幻灯劇場「0番地」
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- 今日はどうぞ、宜しくお願い致します。最近、鳩川さんはどんな感じでしょうか。
- 鳩川
- よろしくお願いします。幻灯劇場の「0番地」の上演が来月2月8日にあるのでその稽古。3月の2週目にStudioD2さんの寺山修司「狂人教育」と、3月の末に劇団なかゆびさんの「さよなら、を言い忘れた」に出る予定です。その3つの稽古の掛け持ちです。
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- お忙しいところをありがとうございます。体の調子とかはどうですか?
- 鳩川
- 身体作りを去年の冬ぐらいからやっと気にし出しまして。腰が痛くなって整骨院に行ったんですが、その整骨院がすごく良くて。この時はどの筋肉を使って踊ったらいいのか、どこを使わない方がいいのかとか色々考えてます。腹筋が割れたらいいなとか(笑)。
幻灯劇場
映像作家や俳優、ダンサー、写真家などジャンルを超えた作家が集まり、「祈り」と「遊び」をテーマに創作をする演劇集団。2017年文化庁文化交流事業として大韓民国演劇祭へ招致され『56db』を上演。韓国紙にて「息が止まる、沈黙のサーカス」と評され高い評価を得るなど、国内外で挑戦的な作品を発表し続けている。2018年、日本の演劇シーンで活躍する人材を育てることを目的に、京都に新設されたプログラム『Under30』に採択され、2021年までの3年間、京都府立文化芸術会館などと協働しながら作品を発表していく。(公式サイトより)
ユースシアタージャパン(YTJ)
YTJは、魅力的な若者達が多数集まって、社会的に有意義な活動を実施する団体です。YTJは、この活動を通じて、海外に発信できる「多数のコンテンツ・パフォーマンス」や「公演」を制作すること、国際交流を推進し、社会に貢献することを目指しています。(公式サイトより)
幻灯劇場 U30支援プログラム第二弾「0番地」
言葉 藤井颯太郎 動き 本城祐哉 音楽 藤本匠と幻灯劇場
劇団員総出演×生演奏でお送りする一晩限りの音楽劇
物語:
海に分断され、八つの陸地に分かれた“いつかの日本”。最も小さな島に住んでいた民族“バンチ”は労働力として本土へ連れてこられ、割り当てられた小さな居住区に住んでいた。それから数十年が経ち差別も偏見も薄れ、その存在自体が人々の記憶から消え始めた頃、バンチは絶滅しかかっていた。
最後の子供たちは、バンチ色の眼をカラーコンタクトで隠して、今日も居住区の外を歩く。
“自分の居場所はここじゃない”と感じる人たちのおはなし。
出演:
今井春菜 小野桃子 新保七海 城野佑弥
谷 風作 橘カレン 戸根亮太 富永みさと
鳩川七海 波羅誠治 平元花奈 藤井颯太郎
本城祐哉 松本真依 村上亮太朗
STAFF:
言葉 藤井颯太郎/動き 本城祐哉/音楽 藤本匠と幻灯劇場/衣裳 杉山沙織
音響 岩谷紗希/写真 松本真依/舞台監督 河村 都・浜村 修司
日時:2020年 2月8日(土)17時20分
料金:一般 1000円 高校生以下 500円
場所:京都府立文化芸術会館
「祈りと遊び」
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- 「0番地」ですが、どんな作品になりそうでしょうか?
- 鳩川
- 今日は前半の通しをやってみて、この作品が幻灯劇場の目指している形なのかなと思っています。劇団員のだいたいが歌とダンスが出来て0番地も歌とダンスがあるんですが、「ミュージカル」とは言ってないんです。ミュージカルと芝居の間、じゃないですけど。幻灯劇場の目指すべきジャンルが見え始めた気がします。DADAや、最近のミルユメコリオを通して。
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- スタイルが確立しつつあることを感じているということですね。様々な紆余曲折や成功・失敗を経て、劇団体の性格や考え方が出来つつあると。
- 鳩川
- 今日の稽古を通してそう感じました。
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- 楽しみです。
- 鳩川
- 今回は一夜限りしかやらないので、(こう言うと自己満足みたいな感じになっちゃうかもしれませんが)作品づくりが楽しいんです。お祭りじゃないですけど「これが幻灯劇場やねん」という。幻灯劇場のメンバーは演じる上での「遊び」が凄く好きで、「祈りと遊び」というのを劇団のコピーとして掲げているんですが、我々全員で真剣に遊んで作ったのがこれです、という作品です0番地。私たち劇団員も、脚本家としての藤井君も演出家としての藤井君も「こういう風に作ったらいいんだ」というのが分かってきたんだと思うんです。一夜限りだからもったいないけど、だからこそ楽しいんじゃないかなと思っています。お客さんにとっても、リピートできないこぼせない一瞬一瞬を楽しめると思います。
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- しかも上演時間が約60分間ですからね。
- 鳩川
- まだまだ終わらないで欲しい!って思っちゃいそうですね。
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- 今、稽古場はどんなモードですか?
- 鳩川
- 最終段階ではないですけど、遊びとか楽しさとかの抽象的なものをシビアにテクニックで落とし込んでいます。演じている当事者と、見ているお客さんの間のギャップを埋めるための作業を全員で取り組んでいます。例えば「その動きだったらもう少しゆっくりと見せた方がお客さんはわかりやすいし楽しめるんじゃないか」みたいなディスカッション。
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- 全員参加という事はつまり、幻灯劇場そのものが見れるという感じですね。
- 鳩川
- そうですね。コンセプトはそれぞれが得意なことを最大限に発揮して幻灯劇場の作品をつくる、なので。今回は最初から脚本があったというわけではなくて、みんなで作ってみようというところから始まりました。歌とかも、伴奏に詩と歌を載せて。劇団員から生まれたイメージをさらに藤井君が繋げて作品にしていますね。
進路
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- 鳩川さんが宝塚北高校の演劇科に入ったのはどんな経緯があったのでしょうか。
- 鳩川
- 5歳の頃からクラシックバレエを始めて、京都市内のバレエの専門学校に入ろうと思っていたんですが中学校の頃に劇団四季を見て、四季の劇団員になろうと思ったんです。プロのバレリーナの壁にぶち当たったときに、中学校の進路アンケートで宝塚北高校の演劇科を知って、私はそちらの方が輝けるのかもしれないと思って。
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- イギリス留学もされてますね。
- 鳩川
- 高校3年生の頃に藤井くんと橘さんと当時高校1年生だったメンバーで、幻灯劇場を立ち上げようということになって。東京の桐朋学園を目指していたんですが、他のみんなの進路を知って、幻灯劇場にとってより必要な要素を考えたら私は英語が喋れたらいいんじゃないか、と。藤井君はミュージカル、橘さんは映像。私はじゃあまあ英語喋れとこうかなって。
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- 素晴らしい選択だと思います。語学は手に職ですからね。留学はどんな体験でしたか?
- 鳩川
- 劇場に通って毎月全く違う作品をみました。中でも「チャーリーとチョコレート工場」は衝撃的でした。私は当時、テクノロジーじゃないぜ舞台は!と思ってったんですが、空飛ぶ透明のエレベーターみたらもう、あ日本のエンターテイメントは遅れているな、もっと進むべきだなと思いました。それと、イギリスに行って初めて私は言語の取得が得意だということに気がつきました。勉強はあんまりできなかったんですが、英語で聞いて英語で考えて英語で応えるということが難しくなかったんです。
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- 英語脳ですね。ヒアリングが出来るってすごく羨ましいです。
- 鳩川
- 一回日本語に置き換えるんじゃなくて。それは芝居の稽古とかでも、藤井君に言われたことを吸収して跳ね返す、そういう脳みその使い方みたいなのができたんじゃないかなと思います。色々と生きてくるんだなぁと。でも私はまだ英語しか喋れなくて。将来的には5ヶ国語を喋れるようになりたくて、いまは中国語と韓国語に興味があります。
原動力
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- これまでを振り返って、どんなことが鳩川さんの力になりましたか?
- 鳩川
- パーソナルなことで言うと、たぶん家族です。ウチの家族は面白いかどうかを最優先するんですよ。うちは両親が離婚してるんですけど、それで別にへこんだりするとかがなくて。普通の人が悲しいと考えることを前向きに捉えるんですね。辛いことをストレスとして受け止めるだけじゃなくて面白いことだと思って跳ね返せるようになったのは家族の影響だと思います。
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- なるほど。
- 鳩川
- それと、藤井君との出会いは人生において大きかったんじゃないかなと思います。ライバル視じゃないですけど、同い年で一緒に頑張ってきて、彼と対等に話すためには自分がもうちょっと頑張らないといけないみたいなことをずっと思っています。それが私にとっては結構モチベーションになっています。負けず嫌いなので。最近2年間は幻灯劇場にはあまり出られなかったんですが、外部出演の時も彼の存在を意識しなかったことはありません。それは結構私の原動力になっていると思います(これを言うのは嫌なんですけどね)。彼に出会っていなかったら芝居も続けていなかったと思うんです。お芝居を楽しいと感じるのは彼と出会ってからです。言いすぎですね。
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- こないだ小野桃子さんに取材した時にめっちゃ面白いこと言ってて。「0を1にする」創作の力、「1を100にする」編集の力、「100を100のままキープする」保持の力。
- 鳩川
- おおー。面白いですね。確かに。
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- 実は鳩川さんも藤井さんも、「0を1にする」からこそライバル意識を持ってるのかもしれないなとふと思って。
- 鳩川
- 私は作品を作る方ではないんですけど、彼の作品を0から1にできるのは、今の幻灯劇場の中でも私が一番適任なんじゃないかなと思ってます。幻灯劇場の作品に私は出た方がいい。彼の作品を観客として見ていても思っています。
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- ちなみに小野さんは、自分自身はそのどれでもなくて、「−100を0にする」力がある、と仰っていて。彼女はプロデューサー時代、集まった人達を集団にするために、言葉を選びに選んでまとめていたそうです。いやあ、若いのに凄いなあと思ってます。
- 鳩川
- それはみんな思ってます。幻灯劇場には彼女がいるから私は安心、というところがありますね。それと同時に、いい意味でプレッシャーでもあります。私が高校3年生の時に小野さんは私を見て、ファンじゃないですけど憧れの対象みたいな感じで見てくれて、共演したいと言ってくれてそこから劇団員になったたんです。身内に見られるのが一番プレッシャーじゃないですか。彼女が公演を見に来る時は、私と芝居したいと思ってくれなくなるかもしれないというプレッシャーを感じています。心地いいプレッシャーです。ありがたいです。
質問 私道 かぴさんから 鳩川 七海さんへ
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- 前回インタビューさせていただいた安住の地の私道かぴさんから質問を頂いてきております。「人間の体で一番面白いところはどこだと思いますか?」ちなみに私道さんは骨、だそうです。
- 鳩川
- えー、何だろう。うーん・・・おへそ?
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- おっ、面白いですね。
- 鳩川
- 私は子供を欲しいと思ったことがなかったんですが、ちょうど二日前に友達が子供を産んで。人間と人間がおへそで繋がってるって凄くないですか。それをハサミで切って。そこから友達が、「何とも言えへん感情になる」って言ってて。それがすごい素敵だなぁと思って。「嬉しい」とか「子供が大切だ」とかじゃなく「何とも言えへん感情になる」。めちゃくちゃ痛かったのに、それがどうでもよくなるらしいです。誰かのために生きる人生って素敵だなって思いました。
爆発する冷静さ
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- 最近の鳩川さんのテーマを教えてください。
- 鳩川
- 私、ミルユメコリオの千秋楽で不思議な感覚があって。私の演技のキャリアを3段階に分けるなら最初の段階で「芝居なんかやったらわかる」、みたいな。台本に書き込むことはあんまりしたくなくて、そこに私が存在して喋って、そこで感じたことを出すものだから事前に決めていくものじゃないと思っていたんです。ダメ出しとかは書き込みますけど。
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- その場に存在することが大事だったんですね。
- 鳩川
- でも、しばらくして毎回同じことをするためにはその感情を覚えておく必要があるということに気がついたんです。「毎回同じだけのクオリティを出さなければプロとは言えないんだよ」と初めての客演先の演出家さんに教えてもらったんです。再現度の高い芝居をするというのが2段階目。でもそれが出来なくて。相手がちょっと違う言い方になった時に私の方が反応してしまう。するとどんどん変わっていってしまう。毎回新鮮な気持ちで同じ感情変化することが大事なんですよね。大竹しのぶさんと松たか子さんが私大好きなんですけど、「ピアフ」をやった時に「初日と千秋楽で全然演技が変わった」って聞いて。芝居が変わることは悪いことじゃないって思うようになりました。もちろん毎回同じクオリティでというのは今もそのまま思ってます。それ以降私台本にめちゃくちゃ書き込むようになったんです。この時はこう思っていて、こうなってるからここで反応するみたいな。芝居を論理的に捉えるようになってから、他の人と自分の演技プランについて役者同士のディスカッションを大事にするようになりました。それが作品のクオリティに直結するんだということに気がついて。
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- おお。
- 鳩川
- 客観的に自分を見ることができなかったんです。例えば、目が見えない役を演じた時に「周りを見て動けよ」って言われたことがあって。やってるときは実際本当に目が見えてないので。いやいやそんなこと言われてもと思ったんですけど。役に対して真摯に向き合っているだけだと、十分ではない。そこに存在する役の気持ちとしてはすぐに反応したくても、その役の気持ちをお客さんに伝えるためにはぐっと溜めてから言った方がいいとか。自分の気持ちとお客さんへの伝わり方の違いが大事だということに気が付いたんです。でもそうすると客観的になりすぎて、頭の中で喋り続けるんですよ。「今のはあかんかったな」とか。だからすぐ集中集中!って戻す。冷静な自分と没頭してる自分のバランスがうまくつかめない、そういう時期が続いていました。で、ミルメコリオの千秋楽の時、とても冷静に芝居ができたんです。とはいえ役に没頭する時は没頭出来て。でもその感覚が初めてすぎて、この感覚がなんなのかわからなかったんです。「それは芝居なのか」?悲しい時に左目から涙が出たら、左の頬を客席に向けるべきなのか?今まで存在することが大事だと思ってきたので、そういう芝居を認め切ることができなかったんです。それは藤井君に話して「それができるということはお客さんからの目を意識できている。ということは新しい段階に移ったんじゃないか」って言ってくれて。で、そこで彗星マジックさんの「詩と再生」 に客演させてもらって。めちゃくちゃいいタイミングでした。つかみかけたというタイミングであの役が出来たというのが。
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- 面白かったです。「詩と再生」。
- 鳩川
- ありがとうございます。客観的にどう見えてるかというのも把握していないと駄目だし、セリフとかが無い時の動きもひたすら自分で作って。一番難しかったのは障害を抱えているという役柄で、今まで役作りというものを意識してしたことがなかったのでめちゃくちゃ調べました。仕草とかも客観的な部分もないと出来ないし、感情的な部分が多すぎるといろんな台詞に反応しすぎてしまう。客観的な部分と自分の感情のバランスを掴み切るのが課題でした。
彗星マジック23景「詩と再生」
脚本・演出:勝山修平
出演:池山ユラリ(彗星マジック)・上田あやみ・小谷地希(凡タム)・田米カツヒロ(舞夢プロ)・鳩川七海(YTJプロ/幻灯劇場)・早川夢(?2劇場)・福田恵(劇団レトルト内閣)・南愛美・米山真理(彗星マジック)
10月25日(金)19:30
10月26日(土)14:00/19:30
10月27日(日)11:00/15:00
料金:
前売ご予約 3,000円 当日 3,300円 学生 1,500円(前売・当日ともに)
※受付にて学生証をご提示いただきます
作・演出・宣伝美術:勝山修平(彗星マジック)
プロデューサー&テクニカルワーク:相内唯史(at will)
衣装:西出奈々(彗星マジック)
当日運営:渡辺大(Limited_Spaice)
企画・製作:彗星マジック
会場:
インディペンデントシアター 1st
これから
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 鳩川
- 人としても成長も、役者としての成長も、色々な作品を携わらせていただいた中でこそできたことだと思っています。色々な作品に参加してきたということが自分の成長に繋がっていると思ってて。今までは自分が芝居をするという自分本位な所にしかなかったんですが、そうじゃなくて、お客さんに、誰かがつくった作品を届けるにあたってもっと成長していきたいと考えるようになりました。成長できなくなったら終わりです。
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- そうですね。
- 鳩川
- 3月は言葉を大切にしたい。あんまり自分から挑んだことがない領域なので、言葉に説得力のあるのある芝居が次の課題です。台詞のスタイルとかも、これまでの経験とまったく違うんですよね。声と言葉が今の自分にとってキーです。それから、その次、その次もまた別の課題があるので、とりあえず止まらないでおこうと思います。また成長した、また違う領域にいった。そんなふうに攻め続けてきたいです。
デザートカップ
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
- 鳩川
- え!ありがとうございます。(開ける)キレイ、可愛い。
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- パフェの盛り付けにも使える器です。
- 鳩川
- え、すごい。いい形ですね。何に使おうかな。
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- ヨーグルトとか、コーンフレークとかを入れてもいいかもしれませんね。