憧れのはじまり
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- 今日は、ヨーロッパ企画の映像スタッフである山口淳太さんと大阪大学大学院でメディアアートの研究をしている西尾さんにお話を伺います。どうぞ、よろしくお願いいたします。まず、山口さんに・・・。どういう経緯でヨーロッパに入られたんですか?
- 山口
- 2005年に、まだ高校生だった頃に参加させてもらったんですけど、それまで全然劇団や演劇なんて知らなくって。
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- あ、意外と最近だったんですね。
- 山口
- 大学受験が終わって、ヒマな期間があったんです。その頃から「踊る大捜査線」がとにかく大好きで。本広克行監督が大好きで、監督のHPを見てたら、「サマータイムマシン・ブルース」、ヨーロッパ企画の名前があったんです。何だろうこれはと、さっぱりわからなくて。
- 西尾
- ええ。
- 山口
- リンクを辿ったらヨーロッパ企画のHPに行って。そこで、次に上演するのが「平凡なウェ〜イ」。見に行ったんですよ。何も分からずに。
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- いかがでしたか。
- 山口
- それ見て、うわってなって。面白そうだったんです。自分でもやりたいと思ったんですよね。HP見たらスタッフ募集をやっているから、面接に行って。
- 西尾
- どんなのだったんですか?
- 山口
- 芝居の半分が映像だったんですよ。上田さんが言うには、映画の舞台挨拶ってそれまでスクリーンに映っていた人が出てくるとうわってなる。そこを狙ってたんですね。それ見て僕、面白そうだなと思って。
ヨーロッパ企画
98年、同志社大学演劇サークル「同志社小劇場」内において上田、諏訪、永野によりユニット結成。00年、独立。「劇団」の枠にとらわれない活動方針で、京都を拠点に全国でフットワーク軽く活動中。(公式サイトより)
ヨーロッパ企画「サマータイムマシン・ブルース」
ヨーロッパ企画公演。大学の野球部にタイムマシーンがやってきた夏の午後。力の抜けたSF舞台。
ヨーロッパ企画第17回公演「平凡なウェーイ」
公演時期:2005年2月〜3月。会場:京都・東京・大阪各地にて。
ショートショート・ムービーフェスティバル
- 西尾
- ヨーロッパ企画さんは何か、劇団なのに、当たり前のように他のメディアを視野に入れて活動されてますよね。
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- SSMF(ショートショート・ムービーフェスティバル)とかね。あ、西尾さんはSSMFの大阪予選会に行かれたんですよね。
- 西尾
- はい。行きました。
- 山口
- 今年は例年以上にクオリティ高いなと思いましたね。
- 西尾
- そうそう。アニメーションがあって、めちゃめちゃ面白かったです。
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- 今回は山口さんも出品されましたね。すごく面白かったです。大阪予選も通って。
- 山口
- 通ってよかったです。
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- 劇団であるヨーロッパ企画がこういう企画をするのが面白いですよね。
ショートショートムービーフェスティバル
ヨーロッパ企画による映画祭。5分以内の映像作品を集め上映し、投票によりグランプリを決定する。
西尾さんはメディアアートを研究中
- 山口
- 西尾さんはいま、どんな研究をされているんですか?
- 西尾
- メディアアートという、現代芸術のジャンルです。芸術側からと、工学側からと、同時並行で授業を選んで勉強してます。具体的には、テレビやパソコンをカンバスとして使うような芸術ですね。
- 山口
- 拡張芸術、最近ようやく聞くようになりましたよね。
- 西尾
- やっぱりお金が掛かるんで、政治が絡んでくるんですよね。例えば、一つ展示をしようと思ったら100台モニタが必要になったりするんですよ。そうなると電機メーカー企業の協賛をマネジメントしないと展示出来ないですよね。
- 山口
- それはどこがやってるんですか?
- 西尾
- 作家が自分でとりつけるか、企業が募集することもありますよ。お金が会社に入る訳じゃないけど、文化メセナになるんで、企業にとってもイメージアップになるし。・・・それ専門の展示施設がそろそろ出来るかもしれないんですよね。近畿にも。ただ、うまく行くかどうか・・・お客さんが来るかどうかなんですよね。
- 山口
- やっぱり手が届きづらいですよね。
- 西尾
- まだまだ入り口が狭くて、広い客層が楽しめるような作品の絶対数が少ないんです。そこが一つ、問題なんですよ。
マレビトの会とロメオ・カステルッチ
- 山口
- 最近見た、メディアミックス作品というと。
- 西尾
- 松田正隆さんですね。
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- マレビトの会ですね。あれこそまさに映像メディアと演劇の融合で。
- 西尾
- 客席一つ一つにモニタがついていて、それが舞台の様子を監視カメラっぽく移したり、それと同じシーンなのに微妙に違う映像を流したり。
- 山口
- ええっ。オペどうしてるんですか。
- 西尾
- YCAMでの滞在制作だったらしいから、そこの専門家がやってたんじゃないですかね。
- 山口
- すごいですね。
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- 芝居自体は、乾いたシリアスタッチの情景でしたね。あの空気感は確かに松田正隆作品でしたね。
- 西尾
- 私も解読するのに3日くらい掛かりました。一緒に行った人と散々喋って。見には行ったんですけど、どういう頭で見ればいいのか全然分からない。
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- 東京にもいっぱいあるのかな、こういうのは。
- 西尾
- FESTIVAL/TOKYOという催しで一番評判の良かったロメオ・カステルッチの作品が良かったです。
- 山口
- どういう表現だったんですか?
- 西尾
- 後半まで、ずっと一般のブルジョア家庭を淡々とした演技で見せるんです。最後のシーンで父親が息子に性的な暴力を与える。
- 山口
- 淡々と。
- 西尾
- そう、セリフが聞き取れないくらい小さい声で。で、更にその後、いきなり舞台上がスペクタクルに移るんですよ。もの凄い大きさの花が背景を流れていくんですけど、丸く切り取られた枠の向こうを映像にしか見えない実物のセットが通り過ぎていくという。
- 山口
- ええ、まじっすか。
- 西尾
- どう見ても映像なんですよ。リアルだけど映像に見えて、でも実物っていう。ちょっと観客どよめいてたんです。ピントのボケ方が絶妙で、これは凄かったです。
松田正隆
マレビトの会を主宰する劇作家。
マレビトの会「PARK CITY」
公演時期:2009/8/28-29(山口県)、2009/10/24-25(滋賀県)。会場:山口情報芸術センター、滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール。
マレビトの会
2003年、舞台芸術の可能性を模索する集団として設立。代表の松田正隆の作・演出により、2004年5月に第一回公演『島式振動器官』を上演する。 2007年に発表した『クリプトグラフ』では、カイロ・北京・上海を巡演するなど、その活動は海外にも広がる。非日常の世界を構想しながらも、今日におけるリアルとは何かを思考し、京都を作品製作の拠点として創作を続ける。
山口情報芸術センター(YCAM)
山口県山口市。メディア利用に特化したラボを有する複合文化施設。展示スペース・劇場も併設。多数のメディアアート作品や舞台芸術が研究・制作されている。
明和電機とロボット演劇
- 山口
- 僕、たまたま知り合いが同志社大学の同じような学部に知り合いがいて、ちょっと色々聞いてるんですよ。作品を作るだけじゃなくて開発も同時にしないと行けないんですよね。
- 西尾
- そうですね。
- 山口
- 何か、授業で作ってはりますよね。それがすごいなと思って。
- 西尾
- そうなんですよ。パソコンから作っちゃう勢いで。ゲイナーっていう、USBにつないでプログラムを仕込む機器があって、それとモニターを繋いで展示環境から作ったり。
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- ああ、もう明和電機ですね。
- 西尾
- そう、明和電機。意外に日本のメディアアートは世界から注目されているんですよ。明和電機、凄いですよ。ホントにモノから作っちゃうし、パフォーマンスもするし。オーストリアでの最大のメディア博覧会にVIPで呼ばれてて。ヨーロッパからみると、日本人の「遊びを加えつつ、ゼロから自分たちで作ってしまう感」がびっくりするらしいんですよね。別会場では、DSとかWiiも置かれてた。
- 山口
- そういう技術を取り入れてる演劇も増えるでしょうね。絶対融合出来ますよね。
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- 平田オリザさんの「ロボット演劇」がそうですね。
- 西尾
- あれ凄かったらしいですね。ほとんどの観客が「人間味を感じた」って。
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- 不気味の谷を超えちゃってたんですね。
質問 中屋敷 法仁さんから 山口さん・西尾さんへ
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- 前回インタビューさせて頂いた、柿喰う客の中屋敷法仁さんからご質問を頂いてきております。「立川談志さんが、『親を大事にしない奴は信用出来ない』と言っています。どうだ」。という。
- 山口
- 親関係ですか。ちょっと重い話ですけど、大学を辞めようか悩んで、先日親に相談したんですよ。映像系の学校に行き直して進路を変えたいと。
- 西尾
- ああ・・・。
- 山口
- 何言ってるんだと。遊んでないで帰ってこい、バカタレと。いくら活動するにしても大学だけは出ておけと。その頃は必死過ぎて視界が狭くなってたんですよね。大学に充てる時間を自分の映像の勉強やヨーロッパ企画に掛けたくて。結局3日間、親と話して。
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- なるほど。
- 山口
- 就職先は自分の希望通り、映像関係に就く事は認めてもらって、でも今の大学だけは卒業する事に決めました。
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- 偉いですね。いや、親と向き合うのもそうだし、自信の進路を持ってそういう風にきちんと喋れるって。
- 山口
- 社会情勢的にも、自分の進路は間違ってないと思ってて。父親と母親と喋りました。特に親父とは絶対に話しあわないと納得してもらえない。もう、話すしかないんですよ。
- 西尾
- もう、解決はしたんですか?
- 山口
- してないですね。とりあえず大学を卒業する時期で。今は普通に大学生しています。思い知りましたね、絶対に大学とヨーロッパ企画は両立ムリです。どっちかがおろそかになるんで。上手い事出来なかったんですよ。
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- 西尾さんはどうですか?
- 西尾
- 大事にはしてますね。核家族とか、夫婦で二人暮らしとかは出来ないと思いますね。親とかその上の世代を排除した環境って想像出来ないですね。結婚するにしても、嫁入りか婿入りか。
- 山口
- 同棲の憧れってないんですか?
- 西尾
- 相手がいないと一人だけになるっていうのが怖いんですよ。親の意見が聞けない生活って考えられない。
- 山口
- 二人で暮らしたいっていうのはないんですか?
- 西尾
- あるにはあるんですけど、二人だけの価値観だけになるってのが勿体無いんですよね。8人くらいで暮らしたいです。ウチ、祖父と祖母がめっちゃくちゃしんどい人なんですけど、それを見られる毎日の方が絶対濃いんですよ。
- 山口
- 中々聞かないですね。いや、ちょっとプライベートな時間を一番内側に持ってくるんじゃないかなと。親とかは一段階外に置いて。僕、結構一人で居れるタイプなんですけど。
- 西尾
- 一軒家に住んでると、襖一枚があれば結構知らないフリが出来るじゃないですか。だから1階・2階で完全に区切れるんじゃないかなって。大家族だったらこうなると思いますよ。
悩みますよね
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- 今後、お二人それぞれ、どんな感じで攻めて行かれますか?
- 山口
- 大学の卒業ですね・・・。知り合いで卒業出来なかった劇団員がいて、彼のブログに居たたまれない事が書いてあって、こうだけはなるまいと思ってます。
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- 分かります。頑張ってください。西尾さんは。
- 西尾
- 私も卒業したくって。いま院にいるんですけど、これの専門職として就職出来るように、まずはちゃんと卒業したいです。私は自分で作る人ではなく、人の作品を表すパーツとして働きたいんですよね。何か言われた時に役に立てるように。
- 山口
- どういうところに就職したいとかあるんですか?
- 西尾
- 明確にはないんですよね。学芸員か、演劇系のスタッフも面白いなと思うし。
- 山口
- 悩みますよね。
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- いや、二人ともめっちゃ選り取りみどりだと思いますよ。
- 西尾
- いえいえ。でも、向かう力がある人が凄いんじゃないかなって。私にはそういう力がないので、例えば売り込む力がある人がどんどん仕事を大きくしていくのが羨ましいですね。
FRIXION Bizとミニケース
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- 今日はですね、お二人にお話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
- 山口
- あ、恒例の。これ貰えるの夢だったんですよ。
- 西尾
- 私もこれが楽しみで。
- 山口
- (開ける)え?消えるボールペン・・・。
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- すごくキレイに消えます。
- 西尾
- あれですよね、ラバーで擦ったら消えるっていう。
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- 60度で消えます。水性インクです。
- 山口
- へー。(試す)え、マジで!?
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- 若干、ラバーのカスが出る場合がありますが。
- 山口
- これ、めっちゃくちゃいいです。こんなに凄いとは思わなかった。
- 西尾
- これは。
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- chikinというパフォーマンスグループの公演後に買ったものです。それはオマケで、プレゼントはそれが入っている箱ですね。
- 西尾
- ありがとうございます。何入れよう。