自分の何かを意識的に考えて
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- 今日はどうぞ、宜しくお願い致します。サリngさんは最近はどんな感じでしょうか。
- サリ
- 突劇金魚が、今年の7月に本格的に始動し始めました。今稽古しているのは本公演という事で、久しぶりに作・演出・出演なんです。今さらなんですけど・・・やっと、自分の何かを意識的に考えて作っている感じですかね。
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- ありがとうございます。どういう事でしょうか。
- サリ
- 今までは、やりたい事があってもそのやり方とかの目星を付けずに、漠然と違うんじゃないかと思うところをただただ削ぎ落とすみたいな事をしていて。これがやりたくて、だからこの方法を取るみたいなのをしていなかったと今、思うんです。今は、これがやってみたいから必然的にこれをやる、という方法に変わった気がしますね。金魚自体が。
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- 構成と手法。
- サリ
- 普通はそうなんでしょうけどね。若くて、作るという事がどういう事か分かって無かったんでしょうね。いや頑張ってたんですけどね。
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- サリngさんが、いまはそこにいるという事だと思いますよ。段階じゃなくて。上とか下とかじゃなくて。
- サリ
- はい。いや、でも今でも分かってるかどうかわかりませんけどね。
突劇金魚
関西学院大学の演劇グループSomethingの99年度生(OG)、サリngROCKを中心に結成。2008年12月に蔵本真見が入団。2012年4月に个寺ギンと山田まさゆきが入団。現在6名で活動中。独特な関西弁のセリフまわしで、他にはない世界をつくる。不器用な登場人物たちのチョット毒あるお話を、派手目の極彩色でイロドる世界観。音で刺激。見た目で刺激。プププと笑って、チクッと刺される新感覚。2008年「愛情マニア」で第15回OMS戯曲賞大賞。2009年「金色カノジョに桃の虫」で第9回AAF戯曲賞優秀賞。2010年夏には渡辺えりユニットえりすぐりに関西女流作家の1人として脚本を提供している。(公式サイトより)
不器用なおかげで書けたもの
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- 突劇金魚の7月の短編公演、キンギョの人々vol.2「蛇口からアイスクリーム」 。面白かったです。
- サリ
- ありがとうございます。
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- その内の「夏の残骸」を長編として、伊丹AI・HALLで再演 ですね。意気込みを伺えますでしょうか。
- サリ
- いつでもそうなんですけど、その都度、今出せる力の全てを出すんですよ。本当に生命力を削ってます。いま、これ以上を求められてももう出来ないでという感じですね。ネガティブな感じで言ったら、これが面白くなくても仕方がないんですというしかなくて。ポジティブに言ったら出し惜しみせず全部注いでます。何でもそうかもしれませんけど、今見てもらわんともう見れないと思いますね。
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- エネルギーをつぎ込む。それはどういう事ですか?
- サリ
- 日頃お金を貰ってやる仕事が全ておざなりになりますね。全部、滞りますね・・・。
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- つぎ込まないと作れない?
- サリ
- わたしの場合はつぎ込まないと作れないっぽいです。頂いている仕事と劇団の両立が、よりシビアになっていっていると思います。作品作りになると、どうやったら面白くなるかとか、お客さんにどうやって伝えようかとか、稽古でどう俳優に伝えようかとか、演出プランでもそうだし、書き上がった脚本に「もう一つ何か」があるんじゃないかとか、考えるのは当然なんですけど、他のことが全部後回しにしてしまうので、すごく焦ります。後回しにしている他のことをいつやるのか、そっちの〆切どうするのかとか。多分、わたしが不器用なだけなんですけど。そこまで思いつめんでも出来るのかもしれませんけどね。
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- サリngさんはご自分の不器用さをどう思っていますか?
- サリ
- いや、そのお陰で書けたものがいっぱいあるので。ありがたいといえばありがたいんですけど、自分の浮き沈みが激しくなってしまうんです。勝手に焦って、いっぱいっぱいになって。すぐしんどくなるから、もう・・・しんどいですよね。人生がしんどいです。どんなに充実していてもすぐしんどくなってしまうのは正直しんどいんですけど、その感性のお陰で書けたものもあるので。まあこうやって、生きていくしかないねんなって思いますね。
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- 楽な方法を選んだらいいのでは。
- サリ
- 選べないんですよねー。例えば舞台が決まって、それの練習をしようということになって。今回は楽ちんな方法にしようと思っても、途中で「いやそんな楽をしてはいけない」って思ってしまう。「私程度の力の者がその程度で面白くなれる訳がないやん」って。そっちに行っちゃうんですよね。
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- 私個人の性向として、全部自分でやろうとするというか、他人に任せるのがめちゃくちゃしんどいというのがあるんですけど。そういうところが、もしかしてサリngさんにもあるのでは。
- サリ
- それはありますね。人に頼むのは苦手ですね。申し訳なく思ってしまうので。相手はきっと別に不愉快に思ってなくても、頼む事自体にストレスを感じてしまうので。
キンギョの人々vol.2「蛇口からアイスクリーム」
公演時期:2012/7/2〜4。会場:in→dependent theatre 1st。
突劇金魚 第13回公演「夏の残骸」
公演時期:2012/10/12〜15。会場:AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)。
テリトリー
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- 「夏の残骸」。この作品は、残骸として完結したぼろアパートのゴミだらけの一部屋とその住人が、闖入者によって割り切れない生命を生み出すという、夏らしく発酵したお話だと思うのですが。しかも、最後は何だか爽やかだし。
- サリ
- ありがとうございます。
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- まず、あの部屋は、サリngさんにとっては何だったのでしょうか。
- サリ
- 分かりやすいですけど、わたし個人の世界ですかね。自分を守っている(とわたしが勝手に思っている)テリトリーみたいな。
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- 自分にとって、テリトリーは必要?
- サリ
- ある意味必要だと思います。この作品は、テリトリー自体に対する自分の考え方や思いを乗せている気はしますね。「もしかしたら必要じゃないかもしれない」「本当にそこはテリトリーなのか?」とか、疑いも挟んだり。
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- なるほど。そのテリトリーは最後には棄てられてしまった訳ですが、まずはあの部屋が残骸になって、どんどんその領域が広がって・・・という、終末感も感じました。ところで、ご自身にとって残骸とは何ですか?
- サリ
- うーん。最近考える事があって。あるものに運命的なものを感じるというのが、どうなのかなと。すぐそういう考えに結びつけるような風潮が多いと思うんですけど。例えば秋前に海に行ったとして、どこかの家族が忘れていった浮輪とかに、ドラマチックなものを感じたりするじゃないですか、理由を付けて。勝手に。
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- ええ。
- サリ
- でも実際はそんな事はないかもしれない。それは、凄く大きな流れの、通り過ぎている内の一個なんですよね。残骸っていって、ちょっと意味ありげなものはあるんですけど。別にそうでもないんじゃないのって。
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- 浮輪に物語を結びつけて見るべきではないという事?
- サリ
- 結びつけても全然いいんですけど、勝手に浸るほどのものが無くなってきて・・・どれも別に、大した事じゃないんじゃないかって。もしかしたら、確かに誰かにとっての何かだったけれども、ただそこに置いてあるだけのものかもしれない。
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- あるもの、たとえばこの壁の汚れを見た時に、私はそこに因縁を想像してしまうんですけど。それは私の一つの指向として置いといて、でも実存として、その汚れ自身は彼しか持ち得ない歴史とともにある、という認識かな。人間だからしょうがないけど、目先の妄想に振り回されてはいけない。そういう事でしょうか。
- サリ
- いけないという事はないですけど。
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- 残骸から目を背けて生活出来るか。
- サリ
- 見てもいいし、結びつけた方が空想が広がるからいいんですけど。でも、そういう風に、重要なものを勝手見出して、しかもそれが無いとあかんみたいになり過ぎているような気がして。
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- 我々は拠り所をめっちゃ探しているんですけど、探しすぎて疲れますからね。
- サリ
- 解決しようとしすぎているんですかね。因縁を分かって、安心したいだけなんじゃないかって。
質問 山田まさゆきさんから サリngROCKさんへ
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- 先ほどインタビューさせて頂きました、突劇金魚の山田まさゆきさんから質問です。ヘビーな質問です。「劇団の方向性について、どのように考えていますか?」
- サリ
- この場でそういう事を聞くんすか(笑う)。そうですね。これ色んなところで言ってるんですけど、基本的には劇団員達がやりたい方向でやりたいなと思っていて。もっと売れたいというのならその方向を探っていくと思うし、でも、どうなりたいかがまだはっきり分かってないんちゃうかなあ。わたしも。決められない感じなんかなと思うので。とりあえずまずは、他では観れない感じになりたいですね。
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- 作品がね。
- サリ
- しかも、それを多くの人が理解出来る方向で行けたらなと思っていますね。
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- 観た人がね。
- サリ
- 全く訳が分からなかったという感じで帰っていくんじゃなくて、「とりあえず何か訳は分かった」って思って、確かに他ではこれ見れないな、って気になってもらいたいです。今までは訳分からへんって感じも割と多くて。
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- 既にそうなっているような気はしますけどね。複雑だけど分かる。でもどこか釈然としない。という作風は突劇金魚ならではだと思います。でも、もっと引っかかりたい。
- サリ
- もっと人気にはなりたいのかも。面白いと思ってくれる人を増やしたいですね。
二乗三乗
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- 劇団員二人が加わりましたが、いかがでしょうか。
- サリ
- 二人共、しっかり考え方を言う方なので。そういう考え方もあるんやってとか、取り入れようと思ったり。そんな場になっていていいなあって思います。みんな引っかかるところが違うので、一つの場所で集まって一つの作品を作る時に、それぞれの考え方は曲げずに、みんなのアイデアを取り入れて、作品の面白さが二乗三乗になっていったらいいですね。わたしの考えた面白さだけじゃなくて。
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- なるほど。
- サリ
- 何でしょうね。みんなで一生懸命取り組んで、みんなで本気になりたいですね。
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- 突劇金魚ならではの作り方はありますか?
- サリ
- 多分いまそれを全員で作りだそうとしているところです。
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- 上手くいきそうですか?
- サリ
- どうでしょうね。でも、成功する見込みはどうあれ、今のメンバーはこうやから、そうするしかないって道を行っていると思います。
何で自分はそれを可哀想だと思うのか
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- これまでの突劇金魚の作品は、確かに変遷を遂げていると思うんですよ。
- サリ
- はい。
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- 今までの作品では、人間の内面と、そこから見える世界と、新しい地平線に旅立っていくラスト・・・みたいな。それが、夏の残骸は側面からの群像劇に近いなって思うんです。もしそうした変化があるとしたら、それはどのような理由があるのでしょうか。
- サリ
- わたしの興味が変わっていったからかもしれないですね。昔は何で自分がこんなに人付き合いに不器用なのかが、生きていく中で頭のほとんどを占めていたんですけど。最近は、何でわたしはその事について考えてしまうんやろうと思ってきていて。残骸を見る時も、昔はそこに可哀想な情景とか物語を想像をしていたと思うんですけど。今は、何で自分はそれを可哀想だと思うのかと疑っていってるような。
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- 冷静に見れるようになった?
- サリ
- そうかもしれないですね。年齢的に大人になっただけかもしれないですね。例えば・・・昔は少女漫画を読んだらそこに描かれている恋愛物語が全て、だったのが、今はその恋愛にはもう少し何か別の要素があるだろうと期待してしまう。そういう自分を認識するようになりました。
突劇金魚∈サリngROCK
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- では、今後はどんな感じで攻めていかれますか?
- サリ
- まず、突劇金魚の作品が面白いってなりたいですね。まず最初に。
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- 自分の作品の評価が低い?
- サリ
- いや、突劇金魚=サリngROCKと言われるんですよ。それは当たり前なんですけど、イコールじゃないふうになっていきたいですね。だって四人いるし。
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- ごく個人的には、あのニワトリ家族の旅 が突劇金魚の新しい側面だとは思います。
- サリ
- ですよね。今のメンバーだから出来た事だなあと思います。
「夏の残骸」チケット発売記念旅行
BLOGを参照のこと。
アイマスク
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- サリ
- ありがとうございます。ほんまいつもすみません。
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- どうぞ。
- サリ
- この紙袋しってます。衣装の方にもらったプレゼントがこれに入ってました。モコモコしたガウンとか売ってるお店ですよね。(開ける)アイマスク。
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- はい。温冷剤が入れられるタイプです。執筆の合間のご休憩などに。