エチカ
- 広田
- 今は4月の、朗読劇の稽古ですね。
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- 「エチカ」ですね。いかがですか、稽古の進み具合は。
- 広田
- うーん。そうですね、まあ、どうなんですかね。体力がやっと戻りかけてきたので。
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- ああ、集中力とか。
- 広田
- 持つようになってきた、のかな。
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- 何か、そのですね。非常に楽しみにしているんですけども。今回は幻想譚みたいな感じなんですかね。チラシをみた限りではそう思ったんですけれども。いかがですか、俳優のとしてのプランなどがありましたら。
- 広田
- そうですね。朗読って初めてなんですけど、声だけで勝負できる所と、やっぱりそこに体はあるので、体で表現する所と。それを考えてみようという感じですね。宣伝としては、ピアノを弾いてくれる人がいて。劇研にピアノを持ち込んで。これ、いいのかなと思いますけどね。
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- へえ。朗読劇。どんな感じですか?
- 広田
- ずっとやってみたかったんですよ。本が好きなので。これは絶対、一度読んでみたいと思うものもあったりします。でも、何だろうなあ。聞いている方も面白かったりするんですけど、自分がやるときになるとこれは面白いんだろうかと思っちゃったりするんですよ。
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- 体を使って分かり易くするわけでも、特定の役を演じるわけでもないですしね。ダンスとは正反対ですね。ダンサーは言葉を使わないが、朗読者は体を使わない。
- 広田
- うーん。例えば、田中遊さんの時は、本を読んでいる体で何をするか、というようなことをやったんですね。本と私の関係。それそのものを表現する方法もある。ただまあ、今回はそういうメタな事はしない。
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- そのまま、物語を表現される訳ですね。
- 広田
- そうですね。でも、そこで読んでいる事が、何かにはなるのではないかなと。見てもらう時に先入観を持たれてしまうのでとりあえずは言えないんですが。
小さなもうひとつの場所
「別役実戯曲を『正しく』上演するためにつくられた」ユニット。藤原康弘、広田ゆうみなどが参加。
「エチカ」
朗読を中心とした演劇ユニット。2006年演劇ユニットとして発足。枳穀聖子の演出作品を発表する場とする。年に一度のペースで東京を中心に活動。朗読の形式を軸に、声のもつ可能性を追求している。(公式サイトより)
アトリエ劇研
京都・下鴨にある客席数80程度の小劇場。1984年に設立し96年に「アトリエ劇研」に改称、2003年11月にはその運営主体がNPO法人となった。(公式サイトより)
田中遊氏
正直者の会主宰。脚本家・演出家・俳優。
正直者の会「円卓」
公演時期:2006年2月。会場:Art Theater dB。
無防備
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- その、こないだのユニット美人では、今まで「小さなもうひとつの場所」などでは観られなかった演技をされておりましたが。これまで、ああいうアクションの多い演技は・・・?
- 広田
- あ、凄い昔にやった事はあります。いわゆるイロモノというのか。当時は自分のやりたい事も分からなかったので、たまたま入った劇団でそういう役を振られて。
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- はい。
- 広田
- 何か、やりながら違うよなと思ってて。ある演出家さんと出会った時から、「あ、私はこういう感じなのかな」っていう。
- __
- そういう、自分の俳優としてのあり方が分かったと。
- 広田
- 俳優としてのあり方というか、自分がどういう劇世界に立ちたいか、という事がその演出家さんによってはっきりと。それからはしばらく静かな事をやってたんですけど、それはそれで何か、狭い所に入っていたなと。特化していっちゃったのかな。で、状況的に、その特化を認めて貰えるようになって。まあ認めてもらうといってもやってる人同士でなんですけど、という感じで。最近になって、色々ちょっと・・・。
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- 拡げて。
- 広田
- うん、拡げるって言い方は好きじゃないんですけど。何だろう。
- __
- 色んな事が出来ると。
- 広田
- あの、正直自分がどうしていいか、無防備な感じがしていて。やっぱり、ほぼ一つの事をずっとやっていると、そこは出来るなという自負がある程度出来てくるんですね。で、それとまた違う事をやった時に、拠って立つものとは何だろうと考えるんですね。稽古場ではそんなこと考えないんですけど、改めて考えると、無防備な感じが。
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- 難しいですね。役者が拠って立つもの。
- 広田
- 何ですかね、自分に何が出来るかというのを若者の時に考えるじゃないですか。それがらせんを描いて戻ってきたみたいな。まあらせんだといいんですけどね。堂々めぐりじゃないといいんですけどね(少し笑う)。ただ、若い時ほど深刻には考えてないのかな。
- __
- まあ、その答はその都度、お客さんが出す、んですかね。
- 広田
- のかな。そうでしょうかね。だから、今問われて、抽象的に考えても確信を持って何も言えない。
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- でも、不安な印象というのはあんまり受けないですね。それを人は、貫禄と言うのでは。
- 広田
- 貫禄ですか?貫禄・・・。
ユニット美人
劇団衛星所属俳優の黒木陽子と紙本明子で2003年11月に結成。あまりに人気がない自分達が嫌になり「絶対モテモテになってやる!」とやけくそになって制作に福原加奈氏を迎え正式に結成。「女性が考える女性の強さ・美しさ・笑い」をテーマに日々精進中。(公式サイトより)
らせん
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- 今後、抽象的な意味でも、具体的な意味でも、どんな方向を目指されて行くのでしょうか。
- 広田
- 目指す。うーん。抽象的というと、皆が思っているじゃないか、という事になっちゃうのかな。そこに居られたらいいな、という。で、まあ、何か違う場所に、一緒に行けたらいいなと思うんですけど。本当にそういう事というのは簡単には言えないし、あたしどうすんのというのはあたしが聞きたい。という感じですかね。
- __
- ええ(笑う)。
- 広田
- たまたま、舞台が続いている期間があるので、何か、やりながらやりながら何かが更新されているという感触はあるんですけど、じゃあその先どうすんの、ていうのはあんまり・・・。難しいですね。昔、演劇をやっている中で、自由とか、遊ぼうとか、楽しもうとかいう言葉が大嫌いだったんですよ。で、ずっとやってきて。当時嫌だったそういう言葉とは別の意味で、ああ自由になれたらいいなと思えるんですね。
- __
- その自由というのは、何かからの自由、という意味ですか?
- 広田
- いや、あの、どこにでも行ける。
- __
- ああ、状態としての。自由自在な。
- 広田
- そうですね。器用とか、そういう事ではなくて。何だろう。うん。だって、どこにでも行ける筈、ですよね。現実的にも物理的にも。という事を最近は思います。私が多分反発していた、演劇における自由というのは、何でもアリというのでは。
- __
- ないと。
- 広田
- 違うよな、と。恐らく自由という言葉の内包する何でもアリに、イヤと思っていて。で、一回りして、放恣放埓、何でもアリというものに対しては、まあそれはそれでいい、けど、目指すものではないかなと。でも難しいよなあ。何でもアリというのは人によって定義が違いますよね。
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- そうですね。
- 広田
- でもまあ、一回りして、もっと自由になれたらな、と。自分で自分を束縛している。ベタな言い方ですけど・・・。2月にやった「傘をどうぞ/ソウルの落日」と話していて、自分の考えが自分を縛るから、といわれて。そうだなあと。よく言われる言葉なんですけど、文脈とかのせいか、すごく腑に落ちたんですよね。
第28回Kyoto演劇フェスティバル実行委員会企画「傘をどうぞ/ソウルの落日」
公演時期:2007年2月20日〜22日。会場:京都府立文化芸術会館。
山口浩章氏
脚本家。演出家。劇団飛び道具所属。
刺激
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- そういえば劇研のアクターズラボにも参加されていますよね。
- 広田
- ええ、それもやっぱり私にとっては大きいですね。継続的に、演劇経験の無い人から長い人まで、一緒にやれるというのは。アクターズラボの日記に書いてもいるので、何がどういいかはそちらに譲りますが。・・・ある日のラボが終ったあとに、劇研の杉山さんと喋っていた時に、「演劇をやっている人って、映像感覚から入る人の方が多いよね」って話をしていて。で、落ち着いて考えると、恥ずかしながらウチにはテレビ無くて。映画も観なくて。本当に、活字情報だけで生きてるような。
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- あー。
- 広田
- それって、演劇人としてはどうなんだろう、と。
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- 映像から入る人。
- 広田
- 映像で、動かされる。舞台を見て感動するとか、映画を観て感動する、参考にする、とか。
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- うーん。その、映像から入る人のが行う芝居のイメージというのは、アレですかね、観られている前提の世界で、自分も動かなくちゃなんないんだ、という意識が稽古の前段階で刷り込まれている、って事ですかね。
- 広田
- いや、世界の捉え方、っていう意味ですね。何に自分が心を動かされるか、という。演劇を作る事に限らず。
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- なるほど・・・。杉山さんのお話を又聞きしてですね。何というか、ビジュアルだけでお芝居を作る人が多いけど、そうではなく、人間のあり方を示す芝居をやろうよ、という事を言ってるのかな、と思ったんですが。
- 広田
- いや、それは何か今更言うまでもないという話じゃないですか。そういう事ではなく、刺激を何から受けるか、という。言い方が悪かったですかね。ごめんなさい。
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- いえ、とんでもございません。
ガラスのコップとコースター
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- お話を伺えたお礼として、プレゼントがございまして。
- 広田
- ええ、いいんですか。
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- どうぞ。ちょっと袋がよれてしまったんですが。
- 広田
- 何だろう(受取る)。何か、本当に実の無い話をしてしまって。大丈夫ですか?
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- いや大丈夫ですよ。
- 広田
- 色々エクスキューズを入れだすと凄い事になっちゃうんで。共通の言語が無い状態で。ほとんど喋った事が無いじゃないですか。
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- いえいえ、共通の言語が誤解の無い形で伝わるようになるなんて、回数の問題じゃないんですかね。
- 広田
- 回数。
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- 誤解の訂正が回数を追う毎に堆積していって、最適化されたら、それは仲良くなった、って事じゃないですかね。
- 広田
- そうですよね。・・・ああ、何かもう。そういう、エクスキューズを入れるのをやめようと思っていて。
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- ええ。
- 広田
- 当たり前ですよね、皆そこを何とかしているわけだし。時々戻んないといけないけどさ。いちいち戻ってたら話も出来ないし。甘えんなって自分に思いますね(開ける。コースターが出てくる)。
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- ええ。
- 広田
- あ、何これ。かわいい。そして何これ。器ですね(もう一つを開ける)
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- コップです。
- 広田
- あ、キレイ。何か、かわいいなあ。何かこう、美しい生活って感じですね。ありがとうございます。