最近どうですか?
芝居の経験なんて全然無かった
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- 澤村さんは、いつからニットキャップシアターに入られたのでしょうか。
- 澤村
- 一応、2006年の12月から正団員です。それまでは芝居の経験なんて全然無かったんですよ。2006年のビギナーズユニットの演出がニットのごまのはえで、その流れのままなだれ込んでしまったんです。それまで、ニットの芝居は見たことなかったんですけどね。ごまの作品は、劇団衛星さんとの企画のクール&5しか見た事が無かったんで。
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- あ、そうなんですか。
- 澤村
- 初めてからまだ2年ちょいの、ペーペーですね。
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- じゃあ、そろそろ稽古場に慣れ始めた感じですかね。
- 澤村
- ちょっとづつですね。困らない程度には、自分のスタイルが出来つつあると思います。まあ、迷惑を掛けない程度には(笑う)。みんなからすれば出来てねーよって怒られるかもしれないですが。
ニットキャップシアター
京都の劇団。代表・演出はごまのはえ氏。個性的な俳優陣と高い集団力をもってごまのはえ氏の独特な世界観を表現する。
劇団衛星
京都の劇団。代表・演出は蓮行氏。既存のホールのみならず、寺社仏閣・教会・廃工場等「劇場ではない場所」で公演を数多く実施している。
そういう感触が掴める瞬間
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- それまでは大変だったと。
- 澤村
- いっぱいいっぱいでしたね。今は、少しは楽しめるくらいには余裕を持てています。
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- ニットの稽古場が楽しいって、結構凄いことだと思いますよ。厳しいと伺っておりますので。澤村さんは、例えばどういう時に楽しいと思われますか?
- 澤村
- あるシーンで、自分のセリフに馴染んでくると、その時に他の役者がどういう芝居をしているかが見えるようになるんです。例えばそのシーンでの大木湖南が、どういうことをしているか。それが分かって対応しながらシーンを作れている瞬間は楽しいですよね。
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- 周りが見え始めてくると。
- 澤村
- 作・演出のごまの世界が分かってくるようになってきたんですよ。その瞬間、作品に係わっている、そういう感触が掴めるんですよね。
大木湖南氏
ニットキャップシアター団員。俳優。
安田一平
ニットキャップシアター団員。俳優。
KUNIO06『エンジェルス・イン・アメリカ−第1部 至福千年紀が近づく』
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- 次回澤村さんが出演される、KUNIOの「エンジェルス・イン・アメリカ」。どんな役どころなのでしょうか。
- 澤村
- 今回、初の外人役なんですよ。セリフは日本語なんですけど(笑う)、出ずっぱりで外人。
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- KUNIOさんの演出はいかがですか。
- 澤村
- 凄く丁寧に作っている感じがしますね。演技を細かく付けていきます。ある程度自由というよりは、「このシーンはこうしてほしい」という風に明確なビジョンがある。特に僕の役に対しては。それでいて結構、「君の才能に任せるよ」って、冗談であの人言うんですけど。東京弁で(笑う)。
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- なるほど。
- 澤村
- カッチリしているんですよね。作品も社会派で、こういう硬派な作品に参加出来て嬉しいですね。
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- 貴重な体験ですね。
- 澤村
- 初めてのマジメな役です。また違う澤村をお見せできるんじゃないかと。
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- 見どころとしては。
- 澤村
- アメリカそのものを体現した作品になっています。政治とか人種問題とか、マイノリティとか。日本人には分からない宗教観も出てきます。そういった、日本と同盟関係にあるアメリカという国の、知識としては知っているけど感覚的にはほとんど知らない文化。これを舞台に、細かく描いた人間関係が大きな見どころじゃないかと思います。
KUNIO06『エンジェルス・イン・アメリカ−第1部 至福千年紀が近づく』
京都芸術センター舞台芸術賞2009ノミネート演出家上演作品。公演時期:2009年9月19〜20日。会場:京都芸術センター。
KUNIO
杉原邦生氏。京都造形芸術大学大学院芸術研究科博士課程在籍。演出・舞台美術多数。
小さな映画館で
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- さて、お芝居を始められたキッカケを伺っても宜しいでしょうか?
- 澤村
- ずっと、小さい頃から憧れていたんでしょうね。実は僕の実家が小さな映画館をやっていて。
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- そうなんですか。素敵ですね。
- 澤村
- 本当に、ニューシネマパラダイスみたいな小さな映画館で。だからか、昔から演じる事や観せる事に興味があったんでしょうね。でも役者を始めるって中々一大決心じゃないですか。決心が付かなかったんですよ。映画を撮ったり、作品の興行をする立場なら職業として確立していますし。そっちの方へ行けばいいんじゃないかと迷った時期もあったんですけど。
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- 映像に関しての勉強とかも──
- 澤村
- 大学の時、映像制作の授業の選抜に受かって、一時期、CM制作のプロの講師に師事した事があったんです。
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- 授業を受けるのに試験があるんですか。
- 澤村
- それだけに周りは面白い奴ばっかでした。おもしろい作品を作るのが好きだったんですね、僕も同級生も。けどそんな楽しい中でも「何か違うな」と感じるようになったんです。そんな中で授業を受けていたからか、やっぱり、出たいという気持ちが募ったんですね。そんなこんなで迷ってたら、留年しちゃって(笑い)、たまたまビギナーズユニットのチラシを見て、これかもなと思ったんです。そこで出会ったのが、ごまのはえでした。
向こう側への憧れ
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- しかし、本当に子供の頃からだったんですね。
- 澤村
- 何かあったんでしょうね、スクリーンの向こう側への憧れみたいなものが。役者になる事を親に話したんです。そしたら「まあ、こういう稼業をしていて、そっちの方向に行きたがらない訳ないなあ」って。それが僕だと認めてくれたんですね。親不孝者ですけど。
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- いえいえ、そうでもないと思いますよ。しかし、映画の方面の方だったんですね。その上ご実家からとは。
- 澤村
- 小学校三、四年の頃から手伝いをしていました。特に毎週土日は地方の公民館に行って、移動映画館をやるんですよ。会場の設営、つまりスクリーンの準備や遮光、それから受付のモギリまで。だから芝居を始めて受付に立ったりとか、あまり違和感はありませんでしたね。大学生時代は映画館でバイトしてましたし。
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- 興行する側に、生まれつきいるという感じですね。
- 澤村
- そうですね(笑う)。シネフィルと言われるほど映画を見ている訳じゃありません。それよりも、たとえばチラシを見て、その興行の予算や成績を予測したりとか。映画を見るよりはそんなことを考えるのが好きだったんですね。完全に興行師(笑い)。その辺の知識というか勘は、ニットで制作を兼任している今でも役に立っていると思います。
質問 山本 握微さんから 澤村 喜一郎さんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、劇団乾杯の山本さんからご質問を頂いてきております。1.これ知っている人絶対いないだろうけど、面白い作品ってありますか?
- 澤村
- 「僕達のアナ・バナナ」という、ニューヨークを舞台にした映画です。エドワード・ノートンが監督と主演やっていて、ベン・スティラーも出てるんですが。けして有名な作品じゃないんですけど、そうですね、「エンジェルス・イン・アメリカ」とちょっと似てて。アメリカ文化と宗教をテーマにした人間ドラマですね。コメディタッチで、神父とユダヤ教のラビが幼馴染で仲良くケンカするという。秀作です。
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- ありがとうございます。2.今度飲みにいきませんか?
- 澤村
- マジですか? 僕、ほとんどお酒飲めないんですけど、いいですか? ぜひ行きましょう。
自分らしくきちっと
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- さて、澤村さんは今度どんな感じで攻めていかれますか?
- 澤村
- やり始めた頃は、こういう役がやりたいとかこんな役者になりたいとかばかり思っていて、苦しんでいたんですけど・・・でも最近は割とそういうのは無くなってきたんですよ。自分らしくきちっとやれればと思います。例えばごまのはえや客演に呼んで下さった演出の方が、僕にその役を振ってくれた理由をちゃんと考えて作品作りに当たりたいですね。
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- 自分に期待されていることを把握すると。
- 澤村
- 演出の望むものと、さらに期待以上のものを持っていけるようになりたいと思います。それが今のところの目標ですね。まあ、そういうことをキチンとしていけばどんどん仕事は繋がっていくだろうと思っているので。
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- 素晴らしい。
- 澤村
- まあ・・・売れたいですよね(笑う)。あと、こないだ自主映画のお仕事に行ったんですけど、映像の現場はやっぱり違いますよね。瞬発力が求められるんですよ。当日台本を渡されてはい作って下さいって。ヒリヒリするような緊張感がありました。楽しかったです。また、映像の仕事が貰えればいいなと。だから最終目標は銀幕ですね(笑い)。
CODE headwearのチューリップハット
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- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがあります。
- 澤村
- あ、例の。ありがとうございます。(開ける)あ、帽子ですね。こういうタイプ欲しかったんですよ。
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- そりゃ良かったです。
- 澤村
- ノッポさんみたいになるからやめとけとか言われてたんですけどね。ありがとうございます!