演劇人にインタビュー 頭を下げれば大丈夫

短距離男道ミサイル

劇団

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gate リターンズ2016 短距離男道ミサイル「魁!!男道場」

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こんばんわ。gate リターンズ2016に参加された、仙台に拠点を置く短距離男道ミサイルのみなさんにお話を伺います。今回は本当にお疲れさまでした。まずは、いかがでしたか。
澤野 
よろしくお願いします。短距離男道ミサイルとしては、短期間の滞在制作は本当に初めてだったんです。僕ら結構、劇団での公演というのを重視していたんですね。というのは、本公演に集中して、その創作過程の中で、まず自分たち劇団員が鍛えられるのが大事だと信じてやってきたので。
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今回はどんな発見がありましたか。
加藤 
実は、反省の方が多いと思っています。ミサイルに出演するのが初めての人たちに、自分達の「ヤリ方」を教えるというのは中々出来なかったかな。僕らのテンションにガッチリついてきてもらう、みたいな事がしたかったんですけど、それができたかといえば難しかった。
澤野 
一応、言葉にはできたけど、これまでそういう「ヤリ方」みたいなのは本番をやりながらの共有だったから。逆に言うと、自分達がどういうやり方をしているのかという事も、こういう座組でやることで初めて理解出来た部分があって。もちろん楽しかったですし、貴重な体験だったと思います。今後またこうやって、新しい人とやっていくときの指針になったと思います。
短距離男道ミサイル

ミサイルは、広義には投射体全般を指すが、一般に誘導ミサイルの省略形であり、日本語では、ほぼ誘導ミサイルのことを指す。すなわち目標に向かって誘導を受けるか自立誘導によって自ら進路を変えながら、やはり自らの推進装置によって飛翔していく軍事兵器のことである。(公式サイトより)

パイロット版シアターシリーズ「gateリターンズ2016」

■日時 1月21日(木)19:30(A)◎ 1月22日(金)19:30(B)◎ 1月23日(土)11:00(A)/16:30(B)☆ 1月24日(日)11:00(B)/16:30(A) (A)=したため/Massachusetts/ユニット美人 (B)=ソノノチ/短距離男道ミサイル/ベビー・ピー ※開場は、開演の30分前です。 ※上演時間は約95分を予定しています。 ◎21日(木)・22日(金)の終演後はアフタートークを予定。 ☆23日(土)16:30のステージでは、岩戸山ほぼ2畳大学「感劇学部」イベントあり。 ■会場 KAIKA ■料金 前売1,700円/当日2,000円/セット券3,000円(日時指定・全席自由)

男の色

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今回は仙台から京都までの遠征でしたが、実は先週も大阪で「対ゲキだよ!全員集合!」 でいらしているんですよね。しかも、本公演サイズの作品で。そちらも拝見しましたが、非常に面白かったです。私が男道の身体に魅力を覚えたのはですね、計算を越えたマッドな、侍的な精神性を感じたんですよね。でも演劇の計算も同時に行っている。そのバランスに、どこかセクシーな魅力を感じたんです。マジでやっているのか不真面目なのか分からない。
澤野 
僕らは「かいけつゾロリ」で言う、『マジメにフマジメ』にやっているんです。下らない事を全力でやるというのは、男の一つの姿だと思っています。誰も認めなくても、自分らはこの道を往くんだという馬鹿さ。そこは、「男とは」という考えを構築するに当たって大切にしていた部分ではあります。それと、基本的にはお客さんにカラッと楽しんでほしいというところがあって。実績とかトシとか関係なく、自分たちはあんまり偉そうにしたくないと思っている所もあります。そんな我々だから、今回の滞在製作で、劇団の役者に何か堆積しているものもあるんだな、という所が確認出来たのはかなり大きかったですね。
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今回の作品、役者の振り切りようが素晴らしかったです。荒々しい、なのに正確さを感じる。そこに、仰る通り堆積されたものを感じます。
澤野 
ここしばらくは原作のある作品作りをしてきて、古典的なテクストに拠ってきたんですが、今回は僕ら自身の原点に立ち返るという事になりました。もちろん、これからも僕らと作品の形は変わり続けていくと思いますが、元々のカラーを再確認出来たというのは大きい経験でした。
対ゲキだよ!全員集合!

【公演時期】大阪公演:2016年1月15日(金)〜17日(日)@アトリエS-pace、東京公演:2016年4月1日(金)〜3日(日)@こまばアゴラ劇場。

質問 岩田奈々さんから 短距離男道ミサイルさんへ

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前回インタビューさせていただきました、岩田奈々さんです。打ち上げ会場にいらっしゃっているので、直接質問をどうぞ。
岩田 
一番幸せを感じるのはどんな時ですか?
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ちなみに岩田さんは?
岩田 
ああ、あたしはどうなんだろう、でも美味しいものを食べている時は幸せです。それと人と喋っている時、舞台に立っている時、かな。
加藤 
僕は珈琲を淹れている時。
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おお、もしかして豆挽きからですか?
加藤 
焙煎からする事もあります。
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凄いですね。
澤野 
彼は珈琲俳優なんです。
神崎(照明) 
打ち上げの前にバラシが終わったときは嬉しいです。何も吊ってないバトンを見たときは嬉しい。その時の本番が上手くいけばなおさら。
梅山(客演) 
初めて会う人と喋って、この人と会話が通じたなと思った時。愛想笑いとかじゃなくて、何気ない笑いが出来た時が一番幸せですね。友達少ないから・・・。
神崎 
友達なってあげるよ。月3,000円で。
澤野 
Wi-Fiか。
マネージャー 
何だろうなあ。普通にお風呂かな。普段は忘れてるけど、お湯の力って凄いですよね。
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シャワーの水圧イコール幸福度、らしいですね。先日、そんな事を言う人がいました。
澤野 
家族といる時は幸せですね。妻と子供といる時。こういう活動をやっているので中々夫らしいこと・父親らしいことが出来ないから。でもこの間の朝、僕がゴミ出しをしたり灯油を入れて、妻が朝ご飯を作っていて子供が玩具で遊んでいる、という風景が久々にあって。不意に泣けてきました。歳とったなあ、と思って。こういう事をしているなりに、そういう時間は大切にしたいなと思っています。演劇の話をすれば、僕は稽古している時がものすごく好きなんです。余りにも幸せ過ぎて、出来るならずっと稽古していたい。他の事を何も考えずに。
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男道の稽古は楽しそうですね。
澤野 
一時期辛かったんですけど、今はすごい楽しくて。それは何故かというと、まあ一個は出演しなくなってから、自分たちのクリエイションを客観的に見るようになったんですね。すると無限の可能性を感じてきて。ミサイルは比較的限られた条件下で作品を作っているんと思っていますけど、それでも毎回、発見があるから。これまでに無いものを作っている感触を味わえるのが凄く楽しいです。

世界を拡張せよ

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村上龍の小説に、「良い父親像とは家庭の事を適当にして、外の世界を拡張し続けている後ろ姿」みたいな事が書いてあって。男道はまさにそうじゃないかと思う。新しい分野を獲得し続けている。
加藤 
どうかな、見たらどう思うかね。「パパ、また裸の人たちに行くの?」
澤野 
本当にそうですよね。僕らは震災後、自分達を拡張しようとしたんです。それがこういう風にgateにも参加させてもらうという形で返してもらって。これから先、どこまで続くかは分からないですけど、五年を一区切りにして次のステップに進む。今回は一つの良いターニングポイントだったと思います。
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先週の大阪での「対ゲキだよ!全員集合!」も良かったです。
澤野 
ありがとうございます。その時の作品の本編を、7月末に仙台でやってやろうと計画中です。全国から来てくれたら嬉しいな。
加藤 
その前に4月の1・2・3日、こまばアゴラ劇場で「対ゲキだよ!全員集合!」の東京公演をやります。名古屋のオレンジスタという劇団と、大阪のコトリ会議という劇団の対ゲキになっています。
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そうですね。
澤野 
今回の滞在制作で初めての人とやるというのが凄く楽しくて。見ていただいたお客さんに「僕も出ておけば良かった」という声を頂きました。出来たら今後もこういう道場という形はやっていきたいと思っています。お気軽に声を掛けて頂ければと思います。

仙台で磨き抜くという事

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今後、どんな感じで攻めていかれますか?
澤野 
全国に僕らの事を知ってもらいたい。僕らを知ってもらうという事は、東北を知ってもらうという事だと思っています。いろいろ飛び回ってきたけど、近々は、仙台を拠点にして究極的に質の高い作品を作る、という事がしたい。もちろんツアーもするんだけど、自分達の拠点においてより優れた作品を作る。これで死んでもいいな、と思えるぐらい。それを持って県外に出られたらなと。
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楽しみにしております。

「問わず語らず名も無き焼酎」

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今日はですね、お話を伺えたお礼にプレゼントを持って参りました。
澤野 
ありがとうございます。「問わず語らず名も無き焼酎」。かっけー。
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飲んで頂ければ幸いです。
(インタビュー終了)