ニットキャップシアター第29回公演「ピラカタ・ノート」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願いします。
- ごま
- うん、ごめんね。遠くまで来てもらって。
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- とんでもありません。さて、最近は「ピラカタ・ノート」が終わった所ですね。非常に面白かったです。お疲れ様でした。
- ごま
- ありがとう。
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- ピラカタという、架空の街そのものをテーマにした作品でしたね。傑作だったと思います。
- ごま
- ありがとう。苦節14年にして(笑う)。これからも頑張らなきゃと思います。
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- 応援しています。頑張ってください。
ニットキャップシアター
京都を拠点に活動する小劇場演劇の劇団。1999年、劇作家・演出家・俳優のごまのはえを代表として旗揚げ社会制度とそこに暮らす人々との間におこる様々なトラブルを、悲劇と喜劇両方の側面から描いてゆく作風は、新しい「大人の演劇」を感じさせる。日常会話を主としながら、詩的な言葉を集団で表現することも得意とし、わかりやすさと同時に、観客の想像力を無限に引き出す奥深さも持っている。(公式サイトより)
ニットキャップシアター第29回公演「ピラカタ・ノート」
公演時期:2011/03/12〜13(名古屋)、2011/04/09〜11(東京)、2011/04/15〜19(京都)。会場:千種文化小劇場(名古屋)、下北沢 ザ・スズナリ(東京)、アトリエ劇研(京都)。
自分専用神話をつくろう
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- もう本当に、面白いシーンを上げるとキリがないのですが・・・。国生み神話をモチーフにした冒頭から非常に面白かったです。あの二人の掛け合いが、色々な見立てが重なっていて。例えば松下幸之助や京阪電車が擬人化の上に神格化されて、痴話喧嘩の末に二社が交わって枚方市が出来るという。庶民的なウソ神話から始まる広がる壮大な箱庭感を感じました。
- ごま
- いやー、やっぱり神話っていいよね。みんな一人ひとり、適当に自分専用の伝説なり神話なりを持ったらいいのに。
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- というと。
- ごま
- 色んな事が相対化されて無価値になればいいのにって願いはあります。例えば「ピラカタ・ノート」には天皇家になぞらえた松下電器の総務部長一家でてくるんだよ。
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- 幸之助松下ノ神の系譜ですからね(笑う)。
- ごま
- あのニセ天皇は相対化を超えて、ほぼ嫌がらせなんだけど(笑う)。
「ピラカタ」という白紙
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- そうした、ごまさんの妄想という神話から生まれた街「ピラカタ」。この街を、国生みの瞬間からマクロ・ミクロな視点にかけて色々な部分から切開し、そこに住む人々を描き出すという作品でした。
- ごま
- ガルシア・マルケスという人の書いたシリーズに、マコンドという街の話があるんです。「祖先の墓が出来るまでは、そこは我々の故郷とは言えない」っていう記述があってね。枚方も、僕ら新しい住民にとっては、まだ誰もそこに骨を埋めていなかった。
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- でも、次第に人は死んでいく、
- ごま
- そう。例えばニュータウンでも死者の形跡というか、証やエピソードは残る。マンションの7Fに住むあの奥さんが育児ノイローゼで子供を落としちゃったとか、あの角で誰かが交通事故に遭って亡くなったとか。怪談話のような体裁で人から人へ伝えられていく。そういうイカガワシイ話を思い切り引き伸ばして神話にまでしてしまった。
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- なるほど。
- ごま
- でも、枚方って無個性な街なんですよね。神戸とか京都とか、特色があるじゃないですか。枚方にはそういう、これといった特徴もないし、生み出せないところがある。
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- 真っ白な、歴史のない土地に経済的な理由だけで街を作る。でも、そこに生きている人々は紛れもなく生きているんですよね。例えば、高原さんが演じる少年が自分のおしっこを掛けて形作った「尿神様」(にょうがみさま)。あの存在が非常にリアルに感じたんですよ。
- ごま
- 適当やね。あの高原さんがやった役が今回一番好きやったね。
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- 最後のシーン、人々がピラカタ=枚方という街の夜景を眺める時に、それまでの時代も場所も世界の切り取り方も全然違う全てのシーンや、俳優の姿が一つになって、客席をどこか知らない街まで連れ去ってくれたような。その時、舞台で高原さんが電車を持ち上げてしまうみたいな演技までが新鮮だったんですよね。そのラストの演技にドライブ感があって、だから傑作だと思ったんですよね。
高原さん
ニットキャップシアター。女優。
AAF リージョナル・シアター2011−京都と愛知− 京都舞台芸術協会プロデュース公演『異邦人』
- ごま
- さ、協会の話をしよう。
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- おっ。そうですね。協会の話をしましょう。そうそう。リージョナルシアター「異邦人」ですね。どんなお話なんでしょう。
- ごま
- 「こいつら嘘ばっかりついてるな」と思った(笑う)。
AAF リージョナル・シアター2011−京都と愛知− 京都舞台芸術協会プロデュース公演『異邦人』
山岡徳貴子・作。柳沼昭徳・演出。公演時期:2011/6/9〜12(京都)、2011/6/18〜19(愛知)。会場:京都芸術センター、愛知県芸術劇場小ホール。
その林の中で
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- 今回、山岡さんの戯曲が選ばれましたね。
- ごま
- そうですね。個人的にも京都でしばらく山岡さんの作品が上演されていないというのは寂しいなと思ってたし。
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- そういえば久しぶりの上演ですね。「着座するコブ」以来の。
- ごま
- そう。楽しみだよね。台本を読んで、やりようがいっぱいある作品だと思った。最初の読み合わせを聞いた後も、これは僕の性格の悪さかもしれないけど、感想が「これ、嘘ばっかり書いとるな」と。どこに誠実さがあるか分からないんだよね。一方、あるスタッフさんは「いやあ、重たい話だねえ」っておっしゃっていて。それを聞いて作品の幅を感じた。どこに本当が、どこに嘘があるのか。何故ウソをつくのか。訳の分からないことが、舞台となる林の中で起こってる。
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- 誠実さが見えないとは?
- ごま
- なんだろう。一観客として、登場人物が自己申告で身の上話をしたら、まず疑うんですよ。ほんとかなって。それに演劇でさ、役者さんが登場人物に感情移入をすればするほど、その役者さんはウソが上手いってことになるじゃないですか。もう14年お芝居やってるけど、未だにそこがよくわからない。「うそでーす」ってどこかで言ってほしい気持があります。異邦人という本はラストが近づくにつれそういう疑いが止まらなくなる。
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- それはまさに、山岡さんの本ですね。
- ごま
- うん。俺にはわからん事をやってる。好きなんですよ。台本読んだだけでも、本当にその、考えてしまうんですよね。それを柳沼君が演出するからね。皆楽しみなんじゃないかな。もう一回見ないと、って思わせるのが山岡さんの芝居なんだね。単純に感想を言えない。
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- あるシチュエーションに人物がいて、自然な会話のように見えて、違和感がつきまとうんですよね。「本当にこの状況で、その台詞が言えるんだろうか?」って。だからか、見ているとだんだん、感情移入すると同時に、何か自分自身の対人恐怖とも付き合わなければならない気がしてくる。ドロッドロしてそうですね。
- ごま
- キレイな感じが漂うと、お客さんは中身をあんまり見ないんじゃないかなと最近思うんだよね。僕が演出するなら、という話になっちゃうけど、オシャレにはしないなと思う。
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- 分かります。
- ごま
- ピラカタもそうだけど、リノリウムを引いてキレイな明かりで見せたりすると、案外お客さんは中身を見ないんですよ。煙幕を張られると思うのかなあ。
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- オシャレを全面に出されるとそうなりますね。
- ごま
- 町屋カフェの偽物みたいな。その程度のオシャレさしか感じない時があって。雰囲気がありすぎるのも良くないかもなと最近は思ってます。
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- オシャレ、難しいですもんね。なんでしょう、オシャレなだけで終わるお芝居はあんまり見たくないですね。
- ごま
- そうね。何が目的なんだ!って言いたくなる(笑う)。
客席で孤独
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- 雰囲気の良さを巧く作り出して、というのが最近は多いですよね。
- ごま
- そうだよね。昔からそういうところはあるけどね。
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- 個人的には、舞台と客席が一つになると言うことがもっと見直されればいいなと思いますけどね。
- ごま
- うん。
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- 観客が、共感するだけじゃなくて、舞台とつながるような作品が。
- ごま
- 僕は、観客が客席で、孤独を感じるような芝居をしたいな。
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- いいですね。
- ごま
- だって「異邦人」を読んだ後に、登場人物達の独白も全然信じられなくて。俺って性格悪いのかなと思っちゃたもん。
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- そんなに信じられませんか。
- ごま
- 自殺を決意した人がそんなにペラペラ喋るか?黙って死ねばいいのに。この期におよんでまだ他人を求める気持がわからん。何かを信じたいのかな?
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- 私は高校の頃、演劇部の顧問の先生に、色々連絡違いがあった後に僕がみんなから信用されていない事を打ち明けられたんですよ。
- ごま
- 辛っ!辛いなあそれ(笑う)。
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- 他人を信用したりされたり、関係を作って生きるって意外と難しいもんですよね。ごまさんとはちょっと違うかもしれないですけど。
- ごま
- 僕は決してマッチョな人間ではないけど、「集団自殺」はわからん。だから「異邦人」も全然わからん。正直言って警戒してます。
質問 蔵本 真見さんから ごまのはえさんへ
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- 前回インタビューさせて頂きました、突劇金魚の女優、蔵本さんからご質問を頂いてきております。「1.体を洗う時、どこから洗いますか?」
- ごま
- 蔵本さん知り合いやで。(シャワーのマイムをして)左肩から洗うね。
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- ありがとうございます。ちなみに蔵本さんは頭から下にいくそうです。
- ごま
- いや、僕もそうだね。
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- ちなみに私は頭を最後に洗います。
- ごま
- あ、そうですか。
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- 2つめです。「1週間オフになったら、どこに旅行に行きたいですか?」
- ごま
- コロンビアかな。ガルシア・マルケスの作品の舞台を見にいきたい。
突劇金魚
関西学院大学の演劇グループSomethingの99年度生(OG)、サリngROCKを中心に結成。 2008年12月に蔵本真見が入団。2009年4月に演出助手の伊藤由樹が入団。現在6名で活動中。独特な関西弁のセリフまわしで、他にはない世界をつくる。不器用な登場人物たちのチョット毒あるお話を、派手目の極彩色でイロドる世界観。音で刺激。見た目で刺激。プププと笑って、チクッと刺される新感覚。(公式サイトより)
玉子焼き用フライパン
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- 本日は貴重なお話をありがとうございました。お話を伺えたお礼に、プレゼントがございます。
- ごま
- おお。噂の。
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- どうぞ。
- ごま
- ありがとうございます。(開けずに)お、これは卵焼き専用かな。
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- そうです、玉子焼き用のフライパンです。よく分かりましたね。小さいフライパンですので、簡単な付け合せを作るのに便利かなと。
- ごま
- 蓋もついてる。なんか、悪いね。