大山劇団第二回公演「臼い巨塔」
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- 今日はどうぞ、よろしくお願い致します。大山劇団の皆様は最近、どんな感じでしょうか。
- 大山
- 日に日に仲が悪くなっていってます。
- 清
- そうですね、公演前になると殺伐としてきますね。全体的にですが特に各部署の中で。
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- どんなことが原因で仲が悪くなるんですか?
- 加納
- 台本の締め切りとかです。大山さんと私は演出部で台本作業もやるんですが、今まであんまり目を離して任せたことがないです。脚本は私には書けないし、内容は信用してるんですが、納期に関しては信用していなくて。もう少し、危機感を持って頂きたい。
- 大山
- 危機感はありますよ。加納の返信こそ、全部「刺す」とか「殺す」とかそういう、病院連れてった方がいいかなみたいな内容なんです。そんなことばっかり言ってくるから。
- 加納
- いや全然抑えてるんですよ。
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- つまり、いまは台本執筆中なんですね。
- 大山
- 本番初日が山の頂上だとすると、今は大体五合目ぐらいに来てますね。
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- いや、五合目まで来たら後はもう登ったも同然だと思いますよ。
- 大山
- 僕もそう思います。
- 加納
- いや五合目からがきついから。
- 大山
- 六合目を越えてくると不思議と植物が見られなくなってくるもので。空気も薄くなってきたし。毎日が世界の終わりの日みたいなので、もうずっとパチンコ行きたいって考えてます。
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- 制作の片瀬さんはどんな感じでしょうか。
- 片瀬
- 今回は作品以外の部分を、キャストの皆さんが一緒になって考えてくれて。前回公演から引き続きの皆さんとは、そういう関係作りができたのかなと思います。そういう雰囲気で作品を作ってきているので、お客さんにもその空気が伝わって、物販でブロマイドを買おうかみたいなことに繋がったらいいかなと思います。
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- つまり「臼い巨塔」には、これまでの大山劇団の全てが詰め込まれてると言っても過言ではないと。
- 片瀬
- だといいですね。SNSも最大限活かしながら伝えていけたらいいなと思います。応援して頂いている方は大事にしたいです。
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- そうですね。主宰・プロデューサーの清さんはいかがでしょうか。
- 清
- 僕は三栄町LIVEという企画団体を中心に年間20本以上舞台をプロデュースしてるんですけど、大山劇団では主宰なので、特に一番思いを持ってやっています。演劇の公演をやることが日常化している中で、大山劇団に関しては趣味感強くやっている所があります。これまでに覚えた知識や経験をどうおもしろく反映させるか、そういう志向でやってますね。
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- 三栄町LIVE、興味深いです。
- 大山
- 三栄町には今いろんな人が揃ってってますね。
- 清
- レギュラーで公演している黒田勇樹君とか、黒薔薇少女地獄の太田守信氏とか、福井しゅんやもそうだし。うまく連動をはかることができればなと。
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- どんな感じのうねりになっていくのか楽しみです。三栄町派閥?違うか、三栄町を中心としたMARVEL・梁山泊感が出てきましたね。
- 清
- そうですね、なんとなくバトル感を出したい。仲良しシャンシャンじゃなくて。各々がお互いをライバルだと思ってやっていて。ここを起点にして広げていけたらいいですね。下北かサンモールか三栄町か、みたいにできたらいいですね。
大山劇団
第一線の商業映画やドラマに携わりつつ、劇団チキンハートの作・演出として活動する大山晃一郎(以下オオヤマ)が立ち上げる新プロジェクト。 普段商業作品の中に身を置いているからこそ感じている「最近何か表現することって息苦しくないですか?」というため息に近い疑問に対しオオヤマなりに「NO忖度」を引っ提げて立ち向かう。 おもしろければ時代がついてくると本気で信じるオオヤマと半信半疑のプロデューサー清弘樹、酔った勢いで盃を交わしてしまった女優片瀬直と加納和可子の四人が織りなす結束力は竹ひごクラス。 これは劇団という枠を超えた一つの「ムーブメント」である。(公式サイトより)
大山劇団「臼い巨塔-Team Medical Dragon+Night-」
■あらすじ20XX年ーアフリシア大陸に蔓延したウィルス。 その圧倒的な感染力と致死率は世界中を恐怖に陥れた。人々が絶望する中、この世界的パンデミックを食い止めるため 特別医療チーム「国境なき医師団-チーム・メディカルドラゴンナイト-」が立ち上がった。出生、経歴、一切不明のならず者で結成された-チーム・メディカルドラゴンナイト-。社会からはじき出された-チーム・メディカルドラゴンナイト-の正体は 医療の各分野におけるスペシャリストで構成されたスペシャル医療チームだった。人々のエゴ、ヒエラルキーをカタストロフィーされて生きてきた -チーム・メディカルドラゴンナイト-が求めるものはピース。平和だった。世界中の人々の希望を背負い、ならず者達-チーム・メディカルドラゴンナイト-は 世界を救うためにウィルスの蔓延するグラウンド・ゼロ、アフリシア大陸へと向かった。 商人の町、OSAKAが生んだ奇才、大山晃一郎が送る摩訶不思議本格医療冒険アドベンチャー! ■公演日程 2019年5月17日(金)~5月26日(日) 全18ステージ ■会場 新宿 シアターブラッツ 詳細は公式サイトからご確認ください。
何がすごいんだよ
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- 次回公演「臼い巨塔」。狙いは何ですか?
- 大山
- いや凄いですよ今回。自分史上最高作ですね。本当にすごいです。
- 清
- 何がすごいんだよ。
- 大山
- 「臼い巨塔」ってそういう意味だったんやって思う筈です。チラシ受け取った人は「こいつらふざけてんな」って思うんですけど、メッセージ性はすごいです。
- 加納
- うん。
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- 臼はまあ、お餅をつく道具ですよね。
- 大山
- 今は言うつもりはないですが、気がついたら「なるほど」と思うような方向性です。今回は薄っぺらい何かを見に来た人達を、そうでもなかった、そういう意味かと思わせるようなゴールが見つかったので。抽象的なことしか言ってないですけど。
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- あ、じゃあ今は八合目まで来てるんですね!
パロディとものまね
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- 前回の「エクストリーム湯けむりバスツアー」 が大変面白かったです。前回は火曜サスペンス劇場のパロディでしたが、今回は。
- 大山
- どちらかというと、医療ドラマのパクれるところを全部パクろうと言う。Mから何からすべてマネして、怒られるところから怒られようと。
- 清
- 俺は、これはみんなに言ってるんですけど土下座をする覚悟でやってます。もし怒ってやろうという方は是非会場にいらしてください。ご覧になった上で、その場できっちり謝罪させていただきます。
- 加納
- えっ、私も謝るんですか。
- 清
- あたりめえだろ、俺が土下座するんだから。
- 大山
- 僕は最後まで反対したと言う体で・・・
- __
- 際どいですよね、白じゃなくて臼だからいいようなものの。
- 大山
- でもそこに大きな意味があるんですよ多分。
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- じゃあしょうがないですね。
- 加納
- 実はテレ朝さんの60周年記念ドラマ「白い巨塔」の放送期間と公演時期が被ってるんですよ。でも私たちの方がリリースは早かったんですよ。
- 大山
- そうそう、こっちが先です。まあ思いついたのは確かに前日ですよ。
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- つまりテレ朝に弓引くんですか。
- 大山
- いや本当にリスペクトしての60周年記念ですから、怒られたら本当に敬意をもって謝ります。
- __
- 全力のオマージュですね。まあ、人間はモノマネやパロディを面白がるという生物的な本能がありますからね。
- 大山
- 片瀬直というバケモノが、モノマネをすることで楽しくなるという習性を持ってますから。今も、インタビューを受ける女優というモノマネをしているみたいです。それだけお芝居をしていない女優さんなんですよ。
- 加納
- 人間模写です。
- 大山
- 結局、片瀬にモノマネの種を提供するだけなんです僕たちは。
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- 自分たちが出来る事は限られていると。
- 清
- 結果、そういう構造になりました。
- 大山
- きっと「バイタル」とか医療用語言いたいやろうなあと。
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- (笑う)
- 片瀬
- 医療モノなので。
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- あ、笑っちゃってすみません。
- 大山
- お客さんが笑わなくても片瀬直が楽しそうならそれでいいです、僕らは。彼女の人生、ブラウン管の中にしか救いがなかったですから。
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- 片瀬さんはものまねがお好きなんですね。
- 片瀬
- 物心ついたときからそうでした。
エクストリーム湯けむりバスツアー
公演時期:2018/9/21~30。会場:新宿スターフィールド。
「ブスは女優なんかしちゃだめ」
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- 大山劇団を立ち上げたのはどんな経緯があったんでしょうか。
- 大山
- ある夜バーで知り合った遠山という男とちょっとしたご縁で劇団チキンハートと言う団体を作ったんです。「実は自分の高校生活を舞台にした演劇を作りたい」と。彼と僕と清さんで旗揚げしました。僕はもともと吉本新喜劇を見て育ったんですが、あまり、演劇で自分を表現しようということは思っていなかったんです。でもその時はひとつの場をもらったという感覚です。劇団チキンハートはいま休止して、大山劇団を旗揚げしました。でもいまだに、演劇の素人が演劇を作ってるという感覚です。
- __
- 怒ったりする人はいないと思うんですけどね。演劇をおもちゃにしてるというのは素晴らしいと思いますよ。
- 大山
- だから、演劇見たことがない人にとって単純に面白いものがいいなと思って作っています。何より片瀬直が楽しくなるような場を提供できればいいなと思っています。まあそれはこの加納さんともですね。いや本当は、彼女とは仲直りしたいんですよ。
- 加納
- 私も仲直りしたいですよ。
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- 今ここでしたらいいじゃないですか。
- 大山
- いや今は意味がないんですよ。すぐ刺すとか殺すとか言うから。
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- なるほど。ところで加納さんはいつからお芝居を始めているんですか?
- 加納
- 私はもう幼稚園のお遊戯会からお芝居が好きで。何故か。ずっと女優さんになりたかったんですけど、ブスはなっちゃダメなんだと思って隠してました。高校演劇も当然のように行ってて東京出てきて演劇やってきて。改めて人生考えてみると、他人と比較されたくないみたいなのが小さい頃にあって。人と違うこととかの自己表現の一番上が私にとってはお芝居でした。四人の中では多分一番演劇の人なので、そっち側の意見を言うのが自分の役割かなと思ってます。
- 清
- そこがムカつくんですよ。人と比べられたくないと言う割には誰より褒めてもらいたがる。
- 加納
- まあ、褒められたいです。何とかして褒められたいです。そうやって私ができました。
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- 完璧主義者というやつじゃないでしょうか。
- 加納
- いやあ、嫌な人間ですね。
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- その中でも、時には自分を休ませることを忘れないでくださいね。
- 加納
- 飲みに行きます?LINEしていいですか。
- 清
- 看板女優、安いなぁw
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- そしてもう一人の看板女優、片瀬さんがお芝居を始めたのはどんな理由があったんでしょうか。
- 片瀬
- そもそも未だにお芝居をしてる感覚がなくて。よくないということは自覚しています。たまたま、面白いと言われて上げられている感です。幼稚園ぐらいからTVドラマは観ていました。その人たちがやっているのを真似するところから始まっていました。誰に見せるでもなく。あと、学校とかでも人が注目して笑ってくれるという感覚がずっと好きで。何も考えずに。でも、TVドラマでの俳優さんのリアクションを「私だったらこうやるな」とか勝手に考えています。私は何故、演劇活動か楽しいのかを考えてみたら、やっぱり「やってみたい」というのが強いんです。
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- 一種の天性なんですね。
信じる
- 清
- 劇団チキンハートをやっていて、その活動自体が物凄く楽しかったんですよ。でも大山がどう思ってるかはわからないですが、主宰と自分が考える団体像や、活動していく上での目的や目標が日に日にずれていきました。僕自身は劇団というものを通して稼ぐとか売れるとか(結果としてそうなることは素晴らしいですが)を目的化していることへの違和感など、色々思うところもあり現在休止中です。5年以内に1公演で3000人動員ができなかったら解散しようとか、それは達成出来ましたけど、自分でいっておきながら僕がやりたかったのはそういうことじゃなかったんだと気が付いて。やっぱりその団体が面白いというのは、作り手側の世界観がまず第1に反映されなくてはいけない。そんな中まあ色々あって演劇と関わることが嫌になりかけた頃、僕が大山に提案して劇団を作ろうと。それで今、大山劇団やっています。
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- 「エクストリーム湯けむりバスツアー」ではどんな手応えを感じましたか?
- 清
- チキンハートの頃と比べたら、正直パフォーマンスとクリエイティビティは持っている潜在能力からするとまだ半分ぐらいしか出せていなかった気がします。もちろん大山の良さはよく出ていました。まあ1回目としては及第点ではあったかなと。絶対もっと面白くできると、僕が一番信じています。
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- そこを引き出すと。
- 清
- 中身に関して言うと、僕にできることはたかが知れている。信頼関係だけです。それ以外の部分、公演情報のリリースから公演終了の一か月後ぐらいまでの時間が実質の公演の期間だと考えていて、舞台上で表現すること以外にもできるトータルな演出を一緒に考えています。
本気
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- ところで、稽古はもう始まっているのでしょうか。
- 大山
- 明日からですね。だから明日までに台本をケツまで書き上げないと清さんにガチで怒られるっていう。
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- いまは八合目ですね。
- 大山
- 四合目って言いませんでしたっけ。明日の夕方までに書き切らないと。最悪、黒田さんに連絡してみようかな、と。
- 清
- いや彼は6月と8月の公演の脚本で大変だから。
- __
- 大山さんならきっと大丈夫だと思いますよ。伺いたかったのが、大山劇団での稽古のやり方についてなんですが。
- 大山
- 人によりますね。演出家はどうやっても舐められちゃうので。
- 加納
- そんなことないでしょ。
- 大山
- 演じる側に本気を出してもらうために、いかに自分が彼らを信じないか。「自分は出来ますから」って言ってきても俺見てないからと。そういう感覚ではいます。面白い事やってほしいだけです。向こうは向こうで、面白い指示をちょうだいと言うだけ。どっちも自分たちのアイデアをさらけ出すだけですね。表面的には全然殺伐としてないですが。
- 清
- そう、一見ヌルい現場のように思える。でも真剣に向き合ってる人からしたら殺伐としてるというのは分かるんです。大山のすごいところは、これまで散々TVや映画などで殺伐とした現場を回してきているからそれを感じさせないんですよね。バカには分からない。昔の現場は体感1/3くらいバカっぽい人が混ざってましたが、彼はそれらを放っておいて伸ばすところを伸ばすという考えだった。僕は全体のレベルを底上げしてくスタイルで色んな物のマネジメントをしてきたので全然スタイルが違ったんです。今はもう基本バカがいないから(笑)、今のやり方が断然いい。
- 大山
- あ、コイツ駄目だなと思ったら「3歩歩いて振り返ってお辞儀して・・・」みたいに全部指導しますけど。そうじゃない人にはもっと、例えば感情の流れを突っ込んで聞いていくのが面白いので。「今何故下がったのか、お辞儀したのか」を聞いてみると面白い。行動の指示なんかしないです。行動は任せているんですよ、それはそっちの商売なので。僕の商売は感情の設定を伝える事だけです。「で、どうすんの?」というのが出来だしたら面白いですね、すごく。加納なんかはチキンハート時代からレベルが高い人なので、キッカケを秒単位で指示してました。上手な人には、その先のしょうもないことを期待する。逆に片瀬には何も言わない。今楽しいかどうかだけ確認する。「どう、今楽しい?」
- 一同
- (笑う)
- 加納
- いや本当に、片瀬が楽しいと嬉しい。
- 大山
- 二人ともお客さん側から見てると同じぐらいの爆発力を持ってるんですけど、普段やってる作業は全く違うんです。
- 加納
- 結構、片瀬の能力って、役者から見れば喉から手が出るほど欲しい力なんですよ。それは劇団の財産として大事にしたいなと思います。
- 大山
- でも狙ったらあかん、日に日に鮮度が落ちていく。でも今回の出演者は全員粒ぞろいですごく面白いです。
「噛むな!」
- __
- 一緒に舞台の流れを作って行ける人がいたら楽しいですよね。「演出家は交通整理に徹する」という言い方が一時期流行りましたが、それとはまたちょっと違って。
- 大山
- ちょっと経験のある役者だとすぐ全体で見るんですよね。演出家でもないのに。キャストがそういう風に計算している演技なんてどれもだいたい面白くないんですよ。「もう分かんないけどここはこういう演技だから必死で頑張る!」でいいと思っていて。「ここがウケる理由はアレだから今はこうしなきゃ」とか、気付き出したら面白さって減っていくんですよ。役者は、なぜお客さんが笑ったり泣いたりしてるのか分かんない、のがいいと思うんですよ。それを役者が計算するのは「畑が違う」。だから全体像をいかにごまかして、把握させまいと思っています。
- 加納
- 交通整理と言うか、もうビャーって足立の方に走ってった役者を追う、みたいな。
- __
- アイマスクされて走ってるぐらいの方が良いと。
- 大山
- 何も見えない迷路の中で、自分の目指す方向しか見えず、がむしゃらに走っているのをお客さんが上から見ているのが面白いと思うんです。でも役者が「俺は何も見えずがむしゃらに迷っているのが面白いんだ!」と悟ったら面白くなくなる。
- 清
- そもそも俯瞰で見る能力が備わってないのに見ようとするから間違ってるし、役に成りきるというのはどれだけ俯瞰で捉える意識をどれだけ外すかだから。そういう魂胆がある時点でキャラクターが全然魅力なくなるんですね。
- 大山
- 「いまここで台詞を噛むのが面白い」ということが分かっていてセリフを噛む芝居よりも、周りが「お前絶対噛むなよこの台詞。お前の人生掛かってる、座組全員の人生が掛かってる」って圧を与えて与えて噛ませる。
- 清
- その時の真剣な表情が面白い訳。もしかしたらものすごく技術のある役者さんならそういうことはできるかもしれない。でも僕らの周りには中々そんな奴いないので。
- 大山
- 「この一言をキレイに言えるかどうかでこの作品のクオリティーは半分決まる。危険だけど俺もこの台詞に賭けてる」って圧力掛けて掛けて掛けまくって、本番の時に楽屋のモニターで「噛め!噛め!噛め!」
- 一同
- (笑う)
- 清
- 噛んだー!って、まあお遊びなんですよ、これは僕らの。そうか、真剣な遊びなんだよな・・・。
- 加納
- 予想通りに動かないおもちゃが面白い。
- 大山
- まあそういうのがいっぱい散りばめられています。
- __
- 自分がカオスの中にいるのかどうかすらわからないのか。
- 大山
- でも、お互いがお互いを信用できない。状態の緊張感に笑いがあるんですよね。松本人志さんの笑いも、そういうものじゃないですか?!
- __
- 今の、大山劇団の中での相互不信も、笑いを生む構造の一つかもしれませんね。
- 大山
- 根本的なところでは信用はあります。面白いものを作れた目の衝突なら避けないんですよ。ウチの加納は、絶対に素笑いなんかしないんですよ。どれだけ僕が仕掛けても。いつか笑わせたい。片瀬さんは割と普通に素笑いします。まあいいんですけどね。
- 片瀬
- ・・・?
- 加納
- 舞台上で素笑いをするかしないかについて。
- 片瀬
- ・・・?
新宿でふらっと・・・
- 清
- 僕らはちょっとこう、新宿に飲みに以降と思ったんでけど何故かフラっと劇場に入ってしまったら意外に面白かったというのとかいい。それでいいんですよ。
- 大山
- 如何に核を持っていないかが分かる。
- 清
- 飲み会まで時間があるから来てしまったというぐらいでいいんですよ。わざわざ“演劇を見にきました”みたいないわゆる演劇の公演じゃなくていいですよ。映画だとちょっと寝ちゃいそうだからこっちに来ました、ぐらいで。
- __
- 敷居を低くするに越したことはないですね。
- 清
- どこまでいっても娯楽なので、偉いとか凄いとかはないと僕なんかは思ってます。いかに見世物小屋感を出せるかどうか。ゲーセン・ボーリング場もいいけど、座れるし大山の芝居でいいかなってぐらいでいいです。
- 大山
- 汚い手を使ってでも面白いと言われたい。
- 清
- 極論、本編で笑ってくれなくても面白く思えてくれたら何でもいいです。だからこれはチキンハート時代から言ってるんですけど、カーテンコールの時の表情と声の大きさに関してだけはちゃんとやって貰います。作品の演出には全然口出しませんが、カーテンコールと面会に関して僕はうるさいです。
- __
- 人によってはふてくされ顔で出る役者もいますよね。
- 清
- それはもう、本当に怒ります。そんな信念はありますね。その日の内容がもしダメだったとしても最後はいい顔をして「ありがとうございました」だけで納得して帰るお客さんも少なからずいるかなと。俺はそうなんです。その人が「お前らしょうがねえな、次は頑張れよ」って。高校野球みたいな、勝っても笑っちゃダメな集団はあるかもしれないですけどウチはこうありたい。
いま考えていること
- __
- 今の皆さんのテーマを教えてください。
- 清
- 分の今年のテーマは「全部やる」です。全部やっています。元々生業は他にあるんですが、映画と演劇に寄ってきてるので。というか全部仕事というスタンスではないんですよ。義務感でやってるわけじゃない。僕の欲求ですね。だから全部、関わりたいものに関わりたいし、やりたいことは全部やりたい。そのためにどう優先順位をつけ整理してやるかということですね。やりたいことをやるだけなので。国内旅行するのと全く同じテンションで今日もここに来ています。まあ加納と片瀬はそういうテンションに付き合わされてため息をついてるかもしれない。
- 大山
- 実は昨日上海から帰ってきました。それもまた別の面白いことになりそうです。大山劇団はそういうのとはちょっと違う実家みたいな感じ。どれだけ売れようが、100人キャパのままだろうが、ずっと続けると。どれだけ名前が売れても、(権力や資本、世間に)へりくだったエンタテイメントをやり続けるというのが絶対面白い。見に来る人も、本拠地があると来やすいんじゃないかと思っていて。メンバーが他の場所で色々やってることが集まる場所として続けるべきだと思います。
- __
- 令和元年は大山劇団の年ですね。
- 清
- まあね、「臼い巨塔」も映画を撮ろうという話になる可能性もある。僕と大山がなんとなく話してきたことは大体実現してきているので。当時正直本気で話してなかったことがほぼほぼ具現化できているから。ずっとこんな感じで行きたいというのもあります。
- __
- 加納さんのテーマは。
- 加納
- 嘘をつかないこと。
- 清
- 俺、加納に嘘をつかれたらショック…
- 加納
- いやいや自分に嘘をつかないということです。
- __
- 本当にやりたいことを、一時的に棚上げしたまま忘れてしまったりとかしないでしょうか。
- 加納
- あの、自分が嘘をつきたくない事に対してちゃんと決めることが大事だと思っています。嘘にしないようにする。もう一つ、感謝するということですね。劇団内はいつも揉めてるんですけど、相手のいいところを常に忘れないように、そしてありがとうの心を忘れないようにして、世界が平和になればいいなと思っています。
- __
- 片瀬さんは。
- 片瀬
- 自信を持つ。私がもっと自信を持てばもっと面白くなって、大山劇団にもっと貢献できる、そんな感じかなと、さっき話を聞いて思ったんで。分刻みに自信が変わっていくので。
- __
- 片瀬さんが自信を持ったら面白くなくなってしまわないかと思うんですが。
- 加納
- ああ、それは危険ですね。
- 片瀬
- お芝居のことについてはあまり考えていなくて。お芝居に関しては一生自信は持てないと思います。分かってないから。それ以外のところで人を信じるとか愛情を持つとかの向き合い方をコントロールでできたらいいなと思っています。
- __
- 自分をポジティブな方向にコントロールできたらいいなということですね。
- 片瀬
- あんまり考えなくていいことを考えてしまってる。考えないということ。
- 大山
- いやでも、片瀬の最大の魅力は「浅はかさ」なんですよ。分かってないのにわかってるふりをしたりとか、そういう防衛反応が働くところに魅力があるんですよ。
- 片瀬
- 大山さんにはよく見抜かれます。
- __
- でも片瀬さん、実際話してみるとこんな人だったんですね。インタビューの調整でやり取りしてた時はテンションが高かったのに。
- 片瀬
- あれが素です!これは、ちゃんとしてるモードです。
- __
- あ、そうだったんですね。
これから
- __
- 令和の意気込みを教えてください。
- 清
- いや、単純に、大山劇団が始まってぐらいからの自分のやってる方向性というものを変わらずやるだけかなと思います。出来るならこういうテンションでずっとやってきたい。
- 大山
- 大山劇団の良さって昭和感とか平成バブル感と言うか。ちょっと古いんですね我々は。令和になったら平成感を引きずっていきます。やっぱりちょっと古い団体でいたいんです我々は。描きたいものも、スタイリッシュではなく人情の方が得意なので。そういうところは大事にしつつ頑張っていきます。
- 清
- すぐ過去を振り返る?
- 大山
- 昔は良かった、ってすぐ振り返る。
- __
- 新宿に来るお客さんはそういうのが好きかもしれませんね。それを遠慮なくやるっていうのがいいですね。清さんと大山さんにとっては、令和は突き進む時代ということですかね。
- 清
- 大山劇団に関しては令和だからといってぶれない、平成の延長線上で行きますね。
- __
- これまで知ってきた中で最もコンセプトの強い劇団ですね。
- 一同
- ええっ!
辛かった平成
- __
- 加納さんはいかがですか
- 加納
- 私平成元年生まれなんですよ。今年30歳で、これまではブスなのに女優をって劣等感を持ちながらやってる時期もありましたけど、でも女優を志したときから思い描くのは30代・40代の自分でした。今もこんな風に自分を変えたいとかはないんですけど、なんか加納和可子がやっと完成したらいいなと思ってます。ブスでも女優してるって子供の頃の自分に言ってあげたい。
- 加納
- 楽しいよ、って。辛かったね、20代のわたし。
- 大山
- まあまあ近くの自分やん。
- __
- 片瀬さんはいかがでしょうか。
- 片瀬
- えー・・・?
- 大山
- いやこの悩み女優感出して、終わった時に「いやーん緊張したーっ」てなるのが片瀬なんだよ。
- __
- なんとなくわかります。
- 大山
- インタビューを受けてる女優像がありすぎ。
- 清
- 何が正解かと思ってるでしょ。
- 加納
- 思ったこと言えばいいから・・・
- __
- 私、これまでに何人かにインタビューしてきましたが、取材中ずっと演技されたのは初めてです。
- 片瀬
- してない、してないですよ。分かった分かった、分かりました。演劇っぽい事ですよね?ずっと笑ってたいんですよね。ずっと笑ってられそうだなと思ってこの劇団に入りました。これまでの経験を生かして楽しむ、みたいな。区切りがいいから思うんですが。そして、片瀬直と言う女優の自分の名前を胸を張って言えるように。笑っていたいですね。
質問 古澤 美樹さんから 大山劇団さんへ
- __
- 前回インタビューさせて頂いた、古澤美樹さんから質問をいただいてきております。「明日世界が終わるとしたらどうしますか」。
- 清
- 今日詰まっていた予定を真剣にこなして、早めに家に帰る。
- __
- 仕事人間なんですね。
- 清
- いえいえ、基本毎日今一番やりたいことをやっているはずなので。まあ世界が終わろうが終わる前だろうがきっとやるんです。ただ優しい嫁と可愛い犬がいるので、嫁とポン太郎の為にも早く帰りたい。
- __
- ありがとうございます。これまでの全インタビューの記事の内、おそらくもっとも価値のある回答でした。加納さんはいかがでしょうか。
- 加納
- それってみんな知ってるんですよね?じゃあお店とかも閉まってる?
- __
- 大多数は。
- 加納
- なんか、裸で外を出歩きたい。どんな気持ちになるんだろうか。
- __
- ああ、加納さんみたいな人がそういう映画でそういうことをして捕らえられるんですね。
- 清
- (笑う)世界が崩壊する映画の。
- 加納
- 頭を坊主にして。
- __
- それで地球が助かったらどうするんでしょうか。
- 清
- そこ問題。
- 加納
- 生きていけないですよね。じゃあ困るなあ。でもきっとそういう人は何人かいますよね。一人でなければ大丈夫です。
- 片瀬
- 私は、ぱっと思い浮かんだのは、友達に電話とかしておしゃべりして、家に帰って。猫飼ってるんですけどその子と遊んで、姉に会いに行く。
- __
- お姉さんとは仲がいいんですか?
- 片瀬
- 最近ようやく。
- __
- 大山さんは明日世界が終わるとしたらどうしますか?
- 大山
- きつねうどん食べますね。一番生産性のないことをしたいです。メダルゲームとか。
- __
- 押し出すやつですか。
質問 トイネストパークの皆様から 大山劇団の大山晃一郎さんへ
質問 トイネストパークの皆様から 大山劇団の片瀬直さんへ
質問 トイネストパークの皆様から 大山劇団の清さんへ
質問 トイネストパークの皆様から 大山劇団の加納和可子さんへ
令和始まって以来の・・・
- 清
- 京都とかの団体さんとかエッジの効いた演目が多いイメージじゃないですか。そういう人たちを招待したいですね。僕らの作品を見てどうだったかというのを聞きたいしなるべく受け入れたい。僕は最近とんがってる作家性の強い作品作る人とも積極的に関わりたい。踏み絵は大山劇団ですが(笑)
- 大山
- 俺踏まれてる。
- __
- 出会っていきたいということですね。
- 大山
- 令和始まって、日本で一番面白い舞台になると思います。
- 清
- あ、それ他でみんなよく使うやつだからダメ。Pとして言わせてもらうけどそれはマジでダメだわ。テイク2。
- 大山
- 令和始まって以来・・・もう一回お願いします。
- 一同
- (笑う)
- 清
- 大事なやつだからちょっと考えてからしゃべってよ。
- 大山
- 雰囲気で生きてる薄っぺらい人間達が作っている舞台なんでぜひ見に来てください。
- 清
- その世界観を具現化するために僕の持てる力を全て使ってます。それが大山劇団です。
- 大山
- ほんま、だから加納がTwitterで「世界を救うのは医療か雰囲気か」って。あれめちゃくちゃいいキャッチだったよ。
- 清
- うん、あれは良かった。凄くいい。
- 片瀬
- あれ、わかちゃんが考えたの?
- 加納
- 清さんが「どうせ雰囲気なんでしょ」ってリプライしたの。
- 清
- 俺は雰囲気は結構嫌いじゃなくて。拡大解釈ですけど、例えば今技術とか色々なものが発達してるけど末期癌は治せない。でも人生を充実させたら直りましたなんて例もあるわけじゃないですか。雰囲気って軽く見られますけど。
- 大山
- いきなり真面目な話になった。
- 清
- 僕は本当にそう思っていて、周りから作家性がないとか薄っぺらいとか言われてても全然いいんですよ。僕らは雰囲気を作るということに対して一生懸命やります。
- 大山
- 雰囲気でつなげて言った巨塔が、実はメッセージ性があるというものになりそうな光が見えてきたんですね。
- __
- おおっ、六合目ですね。
臼と杵
- __
- 今日はお話を伺いたお礼にプレゼントを持って参りました。どうぞ。
- 全員
- えっ!
- 清
- 臼だ!
- 大山
- すげえ。