演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

うらじぬの

女優

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劇団子供鉅人ニューカウントvol.7『チョップ、ギロチン、垂直落下』

撮影:橋本大和
__ 
今日はどうぞよろしくお願いいたします。子供鉅人の「チョップ、ギロチン、垂直落下」の大阪公演が終わりましたね。お疲れ様でした。
うらじぬの 
ありがとうございます。台風だったので大丈夫かなと思っていたんですけど、たくさんの方にいらしていただいて。
__ 
素晴らしい作品でした。
うら 
ありがとうございます。
__ 
その指のテーピング、大丈夫ですか?
うら 
あ、これは突き指がずっと治らなくて。でも衣装だと思われているらしくてちょうどいいです。
__ 
かっこいいですからね。うらじぬのさん、初主役を立派に張ってましたよ。
うら 
本当ですか。劇団でまだまだ新人も新人なので不安でした。女子プロレスも見たことがなくて、運動神経も悪いし、とりあえず筋トレしかないなと思って鍛えていました。共演の皆さんの気迫溢れる演技に引っ張り上げてもらい、素敵な衣装と美術、迫力ある音響照明で、やっとこさちょっと、プロレスラーに見えてきたらしく。座組の皆さんのおかげです。
__ 
素晴らしかったです。プロレスという装置が非常に生きた作品だったと思いますね。プロレス=台本があると言う理解が共通していて、でもプロレス団体「メスの穴」のお話自体は台本ではない、ハズなのに・・・みたいな。物語は誰にとってのものなのか、誰が主役なのか、みたいな争点を争う。それはつまり「プロレス」という幻想を追い求める営みであり、それはそのまま、戦う相手が人生だ、ということなのかなと思って。最終的に主人公たちは死んだのか、それとも生きているのか観客に委ねられる、そうした幕切れも魅力的でした。
うら 
私はあまりプロレスは知らなかったんですけど、「ブック」というもののグレーな存在を知って、奥ゆかしい文化というものがそこにもあるんだなーと。最初は「痛いなあ」だけだったんですけど、それだけではなく様々なドラマがあるということが分かった時、良いスポーツだなあと。
__ 
プロレスラーは技を避けない。
うら 
そうですね、それはありますね。技を受けて、面白く返すみたいな。お客さんの空気によって変えて行く、みたいな。
__ 
肉体を使った戦いだから、人生が現れてこない理由はないなあ、と。とても子供鉅人に合った題材だと思います。いかがですか、大阪公演終盤、今の気持ちは。
うら 
うーん、なんか、筋肉疲労がまず酷くて。プロレスラーの人達って本当にすごいなと。ちょっとかじったような技しかやってないのにこんなにヘロヘロになってしまって。プロの方々を心から尊敬しています。大阪公演は8ステージでしたが、東京公演は16ステージと倍なので。一ステージにつき一試合で終わるというわけではなく、何試合かあって、それをすべてコンスタントにやらないといけない緊張感があり・・・でも、お客さんが何というか、とても魅力的で。
__ 
というと。
うら 
これもプロレスの魅力の一つなのかなと思うんですけど、凄く、参加してくださるんですよ。手拍子をしてくれたり、やっぱり、普通の演劇ではこういうことはなかなか無いですよね。わくわくしました。感想とかにも、もっと掛け声を言いたい、って。コールアンドレスポンスじゃないですけど、そういう工夫をちょっとずつ追加してはいっています。今日は、ラストに「ご一緒に!」って。一緒にそういう気持ちになってくださるのはありがたいです。手拍子も何度もお願いしちゃったりして。
__ 
「チョップ、ギロチン、垂直落下」と。客席と一体になるって素晴らしいですよね。
うら 
はい。ありがたや、という感じです。
__ 
ちょっと抽象的ですけど、退屈させるとか、限界が見えてしまうだとか、そういうことがあるとまず実現しないですね。今回の場合は「夢の為に上京する」という、多くの人が必ず一度は持つことになる夢、つまり人生がテーマだったんですが、そこを媒介にしたからこそ、なんだろうなと思います。もちろん丁寧に描くことが条件で。そして、揚羽舞という親友の存在。
うら 
内田理央ちゃんの魅力みたいなものも脚本に還元されてると思います。普段は太陽みたいでぽわぽわ~とした感じの子なので。私はどちらかと言うとじとーっとしたタイプの人間。稽古場でも作中の二人みたいな感じでいました。そこが、作演出の益山さんも想像力を刺激されたのではないかなと思います。本当に出演して頂いて良かった。
__ 
私も、カーテンコールでハケる二人を見た時に、最高の名コンビだと思いましたからね。
うら 
本当ですか!ありがとうございます!嬉しいです。普段から湿布の貼り合いっこしたりして、うらちゃんほんとマンモス稲子みたいだねって。彼女にはいつも助けられています。
__ 
これから長い付き合いですね。
劇団子供鉅人

05年益山貴司・寛司兄弟を中心に大阪で結成。「子供のようで鉅人、鉅人のようで子供」の略。関西タテノリ系のテンションと 骨太な物語の合わせ技イッポン劇団。団内公用語関西弁。人間存在のばかばかしさやもどかしさをシュールでファンタジックな設定で練り上げ、黒い笑いをまぶして焼き上げる。生バンドとの音楽劇から4畳半の会話劇までジャンルを幅広く横断。3度に及ぶ欧州ツアーやF/T13参加。CoRich舞台芸術まつり!2012準優勝。関西でほんとに面白い芝居を選ぶ「関西ベストアクト」二期連続一位など勢力拡大中。(公式サイトより)

劇団子供鉅人ニューカウントvol.7『チョップ、ギロチン、垂直落下』

作・演出 益山貴司 出演 劇団子供鉅人 × 内田理央(仮面ライダードライブなど) × 星野園美(身毒丸ファイナルなど) 女子プロレスラー、マンモス稲子は リングのコーナーポストから垂直落下し、謎の自殺を遂げた。 故郷の岬で夜毎受けていた風速10.85mの風を全身に感じながら、 死の直前、彼女は何を思ったのか? 大都会の片隅(実家のガレージ)で練習にいそしむ「メスの穴」のメンバーは 女同士の傷の舐め合い試合から抜け出すことができるのか? 「中野区イチの大不幸女」マンモス稲子の垂直落下に転落していった人生と 彼女をめぐる女子レスラーたちの「生きること」への復讐と再生の物語。 プロレスを描いた演劇ではなく、演劇をプロレスで描く意欲作。 そう、戦う相手は人生だ! 大阪公演  HEP HALL 2017年10月17日(火)~23日(月) 東京公演 浅草九劇 2017年11月6日(月)~19日(日)

出会ってしまった

__ 
うらじぬのさんがお芝居を始めたのはいつからでしょうか。
うら 
小学校の時に、社会の授業で好きな時代を題材に何かを作るというのがあって。同じクラスのミキヤ君という男の子と一緒に、アウストラロピテクスのお芝居を作りました。私が原人役でした。ミキヤ君は解説だけ。そこからです。
__ 
ミキヤの先見の明がこの時代まで続きましたね。
うら 
本当ですね。ミキヤプロデューサーには感謝感謝です。
__ 
大学は大阪芸大ですよね。千葉県から大阪に?
うら 
本当は日芸か多摩美に行きたかったんですけど、修学旅行で行った大阪がものすごく楽しかったんです。親には前日まで黙ってて、強制的に試験を受けに行きました。
__ 
大阪芸大時代はどんな感じでしたか。
うら 
芸大時代は周りに変な人しかいなくて日々楽しかった。お芝居をやる以外は音楽系サークルでドラムを叩いていました。あとは、先輩の作った劇団に客演をさせてもらったりとか。でも、大阪時代は子供鉅人は一度も見たことがなくて。
__ 
そうなんですか!
うら 
「組みしだかれてツインテール!」の時に、特に大阪の方々だとかは意識せずにオーディションを受けに行きました。実はその時インフルエンザと扁桃腺炎に罹って10日間ぐらいずっと寝込んだ後、病み上がりの2日目ぐらい、地球に帰ってきてすぐの宇宙飛行士みたいにふらふらずどーんとした最悪のコンディションでして。で、オーディションの内容も30分ぐらいずっと踊るぞーみたいな内容で、逆に身体が生命の危機を感じて、火事場の馬鹿力みたいなハイテンションで踊ったり。みたいな状態でいたら、それが面白いと思って頂けたのか。それで客演させていただきました。
__ 
ツインテールか!
うら 
はい、私は途中で足をめちゃくちゃ撃たれる役でした。子供鉅人ではよく、犯されたり発狂して人を殺めたりみたいな日常ではあまり体験出来ない役どころを頂きますね。自分の許容量を超えるぐらい動いてるのか、本番期間中にいつも熱出したり。でもそんな経験はなかなか他ではできないんだろうなと思ってます。

志と優しさ

撮影:橋本大和
__ 
「ギロチン」。上演を重ねるごとに、変わってきているとの事ですが。
うら 
最初の方は、プロレス技をしっかり決めないといけない、お芝居のところも全部集中してやらないといけないと思って、結構パンパンだったんですけど、このところようやく、お客さんが楽しんでくれているのを所々感じることができていて。プロレスのシーンの時はプロレスリングの観客として、マンモス稲子のモノローグの時にはじっくりと見てくれている、と感じることが出来るようになってきました。プロレスとお芝居というものをもっと結びつけることができたらいいなと思っています。
__ 
演出の一つとして、プロレスのリングが回転するんですよね。その上でもちろん試合をするし、人間関係という名の戦いも繰り広げられる。その疾走感がたまらなかったです。
うら 
今回の役に当たって、女子プロレスラーの方はどんな思いで生きてきたんだろうということを、全日本女子プロレスの分厚いインタビュー本を買って読んでみたんです。ブル中野さん、ダンプ松本さん、長与千種さんなど名だたる女子プロの方々のエピソードを読んでいたら、皆さん本当にものすごい熱い思いを懸けているんです。プロレスに。誰と誰がこうなっていて、みたいな人間関係の歴史もあったり、もちろん試合自体の歴史もあって。私も、誠意を持って、マンモス稲子という1人の女子プロレスラーを演じたいと思いました。悩んで悩んで、自分の志を貫くのか、それとも親友の為に犠牲になることを選ぶのか。

「リレー」

__ 
舞台に立ってる時に、どんな感情になっていますか?
うら 
舞台上に立っている時・・・。
__ 
最近のインタビューの中で、「舞台の上に立っているときに生じる感情を見世物にするのが俳優の仕事である」という考え方が出てきて。もちろん、細かく組み上げられた演技から生まれる観客の体験が俳優であるという意見もある。
うら 
そんなに素敵なことは言えないと言うとあれなんですけど、単純に、舞台という空間が、私にとってはいつも新鮮で楽しいです。役が、ということも思っているんですけど、もっとコアなところで言うと、予期せぬ空気が生まれたりだとか、お客さんがこう思ってくれているというのがわかる実感というか。毎回漂う色が違うなあ、みたいな。そういう体感って、他のジャンルではなかなか得られないと思うんです。そして、一つのものをその場にいる全員で最初から最後まで持って行っている。というのが、すごく楽しいなと思います。ちょっと大雑把に言っちゃってますけど。
__ 
演劇のお客さんって、そう考えると、とても独特な存在ですよね。再生が絶対に出来ない作品を見ている。ちょっと巻き戻して見るとか、そういうことはできない。もう一度見れないものに対して分析したり鑑賞したり評論したりしている。そしていまお話を伺っていて思ったんですけど、劇場の中の全員で、演劇の最初から最後までをリレーしているんですよね。
うら 
そうなんですよ。はじめましての挨拶もしたことのないお客さんが見に来てくれていて、最初からシーンを一つずつ共有して、ほぼだいたい意味がわかった上で一つの物語を共有してくれる、って、すごいなあと思うんですよ。舞台が終わった後で「面白かったです」と見ず知らずだった私に声をかけてくださる事って、すごい事だなと思って。ちゃんと仲良しになれた!じゃないですけど、舞台を通じて素敵なコミュニケーションがとれたようで毎回本当に嬉しいです。
__ 
それは一回も考えたことなかったです。
うら 
だからやみつきになるじゃないですけど、次も色々な人に会って、物語を共有したいと思っていますし、できる努力をしていきたいです。

質問 日高 啓介さんから うらじぬのさんへ

__ 
前回インタビューさせていただいた、FUKAIPRODUCE羽衣の日高さんから質問をいただいてきております。
うら 
おおっ、よく拝見しています。去年、木ノ下歌舞伎「心中天の網島」を拝見しました。すごく面白かったです。
__ 
「台本はどうやって覚えますか?」いかがでしょう。
うら 
わー、私、苦手過ぎて!一応録音しますかね、相手のセリフも自分のセリフも録音して、それを聴きながら自分の台詞のところを一緒に言う事で体に落としたり、あとは、人に手伝ってもらって。自分のセリフを1行ずつ読んでもらって、台本は見ずに自分のセリフを繰り返すんです。リスニングのやり方で覚えています。そうすると文字を読むよりも覚えやすいんです。スピードラーニングのCMみたいなこと言ってます。

私とこどきょ

__ 
そもそも、うらじぬのさんが子供鉅人に入ったのはなぜですか?
うら 
益山貴司さんに誘っていただいて。1年ぐらい考えて、踏ん切りをつけて入らせていただきました。お客さんとして何度か見させていただいたんです。「真昼のジョージ」と、それから「重力の光」にも客演させていただいて。本当に、気持ちのいい、正直な人しか集まっていない劇団で。ガチャガチャ~ってなってて賑やかで。私は今まで、子供鉅人のような集団の中にはいなかったなって思います。
__ 
子供鉅人にしかない魅力とは。
うら 
やっぱり、あまり器用なほうじゃないから、どうしても本当の部分が出る、ということなのかなと思います。基本的に舞台は毎回同じことをコンスタントなクオリティで届けられないと、だと思うんですけど子供鉅人は、さっきのリレーの話じゃないですけど、もう、誰かがどこか遠くにリレー棒を飛ばしてしまったら私もどこかに飛ばしてしまおうと、どこまででも飛ばしてしまったりしてコースアウトしたり。もう戻って来れなくてもいい~!ぐらいの楽しいエネルギーがあって。だから生傷絶えないですけど、なんかこう、生命力が凄い。
__ 
本番で出たものを最高にしてしまう感じなのかな。
うら 
そういう人が多いと思います。で、遠くまで飛ばしてしまっても野生の勘で取って戻ってくる。それには本当に、きれいに繊細になぞる、ということだけでは敵わない部分があります。躍動感の元。
__ 
その躍動感を支えているのはお互いの信頼なのかなと思います。後ろのことを考えなくてもいいぐらい、信じあっている気がする。
うら 
本当にみんな仲良しなので、そういう環境が支えになってると思います。

これからも

撮影:橋本大和
__ 
今後、どんな感じで攻めて行かれますか。
うら 
そうですね、もっと、何かこう、もっと学びたいです。技術面でもそうですし、もっとこういう風にしたほうが伝わるんじゃないかとか、常にやっていたくて。前は2年ほど、無隣館で勉強させていただいてたんですけど、別の違う分野でも学んでいきたいなと思っています。
__ 
今後も楽しみです。
うら 
ありがとうございます。

伊勢組みひものストラップ

__ 
今日はですね、お話しを伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
うら 
うわあ!ありがとうございます。見てもいいですか。
__ 
どうぞ。
うら 
あ、おかげ横丁。(開ける)
__ 
それは伊勢の組紐ですね。首からかけられるストラップになっています。
うら 
ありがとうございます。めちゃくちゃ嬉しいです。鍵とかよく失くすので。
(インタビュー終了)