空へ
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- 今日はみんなが気になっていた、 echo $shozoku_name; ?>の江坂一平さんにお話を伺えるという事で。大変光栄です。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。江坂さんは、最近はいかがですか?
- 江坂
- 男肉以外の事はあまりしていないですね。イギリスに留学しようと思っていて、今は英語の勉強をしています。
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- うまくいくといいですね。
- 江坂
- いい歳なんで、今の内に行ければいいなと。
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2005年、近畿大学にて碓井節子(うすいせつこ)に師事し、ダンスを学んでいた学生が集まり結成。J-POP、ヒップホップ、レゲエ、漫画、アニメ、ゲームなど、さまざまなポップカルチャーの知識を確信犯的に悪用するという方法論のもと、唯一無二のダンスパフォーマンスを繰り広げている。
本番には表れない部分
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- 江坂さんは、あの男肉のメンバーにあって一人だけ際立ってダンスがうまいという立ち位置にいますが、その辺りについてはどのような。みんな気になっていたと思うんですよ。
- 江坂
- いえいえ(笑う)確かに技術だけはあるかもしれませんけど、あの中にあって面白さという意味ではみんなと一緒のところから始まってると思いますけどね。パッと見て、たとえば小石なんかの踊りは見応えあるし、たすくは二枚目だし、下手くそな奴はいるしで。
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- 飽きないですよね。その中で、ダンスの一角で確実に見せるポイントを持っていく江坂さんがいいなと思うんですよね。得難いキャラクターだと。
- 江坂
- いやいやいや(笑う)気になる人や、ダンスをやっているお客さんは注目してくれるみたいでありがたいです。
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- SUMMER ONIC 2012 では、ポールダンスを披露されてましたね。
- 江坂
- はい。mecavさんに習って。二日間の付け焼き刃でしたけど。本番中にポールが汗で濡れてしまう事が分かって止められてたんですけどね。勢いでチェンと一緒に(笑う)。
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- まず基本的なところなんですが、江坂さんはなぜ「先輩」と呼ばれているのでしょうか。
- 江坂
- あいつらの一年上なんですよ。
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- あ、それだけなんですね。
- 江坂
- 他に年上もいないので。
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- 先輩として後輩たちを見る事はありますか?
- 江坂
- いつもそうですね。僕自身の仕事の半分は稽古場で終わってるんです。演者としての立場が半分、一個上としての立場が半分。そういう役回りは大切にした方がええんちゃうかなと。自然にですけど、抑えをする人がいるんじゃないかと。
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- なるほど。男肉は台本を作らないそうですが、それをまとめるのは難しそうですね。
- 江坂
- いや、こういう性格ですので直接的にあまり言葉にはしないし、上から何か言う訳じゃないんですけど。本番には表れない部分で、僕が貢献した跡が見えると嬉しいですね。
SUMMER ONIC 2012
公演時期:2012/07/29。会場:元・立誠小学校。
質問 吉田 みるくさんから 江坂 一平さんへ
立ち会う
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- 近畿大学の舞台芸術コースに入られた理由は。
- 江坂
- 僕はバリバリ高校演劇から始めたんです。大学でもっと学ぼうと思って。部活の先生が劇団京芸の代表の娘さんで、テクニックとか全く教えられずに、一時間その役として生きる事に集中しろと言われて。それが今でも、僕の中に続いています。
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- なるほど。
- 江坂
- 大学に入ってからは芝居をやってたんですけど、何故か脚本があるという事に違和感を覚え始めたんですよ。どうしても物語に収束してしまうのがどうも違和感があって、「この人がこの時こういう状況になっている事が面白いのに、なんでそこに気づかないのかな」って。その時にダンスに出会いました。お客さんも考えないと見られないし、作品が作品としてだけで成立してくれる。
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- ダンスの作品上にある実存に魅力を感じたという事ですね。
- 江坂
- 男の子的発想ですね(笑う)舞台上で駆け引き出来たら面白いなと思ったんです。成立させるために。男肉での演技も、ダンス的に芝居している感覚があります。
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- では、男肉に入られたキッカケは。
- 江坂
- 僕が卒業して、男肉の公演も本格的になっていって。メンバーも沢山増えたんですけど、大半が「ここおもんないわ」って辞めていくんですよ。それが、外からみて腹立たしかったんですね。こいつらが面白くないって言っとる奴らがおもんないで、って。それぐらいの時期にダンスの振付をやってほしいと依頼されて、そこから参加し始めました。最初は一時的な、ダンスが自分達で作れるようになるまでというお手伝いとしての参加だったんですけど、そのうちやりがいが出てきて。そのまま入団しました。
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- あ、振り付けは池浦団長だけじゃないんですね。
- 江坂
- 物理的に無理な振り付けや、間に合わないフリとか、そういうのは僕が調整してやり方を考えて提示して。芝居も、あいつが持ってくるものはそのままじゃ使えないんですよ。高阪とか小石が、自分達がやりやすいように変えて使えるものにしていく、という。
嘘
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- 男肉の魅力。その時の思いつきなどによって姿を変えるパフォーマンスだという事がこれまでのインタビューで判明していますが。
- 江坂
- そうですね。実は、僕は大学時代はめっちゃ真面目なダンスを作っていたんですよ。現代に生きる人間の苦悩を題材に。でも、今男肉でやっているダンスも、実は昔のものとそれほど差がないと思うんですね。結局。
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- 差がない?
- 江坂
- 今自分がこの時点でここに生きていて、それでダンスを見せていること。僕は鍛えた体で見せるけど、男肉の中には下手クソのまま見せる奴がいる。ぜんぜん違うんですけど、それで面白いんです。僕はダンスを教えるつもりはないんですよ。身体を鍛える事で突破出来る。突破の仕方で見せてくれって。持ち物がバラバラなあのメンバーで(中には引きこもりもいるんです)、それぞれの突破の仕方がある。
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- 男肉のダンスの面白さは、まずそこにあるのかもしれない。
- 江坂
- 見てたらやっぱり魅力はあるし、鍛えた身体と同じくらい面白い。変化球だけど強い球だと思います。
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- 逆に、面白くない身体とはどのようなものだと思われますか?
- 江坂
- そうですね、出来ないのに誰かの真似をしているとかですね。それは価値観として存在しない。本当にテクニックのある人は、ただ単にテクニックを持つ人の事ではないんです。嘘臭い、借りてきた価値観ではあかんと思います。ただ男肉もものすごい変化球なので、あかんという人もいるとそれは思うんですが。
ハア?
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- 男肉の舞台はまるでテーマパークのアトラクションのようで、たとえば主人公達とインターネットの世界を旅したり、タイムスリップしたりする。お芝居を見たことのない人に見てもらいたい気はしますね。
- 江坂
- 「ハア?」って言われるのが一番いいとよく言ってますけどね。
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- 呆れられるぐらいのね。でも、どこかから借りてきた芝居よりかは全然いいんじゃないかなと思うんですけどね。自分達で発見していない価値観で作ったモノなんて、すぐ分かりますから。
- 江坂
- ネタとして、わざとニセモノを見せるという事もありますけどね。
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- とはいえ、偉そうな言い方ですが、昔そうだった劇団が5年ほど経って非常に良い演技をするという事もあります。劇団が成長するのはいいですね。
- 江坂
- そうじゃなければやってる意味、無いですからね。
ふっと
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- この間のサマーオニック2012、お疲れ様でした。
- 江坂
- もう暑かった事しか覚えてませんね。前回の大長編の時もダンスが5連発してめちゃくちゃしんどかったんです。自分の体力の限界の限界と、バテた時どうするかが分かってきました。その時に自分の体をどれぐらい見せられるか、意識しました。そういう勉強にはなりましたね。
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- 確かにしんどそうな表情があって、それも良さに繋がっていたと思います。
- 江坂
- しんどくて後ろに下がった時、誰かが前に出てフォローしてくれたんです。その時ちょっと感動したりして。吉田みるくとかJとかその辺しっかりしてて。団員もそういうかけ引きをしていて、嬉しかったです。
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- それは、先輩として。
- 江坂
- そうですね。
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- 男肉の舞台上で、江坂さんがやはり先輩として振舞っているのがいいですよね。しかも優しく「こらっ。先輩やぞ。」って諌めるシーンが以前あって、それが非常に面白かったです。
- 江坂
- 男肉の舞台上では団長がトップなので僕は敬語を使うんですけど、あいつも僕に敬語で喋ってくるんですよ。基本的に。あれは僕らも意味が分からんなと。そこはブレないんですよね。
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- メタ要素があって、親しみやすさがある。
- 江坂
- でもまあ、舞台上にノイズというか、落とし穴を掘って行きたいなと思います。客席から見ていて、ふっと気になる要素。僕がダンスを作る時もそういう感覚で作って行きたいです。僕が男肉にいる理由は、そういうところにあります。
肉体の演技、分身の演技
- 江坂
- 僕が男肉にいる理由は、そういうところにあります。
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- それは、ダンサーの実存に宿る面白さに意義を感じている?
- 江坂
- そういう事ですね。大長編にヨーロッパ企画さんの俳優が参加してくれる事が多くなって。前回石田さんが客演して下さった時に「ダンスを教えて欲しい」って言って下さったんですね。でも実は、僕が教える事なんてあんまり無かったんですよ。突破の仕方だけ教えて、あとはどうなるかを見ていたかったんです。いや、俳優の方だけあって、立ち方も振りも面白いんですよ。結局、どうやって生きるかだと思うんですよね。小石の演技とか見ていてそう思います。あいつ一度、本番の最中にセリフを間違って逆の事を言った時に、「違う!」って取り消したんですよ。感動しました。それが成立してるんですよ。アルトーが書いていた肉体の演技、分身の演技ってこういう事なのかなと。
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- その小石さんが一際輝くのが「男肉卒業式」ですね。もう6年ぐらいまえから作品の〆として上演されていますが、あれも男肉を象徴するパフォーマンスで、次回公演が決まっているのに卒業式を執り行うという荒唐無稽さ。そして、小石さんの切実さ。
- 江坂
- やっててマンネリ感は一切ありませんね。特に小石は観客がいなくても練習もゲネプロも全開でやるんですよ。
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- ええっ。
- 江坂
- 手を抜いたら出来なくなるのかもしれません。僕にしたって、全力じゃないと踊れないので。
切る
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- 今後、江坂さんはどんな感じで攻めていかれますか?
- 江坂
- どうですかね。言うても、男肉は色々な芝居が出来るようになって、さだ夢も演出自体が上手くなって、ラップという要素も出てきて。でもダンスは、まだショーダンスとしての使い方しかされていないんです。実はそこに可能性が眠ってるんじゃないか。
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- なるほど。
- 江坂
- 僕と団長が、ダンスについての幅を広げていけたらなと考えています。その為の留学でもあるんです。踊る肉体として成立するのには、鍛える事だけじゃ成立しない。まだ何かあるんですよ。
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- というと。
- 江坂
- 例えば僕は、現状キレイに体が動かせる事や、振り回す事でダンスを成立させる部分が多いんですね。それでも男肉だったら全体を成立させる構成要素として充当するんですけど、それだけじゃない、もっと別の切り口があるなと。歳とともに切り込む力が弱くなるので、その前に別の切り口をどんどん発見していきたい。もっと言えば、僕らの世代の身体が舞台上で価値を持つにはどうすればいいのかなと。それが個人的にはずっとテーマです。
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- 昔の人の身体との対比という事ですか?
- 江坂
- よく「だらしない身体」と言われていますが、実は僕らの身体だけにしか宿らない価値観があると思うんです。男肉でがむしゃらに踊るだけじゃなく、それを発見したいですね。
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- 「どんどん切り口を発見する」。つまり、可能性がまだまだありそうだと言う事ですね。
- 江坂
- 僕は高校まで運動オンチだったんです。大学時代にさだ夢やみるくとダンスの勉強を重ねて、実践して、それでも今でもダンスが出来ているなんて自分では全く思わない。だったらどうするかと言うと発見していくしか無いんです。確かに僕らは戦争もバブルも通過していません。でも、ありものしかないんだから、潔く自分たちの身体を見直したらいいんじゃないか。
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- 我々の身体にしか宿っていないもの。それは、いま見えていますか?
- 江坂
- 僕らがいま抱えている身体と、お客さんそれぞれが抱えている身体。二者間は舞台を通して何かを共有しているんじゃないか、という事が、最近のイベント公演を通して見えてきました。そこに来たお客さんが見えているもの、それぞれの価値観。男肉の公演でしか出来ない一過性を通じて共感が生まれるという事自体が面白い現象だと思うんです。
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- ごく個人的な思いですが。すみたさんが中央に位置して周りがぐるぐる踊るダンスが強烈に印象に残っています。というか、あれを観るたびに私は気分が悪くなるくらい爆笑するんです。
- 江坂
- それ昨日、団長も言ってました。「すみたは唯一、あのダンスだけが良い」って。
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- ダンスというか、あの光景をよく見つけられたなと思うんですよ。男肉のはダンスから外れているかもしれないし、振付じゃないのかもしれませんけど、だからこそ何かを持っている。それに現時点で立ち会って価値を共有出来る事が、一つの事件かもしれません。
シリコンバンド腕時計 RUPU
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- 今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントを持って参りました。どうぞ。
- 江坂
- ありがとうございます。(開ける)あっ。これ。めっちゃいいやつじゃないですか。
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- 時計です。踊っている時にでも。
- 江坂
- 時計、すぐ落とすんですよ。稽古場とかで外して踊ると、すぐに忘れて帰ってしまうんです。めちゃめちゃ嬉しいです。