演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

川那辺 香乃

制作者

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台風の日に

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本番前なのに申し訳ございません。今日はどうぞ、宜しくお願いします。
川那辺 
こちらこそ、宜しくお願いします。
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大丈夫なんでしょうか、この台風。すごいですね。明日本番なのに。

トリコ・A演劇公演2011「和知の収穫祭」

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明日から始まるトリコ・Aの「和知の収穫祭」。チラシが非常に魅力的でワクワクします。伺いたいのですが、これは一体どのような企画なのでしょうか。
川那辺 
NPOアトリエ劇研が主催している「むすぶプロジェクト」の一環で、地方にアートを組込めないかという実験的な事業の一つです。そこに、トリコ・Aの山口茜がアーティストとして和知に行くことになりました。山口自身も、フィンランドに留学時、一人の時間が充実していたそうで、和知にいると同じように一人でいる時間があって、それを元に創作をしたいと考えたようです。明日のオープニングパフォーマンスでは、大迫といういま山口が住んでいる集落でダンス作品を上演します。台風で中止にならなければ。
___ 
アートを組み込むとは。
川那辺 
演劇をきっかけにした繋がり作りを狙いとしています。アーティストがそこに住んで作品を創作する、それだけで近所の方など身近なところからどんどん輪が広がっていきます。
___ 
なるほど。
川那辺 
それにそこに住んでいる人たちの協力がなければ絶対に上演出来ないんですよ。特に2つ目の作品の舞台は国の重要文化財なので、役場の方や区長さんにご相談したり、地元の青年団の方々とやり取りしたり。皆さん良い方で、初心に戻るではないですけれど、本当にいろんな方の支えがあって作品って出来るんだなって思いました。
トリコ・A

トリコAは、山口茜が「自分で戯曲を書いて演出をしてみたい」という安易な気持ちを胸に、1999年、勢い余って立ち上げた団体です。当初の団体名は、魚船プロデュースと言いました。以来11年間、基本的には上演ごとに俳優が変わるプロデュース形式で、京都を拠点に演劇を上演してまいりました。やってみると意外と大変だった事が多い様に思いますが、皆様の暖かいご支援のもと、現在も変わらず活動を続けております。(公式サイトより)

トリコ・A 演劇公演「和知の収穫祭」

オープニングパフォーマンス 「Scenic−風景−」公演時期:2011/9/4。会場:京都府京丹波町大迫・とうがらし畑(雨天の為山口自宅にて)。和知公演「Fete−祝祭−」公演時期:2011/9/24〜25。会場:京都府京丹波町下粟野 明隆寺観音堂。京都公演「React upon−反応しあう−」公演時期:2011/10/28〜31。会場:元・立誠小学校。

外に出ること

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ええと、川那辺さんは、いつから演劇を始められたんでしょうか。
川那辺 
アトリエ劇研の芝居工房からです。最初は自分も舞台に立つ側だったんですよ。ちなみに、同期に京都ロマンポップがいました。最近再会してびっくりしました。
___ 
あの沢大洋さんが。
川那辺 
はい。その後、コンテンポラリーダンスにも興味が湧いて、イギリスに語学留学したんです。半年だったんですけどそのままダンス学校に編入しようと思っていたんです。
___ 
イギリスのどこですか?
川那辺 
ロンドンです。生活の中に芸術が生きている街なんですよね。人々の生活にゆとりがあるように思えたのは、例えば美術館が無料だったり、毎晩普通に劇場に足を運んだりだったのかなと。そういう芸術が人に近い環境を日本でも作りたいと思ったことが、制作を目指したキッカケなんです。それで帰国後JCDNやトリコ・Aのインターンをさせてもらいました。
___ 
最初に関わった作品は。
川那辺 
「他人(初期化する場合)」の再演でした。すごくしんどかったんですよ。まだ社会に出たこともないひよっこが、いきなり外部と関わる立場になって。でも、当時Afro13のプロデュースだった齋藤努さんに出会ったんです。「他人・・・」の際にコーディネーターをしてくださっていました。
___ 
おお。
川那辺 
それで、大学4回生の時に「就職するかどうしようか迷っているんです」って相談させて頂いたんですね。そうしたら、「せっかく、新卒という枠組みがあるんだったら、一度は普通に就職してみてもいいんじゃない」って。いきなり制作の世界に飛び込むのではなくて、外を見て、芝居をもっと客観的に見られるようにしたい。
___ 
一度、離れてみたかったんですね。
川那辺 
それで、東京の百貨店に就職をしたんです。
___ 
どうでしたか。
川那辺 
後悔した事と同じくらい勉強できた事が多かったです。やっぱり舞台の仕事が好きだったって入ってすぐに気付いて。でも、やっぱり少しは続けなくちゃって思って3年はがんばりました。その時に自分が出来る事の限界が分かったんです。「あー私ってめっちゃ小さいなぁ」って。
京都ロマンポップ

2005年、当時立命館大学生であった向坂達矢(現・代表)、よりふじゆき(脚本家)を中心として旗揚げ。以後一年に2〜3本のペースで公演。ポップな新劇というスタイルを取り、芸術的・哲学的テーマを基調とした演劇を製作する。

沢大洋

俳優。京都ロマンポップ。2011年2月に開催された京都学生演劇祭の企画など、役者を越えた活動にも尽力する。

JCDN

NPO法人ジャパンコンテンポラリーダンスネットワーク。コンテンポラリー系のアーティストの公演活動を支援しているNPO。

齋藤努

プロデューサー。コーディネーター。

京都でしか出来ない事って

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東京でも芝居はご覧になっていましたか?
川那辺 
はい。東京では色んな劇団が次々と新しいことにチャレンジしていて、脚本家・演出家の独自のカラーに俳優の層も厚いし、ずっと目まぐるしくて、飽きなかったです。
___ 
東京の観客は、飽きない。
川那辺 
ただ、京都に戻ってきて思うのは、京都でしか出来ない作品って何だろう、って。京都に戻ってまで、自分がやるべきことって何だろうって考えました。昨年のKYOTO EXPERIMENTさんの「個室都市京都」の制作に携わって、場所性というものに触れて、さらにそういう考えは深まったように思います。
KYOTO EXPERIMENT

KYOTO EXPERIMENTは、京都国際舞台芸術祭実行委員会(京都市、京都芸術センター、公益財団法人京都市芸術文化協会、京都造形芸術大学 舞台芸術研究センター)が主催する、国際舞台芸術フェスティバルです。(公式サイトより)

高山明

PortB.構成・演出。PortB:2002年東京にて結成。高山明がドイツで培った演出メソッドを叩き台に、演劇以外の活動に携わるアーティストや職人を中心に演劇的実験を繰り返す。活動は多岐にわたる。(公式サイトより)

引き込む世界

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和知での公演、色々な所に可能性が広がっていくといいですね。
川那辺 
そうですね。現地の人たちに「何やこいつらは」って思われてると思うんです、すでに。変な踊りや変なチンドン屋くらいには認識してくれてる感じがします(笑)それをなんとなくちょっとでも受け入れてもらえればいいなと思います。私たちは面白いと思ってやってますけど、それを「面白いでしょう?」とすると押し付けがましいというか。そういう事は凄く起こりやすいと思うんですよね、無意識に。
___ 
そうかもしれませんね。全然違う土地で作品を上演するとき、やっぱりそこは気になりますよね。お客さんのレベルというものについて、嫌でも考えなくてはならないと思うんですよ。表現に対するとき、文化的な素地が前提として必ず必要だとも言えるし、逆に、強度のある表現であれば、どれほど文化的背景が異なっていても理解は出来るはずだ、という見方も出来る。
川那辺 
やっぱり後者を目指したいです、よね。未知の作品に触れたとしても、その世界に引き込まれるものであれば、面白いと思うんですよね。たとえ、全然芝居を見たことがない人でも。
___ 
たとえば、初めての町を気に入るように。
川那辺 
絶対、誰にでもある感覚だと思うんです。でも、その創作過程で、演出家が自分のやりたいことを突き抜けるまでやらないと意味がないと思っています。

地方の文化の違いって

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しかし、明日どうなるか分からないですね。今晩中に台風が過ぎ去ってくれるかどうか。願わくば、台風の目に入ってもらえたらいいですね。
川那辺 
早めに、他の対策を考えていた方がいいのかな・・・。
___ 
制作者としての腕の見せ所ですね。
川那辺 
いえいえ、まだまだですよ。一年ぐらいしか経ってないのに、こうして仕事をいただいているのは本当にありがたいです。でも、まだまだ食べていける状態じゃないんですよね。色々矛盾しているんですけど。
___ 
そうだ、異邦人の時の俳優インタビューでも、生計についてお聞きになっていましたね。
川那辺 
あ、読んで下さっていたんですね。みなさん仕事をされていて、両立して演劇を続ける事について、というアプローチでインタビューをしました。実際どんな演劇人が京都にいるのかというのもテーマだったんです。
___ 
そうですね。その地域の文化的傾向って面白いですよね。
川那辺 
ええ。絶対、少しづつ違う傾向があるんですよね。
___ 
何故か地域によって、俳優の身体性が違いますからね。
川那辺 
どんなワークショップを受けているか、というのもあるし、地方の文化の違いってどうしてもある。
___ 
乱暴な言い方をすると、地方によっては、特定の人間関係の取り扱いが違うのが大きいのかな。そういう価値観の違いは、凄く薄いけれど、やっぱりどこかで影響を与えていると思う。
川那辺 
そうですね。
AAF リージョナル・シアター2011−京都と愛知− 京都舞台芸術協会プロデュース公演『異邦人』

山岡徳貴子・作。柳沼昭徳・演出。公演時期:2011/6/9〜12(京都)、2011/6/18〜19(愛知)。会場:京都芸術センター、愛知県芸術劇場小ホール。

質問 高杉 征二さんから 川那辺 香乃さんへ

___ 
さて、少し前にインタビューさせて頂きました、高杉征二さんから質問を頂いてきております。
川那辺 
わあ。優しい人ですよね。
___ 
「好きな映画は何ですか?その理由も教えて下さい」。「彼女ならキュートな理由が聞けるはずです」との事です。
川那辺 
最近、映画は見てないんですよ。何がいいかな。「ライオンキング」とか。「ハリーポッター」とか好きですね。
___ 
理由は。
川那辺 
「ライオンキング」は、子供の頃、毎日のように弟達と一緒に見ていて。ミーアキャットとイノシシが、主人公のライオンを助けて仲良くなるんです。虫を食べて暮らしている彼らが、主人公に食べ方を教えるシーン。最初は嫌がっていたのが、食べるとおいしい!で、三人が仲良くなり、歌い出すという(笑)台詞も全部覚えていたことがありました。「ハリーポッター」は原作が好きで、それで留学先もイギリスを選んだという・・・かなり安易ですが。

ワークショップデザイナー育成プログラム

___ 
川那辺さんは、今度はどんな感じで攻めていかれますか?
川那辺 
私、大阪大学のワークショップデザイナー育成プログラムに去年参加していたんです。
___ 
ああ。
川那辺 
そこでの経験を通じて、私なりにワークショップってなにかなって考えた時に、ワークショップというのは学校とは違い、割とフラットな関係の中で出来上がっていくものだと。私は、アートをいろんな人に知ってもらう、楽しんでもらうっていうのには、ワークショップが有効な手段だと思っているんです。今、舞鶴の「まいづるRB」というアートプロジェクトにもアシスタントで行ってるんですけど、そこは演劇ではないんですけど、ワークショップに取り組んでいて、参加者の人はのびのびとやってて、気の向いたときに覗きにきてくれたり、スタンスがその人本人に委ねられているんですね。それが当たり前のように思えるけど、なかなかない空間だなぁと思っています。色々な人と対等に話しながら、知識の共有をする事がワークショップという形態だとしたら、演劇のみならず色々なコミュニケーションに有効なんじゃないかなと思うんですよね。私も、そうしたクリエイティブなワークショップに関わりたいし、また自分の周囲も巻き込んでいけたらなと思っています。

Bioristのスキンクリーム・ペパーミントローズマリー

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今日はお話を伺えたお礼に、プレゼントがございます。
川那辺 
ありがとうございます。開けていいですか?
___ 
もちろんです。
川那辺 
(開ける)あ!私これ、大好きなんですよ。売場で取り扱いしてました。ここの商品は本当にいいですよね。オーガニックで、しかもしっかり保湿してくれて。
___ 
それは川那辺さんをイメージして選びました。
川那辺 
(試す)あー。懐かしいなあ、この香り。
___ 
それは、ボディクリームらしいですね。
川那辺 
最近女子力が下がってきているので和知で使います。
(インタビュー終了)