顧問の先生
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- 今日はどうぞ、宜しくお願い致します。立命館中高の教諭であり立命館中高演劇部の顧問、最近、鍵山先生はどんな感じでしょうか。
- 鍵山
- よろしくお願いします。最近は、クラブの活動により一層力を注いでいます。顧問になって13年になるのかな、実は私がこの学校にくるまでは演劇部が無かったので、出来てからずっと顧問なんです。おかげさまで、どんどん大きくなっていっています。何より部員の子達が熱意を注いでくれましたので、昨年、初めて全国に行けました。今年も行きたくて行きたくて。みんなで頑張っているところです。
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- 近畿大会 への出場も決まったんですよね、おめでとうございました。勝ち進めると良いですね。
- 鍵山
- 今年は、まずは楽しく出来たらいいなと思っていたんですが、上に行けたので。欲が出てきました。
立命館中高演劇部
立命館中高には、元々演劇同好会が存在していましたが、2003年度に”部”に昇格し、現在の演劇部がスタートしました。発足当時は部員も少なく休部時代もありましたが、徐々に活発になり、現在は常に30人を超える大所帯になっています。2004年度から中学生の受け入れを本格的に開始し、中学の大会にも参加するようになりました。現在では、OB・OGも様々な場所で活躍するようになってきています。 中高一緒に仲良く活動しています!(公式サイトより)
第50回 近畿高等学校演劇研究大会
公演時期:2015/12/27(立命館中高演劇部の作品は14:10〜)。会場:呉竹文化センター。
OBや関係者の心強さ
- 鍵山
- ウチの演劇部出身の子で今でも演劇を続けている子がたくさんいて。このサイトにもたくさん出てて。去年、京都学生演劇祭で優勝した劇団西一風の岡本くんも卒業生なんです。卒業生は、時々稽古を見に来てくれるんですよ。古野君とか。古野くん、頑張って欲しいなあ。そうそう、先週、オーストラリアに二週間研修の引率に行ったんです。その間、演劇部の顧問がいない状態になりそうだったんですよ。その間、近衛虚作くんが「高校生の面倒を見てみたい」と言ってくれて。二週間、べったりついてくれて、作品作りにつきあってくれたんです。帰ってきてから見たんですが、すごく面白くなってました。
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- ええ、彼なら。彼ならそういうシチュエーションで良いものを作れるでしょうね。
- 鍵山
- めっちゃありがたいです。生徒だけでも練習は出来るけど、不安な部分もあるので。他にも、私が先生になる前にお世話になった方にも色んな協力をしていただいているんです。実は私、中学の大会の事務局長をしていて、大会の審査員をお願いすることもあるんです。今年の秋は村上慎太郎くんと近衛くんにお願いしました。筒井さんや田中遊さんや橋本くんにお願いした事もあります。高校の方の審査員は、今年の地区大会は田辺剛さんやったし、府大会は高間響君。
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- 直接的にせよ間接的にせよ、多くの方にお世話になっているんですね。
- 鍵山
- そういう繋がりがあるとアドバイスを頂けたりするんです。ありがたいですね。
教職に就いて、顧問になって
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- ざっくりと伺いたいんですが、鍵山先生が演劇を教える事になったキッカケを教えてください。
- 鍵山
- 最初は劇団ケッペキにいて、でも演劇をこのまま続けていこうという気持ちはあまり無くて。もちろん関わって行きたかったんですけど、それでは生きていけなかったので。教員免許を取って先生になって、しばらく演劇は出来ないなと思ってたんです。ウチの学校、演劇の同好会はあったんですよね。2年目に、私が元々演劇をしていた事が知られて(隠していた訳じゃなかったんですが)、演劇部の顧問になりました。なった以上は、自分の好きな事やから頑張りたい、と。
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- ありがとうございます。顧問になってからは。
- 鍵山
- しばらくは既成台本でやっていて、何年目かにちょっとずつ賞を貰えるようになって。初めて地区を突破したのが、四方さんが高3の時に書いた作品だったかな。その後、古野君がいた時に近畿大会に初めて出場しました。近畿で3位になって、春秋座に招かれたんです。そのときはワケ分かってなくて、みんなで「ふうん・・・?」って感じでした。今は、もう一度春秋座に行きたくて行きたくてしょうがないです。去年、7年振りに行きました。
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- 近畿大会には何回出場しているんですか?
- 鍵山
- 5回目です。
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- 強豪ですね!
演劇と教育
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- 学校教育のみならず、学ぶ事って、自分から何かを考えたり分析したりして得た知見こそが身に着くじゃないですか。ただ聞いているだけでは、それは力としてはあんまり意味が無いんじゃないかと思うんです。そこでの教師の役割は、学ぶ楽しさを教える事じゃないかなと。さて、芝居を学ぶ事で生徒はどんなキッカケを手に入れる事が出来るのでしょうか。
- 鍵山
- 漠然とした言い方をすると、先生の立場からすると演劇という活動自体、とても教育的な活動やなと思うんです。全てが含まれているんですよ。
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- というと。
- 鍵山
- 先週まで研修で行っていたオーストラリアでは、演劇は高校の必修の授業なんですよね。美術・音楽・演劇。その演劇の授業に、連れていった中学3年生を参加させたんです。
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- なるほど。
- 鍵山
- 言葉の壁があるからさらに痛感したんですが、正しい意味でのコミュニケーションを取らないと演劇の作業は出来ないんですね。作品を一つ作り上げようと思ったら、「ただの個人の集まり」から「一つの集団」にならないと、その集団の中で協力し合わないといけない。難しいのは、体育会系的・中央集権的に集団をまとめあげるやり方もあるけど、それがいつも上手くいくわけではない。
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- グループ内でのコミュニケーション。
- 鍵山
- それからまた、作品を通してお客さんに言いたいことを伝える為には、台本を元に全員が意見交換をしないといけない。そういう勉強にもなるんですね。文化系の活動って(なんでもそうですけど)勝ち負けはつけられないんですよね。評価に絶対はないので。そういう、答えのない事に学校現場で挑めるって、他には中々無いなと思うんです。
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- 集団で何か一つを作るって、結構無いですよね。
- 鍵山
- そうそう、教育現場にはピッタリだと思うんです。そういう事を意外と日本の学校では理解されていないんじゃないかな。もちろん文化祭でもやったりするんですけど。
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- あ、文化祭でもクラス演劇をするんですね。
- 鍵山
- 中三・高三の担任になったときは文化祭でクラスの演劇をやるんです。自分が担任になったからには絶対優勝させたくて。で、クラスで演劇を作ろうとなると、演劇部とは違ってやる気のない子も当然いるし、男子と女子の意見が思いっきり対立したり。しょっちゅう喧嘩になるんです。それがまた面白いんですよね、きたきた、みたいな。
生徒の力の引き出し方
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- 生徒との関係で何か、気を付けている事はありますか?どこまでアドバイスするか、とか。
- 鍵山
- 活発な演劇部の顧問の先生方って、結構みなさん、ご自分でリーダーシップを取るんじゃないかと思うんですが、私はあんまりそういうタイプじゃなくて。何だろう・・・ていうかむしろ、ちょっとセンスの良い高校生やったら、彼らの方が演劇のセンスはいいので。もちろん私は指導する立場に立つんですが、でも生徒が「こういう風にしたい」と言ってきたら、「それよりもこっちの方が良い」と言うほど自信はないので。基本はやっぱり、生徒に全部持ってこさせられるといいなあと思っています。
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- 生徒のアイデアを大事にする。
- 鍵山
- その上で、この13年やってきて自分なりの方法論が見えてきたのかな。もちろんその時その時で生徒も違うからやり方は変わるんですけどね、四方さんとか古野くん、岡本くんみたいな、リーダーシップを持つ子が出てきたりするので。私がやるのは、事務的なことや生徒の話し合いの場を設けること。
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- 全てではないけれども、自主的な感じですね。そして、生徒が考えてきた事を、そのまま採用する訳じゃないけれど、基本的には受け入れる。すばらしい。
- 鍵山
- 生徒だけで話合いをさせると、やっぱり大人ではないので、ちょっと傷付け合ったりだとか、発言力の大きな子が前に立っちゃったりして、目立たない子がすごく良い事を言ってるのに流されちゃったりする事もあって。でも、今のメンバーは凄く良いんですよ。全員の良さを引きだそうと意識的で。偉いなあと思うんです。年を追う毎に、揉めたとしても上手に解決する事が出来るようになってきている気がする。どこか、伝統というのが出来てきたのかもしれない。
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- 伝統とは。
- 鍵山
- ウチは中高一貫で一緒に活動しているんですが、中学生はいやでも高校生を見て育つので。高校生は中学生相手だとめちゃくちゃ優しいんですね。あと。OBがこうやって続けてると、例えば古野君とか、代が重なっていなくても見に来てくれるというのが嬉しいですね。近衛君も自分のところの劇にウチから出してくれたりして、繋がりを作ってくれて。続けてる子はそれぞれの別の場所で頑張っているけど、お互いに繋がりがある。
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- 段々と、歴史が出来てきているんですね。
出たい子全員出す
- 鍵山
- 演劇をクラブ活動としてやっていて面白いのは、体育会系のクラブは身体的な能力で決まる部分が大きいけど、演劇はどんだけ頑張っても発声は上手くならないし動きは汚い、へたくそ・・・でも輝く役者っているじゃないですか。それが面白いなと思うんです。そういう意味では、演劇てどんな子でも輝けるんですよね。ウチのポリシーは、全員、やりたい事をやらすんです。すごい強豪校だと役者を選抜させるけど、ウチは20人舞台に出たかったら20人全員を出す。
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- おお。
- 鍵山
- どうしようと悩んだ時期もあったんですけど、勝つ事は目的ではないので。もちろん、勝ったら沢山の場所に行けますけれども。遠征がめちゃくちゃ楽しくて。香川にみんなで出かけて行ったり出来るんですよ。全員で。
遠征する演劇部
- 鍵山
- 近畿大会で一位になると、翌年の夏の全国大会に行けるんですよね。二位は同じ学年のメンバーで春の全国大会に行ける。評価としては一位というのは嬉しいんですけど、3年のメンバーの最後を飾れるというのは嬉しくて(ウチは大学へはエスカレート式で上がれるので、大学受験で時間を取られる子も少なくて)。舞台に立ちたい子を出して、なおかつ、お客さんに楽しんでもらう事がクラブの目標なんですね。
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- お客さんに楽しんでもらう事。
- 鍵山
- このメンバーで、この作品で楽しんでもらうにはどうすればいいのかを延々と話し合う。今作っている作品が評価してもらえるかは分からないですが、もし次がなくなったら巡業しようかと言っています。巡業はしてみたいですね。ほんまに遠いところに行ってみたい。
生徒が作る演劇部
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- 生徒が作る演劇部なんですね。
- 鍵山
- 基本的には中学と高校で分かれているんですが、一緒に作品を作る時もあるし、でも今は人数が増えてきちゃって、合わせて40人ぐらいになってきちゃったんです。一緒に何か出来るのは合宿ですね。
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- 合宿!
- 鍵山
- 5つか6つぐらいのチームに分かれて三泊四日の合宿でそれぞれ一つの作品を作るんだけど、その時に仲良くなってくれるのかな。中1から高3までの子が一緒に作るんです。私、合宿が好きすぎて、学校で決まっている合宿の限度日数を全部使っちゃうんですよ。
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- 生徒にとっても楽しみ?
- 鍵山
- 生徒も楽しんでいると思います。
鍵山先生のオーダー
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- 先生としてクラブの話し合いで指導するのは、例えばどんな時ですか?
- 鍵山
- これはさっき言いましたけど、意見が出た時に、先生がちゃんとフォローしてあげないと消えてしまう事があるんですね。それから、技術的な事。まあそれもOBの子に指導してもらったりすることが多くなってきたけど。
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- なるほど。
- 鍵山
- でも結局私、自分で夢中になりすぎて生徒に無茶を言っちゃうんですよね。生徒から出てきた意見をもちろん大事にしたいと思っているんだけど、でもこの衣裳が欲しいとか舞台セットが欲しいとか、いついつまでに欲しいとか言っても、「えー!」と言いながらちゃんと用意してくれるんですよね。申し訳ない。
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- それは、鍵山先生のオーダーが面白いからですよね。楽しそうで何よりです。
質問 DanieLonelyから 鍵山 千尋さんへ
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- 前回インタビューさせていただきました、DanieLonelyの4人から質問です。「夢は何ですか?」
- 鍵山
- 具体的過ぎてアレですけど、中学演劇の環境が整えられたらいいなあと思います。高校演劇は体制が整っているんですけど、中学はまだまだなんですよね。今は京都の事務局長をしていますが、特に何もしていないし。あとは巡業かなあ。ものすごく遠くの高校演劇部と一緒に作品を作ってみたいんです。
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- ありがとうございます。次の質問です。「自分でも演劇をやりたい、そんな気分になったりしませんか?」
- 鍵山
- 自分が舞台に立ちたいとは思わないんですけど、繋がりの場を設けたいと思ったんですよね。だから豆企画を立ち上げたんです。
そういう瞬間に立ち会えること
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- 実は私も高校演劇をやっていて。当時の仲間と出会えて良かったなと思っています。高校演劇で何かを一緒に作ることの良さというのは、関わった人は絶対に分かるというか。
- 鍵山
- 生徒と関わっていて本当に良かったなと思うのは、私自身は学校で演劇をした事が無かったので、その達成感や思い出をこの歳になって体験出来たという事。それはとても貴重だと思います。毎年必ず、どこかのタイミングで「ここは!」という場面があるんですよ。大会の直前のミーティングの時や、現地で野外稽古してたら近くで働いていたおじさんに声を掛けられた時、合宿の時とか。先生としてそういう貴重な瞬間に立ち会えるんですよ。おいしい思いをしていると思います。
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- すばらしい。
- 鍵山
- あ、もちろん、同じくらい中学のクラス担任も面白いですよ!今日全然そのことは話して無かったですけど。
新パターン!
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- 今後、どんな感じで攻めていかれますか?
- 鍵山
- ちょっと今回、近衛君に関わってもらった事で、自分がこれまで築いてきたパターンに変化を与えられたんですね。生徒への関わり方や、作品の造り方を、もっとこんな事も出来るんじゃないか、別の角度を自分にもたらすことが出来たと思うんで。近衛君はそのあたりものすごくしっかりしていたんですよ。
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- 手法が体制になる前に、変化を与えることが出来た。
- 鍵山
- それと、新しいことにも挑戦出来るんです。来年1月、3つの高校と合同公演をするんです。ケッペキの後輩が顧問している演劇部と。そういう、今までちょっと手を出さなかったところに手を出したら、生徒も嫌でも視界が広がるんじゃないかなと思うんです。
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- なるほど。
- 鍵山
- 去年も多くのホールで上演できたことで関係が広がったんですよね。そういう、得な繋がりをもっと作れたらと思います。
クリスマスリース
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- 今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持ってきました。
- 鍵山
- やったー。
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- 大したものじゃないですけどね。
- 鍵山
- わ〜、可愛い。可愛いなあ。部室に掛けて置くといいかも。しばらくすると小道具になると思います。