- すごく個人的なことだったら。長時間の公演なので、途中にトイレ休憩が一回あったんですけど、僕はその案内する役をしてたんです。で、駅のトイレにお客さんを連れて行ってたんですけど、そこの掃除のおばちゃんとほぼ毎日会うので妙に仲良くなったんです。で、ある日の公演中に、そのおばちゃんがいつもの清掃服じゃなくて、私服で駅を歩いてて、いつも通り声をかけたら「いや今日はプライベートやから」って言われて。
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- 清掃のおばちゃんがそれを言う衝撃は凄いですね。
- 山西
- まさかそんな感じだと思わなくてびっくりしました。(笑う)
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- では、最大のアクシデントは何でしたか。
- 山西
- 不確定な要素が多かったので、本当にいろいろあった気がします。すぐ思い出すのはやっぱり船着き場の渋滞ですかね。屋形船が何艘かお客さんを降ろしていて、僕らの船が停泊できない、不思議な無の時間が流れて。
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- でも、そういう時間での役者のアドリブが素晴らしかったです。アクシデントでもハプニングでも、そこを笑いに変えてしまう力がありますよね。
- 山西
- リハをするまでは、もう少しセリフが決まってたシーンがあったんですよ。でも実際に船の上に乗って移動してやってみたら、ボスが「台本じゃなくて、リアルに見たもの聞いたもので会話した方が面白いんじゃないか」と。ほんとにそうだったと思います。
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- ちなみに、私が参加した回で面白かったのは乗船中の小中さんかな。カヌーを漕いでいる人達を川で追い越した時、船に付いている拡声器で「邪魔をしてすまない、今大阪を救っている途中なんだ」って言った事です。あれは本当に頭がおかしかった。「妄想」がキーワードの作品という事もあって、白昼夢感が凄かったです。
次の土地の子供鉅人
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- 苦労したシーンはありますか。
- 山西
- 全体的な話になっちゃうんですけど、環境の変化がすごくて。暑かったり寒かったり、雨が降りそうだったり色んな部分が。緊張感が無くなってしまわないようにと思ってました。
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- 緊張感という点なら、シーンごとの差はすごいですよね。役を演じる演技と、ツアー演劇のコンダクターの演技。
- 山西
- 僕は劇団員になって初めての公演だったので、単純に演技する上で勉強になった部分が大きくて。でも、またそれとは違う、アドリブのツアーをしているときの演技は別の意味で面白くて。
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- 子供鉅人の役者って、ふつうは出来ないような、特殊な経験をしているんだなあと思うんですよ。劇場はもちろん、町家で芝居をするし、ツアー演劇もテント演劇もコントも音楽もイベントもする。演技のスタイルも回によって大幅に違う(それはもちろん、舞台に合わせているという部分は強いけれども)。
- 山西
- そうですね。大事にしている部分は毎回同じで、お客さんを楽しませるというところに尽きていると思います。退屈な時間がないようにというか。
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- クルージング・アドベンチャー3。私は一瞬たりとも退屈しませんでしたね。たとえ船着き場が渋滞していても。お客さんを退屈させない為に次々と新しい展開をし続けているということがあるのかな。その彼らが東京に行く。これまで、大阪という土地と強い結びつきを持っていた彼らが東京に行く。それも新しい展開の始まりでしょうね。
- 山西
- すごく楽しみです。僕は入って間もないけれど、すぐに東京に引っ越しで。そこから時間をあけずに劇場での公演で。
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- 激流に次ぐ激流ですね。環境が変わっても、子供鉅人と言う船をメンバーが強く心に持っている以上大丈夫だと思うんですよ。
- 山西
- ありがとうございます。
何もかもうまくいきますように
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- 東京で何がしたいですか?
- 山西
- 当たり前のことなんですけど、ちゃんと役者としてやっていけるようになりたいです。まだまだフワフワしてる部分が大きいと思うので。
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- では東京で、どんな事が起こったらいいと思いますか?
- 山西
- 運を呼び込めたらいいなあ。具体的に何の運だ、と言われたら分からないですけど。そういうものが来る事はあって、その流れが来た時に乗っかれる自分を作っておきたいですね。
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- そうですね、鍛えておく事ですね。
- 山西
- 単純に言っちゃえば、何もかもうまく行けばいいと思ってるだけかもしれないですけど(笑う)
飴玉エレナ、月面クロワッサン、子供鉅人
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- 山西さんが演劇を始めた経緯を教えてください。
- 山西
- 大学で喜劇研究会というサークルに入りまして。そこから始まって、コンビでお笑いの舞台に立つようになったんですけど、相方が辞めてしまって、ピンでコントをするようになって。そしたら徐々に、演じることと言うか舞台に立つことだけを集中してやってみたいと思うようになりまして。その頃、「知り合いに演劇をやってみたら?」と言われたんです。
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- なるほど。
- 山西
- その時は演劇の知り合いは全くいなかったので、一人でもできる!ということで最初は一人芝居から入りました。
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- それが飴玉エレナ、ですね。それから月面クロワッサン、子供鉅人と短い時間に渡り歩いてますね。
- 山西
- そうですね、よく言われます(笑う)
クルージングアドベンチャーの日々
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- これまでの舞台で、印象深かったものはありますか?
- 山西
- たくさんあります。どの舞台もまだまだ最近のことなので。でも、直近と言うのも大きいですけど、印象の深さならクルージングアドベンチャーですかね。衣装に着替えて自転車で移動している時とか、自分は本当に何をやっているんだろうなと。そういうことが記憶に残ってます(笑う)。
「駄目な感じ」
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- さて、少し前にはなりますが・・・月面クロワッサンの短編「同情セックス」 がですね、大変面白かったです。それにふさわしい役者がその役柄を演じているというのがよかったのかもしれない。
- 山西
- ありがとうございます。企画公演で二人芝居をやることになって、だったらセックスのお芝居がしたいなあと思って。
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- 登場人物の男二人のうち、もう一人は片方を置き去りにする結果になりましたね。
- 山西
- 余命の短い童貞の人が二人いて、ギリギリでできた方ができなかった方に「ごめん」って言う、というのがやりたくて。あんまり救いは無いけど、なんか笑えるみたいな。
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- ある種の惨めさ、ネガティブなものを題材にした笑いが得意なんでしょうか。
- 山西
- 得意かどうかは分からないですけど、好きです。「駄目な感じ」が好きなんです。笑ったら駄目な感じだけど、でもどうしても面白い時ってあると思うんです。駄目な感じを、笑える感じとしてやるっていうのはすごく好きなので。
月面クロワッサン 番外公演「月面クロワッサンのおもしろ演劇集」
公演時期:2014年2月、3月。会場:人間座スタジオ他。
質問 沢 大洋さんから 山西 竜也さんへ
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- 前回インタビューさせていただきました、沢大洋さんから質問を頂いてきております。
- 山西
- あ、沢さん。
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- 山西さんは、京都学生演劇祭の第一回で受賞されていますからお知り合いですよね。「ご自身がそのジャンルを選んだのは何故ですか?」
- 山西
- 舞台に立つみたいなジャンルを選んだのは、目立ちたがり屋だったからじゃないですかね。他のことより人前に出て何かやることの方が出来るかなと思って。その、消去法で。これが出来ないからこれをやろう、的な。(笑う)
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- なるほど。では、いつかどんな演技がしてみたいですか?
- 山西
- 面白い演技ができるようになりたいです。その上で自分が出来る事はちゃんと出来るようになって。
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- 期待されている事がまず出来て、舞台上でお客さんがそれを理解出来る。まずはそこ?
- 山西
- 僕の武器なのかなと思う部分は生かして、やることはちゃんとやって。楽しんでもらえる人になれたら嬉しいです。
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- お客さんが理解出来してついてきた上で、さらにそこから予想を少しずつ越えていったら、きっと凄いですね。
だから、地道に攻めます(笑う)
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 山西
- とりあえず体を鍛えて、走って、そうですね、だから、地道に攻めます。(笑う)あ、あと、時々でもコントはやっていきたいかなあ。好きなので。
うちわ(唐草模様)
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
- 山西
- ありがとうございます。大きいですねえ。
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- 大したものじゃないですけどね。
- 山西
- (開ける)あ、かわいい。
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- 結構、扇ぎやすいですよそれ。扇風機あったら意味ないんですけど、風情を楽しんでもらえたら。