劇団ソノノチ「ものがたりの書き物」
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- 今日はどうぞ、宜しくお願いします。最近、廣瀬さんはどんな感じですか?
- 廣瀬
- 劇団ソノノチの次回公演の「ものがたりの書き物」と、劇団衛星さんの珠光の庵に出演させていただくので、その二つの稽古です。
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- そうなんですね。楽しみにしております。頑張って下さい。
- 廣瀬
- はい! がんばります。
劇団ソノノチ
中谷と北海が大学在学中に4年間所属していた劇団テフノロGを卒業後、2008年に社会人劇団として集団を再結成。メンバーはそれぞれにジャンルの異なった自身の作家活動や制作活動をおこなっているため、その得意分野を生かした舞台表現に今後注目が集まる。人と時間の繋がりを大切にしながら継続的に作品発表の場を持ち続けることを目標にしており、舞台表現とアート・デザインの複合性とその「これから」を探る(劇団名もこの「これから(その後)を探る」にちなんでつけられた)。(公式サイトより)
劇団ソノノチ「ものがたりの書き物」
公演時期:2012/3/16〜18。会場:アトリエ劇研。
珠光の庵大分公演「珠光の庵〜真の巻〜」
公演時期:2012/3/3〜4。会場:妙正寺。
恥ずかしいのを通り越して
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- 廣瀬さんがお芝居を始めたのは、どういうキッカケがあったのでしょうか?
- 廣瀬
- えっと、社会人になって、しばらくしてからです。
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- あ、そうなんですね。
- 廣瀬
- 同じ高校だった中谷が、大学卒業後に劇団を旗揚げして、役者をさがしてるんだけど、良かったら愛子もどう?って。自分の表現を模索していた時とそのタイミングが不思議と合って。実は高校の頃、文化祭で一クラスが一つお芝居をやる事になっていて・・・とても小さい学校だったんですけど、私を知らない人がクラスの外にたくさんいる、それって当たり前なんですけど、卒業したら私がいたかどうかも残せないんじゃないかと思って。高校が大好きだったのでそこに自分がいた何かを残せないかなって。その時に立った舞台がすごく強く記憶に残っていて・・・
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- いかがでしたか?
- 廣瀬
- 自分じゃないような感覚があって、でもそれが気持ちいいなって。そのときは恥ずかしいのを通り越して、みんなで作り上げていく、舞台上で出来上がって行く興奮の方が強かったです。いい記憶になりました。
人間の冷たさ
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- 廣瀬さんはご職業がデザイナーなんですよね。
- 廣瀬
- はい。会社が出している店頭のPOPを作っています。実は、焼き菓子の店頭販売なんですよ。だから、手作りの感覚を大事にしたものが置けるように色々。
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- ものづくりですね。素晴らしい。たしか、絵も描かれるとか。
- 廣瀬
- はい! こういうのです。イラストって感じなんですが、この時は水彩を中心にして描いています。ソノノチ団員は基本的に全員がモノづくりをしているんです。それぞれ自分の製作があって、それとは別に演劇作品を作っています。みんな、視覚的なセンスが高いので、ミーティングの時は色んな意見が飛び交って面白いです。
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- それは面白そうですね。私が考えるソノノチの魅力とちょっと被っている気がします。何だか、穴の中で土を掘っているイメージがあるんですよね。素手で横方向に。その人の指が探る土の冷たさが伝わるというか。
- 廣瀬
- ちょっと分かります。
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- その感触がなぜかいいんですよ。寂しさと悲愴感もあって。
- 廣瀬
- そういうところありますよね。それを、私は、みんなで掘っているんだと思います。
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- なるほど。
- 廣瀬
- 出来た作品も、仰る通り冷たい部分もあるんですけど、どこか人間らしい冷たさというか、ガラスのようにキンと冷えた感じ、そこに人の手のぬくもりを感じるようなのがあるんだと思います。
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- 冷酷じゃないんですよね。孤独が持っている冷たさというか。
- 廣瀬
- そうなんです。誰しもが抱えている寂しさを演劇で共有したら、それは優しい世界という事になるんじゃないかって。私はそこの登場人物として、日常に当たり前にない表現や、自分らしさを通して、心のなかにあるものを発見してもらえたらと思っています。
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- ソノノチの物語。確かに具体的な筋はかなり隠されている感じですよね。「おやすみの砦」とか。
- 廣瀬
- そうでしたね。時間がずれていたり、構成が何だか夢の中にあるようにしてあって。
心が動いた
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- 今まで、役者としてどういう目標がありましたか?
- 廣瀬
- 技術的な面で言うと、基礎がないので声が人よりも小さくて、ちゃんと響く声が出したいです。配役されたキャラクターの行動・表現と、自分が重なるようになればいいなと思っているんです。その瞬間を大事にしたいですね。
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- 役柄とご自身が重なる瞬間がある。
- 廣瀬
- 台本の読み込みが浅いと、感情を表現するときもふわーっとしてるんです。でも、他の役との関係が掴めてくるに従って、無意識に体が動いたりとかがあるんです。それまでは「こうだったらこうなのか」みたいに考えていたのが、すっと体が動く瞬間があります。
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- 役が振られた時から、どうアプローチしていくか。最近よく話題になっています。その役者固有の人格でしか出せない演技、がキーワードなんでしょうね。例えば、今そこのTVでやっている吉本新喜劇。
- 廣瀬
- ああー。
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- 役者とキャラクターが見事に重なってるんですよね。もちろん、シーン作りがすごくスマートで、その時に即した笑いに結びつくように削ったり贅肉があったり。
- 廣瀬
- そうですよね。演じている人がどこかに違和感を持っていると、伝わってしまうような。
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- 廣瀬さんは、今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 廣瀬
- 感じて貰えるような作品が作りたいです。その気持ち、感想を頂けるとやっぱり嬉しいです。それはいいねだけじゃないこともあるかもしれないですが、でも言って頂くという事は、心が動いたという事だと思うんです。観ている人に感じて貰えるようにしたいです。それと、これは上司の言葉なんですが、「毎日つかれた〜!ってベットに倒れ込んじゃうくらい、泥まみれになるくらい、遊びなさい。」と。そんな時間を過ごしたいと思ってます。
「実物をみるより感動するね」
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- 何も感じない芝居じゃなく、心が動く芝居。廣瀬さんは、どういう時に心が動くと思いますか?
- 廣瀬
- 大学の頃、動物のデッサンをしていた時に、後ろを通った人から、「実物をみるより感動するね」って声が聞こえたんです。周りで何人かも描いていたので、特別私に言った訳じゃないかもしれないんですが、でも、その言葉がずっとずっと染み着いています。
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- 切り取ったという事ですね。
- 廣瀬
- そうですね。動きは表現出来ないので、私が見た瞬間の表情を表現するんです。その瞬間の匂い、ポーズ、構図とか・・・。それって、絵だけじゃなくて演劇でも同じような事が出来ると思うんです。しかも演劇はそこにプラス動きが入ってきて、表現はなんだか無限のような気がします。
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- ご自身の印象をキャンバスに射映して、それが他人に届いたという事なんですよね。それはありふれているコミュニケーションかもしれないけど。
- 廣瀬
- でも、そういう表現をしていきたいと思います。
質問 BABさんから 廣瀬 愛子さんへ
スクラッチキャット
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントがあります。
- 廣瀬
- あ!ありがとうございます。いつもみなさんにされているんですよね。
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- そんな大したものではないので。どうぞ。
- 廣瀬
- (開ける)あーっ。猫ですね。可愛い。この目付きがいいですね。